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カテゴリー「266 ヴァイオリンソナタ第2番」の22件の記事

2022年8月14日 (日)

カニーニ

ブルーノ・カニーニはイタリアのピアニスト。1935年12月30日ナポリのお生まれ。昨日の記事「アッカルドマジック」でヴィヴァルディのヴァイオリンソナタのCDを入手したとはしゃいだが、そのCDでチェンバロを担当しているのが、カニーニさんだ。アッカルドさんのヴァイオリンもろともすっかり気に入ってしまっている。

この人とアッカルドさんのコンビは、なんとブラームスに飛び火する。ヴァイオリンソナタ全3曲のCDがある。こちらは当然チェンバロではなくてピアノを聞かせてもらえる。どちらも達者ということだ。

さてさて話はさらにバッハに。ヴィクトリア・ムローヴァさんとのコンビでバッハのヴァイオリンソナタを録音している。残念ながら全6曲ではなくて1番ロ短調、2番イ長調、6番ト長調の3曲だけがチョイスされている。ムローヴァさんには、別のチェンバリストと組んだ全曲アルバムも出ているがカニーニ版は本当に素晴らしい。チェンバロも達者なカニーニさんがなぜあえてピアノを選んだのかわかる気がする演奏だ。

 

 

 

 

2020年8月19日 (水)

ロ調空白

昨日の記事「室内楽組曲BACH」で、ブラームスの室内楽からBACHの音名を主音に持つ作品を各1曲選定した。すんなりと下記に落ち着いた。

  • B 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調op18
  • A ヴァイオリンソナタ第2番イ長調op100
  • C ピアノ四重奏曲ハ短調op60
  • H クラリネット五重奏曲ロ短調op115

これをベートーヴェンでやろうとすると「ロ音」でとん挫する。室内楽にロ長調ロ短調の作品がない。モーツァルトでも事情は同じだ。ハイドンなら出来る。この人たちの作品数はブラームスよりはるかに多い。たった24曲のブラームスで出来てしまうことはとてもありがたいことだと思う。管弦楽作品で試みるとブラームスでもロ調が空白だ。第二交響曲の第二楽章は貴重だとわかる。

シャープ5個のロ長調はともかく、シャープ2個で済むロ短調はありそうなものだが。教会旋法でロ音が忌避されていた名残ではあるまいな。

 

2020年8月18日 (火)

室内楽組曲BACH

バッハのスペルを構成する4つのアルファベットが、全て音名中に存在することは、古来さまざまな試みを誘発してきた。本日の話題はその一環だ。ブラームスの室内楽作品から、それら4つの音を主音とする調で作曲された作品を選定する。何ということはない。「B=変ロ」「A=イ」「C=ハ」「H=ロ」の調を持つ作品の私的ベストを選定する作業となる。

  • <B音>芳醇な変ロ長調が2つあるものの、短調側の変ロ短調は室内楽には存在しない。
  • <A音>長短仲良く2曲ずつの選択肢がある。
  • <C音>長調に1曲、短調に3曲ある。
  • <H音>長短1曲ずつ。

結論を書いてしまおう。

  • B 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調op18
  • A ヴァイオリンソナタ第2番イ長調op100
  • C ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op60
  • H クラリネット五重奏曲ロ短調op115

我ながらほれぼれの選択だ。ちっとも迷うことなくあっさり決めた割には、「長短2曲ずつ」「二重奏、四重奏、五重奏、六重奏から各1曲」というバランスの取れ方が美しい。休憩を考えると2時間半になるけれど、演奏会にできないものか。

 

2019年9月10日 (火)

スタジオとライヴ

竹澤恭子先生のヴァイオリンソナタ第3番。我が家には2009年5月録音のCDがあった。ソナタ3曲に加えFAEソナタの収録に5日かけているからスタジオ録音で間違いない。

一方、最近某ショップをうろついていてライヴ録音を入手した。2009年12月8日のリサイタルだそうで収録は下記。

  1. FAEソナタ
  2. ヴァイオリンソナタ第2番
  3. ヴァイオリンソナタ第3番
  4. ハンガリー舞曲第1番(ヨアヒム編曲)

帰宅して再生したら、びっくり仰天。すごい演奏だ。「私のヴァイオリンの音聴いてちょうだい」という気迫。ヌヴーっぽい。ただただ溜息。同時に先のスタジオ録音が控え目過ぎると感じた。ピアノは同一人物なのにこの差はいったいなんだろう。

一番が聴けないのはもはや拷問の域だ。

2016年2月 7日 (日)

