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カテゴリー「248 弦楽六重奏曲第1番」の15件の記事

2016年2月 8日 (月)

室内楽の中の変奏曲

変奏の大家ブラームスだから、室内楽作品の中にもその痕跡が色濃く宿る。作品中で変奏の技法を駆使するケースは、もはやカウント不能だ。室内楽の単一楽章が変奏曲になっているケースを以下に列挙する。

  1. 弦楽六重奏曲第1番op18第二楽章ニ短調
  2. 弦楽六重奏曲第2番op36第三楽章ホ短調
  3. 弦楽四重奏曲第3番op67第四楽章変ロ長調
  4. ピアノ三重奏曲第2番op87第二楽章イ短調
  5. 弦楽五重奏曲第2番op111第二楽章ニ短調
  6. クラリネット五重奏曲op115第四楽章ロ短調
  7. クラリネットソナタ第2番op120-2第三楽章変ホ長調

見ての通り全部で7曲だ。第一楽章には存在しない。第二楽章に3回、第三楽章に2回、第四楽章に2回となる。ただし、クラリネットソナタ第2番は第三楽章でありながらフィナーレである。だからフィナーレは3回。

二重奏から六重奏まで、もれなく分布する。

第4楽章に変奏曲をおくケース2件、どちらもその最終変奏で第一楽章冒頭主題が回帰するという共通点がある。クラリネット五重奏のフィナーレに変奏曲を置くのは、モーツアルトのクラリネット五重奏曲を踏まえているかもと妄想が膨らむ。

第二第三楽章に来る5例は緩徐楽章だ。このうちクラリネットソナタは、緩徐楽章として立ち上がりながらも、変奏の終末でアレグロに転じ、これが終楽章を兼ねているという、凝りまくった構造になっている。

ブラームスが弦楽五重奏で作曲の筆を折ろうとしていた話は、まことしやかに取りざたされる。もし、クラリネット奏者ミュールフェルトとの出会いがなかったら云々である。もしそうなっていたら、弦楽五重奏2番の変奏曲は、最初の変奏曲との共通点をもっと注目されていただろう。両者は表裏の存在だ。

史上最高の室内楽作曲家にして、史上最高の変奏の大家。その有力な証拠がこの7曲だ。

2015年6月 5日 (金)

下心六重奏団

1981年8月大学4年で最後のオケ夏合宿に臨んだ私は、恒例の室内楽演奏会でブラームスの弦楽六重奏曲第1番第一楽章をメンバーの1員として披露した。周知のとおり、この六重奏曲はヴァイオリン、ヴィオラ、チェロが2本ずつで、6名の弦楽器奏者を必要とする。当日のメンバーは男子3名、女子3名というものだ。各々の楽器のセカンドが全部女子だった。

  • 2ndヴァイオリン H嬢 教育学部2年 
  • 2ndヴィオラ D嬢 薬学部3年 ホントは1stの私より相当うまい。
  • 2ndチェロ A嬢 園芸学部1年

という具合。男子は以下の通り。

  • 1stVn Nord氏 医学部4年
  • 1stVa 私 人文学部4年
  • 1stVc Koza氏 人文学部3年 ドヴォコンのソロいけるくらい。

男子は、私を除いて名人。チェロのトップとコンマスだ。とはいえ私だって6月の定期演奏会でトップを降りたばかりだからまだまだ行けた。だからひとまず様にはなった。

まあしかし、目的は演奏の披露よりも練習と、その後のお茶みたいなアンサンブルだった。誰がつけたか「下心六重奏団」とは秀逸なネーミングだ。亡き妻はこの中にはおらず、聴衆として演奏を聴いていた。そればかりかこの中からカップルは発生していない。イメージよりはずっとピュアだった。

青春の六重奏曲。

2015年6月 4日 (木)

粒より

本来ワイン製造に関する用語。完熟した葡萄を1つ1つ丁寧に摘み取って得られる果実からとられた果汁を原料にして作られるワインのこと。アウスレーゼの訳語と思われる。丸々と熟した甘~い葡萄を思い浮かべる。同じ房についていても、選ばれる粒と選ばれない粒があるので、「粒より」と呼ばれるのだと思い込んでいる。基準を満たした房を丸ごとよりは、質の高いワインになるのだという。

