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カテゴリー「309 シューベルト」の18件の記事

2018年8月 2日 (木)

オルガン名曲集

古今の有名曲をオルガンで演奏したCDは珍しくない。本日話題のCDを店頭で手に取った時は、よくある名曲集かと思っていた。

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帰宅してブックレットを読むと、軽い衝撃を覚えた。2016年録音で2017年発売のCDなのだが、オルガニストのGeorges Athanasiades さんは1929年のお生まれだった。録音時点で87歳ということになるからだ。

オルガン名曲集としては自然なことだが、収録全14曲中4曲がバッハだった。

  1. 主よ人の望みの喜びよ
  2. アクトゥストラジクス
  3. G線上のアリア
  4. 恋するガリア

これら超有名曲が淡々とオルガンで鳴らされるのだが、冒頭の「主よ人の望みの喜びよ」の後にブラームスが置かれていた。最後の作品「オルガンのための11のコラール前奏曲op122」の10番「Herzlich tut mich verlangen」である。この手のオルガン曲集に採用されることは大変珍しい。これだけでも購入に踏み切るに十分だった。

さらにそのあとは「タンホイザー」の「巡礼の合唱」だった。オルガンで弾かれてみてはっとした。なんだかきっちりとはまっているので驚いた。しかもオルガン編曲はリストだという。その次にモーツアルトのハ長調ソナタK545全3楽章のオルガン版だ。本CDの唯一のキズともいうべき選曲だ。曲や編曲の良し悪し以前に雰囲気になじんでいない。

しかし続くシューベルトで違和感はリセットされる。「Litanei」D343だ。「連祷」と訳されて違和感の無い万霊節用リートのオルガン編曲だ。「しみじみ」とはこのことだ。

それからお次はショパン。前奏曲op20から4番6番20番が続く。4番はまたまたリストの編曲らしい。そして満を持すバッハ。アクトゥストラジクス、G線、ガリアという流れはよどみがない。

ラスト14曲目が流れ出して耳を疑った。思わずブックレットを読むと「Choral St,Antoni」と書てあるばかりか、演奏者本人の解説で「ブラームスのハイドンの主題による変奏曲の原曲」と明記されていた。87歳の老オルガニストの脳裏にブラームスがあることは確実だ。「聖アントニーのコラール」がハイドン作ではないことはもはや定説となっている。だからジャケットには作曲者名が書かれていない。オルガン曲集のプログラミングだというのにバッハを差し置いてトリにブラームスを持ってきたことは明白だ。ここに及んで、2曲目にブラームスのコラールが置かれた意図がはっきりする。バッハとブラームスでロマン派の作曲家たちをはさんだということに他なるまい。つくづく場違いなモーツアルトが惜しい。

で、演奏はというと。

演奏はというと、遅めのテンポでオルガンが奏でる「聖アントニー」は、なんだかしっとりと心温まる。弾かれてみて「その手があったか」と納得。ハイドンの木管五重奏の第二楽章として、ブラームスの管弦楽用変奏曲の主題として名高いのだが、あくまでもあくまでも本質は「コラール」なのだということを改めて思い知らされた。

2018年5月31日 (木)

賛美歌のシューベルト

ヨアヒム・ネアンダー(1650-1680)の「通り名」だ。デュッセルドルフの教会付属ラテン語学校の校長として活躍したが、30歳の若さでブレーメンにおいて没した。賛美歌60編のテキストを残したが、その半数について作曲もした。もっとも有名な「Lobe den Herren,den Maechtgen Koenig」は、バッハのカンタータ120番と137番に採用されているほか、多くの賛美歌が歌い継がれている。

残された作品の美しさと、30歳で早世したこともあって「賛美歌のシューベルト」とあだ名されるにいたる。

存命中、彼はデュッセルドルフ郊外の谷に出かけてしばしば思索にふけったという。その谷はいつしか「ネアンダーの谷」と言われるようになり、やがてそこから古人類の化石が出土した。つまりはそれがネアンデルタール人である。

今日5月31日は彼の命日である。

どこかに「賛美歌のブラームス」はいないものか。

2014年11月27日 (木)

カフェと作曲家

音楽史に名を残すような作曲家がカフェに通っていた話は割と耳にする。

まずはバッハ。1694年ライプチヒで開業した「レーマン夫人のカフェ」だ。この店はやがて名前を変えて「カフェバウム」となり、シューマンやメンデルスゾーンも通ったというから凄い。ブラームスが通ったという証言は見当たらないが、たびたびライプチヒを訪れたブラームスが、由緒あるカフェを素通りとは考えにくい。バッハの当時ライプチヒには8軒あったらしい。天気のよい日には屋外で演奏会も開かれた。名高いコーヒーカンタータはそういう会場で演奏された。

続いてモーツアルト。ヨーゼフシュタット、レルヒェンフェルダー通り38番地のカフェラングだ。モーツアルトの死後1803年に経営者が亡くなったが建物は1893年まであったらしい。

