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カテゴリー「250 ピアノ五重奏曲」の44件の記事

2019年4月 6日 (土)

やはり「ふくだもな」

命日のコンサートの余韻。避けて通れぬ話題に言及しておく。ふくだもな五重奏団 のことだ。

あの日、ピアノ五重奏曲を聞き終えて思ったのはやはり6年前の次女たちの演奏。高2の次女が高校オケのトップ奏者たちと組んでアンサンブルコンクールに挑んだ第三楽章 の記憶。実は命日のコンサートは、あのコンクール 以来のピアノ五重奏の生演奏だった。女子5人組ながらほぼ日本最高のメンバーが同じ作品を目の前で弾いてくれる幸運を喜んだ。第三楽章では次女が弾いたセカンドの小川先生にばかり目が行った。きっちりと第一ヴァイオリンに寄り添っていればいいわけでもない微妙な難しさ満載。達者なピアニストが、弾け過ぎて弦が劣勢だった演奏には小山先生の魔法が必要だった。

演奏後に私が吐いた溜息の深さだけは次女たちの演奏のときとと同じだった。

オケフェス後、たった10日で挑んだ迫真の暗譜演奏に親ばか補正がかかって脳内殿堂入りの演奏だったはずが、「ここまでおいで」とダメ出しされた感じ。そこで示された作品の奥行きにただ舌を巻いた。

親ばか上等ではないか。コンクールにあの五重奏からスケルツォを選ぶという志の高さをやはりほめてやりたい。今になって泣ける。

 

2019年4月 5日 (金)

わざとか

一昨日、ということはつまり4月3日、ブラームスの命日に演奏会に出かけた。東京文化会館小ホール。川本嘉子先生のコンサート。ブラームスの室内楽チクルスの6回目。プログラムは下記の通り。

  1. ピアノ三重奏曲第1番ロ長調op8(ヴィオラ版)
  2. FAEソナタ(ヴィオラ版)
  3. ピアノ五重奏曲ヘ短調op34

ほんとにブラームスお好きなんだなあ思うばかり。上記1も2も通常ヴァイオリンのパートをヴィオラで弾いてしまうという趣向。特に1は我が家にこの編成のCDがない。上記2だってたった1種類しかない。ピアノは小山実雅恵先生をお迎えしているばかりか、ヴァイオリンには先般ニ短調のソナタを聞かせてくれた竹澤先生だ。竹澤先生をお呼びしながら出番は五重奏にしかないという贅沢三昧だ。全部大好きな曲、そしてこのメンツならばと奮発したS席のお値段が5700円なのは、ブラームスの誕生日5月7日に因んでいると思う。わざとに違いない。。

さてさて、つくづく興味深いトリオは、意外なほどあっけなく始まった。この日の小山先生のピアノには終始「聞こえているのに邪魔じゃない」という魔法がかけられていた。ほどなくかぶってくるチェロも、ヴァイオリンから差し替えられたヴィオラも、拍子抜けするほど自然だった。ヴァイオリン版と見分けがつかぬ。川本節の炸裂は第二楽章スケルツォの中間部を待たねばならなかった。予想通りの場所でほほえましかった。

FAEソナタは、もはや「自家薬籠中」の域だ。意図された解放弦の響きがとてもチャーミングだ。やはり聞かせどころはここでも中間部。4分の2拍子に転じるフレーズがピタリとはまる。コーダで回想されるときのために塗り残しておく余裕が感じられた。

休憩後、クインテット。

弦楽器4名の椅子がやけに固めて置いてある感じ。「本当は私がFAE弾きたかった」オーラが見え隠れする竹澤先生。第一ヴァイオリンに譲ると見せて、ところどころ見せ場をちりばめるブラームスのご配慮に川本先生がさりげなく応じる。最初の川本節炸裂は第二楽章に第二主題だったと記憶する。ああそしてスケルツォ。チェロのピチカートのとき、竹澤先生と川本先生が身をかがめんばかりにしている。クレッシェンドとともに段々背筋が伸びていく様は、花開く瞬間のよう。このヴィジュアルやはり生で聴くに限るなとつくづく。そしてフィナーレ。ずっとアンサンブルを引っ張てきたチェロ向山先生が、またまた精緻な序奏を先導する。本当はチェロのための曲なんだよと。コーダに入ったところで「もう終わりか」と思った。

素晴らしい夜。バロック特集が1年3か月経過し、バロック漬けになった脳みそに「やっぱブラームスでしょ」とばかりにしみ込んできた。

 

2015年6月29日 (月)

弦楽五重奏曲ヘ短調

ピアノ五重奏曲ヘ短調op34は、成立の過程が複雑である。現在流布する形に落ち着く前に、弦楽四重奏+チェロの形だったことは大抵の解説書に書いてある。我が家にはその原型の編成で演奏されたCDがある。

