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カテゴリー「230 ドイツレクイエム」の17件の記事

2018年4月25日 (水)

はたして逸脱か

ドイツレクイエム初演150周年記念の記事を発信するにあたって、「バロック特集を中断して」と表現した。ところが、ドイツレクイエムの周辺情報を収集するうちに、風向きが変わってきた。

ブラームスの脳裏にバッハよりもさらにさかのぼるドイツ教会音楽の下地があり、その上にドイツレクイエムが構築されたと考えざるを得ない。

むしろバロック特集の期間中に「ドイツレクイエム初演150年」が来て、そこで関連記事を発信できることは、この上ない僥倖と感じる。これがハンガリア舞曲や交響曲だったらそうは感じない。この偶然を喜々として受け入れるべきだ。

信仰篤い人なら、「神のお導き」と受けとめるだろう。

2018年4月23日 (月)

テキストの一致

ドイツレクイエムのフィナーレ第7曲とバッハの「カンタータ60番BWV60」第4曲のテキストが一致する。アルトのレチタティーヴォに導かれて歌いだすバスのアリオーソが、そっくりそのままドイツレクイエム第7曲冒頭のテキストになっている。「Selig」の「Se」が付点2分音符によって引き伸ばされる歌い出しまでそっくりである。ドイツレクイエムも終盤、フィナーレにたどり着いた聴衆は、この歌い出しを聴いてバッハを想起することは間違いない。信仰に篤い聴衆ほどそれを感じ取るはずだ。

バッハにとっては「知らんがな」な話だが、ブラームスにとっては意図も思いもある一致だ。

バッハのカンタータ60番は、三位一体第24主日のためのカンタータ。初演はバッハがトマスカントルに就任したその年の11月7日。曲全体の構成は「恐れ」と「希望」の対比になっている。第4曲は両者の葛藤に終止符を打つべく、キリストが「恐れ」の側を諭すシーンになっている。アルトは恐れでバスがキリストだ。

熱心なプロテスタントなら、ドイツレクイエム第7曲の立ち上がりを聴いて、バッハのカンタータ60番第4曲を必ず思い出すはずと、ブラームスは計算していたに決まっている。

ブラームスはドイツレクイエムの初演から5年後1873年12月7日、ウィーンでカンタータ60番を、楽友協会の演奏会で指揮している。

2018年4月22日 (日)

数合わせとしての「45」

バッハが数字合わせ好きであったことは、よく語られている。「Bach」というスペリングを「B=2」「A=1」「C=3」「H=8」とみなして、その合計値「14」にこだわっていた話がその代表格だ。

本日はその系統の話題。

オルガン小曲集と通称される「Orgelbuechelein」はBWV599から644まで全45曲からなる。このうち33曲は教会暦上のイベントをトレースする内容で、キリストの生涯33年を示す。残り12曲はよく使う賛美歌の編曲で、12人の弟子を表す。万軍の神ヤハヴェを示す文字列「IHVH」を先の法則に照らし数値化すると45になる。

これら数に対する諸説の取り扱いには慎重を期するに越したことはないが、本日あえて話題にするのは、「45」がドイツレクイエムの作品番号に一致するからだ。ブラームスは、出版社に最終原稿を渡す際に、すでに自作の作品番号を顧慮していた。1868年10月のドイツレクイエム出版前後は、相次いで歌曲が出版されていた。作曲済の歌曲数曲をいくつかまとめて出版社に渡すという方法は、ドイツレクイエムを意図的に「45」に割り付けるにはうってつけだ。

2018年4月21日 (土)

復活の回避

ドイツレクイエムの初演を準備する過程で、指揮者ラインターラーと意見の相違が生じたとされている。

ドイツレクイエムの主張する宗教観、つまりブラームスの宗教観とラインターラーの宗教観との相違に起因するものだ。一つは「最後の審判」への顧慮がないことだ。

今一つが本日の話題だ。ブラームスは「テキストの選択にあたり復活の部分を注意深く回避した」と言っている。復活を信じているなら、注意深く回避する必要はあるまいと思う。申すまでもなく「復活」を信じることがキリスト教信仰の基礎の基礎だ。ブラームスのこの見解が、「復活を信じない」ことの表明だとするなら一大事である。死者のためのミサなのに復活を信じていないということだ。ブラームスを慕うドヴォルザークは、唯一ブラームスの不信心ぶりを嘆いているくらいだから、荒唐無稽でもなさそうだ。

内心はどうあれ、初演前の大事な時期にわざわざ言及しなくてよさそうなものだ。微妙な問題に進んで首をつっこむのは得策ではなかろう。そうせざるを得なかった深い議論がラインターラーと交わされたということだ。

このあたりが、「死者のため」ではなく「死によって残された者のため」であるという位置づけの根拠だ。

2018年4月20日 (金)

テキストとしての聖書

ドイツレクイエムがルター訳の聖書18か所からの引用で成り立つと書いた。ついでに、聖書からテキストの供給を受けているブラームス作品を列挙する。

  1. アヴェマリアop12
  2. 詩篇第13篇op27
  3. モテットop29-2
  4. ドイツレクイエムop45
  5. 勝利の歌op55
  6. モテットop74-1
  7. 祭典と記念の格言op109-1
  8. 祭典と記念の格言op109-2
  9. 祭典と記念の格言op109-3
  10. モテットop110-1
  11. 4つの厳粛な歌op121-1
  12. 4つの厳粛な歌op121-2
  13. 4つの厳粛な歌op121-3
  14. 4つの厳粛な歌op121-4

わずか14作というべきか。ドイツレクイエムたった1作で18か所から引用されているということが、どれほど異例かわかるというものだ。

2018年4月19日 (木)

