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カテゴリー「326 パッヘルベル」の70件の記事

2023年9月23日 (土)

リプリント

パッヘルベル作品の目録に決定版がないという話を掘り下げる。ドーヴァー社が2015年に刊行した「パッヘルベルオルガンワークス」は、お値段手ごろで重宝している。1903年にブライトコップフ社から刊行された楽譜のリプリントであると明記されている。

 

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リプリントは微妙だ。

1903年時点の楽譜に手を付けずにということだ。刊行時点での最新の研究成果を反映させてはいないということだ。「Complete」と謳っていないことにささやかな良心も感じる。

どうりで、2006年CPO社発売のCD7枚組オルガン作品全集の収録内容や英語版Wikiの中のパッヘルベル作品目録どちらとも微妙にずれている。収載の範囲として最小だが、ここにしか収録されていない作品もあって悩ましい。

BWV番号やBuxWV番号が広く流布しているだけ、バッハやブクステフーデはマシなのだが、このあたりの曖昧さもまた、楽しみ方の一つではある。

2023年9月15日 (金)

2個イチは南方系か

バッハ風の「2個イチ」型がブクステフーデに出現しない現象について、議論を深めるためにパッヘルベルで調べてみた。我が家所有のCDのブックレットを頼りにあたる。下記の通り「2個イチ」型が発見できた。

  1. 前奏曲とフーガ ハ短調
  2. 前奏曲とフーガ ホ短調
  3. 前奏曲とフーガ ト長調
  4. 幻想曲とフーガ イ短調
  5. トッカータとフーガ 変ロ長調
  6. トッカータとフーガ ハ長調
  7. トッカータとフーガ ヘ長調

パッヘルベルはブクステフーデより14歳年下だが、没年は1年違いで、活躍した時代は重なっている。バッハよりざっと半世紀遡る。2個イチ型の不存在は時代の違いとは言えない。

2個イチ不存在は地域の特色だという可能性もある。もっとサンプルが欲しい。

2022年6月11日 (土)

シャコンヌは例外か

「教会ソナタ」と「室内ソナタ」を隔てる「舞曲の有無」という条件について、「オルガン自由曲」における舞曲の不存在を根拠に「教会での舞曲の拒絶」という可能性を取り上げた。

少なくともバッハのオルガン自由曲に「アルマンド」「クーラント」「サラバンド」「ジーク」「ブーレ」「シャコンヌ」は現れない。舞曲は教会での演奏にそぐわぬという不文律の存在を提起したつもりである。

しかし、バッハに先行するドイツオルガン界の巨星二人、ブクステフーデとパッヘルベルは「オルガン自由曲」の中に「シャコンヌ」がある。

ブクステフーデは、BuXWV159ハ短調とBuXWV160ホ短調の2曲。パッヘルベルは6曲ある。

周知の通り「シャコンヌ」は舞曲起源だから、「教会が舞曲を拒絶した」という仮説には都合が悪い。

ブクステフーデやパッヘルベルの時代、教会でない場所に設置されたオルガン、つまり世俗オルガンがあり得たのか。あるいは単にバッハとの時代の違いなのか。

「シャコンヌ」は、舞曲だがもともとキリスト教文化圏の舞曲だったからという落としどころが透けて見える。

 

 

 

 

2022年3月21日 (月)

息をするようにバッハ

ビオンディさんのシャコンヌに触れてまたそぞろバッハが忍び寄ってきた。

見ての通り、ブラームスラブを標榜してやまない我がブログだが、この先バッハを始めとするドイツバロック関連の記事については、バロック特集を打ち出すことなくいつでも発信可能とする。

言わば「息をするようにバッハを吐きたい」からだ。思いついたらバッハに言及する。何ら構えることなくだ。ブラームスもお望みだろう。

新型コロナウイルスの「蔓防」規制も本日をもって解除だという。きっとバッハさんのお指図だ。

 

2021年4月17日 (土)

パッヘルベルのピカルディ

ブクステフーデのオルガン自由曲、短調の作品全てがピカルディ終止を採用していると驚いた。しからばパッヘルベルはと話を広げる。

我が家のドーヴァー版のパッヘルベルオルガン作品全集収載のオルガン自由曲45作品のうち、短調の作品は18曲ある。

このうち17曲がピカルディ終止だった。わずかにニ短調のフーガだけが短調のまま終止する。悩ましい結果だ。このニ短調の解釈をどないするか。

さりとてブクステフーデ、パッヘルベルというバッハの先輩が、ピカルディ終止ほぼ100%の採用だということだ。

2021年2月17日 (水)

ぬんこむ

オルガン曲アルバムのタイトルだ。これだけでわくわくする。クリスマス用コラールとして名高い「Nun komm der Heiden Heiland」(来たれ異邦人の救い主よ)をベースにした古今の作曲家たちのオルガンコラール集である。

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冒頭には賛美歌集収載の同コラールの4声体がオルガン演奏される。これに36種類が続く。「Nun komm der heiden Heiland」の主題による変奏曲を以下の作曲家たちが分担しているかのよう。