もちろんブラームス自身による楽譜は現存しないから、ピアノ五重奏曲ヘ短調op34aや2台のピアノのためのソナタヘ短調op34bを元に後世の研究家が復元を試みたものだ。

アルバムのタイトルは「Brahms Rediscover」となっていて、真贋論争があるイ長調のピアノ三重奏曲とカップリングされている。日本語での説明はない。演奏者の紹介が五重奏と三重奏で入れ違っているという笑えないミスプリントがある。その周辺の怪しさも売りの一つなのかもしれない。

ピアノ五重奏曲に挑んでいたころ、帰宅途中の車内で次女にいきなり聴かせた。「何か違う。柔らかい感じ」というのが次女の第一声。23小節目からのフォルテシモがやけにまったりだと申している。「よ~く聴いてごらん」「何か違うから」と私。しばらくしてから「ひょっとしてピアノ抜けてる?」と次女が恐る恐る訊いてきた。それが正解だと話して事情を説明した。ピアノ2台のop34bはすぐに弦が無いよねと判るのに、ピアノが抜けているのには気づきにくかった。「ピアノが入ると響きの輪郭がキリッとするね」とは、なかなか感想だ。

2015年6月28日 (日)

ヘッセン王女

少し詳しいブラームスの伝記に登場する。ヘッセン王女アンナのことだ。ピアノ五重奏曲ヘ短調op34の献呈相手としての栄誉を得ている。

1864年夏バーデンバーデンにて、ブラームスはクララと同曲の2台のピアノ版op34bを御前演奏している。おまけに演奏したop34bの自筆譜を贈呈しているのだ。王女は感激したと記録にある。そりゃあそうだろう。作曲者本人たるブラームスと考え得る最上のパートナー・クララとのデュオをライヴで聴けるなんぞそうそうある話ではない。その上作曲者本人の自筆譜まで贈られて感激しなかったりしたら百たたきである。

サプライズは続く、演奏と自筆譜贈呈の返礼にとブラームスにプレゼントされたのが、モーツアルト交響曲第40番ト短調の自筆譜だというのだ。ブラームスの喜びは想像に難くない。モーツアルトやバッハへの思慕を隠さないブラームスにとってまたとない返礼だ。その後この自筆譜は膨大なるブラームスコレクション中の白眉となって生涯ブラームスの自慢のタネとなった。

かたや「2台のピアノのためのソナタヘ短調op34b」のライヴ演奏と自筆譜、かたやモーツアルトの交響曲第40番ト短調の自筆譜とは、何とも華麗な物々交換である。それにしてもヘッセン王女とは何者なのだろう。プロイセンの王家に生まれてヘッセン領主に嫁いだとされ、ピアノの腕前もかなりのものだったなどという伝記的事項はこの際棚上げだ。モーツアルトの自筆譜を所有していたばかりか、それを惜しげもなくブラームスに下賜するとは、何たる道楽ぶりだろう。まだ創作人生の約4分の1経過しただけのこの段階としては異例の惚れ込みようだ。ブラームスの収集癖まで考慮に入れていたのだろうか。

「クララとブラームスのデュオでこのソナタが聴けた上に自筆譜までもらえるなら、モーツアルトの自筆譜も惜しくない」と判断したとするなら、私とは大いに気が合いそうだ。

2015年6月27日 (土)

poco stringendo

ブラームスは「poco stringendo」を全部で6回使用している。室内楽かピアノ独奏曲にしか出現しない。大所帯の作品ではニュアンスのシンクロが難しそうである。「少し切迫して」程度の意味なのだが、大事なのは「テンポを少し早めよ」という意味ではないということだ。このニュアンスを表現する手段として、結果的にテンポが早められることはあっても、直接的にテンポをいじる指示ではない。

6回のうちの一つがピアノ五重奏曲第2楽章の29小節目のピアノだ。この場所は、何を隠そうピアノ以外の弦楽器に「stringendo」が付与されている。つまり「poco stringendo」と「stringendo」が共存しているということだ。「poco stringendo」と「stringendo」がテンポをいじる指示ではない証拠である。もしテンポをいじる指示だとすると全てのパートが同じ指示でなければアンサンブルが破綻しかねない。ここは単に「ピアノは切迫の度合いが少し緩くてよろしい」という意図に他なるまい。

このあたりの微妙さをうっとおしいと思うか、絶妙と見るかで、ブラームスのファン度が測れる。

2015年6月26日 (金)

10代のカルテット

ベートーヴェンの弦楽四重奏曲を数多く初演したのが、ウィーンのシュパンツィヒ四重奏団だ。1794年にリヒノフスキー侯爵の屋敷での演奏を目的に設立され、最初リヒノフスキー四重奏団と名乗っていたが、ほどなく第一ヴァイオリンのシュパンツィヒにちなんで、シュパンツィヒ四重奏団と改名した。

設立当時のメンバーを以下に記す。

  • 第一ヴァイオリン イグナーツ・シュパンツィヒ 18歳
  • 第二ヴァイオリン ルイ・シーナ 14歳
  • ヴィオラ フランツ・ヴァイス 16歳
  • チェロ ニコラウス・クラフト 16歳