多機能楽章

ブラームスはソナタの楽章の数を大筋で4と決めていた。2005年11月13日の記事「楽章の数」で述べた通りだ。

ところが実際には楽章の数3個にも挑戦している。まずは二重奏ソナタの最初と2回目だ。1回目はチェロソナタ第1番である。このときは中間楽章のうち緩徐楽章を省いた。2回目がヴァイオリンソナタ第1番で、今度は舞曲楽章を省いた。4楽章制を3楽章制にするにあたって、中間楽章のどちらかを丸ごと省略する道を試したのだ。

次の3楽章ソナタは弦楽五重奏曲第1番だ。 ブラームスの工夫は遅い舞曲を置いたことだ。テンポは緩徐楽章だが、形式は舞曲だ。さらにこの遅い舞曲・サラバンド風の主部の後に急速な舞曲風のエピソードが続く。つまり緩徐楽章の中間部が急速な舞曲になっているのだ。緩徐楽章が舞曲楽章を呑み込んだ形であり、本日のお題「多機能楽章」の走りである。実は続く4番目の3楽章ソナタであるヴァイオリンソナタ第2番でもこの「多機能楽章」が採用されている。

緩徐楽章に舞曲がサンドイッチされるアイデアの原型はなんと作品5のピアノソナタ第3番に遡るかもしれないと考えている。スケルツォの第3楽章は緩徐楽章に挟まれていると見ることが可能だ。第4楽章は第2楽章のエコーになっているからだ。ピアノソナタ第3番の5楽章制は、「多機能楽章」の実験であったと位置付け得るのではないかと思う。

さてさて、この多機能楽章の系譜には続きがある。ブラームス最後のソナタ、クラリネットソナタ第2番である。この曲の第3楽章は、緩徐楽章と終曲が合体している。終楽章が「Andante」で立ち上がるブラームス唯一の事例だ。このこと自体が聴き手への謎かけかもしれない。聴き手に緩徐楽章の始まりだと錯覚させる狙いがあった可能性がある。案の定70小節目で「Allegro」に転じて、そのままエンディングまで押し通す。フィナーレはやはりアレグロでなければという考えの反映だろう。

「終楽章がアンダンテだなんて珍しいな」と感じる聴き手の裏をかく狙いがあると思われる。

2016年2月 6日 (土)

三楽章の根拠

まずは以下のリストをご覧いただく。

  1. チェロソナタ第1番ホ短調op38
  2. ヴァイオリンソナタ第1番ト長調op78
  3. 弦楽五重奏曲第1番ヘ長調op88
  4. ヴァイオリンソナタ第2番イ長調op100
  5. クラリネットソナタ第2番変ホ長調op120-2

結論を先に申すなら、これら5作品は三楽章制を採用している。多楽章ソナタをいくつの楽章から構成させるかは、作曲家の自由だ。2楽章以上任意といっていい。ブラームスにおいて、この値は3~5になる。ピアノソナタ第3番だけが5楽章制だ。上記以外の室内楽20曲は全部4楽章となる。

3楽章制は、その組成から2種類に分類できる。

<A型> 標準の4楽章から舞曲が削除されたケース。上記では2番~4番、両ヴァイオリンソナタと弦楽五重奏曲第1番が、これに該当するとひとまず落としておく。残存した緩徐楽章の中に、急速なテンポになる部分があるかないかで細分出来る。無いのが1番。あるのが2番と弦楽五重奏曲第1番だ。この2曲では緩徐楽章の中間部がスケルツォを兼ねている。

<B型> 標準の4楽章から緩徐楽章が削除されたケース。チェロソナタ第1番とクラリネットソナタ第2番がこれにあたる。終楽章の冒頭が緩いテンポになっているのが、クラリネットソナタ第2番だ。同楽章はアンダンテで始まることで、聞き手は一瞬緩徐楽章が始まったものと錯覚する。

A型にもB型にも、削除された楽章の機能をカバーするような部分が、残った楽章に埋め込まれているケースとそうでないケースがある。

2015年12月28日 (月)

果たして変わり者か

シムカ・ヘレドというチェリストがいる。イスラエル生まれの人だ。

ブラームスのヴァイオリンソナタ全集のCDが手元にある。ブラームスのヴァイオリンソナタ全3曲をチェロで弾いている。4度低く移調されてDdurとなった第一番以外の2曲は、オリジナルの調になっている。

チェリストがヴァイオリンソナタの編曲物を取り上げてCDに収める試みは、珍しいものではないが、3曲全てをとなるとちょっと見かけない。特に2番は、我が家のコレクションで、この人だけなので貴重だ。