  1. Jan Pieterszoon Sweelinck(1562-1621)
  2. Dietrich Buxtehude(1637-1707)
  3. Andreas Kneller(1649-1724)
  4. Johan Pachelbel(1653-1706)
  5. Friedrich Wilhelm Zachow(1663-1712)
  6. Nicolaus Bruns(1665-1697)
  7. Johan Heinrich Buttstedt(1666-1727)
  8. Andereas Nocolaus Vetter(1666-1734)
  9. Georg Friedrich Kauffmann(1679-1735)
  10. Johan Gottfried Walther(1684-1748)
  11. Johan Sebastian Bach(1685-1750)
  12. Gotfried August Holmilius(1714-1785)
  13. Max Reger(1873-1916)
  14. Marcel Dupre(1886-1971)
  15. Hugo Distler(1908-1942)
  16. Anton Heiler(1923-1979)

この16名の作品36曲が並ぶ。収録は作曲家の生年順が決然と遵守される。バッハが11番目に過ぎない。オランダの歴史的名器2台による丁寧な演奏で聴ける。コラール研究という切り口にとどまらず、オルガン音楽の歴史まで意図されている。おそるべし。

2021年2月13日 (土)

パーソナルカラー

オルガン頭出しCD集の作成を終えて、次なる楽しみは、ジャケットカヴァーとブックレットだ。全38枚組の手製CD集には様々な工夫を凝らした。

収載作品の明細をエクセルで作成した。見やすくするために作曲家ごとに特定の色を割り付けた。これが楽しい作業中だった。

 

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最上段「OrgelINdex」のゴールドと黒は「OrgelIndex」のテーマカラーだ。以下対象作曲家の生年順に並べた。ブクステフーデは深緑、パッヘルベルは臙脂、テレマンは紫、バッハは濃紺、ブラームスはこげ茶だ。試行錯誤の末の結論。ダークがかった色に白い文字。フォントは「TimesNewRoman」とした。パソコンのディスプレイの色とプリントアウトした色が微妙に違っていて悩ましかった。

 

 

 

 

 

 

2021年1月30日 (土)

Jean Claude Zehnder

記事「デザイン込み」で、話題にしたバッハのオルガン作品全集の楽譜の話だ。ブライトコップフの最新の原典版だということで身が引き締まる。その校訂者を見て、「はて、どこかで」となった。

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Jean Claude Zehnderさんだ。それってなもんで、我が家のCDコレクションを探すとCDが一つ出てきた。

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「バッハ最初期の手稿譜」とでも題されたCDである。2006年に発見された「ワイマールオルゲルタブラチュア」の世界初録音、しかもハンブルクのシュニットガーオルガンで弾いている。ブライトコップフの最新全集の校訂者となれば、昨日今日のぱっと出の若造のはずはない。

いやはやすごい。

2021年1月 6日 (水)

朝の空の妙なる星よ

原題は「Wie Schoen leuchtet der Morgenstren 」という。8大コラールの一つ。つまりバッハ、ブクステフーデ、パッヘルベル、テレマンが採用している。下記の通りだ。

  1. バッハ BWV739,763,764
  2. ブクステフーデ BuxWV233
  3. パッヘルベル P46,501,502
  4. テレマン TWV31:37

古来ドイツでは「賛美歌の女王」とたたえられてクリスマスに歌われてきた。4名全てからの支持を集めて堂々のフルマークだ。

作詞作曲はウンナという人口5000ほどの小さな街の牧師さんだったフィリップ・ニコライという人。カトリックとプロテスタントの勢力争いの真っただ中1596年に赴任し翌年に街はペストに襲われた。わずか半年の間に1500人が落命したという。埋葬にあけくれる中、住民を慰めようと賛美歌を2つ作曲した。このうちの一つが本日話題の「朝の空の妙なる星よ」だ。詩人でも音楽家でもないニコライさんがただただ人々を慰めたいと作ったと伝えられる。猛威を振るうコロナ禍の中でこそふさわしい。

バッハのBWV1を背負った受胎告知日用カンタータ第一番のフィナーレを皮切りに計6曲のカンタータ、4曲のオルガン作品に出現するモニュメンタルなコラールだ。

現代では1月6日公現祭で歌われている。

さらに記憶しておきたいことがある。2つ作った賛美歌のもう片方のことだ。シュプラーコラール第一番BWV645としても親しまれる「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」である。

たった2つの作品しか残していないのだが、どちらも歳月を超えて生き延びた。すごい歩留まりだ。

 

 

2020年12月26日 (土)

天の彼方から

オリジナルは「Vom Himmel hoch,da komm ich her」という。由緒正しきルター作のクリスマス用コラールだ。

  1. バッハ BWV606,700,701,738,769
  2. パッヘルベル  P478,479

ブクステフーデとテレマンには引用がない。

クリスマスコラールの決定版という位置づけと申してよい。その証拠にバッハのクリスマスオラトリオには何度となく登場する。日本での喧騒は12月25日で終わるが、ドイツでは年明け1月6日までがクリスマスで、ツリーは6日までは維持される。

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