いやはや驚嘆すべき年齢構成だ。世界最初のプロの弦楽四重奏団で、ベートーヴェン諸作品の初演者でもあり、相当に著名な団体なのだが、この若さには恐れ入った。もちろんメンバーの交代は時々起きていた、創設時のこの若さを見て、次女たちのピアノ五重奏団を思い出した。全員が同級生の高校2年生だったからほぼ17歳だ。当時、彼らの示した気迫に心底感動したが、早熟でもなんでもないのだ。

2015年6月25日 (木)

今更の言い訳

現在展開中の「室内楽ツアー」の構想は、かれこれ5年前に遡る。当時展開中だったドヴォルザーク特集と、その後継企画としての「アラビアンナイト計画」の準備の中から浮かび上がり、ブログ開設10周年企画を考える中から固定されていったものだ。

その頃から意図的に室内楽系の記事を控えて、ネタの備蓄に走ったのだが、嬉しい例外も生じた。次女が仲間とピアノ五重奏曲に挑むことになったから、当時展開中だった「ビスマルク特集」に割り込む形で、急遽ピアノ五重奏曲ネタを集中投下した。本来であれば、この度の「室内楽ツアー」で公開するハズだった。

だから、大好きなピアノ五重奏曲関連の記事が、やや手薄になっている。

2015年6月24日 (水)

ふくだもなの余韻

次女が高校2年の冬、オケの仲間とブラームスのピアノ五重奏曲に挑んだ。「ふくだもな」はその五重奏団の名前だ。次女はここで、セカンドヴァイオリンを担当するという幸運を享受した。手元には2013年元日の練習のときの画像がある。本番では、時間の関係でカットが入ったけれど、この練習のときはノーカットだった。年末のオケフェスが終わってから正月返上で練習したときの記録。正月早々5人の親がみな集まってそわそわと練習を見守った。だから貴重な映像が残った。

今聞いても鳥肌が立つ。10月にエントリーをして楽譜こそ配られていたものの、まとまった練習が始まったのは12月29日のオケフェスの後になってからだ。なのになのにこの画像を見る限りみな暗譜だ。ピアノの譜面台に閉じられた楽譜がおいてあるだけ。弦楽器奏者の前には譜面台さえない。

室内楽の喜びがみなの顔からうかがえる。あからさまなアイコンタクトは無いけれど、暗譜しているから楽譜を見る必要が無い。お互いの音を聴いて考えることがわかるくらいの連携ぶりだ。

室内楽ツアーがピアノ五重奏曲にさしかかったら、一度は立ち止まってみたいビュウポイントだと思っていた。

2015年6月23日 (火)

我慢出来ない

ずーっと前から感じていたが、根拠も無い上にあまりに荒唐無稽なので黙っていた。

バッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻8番、変ホ短調のフーガの冒頭主題だ。演奏によっては主題先頭の4分音符を小節の前に出した弱起に聞こえるのだ。演奏のせいではなくてこちらの耳のせいだ。

4分音符1個が小節の前に出た弱起にすると、ブラームスのピアノ五重奏曲第1楽章の冒頭に似ている。

単にそれだけ。

ずっと思っていたけど記事にしないで我慢していた。

今日から5番手、ピアノ五重奏曲。

2015年6月20日 (土)

英国への伝播

ブラームスの初期の室内楽を、世間に紹介するという意味で、クララ・シューマンの功績は誠に大きい。

クララは自身の演奏会で進んでブラームスの室内楽を取り上げた。当時のプログラミングの習慣として、ピアノ独奏曲だけのリサイタルは、むしろ稀にしかありえなかった。室内楽や歌曲を織り交ぜるのが恒例だったから、室内楽の採用それ自体は珍しくも無かったが、気鋭の作曲家ブラームスの作品を取り上げたという点が、ユニークだったということだ。ブラームス作品の常として、演奏家のテクニックの披露は第一義ではなくなっている。ましてや室内楽は、作品への深い理解と様式感を持ち合わせねばならない。要求されるテクニックは高いのに、聴衆にはそう聞こえないという厄介な一面を持つ。聴衆の期待は絢爛豪華なピアノ曲だったに違いないのだが、クララは自分の流儀を押し通し、やがて英国の聴衆にそれがクララのスタイルであると認知されるに至った。

ピアノパートはもちろんクララが受け持つ。演奏の準備としてのリハーサルは、独奏曲以上に手間がかかる。

作曲家ロベルト・シューマンの妻にして当代最高のピアニストであるクララのおメガネに叶うということが、どれほど強い後ろ盾だったか想像に難くない。

生涯に19度の英国遠征を企てたクララは、その初期において、ブラームスの無名作品をしきりに取り上げた。ピアノ四重奏曲第2番、ピアノ五重奏曲の英国初演はクララの手によるものだ。

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