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カテゴリー「211 オルガン」の35件の記事

2019年7月 2日 (火)

テレマンにもある

コラール「来ませ聖き御霊」を題材にしたフーガが、バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第3番の第二楽章フーガの主題になっている。同じ主題を用いたフーガがブクステフーデのBuxWV175にも存在すると書いた。テレマンのフーガにも同主題を用いているものがあったTWV30:12ホ短調だ。基礎情報が薄いから、ブクステフーデやテレマンの作品の中にはこの手のサプライズが埋もれていることが多く、何かと楽しい。

コラール「来ませ聖き御霊」は、コラダスではフルマークだ。4名がそろってオルガンコラールに採用していることを考えると、パッヘルベルにも同主題のフーガがある気がしてきた。

 

 

2019年6月18日 (火)

慧眼と迂闊

「けいがんとうかつ」と読む。「慧眼」は、先見の明があったり、着眼が優秀だったりすること。「迂闊」はうっかりだ。

先ごろ買い求めた小学館刊行の「バッハ作品全集」のオルガン自由曲の解説を読んで、「慧眼」と「迂闊」を同時に味わった。同解説書に20歳のバッハがアルンシュタットからリューベックまで400kmを歩いてブクステフーデを聴きに行ったことが書いてある。それは同時にオルガン行脚だったはずだと明記される。通過する街々の教会を訪ねて実際にオルガンに触れて鳴らしながらの旅だったと。言われてみてはっとした。昨年8月に15日かけてこのときのバッハの旅路をブログ上で再現した。あらかじめ地図上でコースを推定するときに参考にしたのが教会のマークだった。古くからあったに決まっているからというシンプルで素朴な発想だった。これは「慧眼」だろう。

ところが、そこまで着想出来ていながら、実はオルガン行脚だったことに思い至らなかったことは「迂闊」であった。予めコースを定め名高いオルガンのある教会を順に訪問するくらいの計画性があったと感じる。そしてそして、無料もしくは格安の料金で宿泊していた可能性も現実味を帯びる。

バッハとオルガンの関係が飲み込めていなかった証拠だ。

2019年6月14日 (金)

ブラームスのオルガン自由曲

ブラームス最後の作品は、op122を背負う「オルガンのための11のコラール前奏曲」だ。一般的な分類定義で申せばオルガン自由曲をではない。あくまでも習作扱いでよければ、作品番号を伴わないオルガン自由曲が下記の通り存在する。

  • WoO8 フーガ変イ短調
  • WoO9 前奏曲とフーガイ短調
  • WoO10 前奏曲とフーガト短調

バロック時代の作曲家についてオルガン自由曲への感度を上げるべく、作品番号順の収録をコンセプトにプラヴェートCDを作ったおかげで、脳みそが十分に練れてきた。バロックのオルガン自由曲に浸りきった耳でブラームスのオルガン自由曲を聴くことにした。

解説書やブックレットには「等身大のバッハが見えてくる」などと書かれている。わかったような気になっていたが上辺だけだった。今は違う。これらの曲でブラームスが行こうとしていた世界を分かったうえで聴いてみることが出来た。ドイツバロック伝統のオルガン自由曲をキャリアの初期に書いたブラームスの発想までもが鑑賞の対象だ。オルガン自由曲が山ほどあるレーガーは、響きがノンバロックだし、メンデルスゾーンはバロック的なオルガン自由曲から脱してオルガンソナタに走った。前後をこうした作品に挟まれたブラームスのオルガン自由曲はかえって目立つ。

 

 

 

 

2019年6月 3日 (月)

のんきな見過ごし

バロック時代のオルガン製作者アルプ・シュニットガーのオルガンをハンブルク・ヤコビ教会で見た。偶然リハを聴けたと盛り上がった。そのシュニットガーのオルガンの所在地を調べていて愕然とした。EutinとRendsburgがあるではないか。

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先のドイツ旅行の9日目8月17日に通った。Eutinはリューベックからフレンスブルクに向かう途中だ。ここは列車で通っただけなのだが、Rendsburgは下車した。レンズブルク鉄道橋を見学するためだった。

この2つの街にシュニットガーのオルガンがあるとわかっていたら、前後の予定を調整して見学したかった。

 

 

2018年12月17日 (月)

ブクステフーデシュタット

ブクステフーデはマリエン教会のオルガニストだったが、前任者で義父のトゥンダーが創始した演奏会を発展させて「アーベントムジーク」とした。CDもDVDもなく、今ほど演奏会もない時代、教会行事とは別建ての演奏会は貴重だったと見えて評判を呼んだ。年5回三位一体節直後と、侍降節直後だ。バッハはアルンシュタットから400km以上踏破して1705年の待降節直後12月9日に聴いた。これだけで済むわけもなく、翌週16日と翌々週23日も聴いた。気が付けはもうクリスマスは目前だ。クリスマス周辺の諸行事を見届けて、任地アルンシュタットに戻ったのは2月。