ベートーヴェン。最初はロプコヴィッツ広場にあって、後にシュピーゲルガッセとプランケンガッセの交差点に移転した「カフェノイナー」後の「白銀館」、あるはラントシュトラーセ「カフェアンゼルム」、シュロッサーガッセの「カフェクラーマー」、ハプスブルガー通り角の「カフェタローニ」、プラーターの「第一カフェ館」。引越し魔ベートーヴェンは引越しごとに近所のカフェを開拓したものと思われる。

シューベルト。シュテファン教会そばの「カフェボークナー」だ。飲み代の付けが利いたというのが理由らしい。同店は1850年で閉店しているからブラームスは行けなかった。

2014年9月 7日 (日)

プラハ発ウィーン行き

チェコの首都プラハとウィーンを結ぶ路線は、列車の愛称という観点から見て、お宝のヤマになっている。トーマスクック社刊行の「ヨーロッパ列車時刻表2011年春版」から拾い上げてみる。

  • 04時39分発 グスタフ・マーラー号
  • 06時39分発 スメタナ号
  • 08時39分発 フランツ・シューベルト号
  • 10時39分発 アントニン・ドヴォルザーク号
  • 14時39分発 グスタフ・クリムト号
  • 17時39分発 ヨハネス・ブラームス号

どれも所要時間5時間16分でウィーン・ノイシュタット駅に着く。何故かヨハネス・ブラームス号だけがベルリン始発で、ウィーン・プラーターシュテルン駅着になっている上に、所要時間も4時間26分になっている。是が非でもこれに乗りたいところだが、景色を眺めるならシューベルト号かドヴォルザーク号がいいような気がする。

並み居る大作曲家に混じって、14時39分発グスタフ・クリムト号が異彩を放つ。食堂車でビールを注文すると、グスタフ・クリムト号専用のオリジナルコースターがもれなく付いてくるくらいのサービスを期待してしまう。

2013年6月23日 (日)

シューベルト岩

2010年10月15日の記事「ヨハニスベルガー」でブラームスのファーストネーム・ヨハネスに近くて惜しいと書いた。ブラームスそのものズバリの銘柄がありはせぬか調べたが見つけることが出来なかった。代わりにキュートな外道がヒットした。

「Schubertslay」という銘柄だ。ドイツのワイン大産地モーゼルの中でもとりわけ有名なピースポート産だ。銘柄ネイミングのルール通りなら「Schubertlay」というブドウ園があって、そこから採れたブドウだけを使って作ったワインが「Mosel Piesporter Schubertslay」などと書かれたラベルとともに売られているハズだ。「lay」は地名語尾で「岩」だから、「シューベルトの岩」とでも解されよう。

作曲家の名前を取り入れた銘柄は意外と少なくて他にはラインガウに「Hendelberg」が見られるくらいである。だからこそ飲んでみたい指数は嫌でも高まる。万が一「Brahmsseufzer」(ブラームスのため息)などという銘柄でも発見したら、買出しに行ってしまいそうだなどと浮かれている場合ではなかった。

意外なところからその由来を発見した。ライン沿岸に進駐してきたナポレオンがシュロス・ヨハニスベルクに駐屯したことは既に述べた。このとき修道士たちを追放したのだが、彼らが所有していたブドウ園や醸造所は競売にかけられた。運よく一流の畑を落札した一族は、その後ひと財産築いた者も多い。

このときモーゼルでよい畑を落札した一家の一つが、シューベルト家だった。私が心躍らせたワイン「シューベルト岩」(Scuhbertlay)は、この一家の名前に因んだネーミングという可能性が高い。

少々がっかり。

2011年10月 7日 (金)

民謡としての野ばら

ゲーテのテキスト「野ばら」は、多くの作曲家の帰依を勝ち取った。物の本によれば100人を越える作曲家が曲を付けているという。ブラームスもその一員であることは既に述べた。中学だか高校の音楽の時間に、シューベルトとウェルナーの「野ばら」を続けて聴いたことがある。芸術歌曲として見る場合、この両者甲乙付け難い。

ところが奇妙なことがある。「ドイツ民謡集」というタイトルのCDにおいて収録されるのは、圧倒的にウェルナーが多い。シューベルトの「野ばら」がちっとも録音されていない。ブログ「ブラームスの辞書」で述べてきた「擬似民謡」として、シューベルトが認知されていない印象だ。同じシューベルトでも「菩提樹」は、民謡集で引く手数多だから、シューベルトが忌避されているわけではない。「野ばら」に関しては、シューベルトはおろかブラームスも旗色が悪い。

ハインリッヒ・ウェルナー(1800-1833)は1830年に作曲したこの「野ばら」1曲で不滅になっている。

2011年10月 3日 (月)

ドイツ民謡御三家

ある分野において特に秀でた3者を総称する言い回し。徳川将軍本家を支えた「徳川御三家」から転用されたものだ。日本人は元々「三大なんとか」が好きだから日本語によくなじむ。「三羽ガラス」よりも有り難い感じがする。まあ2人なら「竜虎」、4人なら「四天王」、5人だと「五奉行」で結局何人でもいいと申しては元も子もなくなる。

