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カテゴリー「316 ヴィヴァルディ」の43件の記事

2021年5月16日 (日)

現代のピエタ

記事「ピエタ慈善院 」を書いていて思い出したことがある。

ヴィヴァルディという優秀な指導者に巡り合ってその名声が欧州に鳴り響いたピエタ慈善院付属音楽院。孤児、私生児、捨て子という出自には目をつむり、乙女たちの優秀な合奏という点にだけ注目すると、まさに次女の高校オケを思い出す。

規律と意思。優秀な指導者。聴き手の熱狂。

承久の変 ほどではないが、今日、時代が変わる。心からの感謝をこめて。

 

 

2021年5月15日 (土)

ピエタ慈善院

1346年ヴェネツィアで創立。孤児、捨て子、私生児を養育した。男子はやがて退去するが、女子は結婚しない限りここにとどまったらしい。10歳までに音楽教育が始まる。才能のある子どもにより合奏団や合唱団が組織されたという。

1703年ヴィヴァルディが合奏長に就任することで絶頂期を迎える。全盛期のヴィヴァルディが曲を供給しただけでなく、子供たちの音楽的指導にも貢献した。演奏の水準から欧州中に名声が広まり、わざわざ子女を預ける貴族まで現れた。

厳格な規律の中で、優秀な教師と密接な関係を保ちつつ、到達したその演奏は、ヴィヴァルディのいくつかの作品が同院での演奏を前提にすることから相当なレヴェルだと推測されている。

 

 

2021年4月26日 (月)

ヴェネツィア気質

「水の都」として名高いヴェネツィアは世界屈指の観光地。ヴィヴァルディの生地でもある。港町であり商都でもある他、欧州音楽の中心地でもあった。音楽にとどまらぬ芸術の街である。一方ローマ教皇と対立するなど独特の気質があった。信仰よりも自由な気風を重んじる傾向まであった。商売優先と申してもいいくらいだという。

ヴィヴァルディの生まれた頃、経済的政治的には斜陽であったが、文化は爛熟の域にあった。このうちの音楽をヴィヴァルディが担って行く構図になっている。

2021年4月25日 (日)

聖マルコの日

本日4月25日は聖マルコの日だそうだ。キリスト教は一神教なのだが、その代わりに願い事の業務分担があると見えて、何かにつけて守護聖人がついてまわる。聖マルコもそうした聖人の一人で、ペテロの命でアレクサンドリアに出向いて布教しその地で没した。

828年イスラム教徒の支配下となっていたアレクサンドリアから、ヴェネチアの商人がマルコの遺骸を持ち帰った。異教徒の手から取り戻しということだ。その遺骸を祭る教会こそが、世に名高いサンマルコ寺院である。だから聖マルコは、ヴェネチアの守護聖人になっている。4月25日ヴェネチア人たちは特別なお菓子「マルコのパン」を食べるという。ドイツ・リューベック市の名物である「マジパン」の起源である。

ヴィヴァルディの父親は、聖マルコ寺院のヴァイオリン弾きだった。

 

 

 

 

2021年3月18日 (木)

混乱の源泉

BWV596は、ヴィヴァルディの調和の霊感op3-11をバッハ自らがオルガン独奏に編曲したものだ。ブラームスはこれを自ら筆写してまでクララにプレゼントしたのだが、バッハの長男フリーデマンの作品であると考えていた。

このほどそうした錯乱の原因が分かった。1774年頃のことだ。父ヨハン・ゼバスチャンの膨大な楽譜を相続した長男ヴィルヘルム・フリーデマンは、経済的な困窮から遺品楽譜の一部を売却して換金しようと企てた。買い手との交渉の中で、故意か過失か問題のBWV596を自作と位置付ける一方、自作のいくつかを父作とした。相続者本人のこの工作が世間の認識を左右し、同曲は長く「長男フリーデマン・バッハ作」とされてきた。

ブラームスは自ら筆写するほど気に入って、さらにクララにプレゼントまでしたのに、これを「ヴィルヘルム・フリーデマン・バッハ」作であるとクララに申告していた。信じ切っていた証拠だ。

2021年3月17日 (水)

調和の霊感

ヴィヴァルディの合奏協奏曲集op3の通称だ。独奏楽器を異にする様々なコンチェルトの集合体である。このうちの11番、「2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲」ニ短調を学生時代に弾いた。ヴィオラで演奏に加わったことがある。

そしてバッハはまさにその作品3-11をオルガン協奏曲に編曲している。BWV596という番号まで与えられているのだ。20世紀に入ってからの研究の結果、バッハ本人の編曲であることが突き止められているが、19世紀には論争もあったようだ。ブラームスはこれを、長男のウイルヘルム・フリーデマン・バッハの手による物と考えていた節がある。