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マリエン教会内にこのことを記したプレートがあった。

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バッハが1705年にブクステフーデを聴きにやってきたという内容だ。ブクステフーデが没する1年半前の出来事だ。

2018年1月25日 (木)

Ernst-Erich Stender

ドイツバロック伝統のオルガン曲のジャンルに「コラール前奏曲」がある。ブラームスの最後の作品がこの形態を採用していることで、ブラームスその人を、直接バロック時代に連れ出して、ドイツバロックの巨匠たちと比較鑑賞できると喜んだばかりだ。

教会で、聖歌隊や会衆がコラールを歌う前にオルガンで耳慣らしをするというのが、本来の機能だが、時代が下るに連れて、装飾や変奏が華麗に付加されるに至るのだが、本来の機能はあくまでも音取りだ。

ブラームス最後の作品「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122の第1番は、コラール「わがイエスよ、我を導き給へ」がベースになっている。

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見ての通り、冒頭赤枠の中が「HGEC」となっている。第4交響曲第一楽章冒頭と完全に一致する。

おそらく同じことに気付いたのが本日のタイトルにもなっているエルンスト・エーリッヒ・シュテンダーさんだ。オルガニストのこの人、ブラームスの第4交響曲をオルガン用に編曲してCDを出してくれている。オルガンで第4交響曲第1楽章を弾かれてしまうと、それはコラール「わがイエスよ、我を導き給へ」の音取りとして不足なく、機能してしまう。ご承知の通り同交響曲はフィナーレ第4楽章末尾で第一楽章第一主題が力強く回帰することを思うと、交響曲全体がコラール「わがイエスよ、我を導き給へ」の巨大な前奏曲と位置付け得る。

そう思って聴くとこのオルガン編曲にはただならぬ説得力が宿る。4つの中からもし一つだけオルガン編曲をするなら4番しかないとも思えてくる。

そしてそして、交響曲の余白には「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122から、2番5番、8番~11番が本当に収録されている。シュテンダーさんは実際のコラール前奏曲と並置させているのに第4交響曲とかぶる第1番「わがイエスよ、我を導き給へ」を省いているのも見識の反映だろう。

2018年1月24日 (水)

コラール前奏曲の元ネタ

ブラームスの最後の作品「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122は、バロック以来の伝統にのっとり、「コラールの前弾き」という体裁をとる。実際には教会での演奏という側面は失われていながら、形だけを誠実にトレースした代物。既存既知のコラールをベースにした変奏曲となっている。

本日は11曲すべてについてその原曲の出所を一覧化しておく。

<第1番>「Mein Jesu,der du mich」わがイエスよわれを導き給へ

  • Darmstadt Gesangebuch 1698
  • 6小節目の後半から足鍵盤に低旋律が現れる。「H-G-E-C」とは第四交響曲冒頭と完全に一致する。

<第2番>「Herzliebster Jesu」敬愛するイエスよ

  • Johann Crueger 1640
  • マタイ受難曲BWV244第3曲に現れる。

<第3番><第11番>「O Welt,ich muss sich lassen」おおこの世よ我汝を去らねばならず

  • 不詳。ニュルンベルク1555年頃

<第4番>「Herzlich tut mich erfreuen」わが心は喜びに満ちて

  • 不詳。Wittenburg1552年頃

<第5番>「Schmuecke dich,Liebe Seele」装え愛する魂よ

  • Johann Crueger 1649
  • BWV654にある。

<第6番>「O wie selig seid ihr doch.ihr Frommen」おお汝、信心深い人々はいかに至福なるか

  • Johann Crueger 1647

<第7番>「O Gott,du frommer Gott」お神よ、汝やさしき神よ

  • 不詳。ブラウンシュヴァイク1648年頃

<第8番>「Es ist ein Ros'entsprungen」一輪のバラが咲いて

  • 不詳。最古の出版は1599年。
  • 讃美歌96番「エサイの根より」に一致。

<第9番><第10番>「Herzlich tut mich verlangen」心から私は願う

  • Hans Leo Hassler1601年
  • 書籍「ブラームスの辞書」の口絵は「10番の手稿譜」1ページ目になっている。
  • バッハのBWV727のオルガンコラールと同一だ。BWV161のカンタータにも登場する他、マタイ受難曲にも同じ旋律が現れる。

以上。最古のものは1552年。ただし8番は出版こそ1599年だがもっとさかのぼる。最新のものでも1698年だ。

クララを失った傷心のブラームスがイシュルに戻って書き上げた11曲。ウィーンの自宅に資料を取りに戻ることなく書けたということは、これらオリジナルが頭に入っているということだ。ドイツの古い音楽がすっかりなじんでいたということだ。

2018年1月22日 (月)