「粒より」という言葉を聞いて思い出すシーンがある。弦楽六重奏曲第1番第4楽章の終末も近い468小節目だ。次第に推進力とダイナミクスを落としてきた音楽が、ゴールに向かって息を吹き返すところだ。「Animato,poco a poco piu」を合図に第一ヴィオラが奏するアルペジオがある。ここから12小節の間演奏を引っ張る役目は明らかだ。ヴィオラ弾きとしては気持ちのいい見せ場だが、この「p leggiero」にスタッカートが伴ったアルペジオが、まさに「粒より」な感じなのだ。ダイナミクスこそ「p」なのだが一つ一つの音の粒をハッキリクッキリと聞かせねばならない。そうしたニュアンスに「粒より」という言葉がピッタリだと感じている。

プチプチの粒より感が出せれば合格である。

2015年6月 3日 (水)

装飾音符

「小さい音符」などと申しては総攻撃の対象になりかねない。とは言え、正確な定義など私の手には余る。ターン、前打音、トリルなどなどかなりの種類がある上に、それぞれ弾き方が決められている。バッハに至っては15~30種類が書き分けられているらしい。

小学校時代、4分の4拍子の説明として「1小節に4分音符が4つ分入る」と教えられた。1つの小節に入る音符の数で拍子が定義されていたのだ。ところが、本日のお題「装飾音符」は、その場合のカウントには算入されないのだ。だから装飾音符が付与されると、厳密にはどこかの音符の長さが縮められていることになる。

たとえば弦楽六重奏曲第1番の第2楽章は、装飾音符の巣だ。第1主題の魅力は装飾音符なしには語れまい。特に私のようなヴィオラ弾きはそう感じているハズだ。この装飾音符は、気持ちの高まりを表現していると感じる。試しに装飾音符を無視して弾いてみるといい。私の申し上げたいことが判ると思う。ところが、同じヴィオラの見せ場でも弦楽五重奏曲第2番第2楽章の2小節目は、キッチリと5連符で表示されている。

まだある。クラリネット五重奏曲第2楽章の中間部は、クラリネットがソリスティックに動く見せ場だ。ゆったりとしたテンポの中、クラリネットが細かい音符をちりばめるラプソディックな曲想だ。意外なことにここには装飾音符が現われない。正規の拍をキッチリと割ることが求められている。5連符、6連符、9連符、10連符、11連符の見本市の様相を呈している。中間部が間もなく終わるという75小節目と77小節目になってやっと装飾音符が現われるに過ぎない。

何故そこで装飾音符なのかは、高度の芸術的判断なのだと思う。私の出る幕ではない。

2015年6月 2日 (火)

急ブレーキ

運転手が急ブレーキをかけると、中に乗っている人の身体は前方に投げ出される。速度によって程度は様々だが、何人たりと言えども慣性の法則から免れることは出来ない。シートベルトはそのためにあると申してよい。

音楽でそれを感じることが出来る数少ない場所が弦楽六重奏曲第1番の中にある。第1楽章189小節目だ。展開部も中盤182小節目に、全楽器渾身の「ff」に到達する。第1楽章始まって初めての「ff」だ。ヴィオラの16分音符はチェロと協力して第1主題の変形を奏でている。ヴァイオリンは変則的な3連符の半音進行で切迫感を煽る。187小節目で当面の目的地ハ長調に達する。

  1. ヴァイオリン 3連符
  2. ヴィオラ 16分音符
  3. チェロ 8分音符

という役割分担でハ長調の和音が「ff」で5拍間固定される。ヴィオラは1番2番とも重音とされて、推進のエネルギーは最大値に達する。どうなることかと思った瞬間の189小節目、ヴァイオリンとチェロが小節頭に楔を打ち込むと同時に、ヴィオラが3連符にすり替わる。このとき身体が前に投げ出される錯覚に陥るのだ。

続く190小節目には8音符にたどり着いて急激にダイナミクスが減じられる。実際にはテンポが減じられる訳ではないが、推進力の減衰が遺憾なく表現される。ヴィオラ奏者2人は一致協力して192小節目までの3小節間でヴァイオリンの泣きを準備するのだ。推進力の減衰とともに和音の微妙な色合いをも変化させねばならない。

実はこの場所ヴィオラ弾きにとって第1楽章屈指の見せ場である。

2015年6月 1日 (月)

麻雀のBGM

学生時代にはよく麻雀をした。

練習の後に、たまに酒を飲むか麻雀をするかという流れになった。6対4でお酒が多かったかもしれない。お酒を飲むのは安い居酒屋か誰かの下宿のどちらかだったが、麻雀は誰かの下宿だった。場所代がもったいないからだ。