BWV596のブラームスによる筆写譜が現在に伝えられており、おそらく1854年かその翌年にブラームスからクララに贈られたものだ。「愛するクララへ、デュッセルドルフにてヨハネスより」と書かれた表紙には「フリーデマン・バッハ」と添えられているという。

ブラームスは1867年3月17日、ウィーンの楽友協会ホールでの彼自身のリサイタルで、この作品を弾いている。154年前の今日だ。

そしてこの貴重なブラームスの筆写譜は、現在ツヴィッカウにある。ロベルト・シューマンハウスの所蔵だという。1896年5月に逝去したクララの遺品に含まれていたということだ。クララはこの楽譜を40年以上大切に保管していたのだろう。そしてあくまでもあくまでもクララはロベルトの妻だから、ロベルト・シューマンハウスの所蔵になっているのだ。そこにブラームスの思いがどれほど込められていたとしても、シューマン夫妻の結婚生活14年の長さを遙かに超えて保管されていたとしても、クララはロベルトの妻だ。

ヴィヴァルディとブラームスの数少ない接点だが、ヴィヴァルディ、バッハ親子、シューマン夫妻そしてブラームス。この筆写譜には音楽史に名を残す巨星たち6名が関わっている。

 

2021年3月16日 (火)

四季は唐突か

19世紀後半のドイツ音楽界を2分した論争における両陣営の旗印が「標題音楽」と「絶対音楽」だったことはよく知られている。ブラームスは「絶対音楽」の側の首領格という位置づけ。19世紀後半に台頭した「標題音楽」の反対概念だ。「標題音楽」が台頭して来ることによって、初めて成立したのが「絶対音楽」だったように思える。バッハやベートーヴェンが自らの音楽を「絶対音楽」だと考えていたとは思えない。

ベートーヴェンの「田園交響曲」あたりを淵源とする「標題音楽」の流れはやがて交響詩に到達するし、ワーグナーの楽劇にしてもその系統上にあると思われる。私とて「モルダウ」は大好きだ。音楽作品に詞書の付与が当たり前になっていくという図式だ。

日本では初等教育からそうした史観にたった授業になっていることもあって、大衆の側の思い込みは強烈だ。困るのはヴィヴァルディの「四季」だ。田園交響曲以降に台頭したという前提と決定的な矛盾を引き起こす。孤高のヴィヴァルディと解さざるを得なくなる。「標題音楽の先取り」であるかのような。

そうではないのだ。ヴィヴァルディを含むバロック時代には、世の中の事象を音楽で描写することは一般的であった。名高い「四季」は精巧な「ワンオブゼム」だと受け止めねばならない。確かにバッハにはその傾向が希薄だ。それは差し引いてもビーバーには巧妙な猫の描写があるし、シュメルツァーには「カッコー」もある。テレマンは人気の「ガリヴァー旅行記」をヴァイオリン二重奏に転写した。

それら両方に「標題音楽」という表札を掲げようとするところに無理がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2021年3月13日 (土)

op8-9

「創意とインヴェンションの試み」op8のうちの最初の4曲、いわゆる「四季」を除く8曲に焦点を当てた。そのうちの9番ニ短調がop8-9である。実は大のお気に入りだ。独奏はオーボエでもいいことになっている。オーボエで演奏した場合、かなりのハイテクが求められているという。ヴァイオリン独奏版はRV236で、オーボエならRV454になる。ここいらの複雑さを面倒と思うか醍醐味と思うかでヴィヴァルディ度が推し量れるというものだ。

いわくありげなシンコペーションの連続で立ち上げる第一楽章。モーツアルトの同じ調のピアノ協奏曲を思い出す。

我が家所有のCDは下記のとおり5種類しかない。「四季」は20種類くらいあるのに、この曲は5種類ということは、op8全体を録音せずに「四季」だけを取り上げている演奏家が多いということだ。四季はそれほど「ドル箱」ということだ。

  1. イムジチ アーヨ RV236
  2. イムジチ アゴスティーニ RV454
  3. イタリア合奏団 RV454
  4. ヨーロッパガランテ RV236
  5. アルテデラルコ RV454

これらのうちをヴァイオリン独奏で収録しているのは、上記1と4で、残りはオーボエ独奏だ。4のヴァイオリン独奏はもちろんビオンディだ。困った甲乙つけがたい。

 

 

2021年3月12日 (金)