テキストの出所

ドイツレクイエムのテキストの出典を列挙する。

  1. 第1曲 Selig sind マタイ福音書5:4
  2. 第1曲 Die mit Tränen säen 詩篇126:5/6
  3. 第2曲 Denn alles Fleisch 第一ペテロ書簡1:24
  4. 第2曲 So seid nun geduldig ヤコブ書簡5:7 
  5. 第2曲 Aber des Herrn Wort 第一ペテロ書簡 1:25 
  6. 第2曲 Die Erlöseten des Herrn イザヤ書35:10
  7. 第3曲 Herr, lehre doch mich 詩篇39:4-7
  8. 第3曲 Der Gerechten Seelen 知恵の書3:11 
  9. 第4曲 Wie lieblich sind 詩篇84:1/2/4
  10. 第5曲 Ihr habt nun Traurigkeit ヨハネ福音書16:33
  11. 第5曲 Ich will euch trösten イザヤ書66:13
  12. 第5曲 Sehet mich an ベンシラの知恵51:35
  13. 第6曲 Denn wir haben hie ヘブライ書簡13:14
  14. 第6曲 Siehe, ich sage euch ein Geheimnis 第一コリント書簡15:51
  15. 第6曲 und dasselbige plötzlich, in einem Augenblick 第一コリント書簡15:52
  16. 第6曲 Dann wird erfüllet werden das Wort 第一コリント書簡15:54/55
  17. 第6曲 Herr, du bist würdig ヨハネ黙示録4:11
  18. 第7曲 Selig sind die Toten ヨハネ黙示録14:13

ご覧の通り、全18箇所からテキストを引っ張ってきて、自らの主張を聖書に語らせている。深い聖書への知識なしには絶対にあり得ない。何よりも何よりもその聖書はルターが独訳したものだ。ルターへの絶対の信頼に基づくと断じて間違いあるまい。

2018年4月18日 (水)

最長の空白

「ドイツレクイエム」初演100年と称して、関連記事を7日にわたって発信した。ブログ「ブラームスの辞書」渾身の企画「バロック特集」を8日間中断したということだ。

8日間バロック関連の記事が途切れることになる。この8日の空白はバロック特集期間内では最長の空白を形成する。「ドイツレクイエム初演150周年」はそれほどの重大事ということだ。

2018年4月17日 (火)

F音連打

記事「C音連打」の続き。第二交響曲にささやかなC音の連打があると書いたが、本日は「F音」だ。

ドイツレクイエムの冒頭から10小節目まで「F音」が4分音符で連打される。4分の4拍子だから合計40個の4分音符が4個ずつスラーで一まとまりにされている。レクイエム第一曲はヘ長調だから、その主音がチェロとコントラバスで連打される。ダイナミクスは「p」だから粛々と進行するので必ずしも連打というイメージではない。

ダイナミクスが「p」であることを除けば第一交響曲の冒頭と似ている。第一交響曲は主音「C」が8分音符で52個、ドイツレクイエムは4分音符40個。

  • 2018年4月16日 (月)

    レクイエムの一人歩き

    レクイエムは「Requiem」と綴られる。「鎮魂曲」の訳語があてられるほか、「死者のためのミサ曲」という言い回しも見られる。テキストはカトリックの典礼文。ラテン語によるそのテキストが「Requiem」と立ち上がる。作品の歌い出しのテキストをタイトルに流用するというよくあるパターンだ。この歌い出しの流用が定着した結果、「死者のためのミサ曲」そのものを「レクイエム」と称するに至ったらしい。

    そのようにして定着したレクイエムの語感を逆手にとり、ラテン語の典礼文ではない歌詞を持つ曲が、気分だけをよりどころに「レクイエム」と命名されるようになる。ブラームスの「ドイツレクイエム」op45がその代表例には違いないのだが、そうしたアイデアの起原はもう少々遡る。ロベルト・シューマンのスケッチ帳の中に「Deutsche Requiem」という文言があったとされ、これがブラームスにインスピレーションを与えたとしばしば指摘される。それ以外にも、シューマンの作品一覧からいくつか抜き出してみる。

    • op90-7 Requiem
    • op98b  ミニヨンのレクイエム
    • op142  Requiem

    上記のうちラテン語の典礼文がテキストになっているのはop142で、その他2つはラテン語ではないドイツ語のテキストだ。

    2018年4月14日 (土)

    冠詞

    ヨーロッパ系言語特有の品詞。英語で申せば「a」「an」「the」だ。これが不定冠詞と定冠詞に分かれることも周知の通りである。英語はシンプルだと気づくのはドイツ語の学習が始まって間もなくだ。名詞の性や格によって変化する上に、形容詞の格変化にも影響する。幸い英語同様に複数形には用いられないが、中には複数形にも付着してしまう言語もあるらしい。

    冠詞が無い日本人には厄介な概念だ。「a bed」「the bed」あるは冠詞無しの「bed」では、意味が変わってしまうことも少なくない。

    黙って以下の3つを眺めて欲しい。

    1. ドイツ語 Ein Deutsches Requiem
    2. 英語 A German requiem
    3. 日本語 ドイツレクイエム

    どれもブラームスの作品番号45を指している。そもそもどうして不定冠詞「Ein」「A」が用いられるのかが実感として理解出来ない。「Das Deutsche Requiem」ではいけない理由がイメージ出来ない。見ての通り日本語ではその手の論点は発生しない。けれども原文が「Ein Deutsche Requiem」だろうと「Das Deutsche Requiem」だろうと、その違いを日本語へ反映させようと思うと大変なことになるので結局は「ドイツレクイエム」落ち着かざるを得まい。

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      はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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