優勝旗授与のための変奏曲
ベートーヴェンがチェロとピアノのために遺した変奏曲の題材はモーツアルトだけではなかった。
何気なく聴いていてピクッと耳が反応する。どこかで聴いた旋律。運動会の優勝旗授与のときのBGMだ。ヘンデル「マカベウスのユダ」から「勝利をたたえる歌」の主題による変奏曲。作品番号はついていない。
耳になじみの旋律を手際よく変奏処理した作品にはかなりな需要があったと思われる。チェロに超絶技巧が要求されているように聞こえないのはチェリストが達者なせいかもしれぬ。
ベートーヴェンがチェロとピアノのために遺した変奏曲の題材はモーツアルトだけではなかった。
何気なく聴いていてピクッと耳が反応する。どこかで聴いた旋律。運動会の優勝旗授与のときのBGMだ。ヘンデル「マカベウスのユダ」から「勝利をたたえる歌」の主題による変奏曲。作品番号はついていない。
耳になじみの旋律を手際よく変奏処理した作品にはかなりな需要があったと思われる。チェロに超絶技巧が要求されているように聞こえないのはチェリストが達者なせいかもしれぬ。
そうそう昨日はヘンデルさんのお誕生日だった。2月19日からヘンデルネタを5本続けたのはささやかなお祝いのつもりだった。バッハさんと同い年なので今年は生誕336年である。
ブラームスがクリュザンダー出版のヘンデル全集の予約購入者だったことは知られている。手元に届いた際の無残な反応について、昨日疑問を提起しておいた。
このうちの27巻はヴァイオリンソナタになっている。全部で15曲が収められているのだが、古来真贋論争にさらされている。ヴィヴァルディ作品の出版でも知られているアムステルダムのロジェ社からの出版をはじめ、何種類かバージョンがあるのだが、ヘンデルの真作だというお墨付きはニ長調だけともなりかねない。
この15曲にヘンデルの真作ではない作品が混入していることをブラームスが知っていたということはないだろうか?この全集に同様なケースが少なからずまぎれていることが、ブラームスのそっけない反応の理由とは考えられまいか。それはけしてヘンデル本人への疑問ではなく、クリュザンダーの編集方針への疑問だという可能性はないか。もちろんブラームスはクリュザンダーの親友だ。そこは割り引いても指摘を忘れぬブラームスだと思いたい。ニ長調のソナタだけでも尊敬に値する。おそらくヘンデルのヴァイオリンソナタは1曲しかないとなると困るのは現代のCDメーカーだろう。ヘンデルのヴァイオリンソナタ集という体裁にならないからだ。
ありがたいことにグルミョー、シェリング、スーク、マンツェなどみな固いことを言わずに収録してくれている。「伝ヘンデル作」でよいではないか。
ブラームスはフランソワ・クープランの出版にも関与していた。校訂者という位置づけなのだが、クリュザンダーとの共同作業ということになっている。クリュザンダーは、ブラームスのお友達だ。ヘンデル研究の泰斗として知られている。
ブラームスはバッハ伝の著者で友人のフィリップ・シュピッタへの書簡において、クリュザンダーのことを話題にしている。1870年2月のことだ。どちらかといえばネガティブな話題で、グチに近い。一か月後シュピッタからの返信はこれに同調する内容だ。
タイミングから見て、おそらく共同校訂の相棒に対するグチだと推測される。
シュヴァイツァーのバッハ伝に、ブラームスのエピソードがあるらしい。
大学オケ夏合宿の室内楽演奏会。その年入団の一年生の弦楽器奏者たちだけのアンサンブルを披露することが恒例になっている。4月に入部してヴィオラを始めた私の最初の難関だ。
曲目は誰が決めたかヘンデルのハープ協奏曲の第一楽章だ。ハープ奏者がいるわけでもないのに謎の選曲である。今ならブーイングのひとつも奉るところだが、先輩のチョイスとあって当時は絶対服従だった。
気合を入れて練習したが本番の出来は全く記憶にない。