同じ土俵としてのコラール前奏曲

そもそもの話として「コラール前奏曲」とはなんぞやという問いを議論しておきたいが、実はかなり複雑で私ごときの手には余る。会衆や聖歌隊が教会で歌うコラールの前にオルガンで示される音取りを兼ねた小品というくらい。形式的には、コラールの定旋律がほのめかされる。コラールのオルガン伴奏とは厳に区別される。

プロテスタント系の音楽史上では避けて通れぬ歴史がある。サムエル・シャイトが17世紀前半にその規範を示して以降、プロテスタント圏内で発展を遂げる。ブクステフーデ率いる北ドイツとパッヘルベル率いる中部ドイツで特色ある発展を遂げたあと、バッハがさらに統合発展させた。

同じコラールをベースに複数の作曲家がコラール前奏曲を仕上げることもあった。

ブラームスは人生の終盤に差し掛かって「オルガンのための11のコラール前奏曲」op122を作曲した。クララ没後に自らの死さえ予見しながらだ。

これがどんだけすごいことか。

おかげで、バッハよりさらに数世代遡るドイツ音楽の巨星たちと同一のジャンルで比較することが出来る。バッハ以前のメンバーは教会を職場にしていたから、本当にコラールの前に演奏するためのものだったが、ブラームスではその側面は薄れ、事実上「コラール〇〇の主題によるオルガンのための変奏曲」という位置づけになっている。ブラームスは「コラール前奏曲」というジャンルの歴史的意義を深く認識していながら、実演の可能性を棚上げにして、あえて同じ形態を世に問うた。創作人生の最後にだ。

これを「バロック音楽への没入」と称してどれほどの誤謬を含むことになるのだろう。op122にちなんで1月22日の公開だ。

2018年1月21日 (日)

ブラームスはオルガンを弾いたか

作曲家ヨハネス・ブラームスはオルガンを弾けたのかという疑問が本日の話題である。

通常作品を残すことイコール楽器の演奏が出来ることにはつながらない。管弦楽作曲家がオーケストラの全ての楽器演奏に長けていることなどあり得ない。知識や理屈に精通していることと演奏できることは別物だ。

バッハは、オルガン演奏の名手にして、クラヴィーア演奏も相当のレベルだった。あるいは、ヴィオラやヴァイオリンも並以上の弾き手だったという。そしてそれらの楽器のために数多くの作品を残した。

ご存知の通り、ブラームスはピアノ演奏においても上級の腕前を披露した。到達度を問わないならば、幼い頃にヴァイオリンやチェロも習った事がある。

ピアノ演奏の大家であれば、オルガンも相当に弾けたのではないかと想像してしまう。ライプチヒ・トマス教会のカントル就任を要請されるくらいだから、オルガンも相当な腕前だったのではないだろうか?

2014年6月24日 (火)

避暑地への持ち物

ブラームスの伝記を読んでいると、ときどき疑問が湧いてくる。本日もそうした疑問の一つだ。

1896年5月20日にクララ・シューマンが没したときブラームスは既にウィーンを離れ、なじみの避暑地イシュルにいた。だからクララの死を知らせる電報はウィーン経由で届けられた。そのためブラームスが受け取ったのは5月22日になってしまったという。5月のこの時期に早くも避暑地にいたのだ。

ブラームスの本拠地は申すまでもなくウィーンだ。ウィーンを離れて避暑地に赴く際、ブラームスの持ち物にはどんなものがあったのだろう。ブラームスが所有していた膨大な蔵書と楽譜は、普段ウィーンの自宅にあったと考えるのが自然だ。避暑地へそれらが丸ごと運ばれたとは考えにくい。

ブラームス最後の作品は「オルガンのためのコラール前奏曲」op122である。解説書を読むとクララの死後イシュルで作曲されたとされている。これらが古いコラールを下敷きに書かれたことは既に2008年8月25日の記事「蓄積の賜物」で言及した。説明を読む限り若い頃から集めたり書き留めたりした古いコラールを参考に作曲したことは確実である。

ブラームスはクララの葬儀の後、しばらくボン周辺をさまよってから、ウィーンを経由せずに直接イシュルに帰っている。つまりウィーンの自宅にある古いコラールの資料を取りに戻ってはいないのだ。

  1. クララの死に関係なく既に構想があって関連資料を持ち込んだ。
  2. クララの死後イシュルに入った後、ウィーンから資料を送らせた。
  3. 関連資料が無いまま作曲した。つまり該当のコラールが頭に入っていた。

直感としては3のような気がする。

ちゃきちゃきのプロテスタントであったブラームスは、主要なコラールは和声付きで暗譜していたと解したい。あるいは暗譜するほど気に入っていたコラールに曲をつけたと考えたい。

1896年6月24日友人のホイベルガーはブラームス本人のピアノでコラール前奏曲を聴いたことを証言している。

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