練習後食事を早々に切り上げて麻雀だ。コンビニでカップ麺やジュースを買い込んで会場となる下宿になだれこむ。会場となる下宿はどこでもという訳にはいかない。麻雀の音は非常にクレームに繋がり易いからだ。いきおいいつも同じ下宿ということになる。

やるとなったらメンバー集めは練習中に始まる。麻雀をやるなどと大っぴらに相談出来ないから、仲間内では、麻雀のことをカルテットと言っていた。それでも5人や6人集めるのは容易だった。降り番の2人はカップ麺を入れたりジュースを注いだりの係だ。時には8人で2卓を囲むこともあった。こういうときは「オクテット」と称したものだ。20時から始めるときには「8時チューニング」などと言い合っていた。始める前のあのかき混ぜも「チューニング」と称していた。クレームの原因の一つがこのチューニングであることは間違いないのだが、プレーヤーの発する奇声の方が深刻だった。上がれば上がったでうるさいし、降りれば降りたで大騒ぎ。当たろうものなら半狂乱だ。

サイレンサー代わりに音楽を流した。さすがにオーケストラだけあってみんなクラシックだ。下宿の主の好みが色濃く反映していた。モーツアルトが一番人気だ。次回の定期演奏会の曲目を流すこともしばしばだった。

腕前はみな似たりよったりだ。楽器のテクニックと麻雀の腕前の間の相関関係は薄いとだけ申し上げておこう。

興が乗れば徹夜は当然だった。明け方までは意外と平気なものだ。明るくなってから授業の1コマ目までの過ごし方が懸案だった。明るくなってから寝てしまった挙げ句に起きられずに欠席という悲劇が後を絶たなかった。明け方はみんなトイトイしか狙わなくなるので純粋な運試しになった。

大学入学後、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番をはじめて聴いたのは実はマージャンのBGMとしてであった。

2011年4月 9日 (土)

春の六重奏曲

音楽史上の位置付けこそ論争の当事者ということになっているが、ブラームスのワーグナーへの思いは単純ではない。不快感を表明することだってあるにはあったが、勢いでワーグナーを支持する輩よりは数段冷静だった。おずおずと距離をとったかと思うと、並々ならぬ関心を示したりもする。ワーグナーのブラームス観がほぼ一定なことと対照的だ。

グスタフ・マーラーとブラームスの関係もこれと似ている。ブラームスのマーラー観はほぼ一定だ。作曲家としての評価はよくて保留といったところだが、指揮者解釈者としての評価は相当高い。

難儀なのはマーラーのブラームス観だ。どうも分裂気味だ。今日と明日では自分同士で意見が分かれている感じがする。時にはかなり頻繁に辛らつな言葉が並ぶ。言葉だけはどぎついが、私のブラームスラブは微動だにしない。揺らぐ心配があるとすれば言葉を発したマーラー自身の品格だ。プライヴェートな書簡の中だからという気の緩みもあるのだろう。

その一方で、ブラームスへの称賛の言葉も時々吐いている。

「もし僕が魅力的な変ロ長調六重奏曲に出会わなかったら、ブラームスに絶望してしまうところだった」と他でもない妻アルマに宛てた手紙の中で述べている。

弦楽六重奏曲第1番変ロ長調op18。人呼んで「春の六重奏曲」。

2008年2月 4日 (月)

ニ短調の緩徐楽章

誰にでもあるのかどうかはわからないが、私はたまにある。特にブラームスに関してだ。根拠を言葉で説明出来ないのに、ある考えが頭から離れないというケースのことだ。本日の話題はその手である。

多楽章の器楽曲においてブラームスは大抵緩徐楽章を置く。室内楽24曲、交響曲協奏曲8曲、ピアノソナタ3曲の計35曲のうち、緩徐楽章が無いのはチェロソナタ第1番くらいだ。全34個の緩徐楽章のうちニ短調になっているケースが2回ある。弦楽六重奏曲第1番作品18と弦楽五重奏曲第2番作品111だ。前者は1860年出版、後者は1890年だ。きっかり30年を隔てる両者は、弦楽器だけの室内楽の第一作と最終作になっている。この両者はニ短調であること以外にも何だか共通点が多い。

  1. 第二楽章に置かれている。
  2. 変奏曲になっている。
  3. ヴィオラが旋律を受け持って立ち上がる。
  4. 曲の末尾で冒頭の主題がほぼ原型のまま回想される。
  5. 4分の2拍子である。

他にもある。前者はリピート記号だらけなのであくまでも参考だが、作品18が159小節で作品111が80小節と倍の開きがある一方、後者は前者の倍のテンポになっている。