あらゆるCDには収録のメインがある。CDを出した狙いだ。その狙いとなった作品の演奏時間が短いとき、別の曲が並録されることがある。このときなぜか「余白に入れられた」と言う場合がある。お宝CDの探索においてはこの余白が妙に興味深い。
大昔の話で恐縮ながら妻とのハネムーンの土産にウィーンで買い求めたCDはその典型だ。ロンドン交響楽団で指揮はネーメヤルヴィ。
当時は上記の1番狙いの購入だった。最近日本でも生演奏を耳にすることも多くなったが、当時はレアだった。ところが上記2番もなかなかのできばえだ。ラベル編曲の「展覧会の絵」さながら冒頭のヘンデルのアリアの主題提示がトランペットのソロになっている。
CDのブックレットでは先に2番が解説されていてどっちが余白かわからなくっている。
日本の初等教育においてヘンデルを指す通り名だ。
小学校の音楽室に飾ってある肖像や年表のもっとも端にいるのが、バッハとヘンデルだ。片方のバッハには「音楽の父」という称号が奉られてるいる。同い年でドイツ生まれのヘンデルは、男であるにもかかわらず「音楽の母」と呼ばれている。当時の音楽家はカツラをつけていて長髪に見えるから、同級生の間では「ヘンデルは女だ」と信じている奴もいた。
この言い回しの根拠はどこにあるのだろう。当時は純心だったが今となっては、眉に唾の一滴も塗りたくなる。ドイツ音楽偏重の音楽史観だと思う。後期バロックの2人が始原と位置づけられているだけで相当な怪しさだ。
まあよい。
ヘンデルのオルガン作品はオルガン協奏曲に偏っている。いわゆるオルガンコラールは見かけない。独奏曲はフーガが少々あるだけだ。
本日2月23日はヘンデル生誕333年のメモリアルデーだ。
ヘンデルのオラトリオのタイトルだ。ハンブルク時代の若きブラームスはこの作品に親しんでいた。
1862年9月ウィーン進出を決意したブラームスは、故郷ハンブルクを立つに当たって父親にこう切り出す。
「ことがうまく行かなくなった時の最高の慰めは、決まって音楽です」「ただ私の『サウル』の中だけはよくご覧になってください」「必要とするものがきっと見つかります」
ブラームスはヘンデルのオラトリオ「サウル」の総譜の中に、まとまった数の紙幣を挟んでおいたのだ。29歳の息子は故郷を立つにあたって、父にへそくりを置いてきたというわけだ。まだブレーク前とは言え、このときまでにささやかな蓄えがあったと考えられる。何だか遠回しなところがブラームスらしい。
家族への経済的援助は、その後も終生続くことになる。
「Aria」と綴られる。オペラなどの声楽曲にあって、叙情的旋律的な独唱曲のことだ。転じて旋律的な器楽曲にもタイトリングされる。バッハ管弦楽組曲第2番の中、人呼んで「G線上のアリア」はその代表だ。あるいは不滅の変奏曲「ゴールドベルグ変奏曲」の冒頭も「アリア」とされている。
生涯オペラを書かなかったブラームスには縁のない言葉だと思いきや、「ヘンデルの主題による変奏曲」の主題が「Aria」と記されている。英語形の「Air」となっている楽譜もある。
原曲はヘンデル作の、クラヴィーア組曲第2巻の第1番変ロ長調HWV434の主題である。タイトルは「Aria con variazioni」となっている。つまりヘンデルのオリジナルも「主題と変奏」になっているのだ。実際にCDを聴いてみると、ブラームスは主題提示において完全に原曲を再現していることがわかる。時はロマン派真っ只中。その時代にヘンデルから主題を拝借して平然と変奏曲を書いてしまうブラームスは、やっぱり浮いていたんだと思う。
曲を聴いたワーグナーの感想は名高い。「古い形式でも取り扱いを心得た人にかかると生き生きと蘇らせることが出来る」
額面通りに受け取るのは無邪気が過ぎるかもしれない。強烈な皮肉である可能性をいつも心に留めている。
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