四季の余韻

日本でほぼバロック音楽の代名詞状態となっている「四季」は、「創意とインベンションの試み」op8を構成する12曲のヴァイオリン協奏曲の最初の4曲だ。op8として12曲ひとまとめで出版しているというのに、知名度の落差たるや相当なものである。

op8の残り8曲を話題にする。

<5番変ホ長調「海の嵐」>作品10-1には、リコーダー向けの同名コンチェルトがある。打ち続く16分音符が嵐の描写であることが両者共通だ。シャープなタイトルのせいで割とポピュラーな方だ。

<6番ハ長調「喜び」>オリジナルでは「Il piacere」だ。喜びと和訳されている。四季各曲のように、具体的でないからこの曲のどこが「喜び」なのかわかりにくい。

<7番ニ短調「ピゼンデル氏のために」ザクセンのコンマス、ピゼンデルさんのことだ。

<8番ト短調>

<9番ニ短調>冒頭いきなり印象的なシンコペーションで始まるが、その後もずっとシンコペーションが続くほか、17小節以降の半音の連続も、スラーのかかり方はシンコペーションを示唆する。だから4分の3拍子がそこはかとなくぼかされる。実は大好きだ。独奏オーボエでも可とされている。

<10番変ロ長調「狩」>第二楽章はニ短調だ。変ロ長調に挟まれるニ短調は、なんだかロマン的で、ブラームスのピアノコンチェルトや弦楽六重奏を思い出す。

<11番ニ長調>

<12番ハ長調>これもまたオーボエ許可がある。

 

 

 

 

 

 

2021年3月10日 (水)

春のドッグレース

「四季」から「春」の第2楽章の演奏家による違いをテンポの観点から論じてみる。同楽章39小節、最後の小節はフェルマータだから除外するとして38小節。4分の3拍子だから114個の4分音符の堆積と見る。CDの演奏時間を実測して、60秒あたりの4音符の数つまり「MM値」を割り出す。試しに我が家のCDについて実測した結果を録音年順に列挙する。

CDの解説書記載のトラックの演奏時間とは別だ。次のトラックが始まるまでの無音の時間も入ってしまっているので、実測して補正したデータを使用する。

各々のCDでヴィオラ奏者の名前が不明なことが多いので、コンマスの名前をキーにする。各ログは以下の通りの構成とする。録音年、演奏時間、MM値、コンマス名。

  1. 1955 02分26秒27 46.8 Felix Ayo
  2. 1959 02分49秒33 40.5 Felix Ayo
  3. 1969 02分51秒14 40.0 Roberto Michelucci
  4. 1977 01分47秒18 63.9 Alice Harnoncourt
  5. 1982 02分39秒51 42.8 Pina Carmirelli
  6. 1982 02分10秒12 52.6 Piero Toso
  7. 1986 02分26秒43 46.8 Giovanni Gugliermo
  8. 1988 02分45秒62 41.2 Federico Agostini
  9. 1991 02分40秒12 42.8 Fabio Biondi
  10. 1992 02分09秒02 53.0 Giuliano Carmignola
  11. 1992 02分50秒58 40.0 Enrico Onofri
  12. 1995 02分55秒69 38.9 Mariana Sirbu
  13. 2001 02分05秒03 54.7 Fabio Biondi
  14. 2002 03分20秒49 34.2 Stefania Azzara
  15. 2004 02分15秒17 50.7 Janine Jansen
  16. 2014 02分30秒55 45.6 Federico Gugliermo

16種の平均は2分32秒MM=44.4となる。1番のアーヨはイムジチの初録音。史上初の「四季」の録音だと取沙汰されているモノラル盤。驚いたことに平均値に最も近い演奏だ。先頭がいきなり平均的演奏となっている。長く四季のスタンダードだったことと関係がありわせぬかと思っている。1959年のアーヨ盤はステレオ録音だ。ぐっと遅いテンポだ。

長く尊敬されてきた録音なのだが、話題の「犬」に関して申すと違和感もある。楽譜上に「他のパートから際立って」とあるにもかかわらず、周囲のパートに溶けている。犬が遠くにいる感じで、しかももやがかかっているかのようだ。

3番目のミケルッチもイムジチだが、そのあたりへの配慮が進んで聞こえ方は改善している。

4番目のアーノンクールは、古楽の先駆けなのだろうと思うのだが、異様に速い。速いだけならまだしも音がパサついている。イムジチとの落差は大きい。「古楽ってこうなんです」と言われれば仕方ないと納得させられていたかも。

5番目カルミレッリもまたイムジチ。イムジチ初のデジタル録音だったような。

9番ビオンディの「四季」がセンセーションを巻き起こしたことがここにも反映する。際立って個性的な犬の描写だ。

 

 

 

 

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