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カテゴリー「431 アガーテ」の16件の記事

2016年12月16日 (金)

いとこ

祖父と祖母のうちどちらかまたは両方を共有する兄弟姉妹以外の人同士を「いとこ」という。既にブログ「ブラームスの辞書」では、アガーテを話題にした。この人の父親はゲッティンゲン大学の教授だが、幕末の日本を揺るがした「ジーボルト事件」の当事者フランツ・フォン・ジーボルトのいとこにあたる。

「父のいとこ」で思い出すのは、ノイシュヴァンシュタイン城の建設で名高いバイエルン王ルートヴィヒ2世だ。彼の父マクシミリアン2世は、オーストリア皇妃エリザベート通称シシィのいとこだ。ルートヴィヒ2世の若いころの肖像を見るとなんとなくシシィに似ているような気がする。2人はもちろん面識があった。文通の中では互いに「鷲」「鳩」と呼び合ったという。

2016年7月 9日 (土)

恋人の名前

元婚約者アガーテの名前が音名に分解されて主題に採用されている話はしばしば出てくる。そんなことをされているのはアガーテだけだが、ヨハン・シュトラウス2世ともなるとなかなか華麗である。妻3人婚約者13人という話はけして大げさではない。このことが作品のタイトルにも反映している。

  1. アニカ・カドリールop53
  2. アデーレ・ワルツop424
  3. ヨゼフィーネ舞踏曲
  4. ファニー行進曲
  5. オルガポルカop196
  6. チェチーリエポルカ
  7. エリーゼポルカop151
  8. ヘレーネポルカop203

こうした華麗な遍歴は皇帝の覚えめでたきにはつながりにくい。暗殺事件の現場に居合わせて、皇帝を助けた勲功で肉屋を貴族に列したりしているのにヨハン・シュトラウス2世は宮廷舞踏音楽監督官止まりだった。当時皇帝の次に有名なオーストリア人は彼であった可能性が高いにもかかわらず、皇帝は貴族への取立てに同意しなかった。

2015年7月 6日 (月)

前倒し開幕

オリンピックのサッカー競技において、グループリーグは開会式前に始まるのが通例だ。選手の疲労を考慮した適当な試合間隔に配慮し、なおかつ決勝戦が閉会式までに終わるようにするには、前倒し開幕が必要だということだ。

我がブログで現在進行中のブログ開設10周年記念企画「室内楽ツアー」は、ブラームスの室内楽をその作曲順に次々と取り上げて行くというコンセプトだ。本来ブログ創設10周年の記念日5月30日を祝い、その後キリのいい6月1日に立ち上げる予定だった。

それに加えて重要なのは、記事のタイミングだ。昨日はブラームスの元婚約者アガーテの誕生日だった。彼女は弦楽六重奏曲第2番ト長調との関係がしばしば取り沙汰される女性だということもあって、その誕生日が弦楽六重奏曲第2番の言及期間に収まるよう、記事の配置を工夫した。

弦楽六重奏曲第2番は、ブラームスにとって6番目の室内楽だ。出版はされなかったもののFAEソナタを加えると、6曲が同六重奏曲に先行する。

困った。弦楽六重奏曲第2番に先行する6つの作品への言及を、アガーテの誕生日の前日までに終えなくてはならないのだが、それら6作品の記事が想定以上に増えたために、アガーテの誕生日までに言及が終わらなくなった。

そこで、本来ブログ開設10周年記念日の後のハズだった「室内楽ツアー」を、10周年記念日より繰り上げてスタートさせた。いわば苦肉の策ではあるのだが、この手の記事公開日程のやりくりは、実は楽しみにもなっている。

2015年7月 5日 (日)

生誕180周年

本日7月5日はアガーテ・フォン・ジーボルトの誕生日。1835年生まれだから、生誕180年になる。弦楽六重奏曲第2番は、彼女の名前とともに語られる。

生きていれば今日が180歳の誕生日だ。

そしてやはりサッカーだ。日本時間明日6日の朝、サッカー女子日本代表は、ワールドカップの決勝戦に臨む。アガーテが暮らした英国イングランド代表を準決勝できわどく下しての決勝進出だ。

2015年3月 1日 (日)

アガーテ忌

今日3月1日はアガーテ・フォン・ジーボルトの命日。1909年3月1日に没した。私の性格からして2009年の没後100年に公開するのがふさわしいが、当時はまだ彼女の命日を知らなかった。だからやむなく本日の公開とする。没後106年だ。

2014年4月15日 (火)

遠距離恋愛

ブラームスがゲッティンゲンでアガーテと知り合ったのが1858年7月頃とされている。破局が1859年春だから、1年も経過していない。

当時ブラームスは9月から12月までデトモルトの宮廷で働いていた。だからアガーテと出合って遅くとも2ヶ月後にはデトモルトに戻らねばならなかった。デトモルトとゲッティンゲンの距離は、直線距離ならおよそ110kmだ。

