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カテゴリー「231 交響曲第1番」の68件の記事

2015年8月24日 (月)

ラスカー

ドイツの政治家。ビスマルクに対する反対勢力・国民自由党左派の領袖だ。ドイツ帝国成立後ビスマルクの政策にことごとく反対した政敵でもある。国民自由党の党首ではない。

さて、音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第3巻173ページに大変興味深い記述がある。チャールズ・スタンフォードの証言だ。彼は1876年当時、完成したばかりのブラームス第一交響曲を英国で、作曲者本人に指揮させようと画策していた。ケンブリッジ大学からの学位授与とも関連するタイミング。彼の証言は貴重だ。ブラームスはヨアヒムやクララの説得の甲斐あって、渡英する気になっていたのだ。1877年のタイムズ紙の勇み足までは、その気でいたらしい。

第一交響曲の英国初演を1877年春と定めその準備が進められていた。その最終打ち合わせがベルリンで行われたと証言する。弦楽四重奏曲第3番の演奏の後ベルリンジンクアカデミーで打ち合わせたと明記されている。おお。何を隠そうこれは同四重奏曲の初演だ。この打ち合わせの席で、スタンフォードの隣に座った話好きの愉快な男がラスカーだったと断言されている。

ブラ1の英国初演の最終打ち合わせに帝国議会有力会派の領袖が同席していたということだ。その席にブラームスがいたかどうか明記されていないが、いたと考える方が自然だ。カールスルーエでの第一交響曲の初演のわずか5日前のことなので不安だが、第一交響曲の作曲者にして英国初演の指揮者であるブラームス無しに最終打ち合わせとは考えにくい。

ビスマルクに心酔していたブラームスが、ビスマルクの政敵と同席していたかもしれない話。

おっと、今日から12番目の室内楽、弦楽四重奏曲第3番だ。

2015年8月15日 (土)

ヴィオラ最高音

日本最高峰の標高にちなんだ記事「富士山」の翌日に、満を持してヴィオラ最高音の記事。芸が細かい。

鉄道マニア向けの割と有名ななぞなぞがあった。日本の鉄道の駅でもっとも高いところにあるのはどこか?というものだ。「小海線の野辺山駅」と答えると「ブブー」である。正解は東京だという。到着する全ての列車が「上り」だからである。大宮を出た京浜東北線は、東京までは東北本線の上りで、東京から先が東海道本線の下りである。これでは面倒なので、「北行」「南行」という言い方もしている。

さてさて、ブラームスがヴィオラに与えた最高音はどこかというのが本日のお題である。

一般にブラームスはヴィオラに対してヒステリックに高音を求めないと思う。四苦八苦して音を出している時に、第2ヴァイオリンが休んでいたりすると、「何だかなぁ」という気にさせられる。「やっぱりヴィオラはC線ッス」みたいな捨てゼリフはこういうときに吐くものだ。

ハイポジション苦手の私には、いくつかの候補がすぐに嫌な思い出とともに思い浮かぶ。数住岸子先生の前で冷や汗ものだった弦楽六重奏曲第2番の第1楽章。有名なアガーテのテーマを第1ヴァイオリンとオクターブユニゾンで奏する場所がある。「A-G-A-H-E」である。このときの「H」を薬指でとっかたら第6ポジションだ。この「H」は高い方だ。この下の「B」や「A」には相当な数の実例がある。

ヴィオラソナタ第2番第1楽章7小節目に「C」が出て来る。これをブラームスにおけるヴィオラの最高音と認定したい。第一主題の提示の末尾、分散和音の到達点だ。曲の開始早々なので緊張感も相当な物で、さらに5連符であることも事態を混迷させている。あるいはヴィオラソナタ第1番第1楽章の終末も近い223小節にもこの「C」が出てくる。

しかし上記の2箇所は、ブラームス本人の編曲とは言え、あくまでもクラリネットソナタの話であった。真正のヴィオラの出番とは言い難い。正真正銘のヴィオラの出番となると、もう一つピアノ四重奏曲第3番第2楽章の終末も近い218小節目に出現する。H音のトリルの場面だ。トリルの上の音が間違いなくCになっているし、4小節後の222小節目には満を持してCが現れる。

ちなみに最低音は何だろう。C線の開放によって鳴らされる「C」に決まっている。決まってはいるのだが、記譜上の最低音となると「His」があるのだ。第1交響曲第2楽章39小節目、54~56小節目に出現する。五線の下に追加される2本目の仮線に下接する音符に「シャープ」が付与されている。どのみちC線が開放で鳴らされるのだが、気分の問題としてこれを最低音と認定したい。

2015年8月 3日 (月)

ハ調の刻印

ベートーヴェンの器楽作品を眺めてみる。

32曲残したピアノソナタ、16曲書いた弦楽四重奏、そして9曲ある交響曲。この3つを創作の柱と位置づけても、お叱りが殺到することはあるまい。後世の作曲家たちの規範となり今日に至っている。ハイドン、モーツアルト、ベートーヴェンを列挙して語られることの多い「ウィーン古典派」の到達点を示す作品群だ。