弦楽六重奏曲第1番の第2楽章。このほとばしるニ短調にどれほど胸を熱くしたことだろう。ベートーヴェンからブラームスへの嗜好の転換を決定づけた交響曲が第2交響曲だとすれば、室内楽ではこの六重奏曲とりわけ第2楽章だと申していい。室内楽といえばベートーヴェンの弦楽四重奏ばかり聴いていた若造の心を真正面からえぐったような感じだ。恋の相談をしたらベ-ト-ヴェンよりも聞いてくれそうなのがブラームスと感じたのだ。この第2楽章は回答の代わりの身の上話を聴いている感じだ。

さて何だかベートーヴェンのラズモフスキー1番の緩徐楽章にも似ている作品111の緩徐楽章は、作品18の変奏曲の解答なのではないだろうか。根拠レスながらこれが頭にこびりついて離れない。作品18の変奏曲がピアノ独奏に編曲してクララ・シューマンに捧げられたのだから、当然作品111の方もクララへの告白でなければならぬ。類似点がかなりありながら、いささか肩に力の入った前者に比べ後者はすっきりと力みがない。水が低いところに流れ下るように必然性だけで音楽が進行しているかのようだ。肩の力を抜くというのはこういうことなんだという好例である。

さて作品111の五重奏曲を書き終えてブラームスが創作意欲を失った話は、どんな伝記にも大抵載っている。創作意欲を失ったのではなく、クララへの解答を為し終えた安堵感だったなどというオチもひょっとするとひょっとするかもしれないと感じている。

根拠の無い直感である。根拠は無いが、愛情だけはあるつもりである。

2007年8月27日 (月)

弦楽六重奏という響き

1873年に弦楽四重奏曲第1番が出版される前に約20曲もの弦楽四重奏曲が書かれては破棄されていたことはよく知られている。室内楽が書かれなかった訳ではない。1854年のピアノ三重奏曲第1番を筆頭にピアノ四重奏曲2つ、ピアノ五重奏曲、ホルン三重奏曲、チェロソナタ各1曲、そして弦楽六重奏曲2曲が発表されていた。

弦楽四重奏曲は、ベートーヴェンの創作の3本柱の一角を形成している。どうやらブラームスはベートーヴェンのホームグランドの弦楽四重奏曲を特に意識していたと思われる。弦楽器だけのアンサンブルが六重奏曲として初めて世に出たのは1862年のことだ。弦楽四重奏曲の形態を避けていることが既に意識をしていることの裏返しである。2つの六重奏曲の各楽章冒頭で演奏に参加する楽器をリスト化してみた。

<六重奏曲第1番>

  • 第1楽章 1stヴィオラ1stチェロ2ndチェロ
  • 第2楽章 1stヴィオラ、2ndヴィオラ1stチェロ2ndチェロ
  • 第3楽章 1stヴァイオリン2ndヴァイオリン1stチェロ2ndチェロ
  • 第4楽章 2ndヴィオラ1stチェロ2ndチェロ

<六重奏曲第2番>

  • 第1楽章 1stヴィオラ
  • 第2楽章 1stヴァイオリン2ndヴァイオリン1stヴィオラ、2ndヴィオラ
  • 第3楽章 1stヴァイオリン2ndヴァイオリン1stヴィオラ
  • 第4楽章 1stヴァイオリン2ndヴァイオリン1stヴィオラ

全部の楽器が参加する楽章は1つも無い。せっかく6本の弦楽器を起用して音の厚みを追求しながら、どの楽章も冒頭では総動員を避けている。5本が参加しているケースもない。1番では全部の楽章において2本のチェロが参加して立ち上がっている。つまり弦楽四重奏曲では絶対に再現不可能な響きが実現していることに他ならない。実のところ第1楽章5小節目でF音が出現するまで、チェロの奏する旋律をヴァイオリンが演奏することは可能だ。しかしそれは音域的に可能だというだけである。チェロの高音域とヴァイオリンのG線では響きとしては全くの別物である。

翻って2番では楽章の冒頭でチェロが徹底して省かれている。この対比振りは鮮やかだ。こちらの方はヴィオラ2本を要する第2楽章を除いては弦楽四重奏でも表現可能な響きだ。低音担当のチェロを省くことで、さめざめとした響きが実現しているように思う。と同時に、ここにチェロが満を持して加わる瞬間の腹に逸物座るかのような感触がブラームスの狙いであるとも思えてくる。現代においてマーケティングと呼ばれている手法に通ずるところがある。

