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カテゴリー「215 練習曲」の4件の記事

2009年4月 8日 (水)

無伴奏ごっこ

伝ブラームス作「トランペットまたはホルンのための12のエチュード」をヴァイオリンで弾いて楽しんでいることは3月9日の記事「悪知恵」で述べた。

あれからかれこれ1ヶ月。根拠レスな直感で申し訳ないが、すっかりブラームスの真作のような気がしてきた。「弾いてて飽きない」が唯一の根拠だ。ずっと弾いていてデジャブに見舞われた。どこかで経験した感覚なのだ。

今日、それが何だか判った。判ってみるとこれが何ともお叱り覚悟な妄想だ。

バッハの無伴奏チェロ組曲をヴィオラで弾いて遊んでいた時の感覚に似ているのだ。もちろん一番の要因は無伴奏だ。バッハの域に及ばないが、12のエチュードがどうも舞曲の集合に見えて仕方がない。プレリュードあり、アルマンドあり、メヌエットあり、ジークあり、ブーレありだ。

後年名高いシャコンヌをピアノ左手用に編曲するくらいだから、バッハ一連の無伴奏作品をよく知っていた。問題は17歳というこの時期に既に知っていたかだ。

もしかしてバッハの無伴奏作品が念頭にあったのではないか。無伴奏楽器による古典舞曲の集合体の体裁を採用したエチュードは、とりわけ無伴奏チェロ組曲と同じベクトルを感じる。まさかとは思うが一応言っておく。

ホルンやトランペットのためのエチュードをヴァイオリンで弾いて、こんなに面白いというのは、何とも罰当たりな話である。これを使って練習してホルンやトランペットが上手くなるのか疑問である。

2009年3月 9日 (月)

悪知恵

伝ブラームス作「トランペットまたはホルンのための12のエチュード」の楽譜を入手したことは既に書いた。このところ毎日にらめっこしている。

  1. Moderato 4分の4拍子 変ロ長調 31小節
  2. Marziale 4分の4拍子 ハ短調 34小節
  3. Andantino 8分の12拍子 変イ長調 33小節
  4. Andante 4分の4拍子 変ニ長調 33小節
  5. Adagio 4分の4拍子 ト長調 34小節
  6. Allegro vivace 8分の6拍子 変ロ長調 83小節
  7. Allegro 4分の3拍子 ニ長調 89小節
  8. Moderato 8分の3拍子 イ長調 76小節
  9. Maestoso 4分の4拍子 ホ長調 50小節
  10. Allegro 8分の6拍子 ホ長調 92小節
  11. Moderato 4分の4拍子 ロ長調 54小節
  12. Allegro 4分の2拍子 変イ長調 72小節

こうして1番から順に概要を書きとめるだけでもワクワクする。2番冒頭を飾る「Marziale」という用語はブラームス作品ではここ以外に存在しない。

素朴な疑問が一つ。この楽譜はinBだろうかinFだろうか?トランペットまたはホルンのためのエチュードなのだからそれらの楽器が移調楽器であることは、どのように織り込まれているのだろう。

私の考えはinCだ。

手元の楽譜は、マッコークルの譜例と完全に一致する。マッコークルは移調楽器のものであっても譜例は全てinCで実音を記している。そのマッコークルと同じということはすなわちinCだと思う。また4番までの作品はB管またはF管で吹くとフラットが減る調だ。

しからばとばかりにいたずらを思いついた。

これをヴァイオリンで弾くのだ。12曲全てを見渡しての最低音は5番ト長調の最後の音として出現するGだ。ヴァイオリンのG線開放弦の音である。最高音は3番変イ長調の17小節目に一度だけ現れるCだ。五線の上に2本仮線を加え、その2本目に串刺しにされる音だ。つまりヴァイオリンの第一ポジションでほぼ出せる音から出来ているということだ。

これがなかなか面白い。規模は小さいながらも音楽作品としての起承転結がキチンと設定されている感じだ。

2009年2月28日 (土)

いやはや何ともお宝

本年2月5日の記事「ホルンのエチュード」でブラームスが作ったトランペットまたはホルンのための教則本があると書いた。

何とその楽譜を見つけてしまった。3570円を即買いである。

先日出かけたNTCのトロンボーンアンサンブルに刺激されて次女のためにトロンボーンの手頃なピースが無いものかと楽譜ショップをうろついていた。チラリと「ブラームス」の文字が目に飛び込んできた。「さては」とばかりにすぐ脳内が酸っぱい液で満たされた。トロンボーンの棚の1つ上のそのあたりはトランペットの棚だったからだ。咳き込むようにほじくり出すとやっぱり例のあれだった。

マッコークルは何とも律儀で、「怪しげ」としているこの曲についてもちゃんと譜例を載せている。12のエチュード全てについて冒頭の譜面が引用されている。親切と言えば親切だが、この小出しは身体に悪いとかねがね思っていた。

が、とうとうその全貌を入手することが出来た。

英語で書かれた序文を読む限り、ブラームスの父の所属する楽団仲間のあまり上手とは言えないトランペット吹きのためにブラームスが書いたことになっている。この状況は1840年代後半の成立とするマッコークルの推定と矛盾しない。万が一真作ならU-17のブラームスによる作品で、op4のスケルツォを現存最古の真作とする立場にも影響があろう。

ダイナミクスやアーティキュレーションの用語もところどころにあるので、色めきだったがそれらは校訂者が後からつけたようだ。Max Zimolongというホルン奏者で、ベルリンフィルやドレスデン国立歌劇場管弦楽団での経歴があるらしい。マッコークルはあくまでも「怪しげ」という立場だが、楽譜の出版元はハンブルクのSikorski社だけにもしやという期待も膨らむ。

金管楽器の知識が無いので、どのような効果があるのか楽譜を見ただけでは判らないがお宝だ。

CDでもありはせぬかと思いは膨らむ。

2007年5月10日 (木)

禁断のエチュード

ブラームスが作曲した「ピアノのための51の練習曲」は、単調な音形の繰り返しの中から、指の拡張や脱力を習得出来る上に、ブラームスの香りさえ満喫できるという代物である。しかもその効果は絶大だという。

良いことずくめのエチュードかというとそうでもない。取り扱いを誤ると手を故障しかねないという、物騒な副作用もあると一部で言われている。ピアノ教師の処方箋無しでは危なくて迂闊に手が出せないのだ。生徒の能力や意欲等慎重に考慮して適量を適切なタイミングでというのがいいらしい。

何でも「パガニーニの主題による変奏曲」を習得するためのエチュードだという話もある。自作最高難易度の曲について「こうしたら弾けますよ」というエチュードを書いてしまうというのは何たるサービス精神だろう。裏を返せば「パガニーニの主題による変奏曲」は、身体を壊しかねないような訓練をしなければ弾けないということなのだ。

クララ・シューマンが「魔女の変奏曲」と称したのは、このあたりの事情を考慮してのことかもしれない。

http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2007/05/post_5220.html

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