後に続くロマン派の作曲家たちは、これら偉大な到達点から出発し、ある者は継承しある者は解体し、ある者は迂回した。

ブラームスも書いた。ピアノソナタを3曲、弦楽四重奏を3曲、交響曲を4曲だ。

<ピアノソナタ>

  1. ハ長調op1
  2. 嬰ヘ短調op2
  3. ヘ短調op5

<弦楽四重奏>

  1. ハ短調op51-1
  2. イ短調op51-2
  3. 変ロ長調op67

<交響曲>

  1. ハ短調op68
  2. ニ長調op73
  3. ヘ長調op90
  4. ホ短調op98

また、しょうもないことを考えている。ベートーヴェンのホームグランドとも言えるこれらのジャンルの1番を見て欲しい。全部ハ調になっている。ベートーヴェンへの敬意か、はたまた偶然か。

2015年7月11日 (土)

最長の半音進行

インテルメッツォホ長調op116-6に4回連続の半音進行が現れる。

作品冒頭の「H→His→Cis→Cisis→Dis」だ。半音進行の魅力ある配置が持ち味のブラームスにあっても作品冒頭4回連続で5音にまたがる半音進行は異例である。

ところが作品の冒頭でなければ上には上がある。第一交響曲第3楽章の98小節目から101小節目にかけてのコントラバスだ。「Dis→E→Eis→Fis→Fisis→Gis」である。同楽章がクライマックスに駆け上る過程の中に現われる。実はここはコントラバス弾き垂涎の見せ場である。上行する半音進行としてはこの5連続6音が最長だと思われる。

下降する半音進行になるとさらに上を行く例がある。弦楽六重奏曲第2番第3楽章の15小節目から16小節目にかけてのヴァイオリンとヴィオラがオクターブユニゾンで6連続7音にまたがる半音進行がある。「A→Gis→G→Fis→F→E→Dis」である。この周辺はもやがかかったような半音進行の連続で、13小節目から14小節目にかけても、5連続6音の半音下降が観察できる。

おそらく下降の半音進行としては6連続7音、上行としては5連続6音が最長である。

ところが、「連続する」という定義に縛られずに考えるともっと長いケースがある。

カプリチオロ短調op76-2の冒頭の左手だ。4分の2拍子の拍頭の音だけ、つまり後打ちを無視するといい。

「H-Ais-A-Gis-G-Fis-F-E」という7連続8音の下降する半音進行が浮かび上がる。

2015年7月 8日 (水)

mf と poco f

ブラームスのダイナミクス用語はなかなか一筋縄ではゆかない。

小学校以来おなじみの「mf」(メゾフォルテ)や「mp」(メゾピアノ)にも厄介な問題が横たわっている。「mf」については2006年2月22日の記事「いわゆるmf問題」で取り上げた。

「mf」はブラームス作品中に約600箇所用いられているが、同じく300箇所少々用いられている「poco f」との間に避け難い難問が存在する。ダイナミクスとしての「mf」と「poco f」はどちらが強いのかがそれである。「やや強く」「少し強く」という日本語訳にしても決定打にはなり得ない。著書「ブラームスの辞書」では、この問題にいくつかのヒントを提示するにとどまっている。

たとえば弦楽六重奏曲第2番第1楽章だ。468小節目の第一ヴィオラによる第2主題の提示である。この部分ヴィオラには「mf espressivo」だ。周囲のパートは「p」である。驚いたことにこの第一ヴィオラを引き継ぐ第一ヴァイオリンでは「poco f espressivo」に差し替えられる同時に、周囲のパートのダイナミクスが「mf」に格上げされている。ダイナミクス「poco f」が「mf」より強い証拠になる可能性がある。

上記は「mf」と「poco f」が連続して出現するケースだ。こうしたケースは数は少ないながらもいくつか観察出来る一方、ブラームスは「mf」と「poco f」を同時に用いることはほとんどない。このこと自体が多くの示唆を含んでいると感じる。ほとんどと申したのには訳がある。たった一箇所、「mf」と「poco f」が同時に出現する場所がある。

第一交響曲第3楽章の54小節目アウフタクトだ。オーボエに「poco f」が置かれるその同じ場所でチェロとコントラバスに「mf」が現われる。どちらもこの2小節後に始まるクレッシェンドによって「f」に到達する。さらに79小節目に至っては「mp」と「mf」の並存が実現しているなどこの楽章はダイナミクス面の難題を多く抱えている。

「f」と「p」の内側に微妙な陰影を設定するのはブラームス節の根幹の一つである。ブラームス好きたるものこれを疎んじてはなるまい。

2014年6月20日 (金)

4番の位置

交響曲1つ1つに独立したカテゴリーを付与した結果、それら各曲の言及回数が図らずもランキング化されることになった。本日現在の本数を以下に列挙する。

この結果は、ブログ開設以来無意識に積み上げたものだ。1番への集中は、のだめネタも貢献している。無意識だっただけに、これらの数値には意味がある。本日以降、この数値が刷り込まれてしまうため、必ずしも公正とは言えなくなる。