2つの弦楽六重奏の響きにこうしたキャラクターを設定していたと推定される。弦楽器だけの室内楽を四重奏曲に先駆けて発表する以上、その響きが弦楽四重奏と差別化されねばならぬというブラームスの明確な意図を感じる。つまりそれはベートーヴェンとの差別化に相違あるまい。「四重奏曲とは響きが違うンですよ」というブラームスの名刺代わりのお伺いが透けて見える。

とりわけ弦楽器だけによる最初の室内楽でもある1番は面白い。六重奏曲である以上、全部の楽器が参加してしまったら、四重奏曲で表現不能になるのは当たり前だ。ところがブラームスは、冒頭で演奏に参加する楽器を4つ以内に抑えるという制約を自らに課した上で、やはり四重奏曲で再現不可能な響きで全楽章を立ち上げたのだ。

ついでに五重奏曲で同じ事を調べた。

<五重奏曲第1番>

  • 第1楽章 1stヴァイオリン1stヴィオラ、2ndヴィオラチェロ
  • 第2楽章 全楽器
  • 第3楽章 全楽器

<五重奏曲第2番>

  • 第1番 全楽器
  • 第2番 1stヴィオラ、2ndヴィオラチェロ
  • 第3番 全楽器
  • 第4番 1stヴィオラ、2ndヴィオラチェロ

見ての通り、五重奏曲の方は全楽器動員が多い。もっと重要なのは、どの楽章も弦楽四重奏曲では表現不可能だ。6本使用の六重奏曲よりかえって響きが厚い印象だ。五重奏曲の発表はブラームスが作曲家としての地位を確立した後だ。ベートーヴェンに配慮する必要は無くなっていたと解される。それがかえって六重奏曲における工夫ぶりを際だつものにしている。

話は少し変わる。五重奏曲と六重奏曲の計4曲を見渡すとヴィオラ以下の低音側の優勢が伺える。楽章冒頭だけの分析とはいえ、我々が演奏や鑑賞を通して得られる実感を裏付けている。

2007年5月31日 (木)

4度跳躍

旋律の立ち上がりで4度の上行を伴う現象。思うにブラームス節の根幹の一つ。残念ながら著書「ブラームスの辞書」でもこのパターンを網羅列挙するには至っていないが、ブラームスの作品に親しむ人たちは、ウスウス気付いていると思われる。他の作曲家の作品における用いられ方を分析していないので、ブラームスの特質だとの断言は危険である。

真っ先に思いつくのは第1交響曲のフィナーレ。古来ベートーベンの歓喜の歌との類似が指摘されているあの旋律だ。ベートーベンとの類似ばかりが指摘されるだけで、人間の耳が何故にていると感じるかの掘り下げが甘い気もする。いきなりの4度跳躍は、いかにもブラームスっぽい。

弦楽六重奏曲第1番第2楽章冒頭、ピアノ四重奏曲第1番第3楽章冒頭、ピアノ協奏曲第1番第1楽章199小節目のホルンなど皆この系譜である。実はよく分析すると2つのパターンに分類できる。4度跳躍の間に小節線を跨ぐパターンとそうでないパターンだ。前者はつまりアウフタクト型である。第1交響曲のパターンを含め、先に列挙した3つは皆アウフタクト型だ。小節の頭、強拍上のトニカを強調することでガッシリと地に足の付いた安定感が指向されている。

アウフタクト型と非アウフタクト型には多分優劣などない。非アウフタクト型にもおいしい実例がある。ピアノ協奏曲第1番第1楽章第3主題385小節目「Poco piu Moderato」、歌曲「五月の夜」op43-2冒頭などがすぐに思い浮かぶ。アウフタクト型に比べて柔らかい印象。確信的というより幻想的である。

旋律の立ち上がりではないが、面白いケースがある。歌曲「野のさびしさ」op86-2の10小節目にG→Cという非アウフタクト型が存在する。この箇所の2コーラス目では、G→Cの4度跳躍の再現を予測する聴き手の思いこみを裏切ってG→Asという半音上昇にすり替えられる。27小節目の出来事だ。ブラームス節の根幹4度跳躍をおとりに使って、まんまと聴き手の裏をかく。このトラップをきっかけとした1小節の進行は、まさに「野のさびしさ」の白眉となっている。4月12日の記事「究極の6度」を準備する動きだと位置づけられる。

http://brahmsop123.air-nifty.com/sonata/2007/04/post_66c9.html

昨日の祝賀気分を打ち払うガチンコネタのつもりである。

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フォト

ブラームスの辞書写真集

  • Img_0012
    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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