聞き倣し
「聞き倣し」と書いて「ききなし」と読む。鳥を含む動物の鳴き声に人間の言葉の音を当てることだ。犬の鳴き声を「ワンワン」とするのがその代表だ。Dogは「ワンワン」とは鳴かずに「Bow Bow」と鳴く。言語が違えば当然聞き倣しの結果も変わる。寝ている間は、人間も動物の仲間だと実感する。日本では「グーグー」だが、英語圏では「zzzzzzz」だ。いびきの音は聞き倣しの対象になっている。つまりその間は動物だということだ。
さて学生のオーケストラは定期演奏会を中心に回っている。メインプログラムともなると3ヶ月程度は練習するものだ。作品に登場する印象的な旋律に歌詞を付けて歌う輩が出て来る。傑作を毎度生み出す「聞き倣しメーカー」も一人や二人は必ずいるものだ。私が聞いた範囲でも以下の通り多彩である。
- 「こ~んなたっかい音出る訳ないのに」 ベートーヴェンの交響曲第7番第4楽章のホルンの難所。
- 「ク~ラリネットちょんぼちょんぼ」 ベートーヴェンの交響曲第9番第2楽章中間部
- 「金ね~よ~、ひもじ~よ~」チャイコフスキー悲愴交響曲第1楽章冒頭
- 「めーしー早く喰いてえよー、さーけー早く飲みてえよー」チャイコフスキー悲愴交響曲第2楽章冒頭
- 「コンパでビールを飲もー」チャイコフスキー悲愴交響曲第3楽章冒頭
- 「うら~のにーわで、ポチが鳴く、こーこ掘れこーこ掘れ」ドヴォルザーク「アメリカ」四重奏曲冒頭。
- 「ダブトン、ドラ3」マーラー第5交響曲第3楽章エンディング。
学生たちはこの手の替え歌が好きだ。さりげなくセンスも問われる。アルコールが入った席でよく歌われる。学生歌にも、同じ旋律が別テキストで歌われる異稿が数多く派生している。替え歌あるいは聞き倣しのノリは学生歌の神髄という気がする。上記の7番は私が発案者だ。大学4年の秋、マーラーに挑む中、マージャン卓を囲んでいて思いついた。
さて前置きが長くなった。ブラームスにも聞き倣しがあった。
- 「お~れはど~にももてない男だ」交響曲第3番第4楽章
- 「あじ、さば、うに、いか、たい、かに、とろ、えび」交響曲第4番第1楽章冒頭。
あまりに出来が良い場合、そうとしか聞こえなくなるという副作用も報告されている。
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