当時の鉄道事情を加味すると意外なことがわかる。ブラームスの勤務地デトモルトには鉄道が通じていなかった。鉄道を最大限活用するならカッセルを経由してアルテンベッケンあたりから馬車が考えられるが、相当遠回りだ。かれこれ1日がかりだろう。破局の原因とまでは断言出来ないけれど。

37代引退公演・第21回スペシャルコンサートまであと26日。→こちら

2012年3月25日 (日)

一学部一教授

ブラームスの青春時代。大学の学部には教授が1名だったらしい。もちろん名誉教授は別枠だ。大学への進学率が現在の10分の1程度だった話の周辺を調べていて偶然目にした。ということはつまり教授イコール学部長ということだ。弦楽六重奏曲第2番とともに語られるアガーテは、ゲッティンゲン大学教授の娘だった。彼女の父親はどこかの学部の学部長だということだ。

現代の大学事情との単純比較はほとんど意味を成すまい。学生数も違えば位置付けも違う。それでも大学教授の位置付けの高さだけは伺える。

2012年3月 7日 (水)

鵞鳥売りの少女

ゲッティンゲン市庁舎前の噴水の中央に鵞鳥娘リーゼルの像が立っている。グリム童話に由来するとも言われているが異説もあるようだ。鵞鳥を手に持った可憐な少女の像。今ではゲッティンゲン市のシンボルになっている。奇妙なことにゲッティンゲン大学の新入生は学士会への入会の儀式の中で、この少女の像にキスをする慣わしがあった。台座は噴水池の中央にあるので、なかなかの難易度だろう。

ヨアヒムとともにゲッティンゲン大学で講義を聴講したばかりか、学士会に仮入会して、狐の騎行に興じたブラームスが、この少女の像にキスをしていたののではないかと色めき立ったが、どうやら空振りだ。像の設置が1901年だからブラームスはキス出来ない。

当時、この少女像へのキスの慣行がエスカレートしてしばしば禁止されたという。あまりに挑戦者が多いというので、キス敢行資格者を博士号取得者に制限した。今も博士号取得者の特権になっているという。当時は女子学生はいなかったらしいが、現代はそうも行くまい。女性博士がどうしているのか引き続き情報を収集したい。

この噴水池自体は古くからあるので、池のほとりでアガーテと待ち合わせした可能性くらいはかろうじて残されている。

2011年12月22日 (木)

ゲッティンゲン大学

ドイツ有数の大学。学士会活動が盛んなことでも知られている。ブラームスの伝記を紐解くとしばしば名前が出て来る。ビスマルクが在籍していたこともある。1853年リストやレーメニと決別したブラームスは、ヨアヒムと合流してゲッティンゲンで過ごす。哲学の講義を聴講したとされている。ここで重要な出会いがあった。後に「バッハ伝」を著すシュピッタや詩人ファーラースレーベンと面識を得た。1858年頃にはアガーテと会うためにデトモルトからゲッティンゲンに駆けつける。何しろアガーテの父はゲッティンゲン大学の教授である。

さらにゲッティンゲン大学について調べていてお宝情報に出会った。ゲッティンゲン大学の正式名称だ。

Georg-August-Universitat

これが大学の正式名称なのだ。ゲオルグ・アウグスト大学とでも言うのだろう。創立者ハノーファー選帝侯ゲオルグ・アウグストに因む。ハノーファー宮廷楽団のコンマスだったヨアヒムがやってくるのもうなずける。さてゴルフ4大トーナメントの一つマスターズは、毎年米国ジョージア州オーガスタのナショナルゴルフクラブで開催される。「ジョージア州オーガスタ」が、ゲオルグ・アウグストと完全に一致しているのだが、これは単に偶然と思っていいのだろうかなどと毎度毎度の与太話をしている場合では無かった。

実は彼の地の大学にはドイツ語名の他にラテン語による正式名称が存在する。おおかた「Universitus何ちゃら」とでもいうのだろうと思っていたが違った。

Alma Georgia Augusta

「Alma」は「心」「魂」「精神」という意味だから「ゲオルグ・アウグストの魂」とでも申すのだろうか。何故私がこれで驚喜するかは内緒の方向で。

2011年3月27日 (日)

献呈のデリカシー

献呈をするしない、つまり献呈の体裁を取る取らないの基準はどこにあったのだろう。

3月20日の記事「公の場」でブラームスの公の場は楽譜であると書いた。楽譜の表紙は玄関みたいなものだから、そこに献呈の辞が書かれるということは、極めてオフィシャルな性格を持った行為だ。献呈の体裁を取るということは、大臣の公式発言のようなものだ。記者クラブでのオフレコ発言とはとは違う。

後世の伝記作家や愛好家の間でどれほど有名なエピソードであっても、ただちにそれが献呈に結びつくとは限らない。アルトラプソディop53は、シューマンの3女ユーリエへの片思いとその破局が作曲のキッカケになっていることを知らぬ愛好家はいないが、アルトラプソディはユーリエに献呈されてはいない。アガーテのエピソードで名高い弦楽六重奏曲第2番もアガーテに献呈されていない。献呈していないブラームスのデリカシーを味わうべきだと思う。献呈は贈り手のブラームスにとっても、受け手にとっても幸福であることが前提になる。

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