やっぱり3人ということで、本日はドイツ民謡御三家だ。ドイツ民謡のCDや書物への出現頻度で判断した。

  • ローレライ(Lorerei) 作詞ハイネ、作曲ジルヒャー 古来重要な交通手段だったライン川の難所に生まれた伝説は、意外なことに新しく、19世紀になって語られ始めた。腕利きの船頭に、舵取りを誤らせる美女の話中学校の音楽の時間に習った。
  • 菩提樹(Lindenbaum) 作詞ミューラー、作曲シューベルト 独唱リサイタルで歌曲集「冬の旅」の第5曲として歌われる場合は「芸術歌曲」だが、民謡集に収載されるのは、決まってジルヒャー編曲の合唱版だ。
  • 野ばら(Heiden Roselein) 作詞ゲーテ、作曲ウェルナー ゲーテの詩は古今の作曲家の創作意欲を刺激して多数の付曲がある。けれども民謡集への採用という意味ではウェルナーが圧倒的だ。

残念ながら公平に見てブラームスは入るまい。御三家に入っていないのは、ブラームスが将軍家だからかもしれない。

「49のドイツ民謡集」などドイツ民謡への関与は濃いけれど、ブラームス作品の中で民謡集のCDに数多く取り上げられているのは、「子守歌」op49-4かもしれない。世界中の人々から愛されているという意味で、上記御三家にも遜色がない。

2011年4月30日 (土)

ロマン派の世代観

私の生年は1960年で、父母は同い年で1935年である。これを100年前に置き換えてみる。

  • 1810年 母方の祖母
  • 1835年 父母
  • 1860年 私
  • 1895年 次女

おおってなモンだ。私の子持ちが10年遅い感じがするがご愛敬だ。上記に近い作曲家を列挙する。

  • 1810年 シューマン、ショパン
  • 1833年 ブラームス
  • 1860年 マーラー
  • 1895年 ヒンデミット

19世紀はロマン派の世紀だと実感出来る。私つまりマーラーから見れば、ブラームスは親の代で、シューマン、ショパンは祖父母の代だ。そしてヒンデミットは子供の代。ベートーヴェンやシューベルトは曽祖父より年長ということかもしれない。どうも物心付いて以来、「ロマン派」とひとくくりにされているから、こうした世代感覚を忘れがちになる。楽譜やCDの売り場ではこの感覚が特に麻痺する。

2011年1月31日 (月)

シュピーナ

ウィーンの出版社。1月29日の記事「初版刊行ランキング」では、かろうじて6位タイに滑り込んでいる。作品27と28の2作の初版を刊行した。

その刊行があったのは1864年だ。

ブラームスは1862年にウィーンに進出した。本人の回想によればウィーン進出当初、ウィーンゆかりの作曲家シューベルトの楽譜をむさぼるように写譜したという。未出版の歌曲を中心とする膨大な楽譜を所有していたのが実は、本日の主役シュピーナ社だ。シューベルトの兄フェルディナンドとのつきあいがあったらしく、シューベルトの自筆譜を大量に蔵していた。

その後シューベルト全集の刊行にあたり、一部校訂を引き受けたのは、このときの写譜の経験が土台になっていたと思われる。

ブラームスの歌曲の作風はop19までを第1期、op32から第2期に区分するのが一般的だが、1862年のウィーン進出が境目となっている。もっと深く突っ込むならシューベルトとの濃厚な接触がキッカケになったと解したい。

1864年の2作op27とop28が、シュピーナ社から出されているのは、快く写譜をさせてくれた事に対するお礼ではないかと考えている。

2010年12月12日 (日)

ブラームスの助言

Rシュトラウスは、ハンス・フォン・ビューローの弟子だったから、ブラームスと面識を持っていた。Rシュトラウスのへ短調交響曲の感想とアドヴァイスがブラームスの口から発せられている。

音楽之友社刊行の「作曲家◎人と作品シリーズ」ブラームスの166ページに詳しく書かれいる。

ブラームスがマイニンゲン滞在中にヘ短調交響曲を聴いたとされている。Rシュトラウスは手記「ハンス・フォン・ビューローの思い出」の中でそのことに言及する。ブラームスは「なかなか良い」という感想の後に「シューベルトを研究して8小節単位の旋律を書く練習をしろ」と助言したという。「旋律の戯れが多過ぎる」とも指摘されている。

この一連のやりとりをもって、著者西原稔先生は、ブラームスとRシュトラウスの作風の違いを強調しておられる。

「ピアノ演奏の歴史」という本の中98ページにもこの出来事が言及されている。一連の助言について述べたRシュトラウスは、最後に「私は助言に従った」と付言している。Rシュトラウスの作品は、ブラームスの助言に従った延長線上にあるということとも受け取れる。

音楽史を飾る2人の作曲家のキャラがシューベルトを題材に浮き彫りになっているエピソードだが、取り扱いには注意が必要だ。ブラームスの真意はなお、明らかとは言い難い。

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