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カテゴリー「353 ミュールフェルト」の5件の記事

2011年3月25日 (金)

献呈されない不思議

ロベルト・シューマンがブラームスから作品の献呈を受けていないと書いた。

もう一人意外なことに作品の献呈を受けていない人物がいる。クラリネット奏者リヒャルト・ミュールフェルトだ。ブラームス最晩年のクラリネット入り室内楽は、ミュールフェルトとのコンタクトから生まれたことは間違いない。ブラームスの惚れ込みようは半端ではないが、作品の献呈は一切されていない。

おそらくブラームスにもその意識はあったと思われる。その証拠にクラリネットソナタ2曲の自筆譜が、ミュールフェルトに贈られている。

ブラームス自身の社会的地位の向上により、献呈という行為が重みをました結果だと思われる。印刷譜の表紙に名前が載るよりも、作曲者本人から自筆譜を貰う方が嬉しいという考え方もありそうだ。

2009年5月16日 (土)

もう一つのナイチンゲール

5月10日の記事「愛鳥週間」で、ブラームスの歌曲に出現する鳥のリストを作り、ナイチンゲールつまり小夜鳥が、最多登場だと書いた。鳴き声の美しい鳥として認知されているようだ。

さて、ブラームスは弦楽五重奏曲第2番の完成後、創作力の衰えを自覚し、作曲を控える決断をした。ところが、この決意はあるクラリネット奏者との出会いによって撤回される。

彼の名はリヒャルト・ミュールフェルトだ。独学でクラリネットを学んだらしいが、その表現力は素晴らしく、ブラームスはたちまち虜になった。

ブラームスはミュールフェルトを指して「私のナイチンゲール」と呼んだのだ。歌曲最多出場のナイチンゲールの売りは、その美しい鳴き声だ。ミュールフェルトの操るクラリネットがそれにあやかるほどの音色だったということに他ならない。

その考えに同調する人はきっと多かったのだと思う。ヨアヒム四重奏団は、結成以来はじめてクラリネットとの競演に踏み切った。それは、ミュールフェルトを加えて、ブラームスの新作クラリネット五重奏曲を演奏するためだった。

愛鳥週間今日まで

2007年3月 3日 (土)

ブラームス雛

あったらいいなのブラームス雛を選定する。

<お内裏様>ロベルト・シューマン ここにブラームスでは洒落になるまい。

<お雛様>クララ・シューマン 穏当なところである。

<三人官女>

  1. アガーテ・フォン・ジーボルト
  2. エリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルグ
  3. ユーリエ・シューマン

<五人囃子>

  1. ヨーゼフ・ヨアヒム(ヴァイオリン)
  2. ハンス・フォン・ビューロー(ピアノ)
  3. リヒャルト・ミュールフェルト(クラリネット)
  4. ロベルト・ハウスマン(チェロ)
  5. ユリウス・シュトックハウゼン(バリトン)

<左大臣>ヨハン・セバスチャン・バッハ

<右大臣>ヨハネス・ブラームス

当初は、お内裏様にブラームス、お雛様にクララを据えた過激バージョンを作ったのだが、気分的に収まりが悪くて改訂した。ブラームスとクララのペアにしないということは、デリカシーに属する問題である。ブラームスの理解も得られると思う。五人囃子のメンツは完璧である。白酒ならぬワイン好きのブラームスの右大臣は何だかお似合いのような気がする。日本史を紐解けば右大臣は左大臣より位置付けが若干低いが、左大臣がバッハなら、ブラームスは文句を言わないと思われる。カバン持ちか何かで私も入りたい。

おバカな企画が続くものだと我ながら感心する。こういうネタにはつい力が入ってしまう。

2005年11月29日 (火)

創作のスタッフ

ブラームスの作品が生み出されてゆく過程は、あまり透明とは言い難い。膨大な量のスケッチを残したベートーヴェンとは大きく様相が異なる。それゆえブラームスと親交があった友人たちの証言が貴重である。

