記事「オルガン任意 」でドイツレクイエムのオルガンが任意だと書いた。オルガンの設置が概ね教会に限定されることを考慮して、「オルガン必須」としなかったのかもと推定した。
ブラームスには伴奏にオルガンを指定した合唱作品がある。「GeistlischesLied」op30である。

「宗教的歌曲」と訳されている。シューマンが没する時期の作品を後から出版したものだ。ほんっとに美しいけれど、実は実は二重カノンという複雑な形式で書かれている。対旋律と主旋律2つ一組が1小節遅れて2度低く模倣されるという精巧な造りだが、聴いた感じではそんな技巧面での工夫など微塵も感じさせない。編成の指定は「混声四部合唱とオルガンまたはピアノ」となっている。

楽譜にはオルガンまたはピアノ3手または4手とある。オルガンの足鍵盤をピアノに転写することを考えるとピアノ奏者一人では足りずに、最低もう一人が左手1本を差し出せと読める。
我が家所有のCDにはピアノ版もオルガン版もある。私はやはりオルガン版の方がいい。一度音を発したら減衰が宿命づけらたピアノでは、ペダルを長く引き伸ばすのは酷だ。和音を空間に敷き詰めるならオルガンに限る。
特に終盤、53小節目以降、クライマックスへの準備が始まると同時に低い「Es音」がスラーで数珠繋ぎになる。いわゆるオルゲルプンクトだ。絶対にオルガンでなければならぬ瞬間だ。
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