案の定次女がブラ4に挑戦すると知っただけでテンションが上がってしまい、鉄道特集を4日も中断してしまった。この先次女のブラ4ネタが膨れ上がると、鉄道特集のエンディングが年末にずれ込む可能性が出てきた。嬉しい悲鳴。

2014年6月19日 (木)

プレゼント返し

昨日言及した第3次カテゴリー改訂の目玉は「交響曲独立カテゴリー体制」の導入だ。

既存のカテゴリー「205 交響曲」にはブラームスの4つの交響曲が雑多に放り込まれていた。2033年までの継続を考えるとそれを放置するのはしのび難い。さらにそこには、ブラームス以外の作曲家の交響曲を話題にした記事も混入している。だからそれを整理したと書いた。

しかしそれだけでは必ずしも正直ではない。

次女が大学オケデビューでブラームスの第4交響曲にチャレンジすることが決まったことが大きなモチベーションになった。過去の記事をあたって、それらに交響曲各々のカテゴリーを再付与するのは、簡単ではない。一通り読まねばならないから時間がかかる。必要性を感じながらも、手が出せずにいた。

このたび次女のブラ4挑戦は、またとない機会だ。4番関連記事だけを抜き出すことも考えたが、テンションが上がっているうちに全4曲で実施することにした。

初めてブラームスの4番に挑戦する次女へのプレゼント。既に今日までに第4交響曲に関連する記事は40本を超えていた。それらを一括して閲覧することが可能になった。父の日のお返し。

次女のブラ4にブラームスのご加護を。

2011年9月13日 (火)

アルプホルンのファ

ドイツ民謡を調べていて興味深い情報をキャッチした。アルプス民謡に特異な音階は、第4音が半音高められているらしい。「C」を基準として4番目の音だ。通常のハ長調だと「F」なのだが、これにシャープが付与される。半音高められたこの「ファ」が、「アルペンホルンのファ」と呼ばれているという。アルプス地方の民族楽器アルペンホルンはバルブも指穴も無いから、出せるのは倍音だけだ。「C」を基準とすると下記の通りになる。

  •  2倍音 C
  •  3倍音 G
  •  4倍音 C
  •  5倍音 E
  •  6倍音 G
  •  7倍音 B
  •  8倍音 C
  •  9倍音 D
  • 10倍音 E
  • 11倍音 Fis
  • 12倍音 G
  • 13倍音 A
  • 14倍音 B
  • 15倍音 H
  • 16倍音 C

もちろん平均律との誤差は大なり小なり含まれるが、見ての通りここまでの倍音列に「F」音が出現しないことをもって、「アルプス音階」が説明されている。「C」から始めて「F」を「Fis」に置き換えた音階だ。あるいは「F」から白鍵だけをたどってオクターブ昇るとも言える。そうなるとそれは教会旋法のリディア調と一致してしまう。

ブラームスの第1交響曲第4楽章。歓喜の歌を導く「Piu Andante」は、クララ・シューマンの誕生日に贈ったアルプスの歌がズバリ引用される。30小節目のホルンだ。何の予備知識無しに聴いても、それとなくアルプスっぽい旋律だが、その5小節目の4拍目に「Fis」音が出現する。その場所チェロとコントラバスが深々と「C」を引き延ばしているから、何となく本日話題の「アルペンホルンのファ」のような気がしている。 

そしてそして、今日がクララの誕生日であるという毎度毎度の小細工。

2011年4月26日 (火)

マーラーの交響曲第3番

グスタフ・マーラーの交響曲第3番ニ短調は1902年ドイツ・クレーフェルトにて初演された。今から108年前である。この年の3月にアルマと結婚したばかりだ。

この作品演奏に約100分を必要とする。マーラーの交響曲で最長となっている。そして第1楽章冒頭の主題はブラームス第1交響曲の第4楽章、いわゆる「歓喜の主題」に似ている。そのブラームスは、初演後 ベートーヴェンの第九交響曲との類似を散々指摘されてきたが、マーラーにおいてはさほど執拗でないと感じる。

ブラームスの場合ベートーヴェンとの類似には意味がある感じだが、マーラーは単なる借用という雰囲気が感じられる。ブラームスとはかなり隔たった巨大な編成で、演奏時間もブラームスの交響曲2曲分だ。つまり最初から距離があるから似ていても聞き流されるのかもしれない。

2011年1月19日 (水)

ライプイヒ初演

1877年1月18日交響曲第1番のライプチヒ初演があった。

クララ・シューマンがブラームスの第1交響曲を初めて聴いたのがこのときだとされている。草稿の段階では目を通していたし、ピアノ連弾版の試演も経験済みだったに違いないが、現実にフルオーケストラで鳴るのを初めて聴いたとされている。1868年の「ドイツレクイエム」初演に続いて、またしてもロベルトの予言が現実になったと感じたに違いない。

終楽章、歓喜の主題を導く「Piu Andante」は、まさにクララの誕生日に贈られた旋律だ。クララがそこに込められたメッセージを感じ取れないとは考えにくい。

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