さらに、私の探し方が悪いのか、この人がオリジナルのチェロソナタを録音したCDを発見できていない。このチェリストは、ブラームスのチェロソナタをCDに録音していないのに、ヴァイオリンソナタ全3曲をCD化しているという可能性がある。

2015年12月10日 (木)

頂点としての7小節

ヴァイオリンソナタ第2番第二楽章の話。同楽章は表向き緩徐楽章の体裁を採る。形式として無理やり表すとABABABだ。あくまでも無理やりで、提示される都度味わいが微妙に変わるのがブラームスの流儀だ

最初の部分、超々遅いAndante tranquillo。この楽章が何故4分の2拍子なのか、凡人には測りかねる。おかげさまでブラームス作品では唯一64分音符を観察できる。それはさておき2小節目から3小節目にかけて現れる「F-C-D/C-AーB/A-C」という連なりをご記憶いただく。
13小節目からこの音形がまた現れる。やがて「A→D」で収まって「Vivace」を準備する。スケルツォ代わりのBの部分が終わって第一主題が戻るのが72小節目だ。この時冒頭のヘ長調は巧妙に転調されてニ長調になる。旋律としては再現しているのに調が別というのはよくあるブラームス節だ。79小節で調性は原調のヘ長調に戻るのだが、今度は旋律が戻らない。これもよくあるじらし。81小節目付近からもやが晴れるようにもとの旋律が戻ってくる。84小節目に先にも紹介した「F-C-D/C-AーB」が復帰することで聞き手はやっと安堵する。
そしてブラームスはそこからサプライズに入る。すんなりVivaceに行くかと見せかけて、85小節目からの回り道を用意する。そこから7小節間が、本室内楽ツアー屈指の絶景だ。理屈は要らない。同楽章中唯一の「p espressivo」があてがわれている。この7小節間の位置づけを巧妙に示してあると見た。
やがてAndante主題が三現する。150小節目だ。例の「F-C-D/C-AーB/A-C」は154小節目に用意されるが、頂点の7小節はあえなくカットされている。
ヴァイオリンソナタ第2番の頂点というべき瞬間だ。

2015年12月 9日 (水)

似ているうちか

歌曲「メロディのように」op105-1を論ずる文章は、その冒頭の旋律について高い確率で、ヴァイオリンソナタ第2番第一楽章第二主題との類似について言及する。

冒頭の音8個、移動ドで「ミソドファミレドシ」の部分だ。確かにヴァイオリンソナタ第2番第一楽章第二主題は、「(ソファ)ミソドファミレドシ」になっている。アウフタクト「ソファ」を除外した音8つは、歌曲「メロディーのように」と一致する。

そりゃまあ、そう聞こえる人もいるには違いないが、解説書まで含めて猫も杓子もということになると、騒ぎ過ぎだと感じる。

  1. 調が違う。歌曲はイ長調だ。ソナタのほうは調号こそイ長調だが、第二主題はホ長調だ。
  2. 音価も違う。歌曲は四分音符主体だが、ソナタは付点四分音符と八分音符の混合。
  3. アウフタクト。歌曲側には無いアウフタクトがソナタに存在する。

似ている話を無理やり強調しなくても、どちらも十分美しい。

2015年12月 8日 (火)

Vivace di piu

ヴァイオリンソナタ第2番第2楽章94小節目に鎮座する指定。「ブラームスの辞書」では393ページにおいて「今までよりも活発に」という解釈をしておいた。

問題は「piu」だ。大抵は「piu~」という標記で「今までよりもっと~で」と解される。「piu」そのものに「今までより」というニュアンスが埋設されているという立場でだ。だから「Vivace di piu」で「今までよりVivaceで」と解した。

問題の第二楽章は表向き緩徐楽章として「Andante」で立ち上がる。これにスケルツォ然とした「Vivace」が交代する。無理やり申せば「A→B→A→B→A→B」だ。「B」が2度目に現れるところに本日話題の「Vivace di piu」が置かれている。「ブラームスの辞書」の記述とは矛盾するが「Vivace di piu」は、もしかすると「さっきのVivaceと同じでね」という意味の可能性もあるとにらんでいる。この場合「piu」は「先の」という意味。

これでめでたしめでたしにはならない。尚残る疑問は、3度現れる「B」のうち初回とラストは単なる「Vivace」を背負っているのに2度目だけが「Vivace di piu」になっている。何故全て同じにしないで書き分けたのだろう。

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