ブラームスは、自身が優れたピアニストだったことは周知の事実だが、彼の周囲には優れた演奏家が取り巻いていた。テクニック面はいうに及ばず、感性においても時代の泰斗であった演奏家との親交は枚挙に暇が無い。ピアノは言わずもがなの御大クララ・シューマンだ。ロベルト・シューマンの妻にして当代最高のピアニスト。ブラームスは新作の草稿を送り彼女の批評を受けてから発表することが常だった。いくつかの作品の破棄を相談したことさえ記録に残っている。ヴァイオリンもまた言わずもがな。これまた当代最高のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムその人だ。演奏家としてはもちろん、作曲家、教育者としても優秀であった。ヴァイオリン協奏曲の初演時の独奏者だ。ブラームスの協奏曲に熱狂する一方で、シューマンの協奏曲は終生演奏しなかったらしい。

そのほかにも歌手シュトックハウゼン、評論家ハンスリック、指揮者ビュウロウ、クラリネットのミュールフェルトなどキラ星のごとくだ。さらに凄いのは、音楽的素養の高いアマチュアもブラームスを豊かな大気のように厚く覆っていた。外科医ビルロートが代表格だ。

インスピレーションはもちろんブラームスの天性によるものだが、周囲の優秀なスタッフに恵まれたことも才能のうちなのではないかと思えて来る。

実はこれからが今日の本論。ささやかな本論。実はブログ「ブラームスの辞書」にも暖かい支持者が何名か存在する。定期的にコメントを書き込んでくださる人たち。ブックマークをしてじっと読みながら、時々メールで励ましてくれる人たち。そうした反応は、ブログを継続するモチベーションの一つになっている。その中の一人で、今opus49を所有している女性は、アマチュアピアニストとしての実演奏の観点から「ブラームスの辞書」についての感想を伝えてくれる。いつも真っ先の反応がありがたくモニターとしても頼ってしまっている。明日、ブログ「ブラームスの辞書」開設半年を迎えるにあたり、彼女のアイデアを全面的に採用した記事を掲載して、日ごろのご好意に応えたいと思う。

2005年10月22日 (土)

リヒャルト・ミュールフェルト

ブラームスが晩年に知り合ったクラリネット奏者。彼の名人芸のことはブラームスの関連本には大抵載っている。

弦楽五重奏曲第二番を1890年に書き上げたブラームスは、創作力の減退を自覚し、大作の作曲から手を引き、作品の改訂や整理に打ち込む決心をした。ところが、ミュールフェルトと出会ったことがキッカケでまた、創作意欲がよみがえり、最晩年の一連の室内楽が完成したと大抵の本に書いてある。

ミュールフェルトの影響で書かれた最初の曲はopus114のクラリネット三重奏曲、続いてクラリネット五重奏曲がop115で続く。最後に2つのソナタが120という番号をしょっている。

111の弦楽五重奏と114のクラリネット三重奏曲の間に挟まれた112と113は、なるほど過去の作品の整理という色彩が強く、伝記の記述と一致している。ことの性質上作品番号には反映しにくいとは確かだろうが、2曲とは拍子抜けである。さらに私が問題にしたいのは、クラリネット五重奏曲とクラリネットソナタに挟まれた116から119までのピアノ小品たちである。

世界遺産にも登録されるべき珠玉の小品たちは、ミュールフェルトとの出会いがなければ生まれなかったのだろうか?ミュールフェルトとの出会いで創作力が刺激された結果生まれたのだろうか?世の中の書物は、この点にあまり言及していない。

私個人は、これらのピアノ小品はミュールフェルトとの出会いがきっかけで生まれたのではないと考えている。ミュールフェルトとの出会いがなくても書かれていたと解したい。

伝記はとかく大袈裟だ。創作力が枯渇したので作品の整理に没頭したといいながらその実態は、作品数にして2つだけである。おそらくブラームス特有の言い回しをマジに受け止めすぎた結果だと思われる。ミュールフェルトの霊感が作用したのはクラリネット絡みの4曲だけだ。この周辺のミュールフェルトのエピソードはかなりしつこく言及されているのに、晩年のピアノ小品との因果関係には触れられていないのは研究者の怠慢だとまで思っていた。「外国の本にはこうかいてある」「外国の学者はこういっている」という伝記作者(=単なる翻訳者)が意外と多いような気がする。

結論として、あの小品がミュールフェルトと関係ないなら、五重奏の後、霊感が枯渇しただの整理に没頭する決心をしただのをあまり強調すべきではない。

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