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カテゴリー「518 読書」の7件の記事

2019年7月17日 (水)

メルケルさんの伝記

「わたしの信仰」という本だ。著者はアンジェラ・メルケルその人。別に編者と訳者がいるから、彼女の文章なり言動なりを取りまとめて和訳したものだとわかる。信仰を切り口としたメルケル伝と思っていい。あるいはメルケルさんを切り口にした現代ドイツの信仰とも言い換えうる。

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昨今の世界情勢に照らして興味深い記述にあふれている。ますます彼女が好きになる。最近体調がすぐれぬともきく。何卒ご自愛を。そしてハッピーバースデー。

2017年1月20日 (金)

座右の書

いつも手許において愛読している書物のことだ。

例によって音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第3巻78ページに驚くべき記述がある。スイスの作家でブラームスの友人ヨーゼフ・ヴィトマンの証言だ。

ウィーンでの座右の書グリムの大辞典の分冊を私からも借りたことがある。

含蓄がある。「グリムの大辞典」というのは先般記事にしたグリム兄弟のライフワーク「ドイツ語辞典」だと思っていい。グリム兄弟の生前はもとよりブラームス存命中にも完成しなかったが、分冊の形で順次刊行が進められた。刊行の済んだ分をブラームスがウイーンで入手し愛用していたことがわかる。そしてスイス滞在中はヴィトマンから借りだしていたことも同時に明らかになる。

2012年12月12日 (水)

青年向け普仏戦争史

こういう名前の本がドイツで出版されていたらしい。例によって音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第3巻105ページに友人ヴィトマンの貴重な証言がある。ブラームスから頼まれて知人の子息用にと同書を贈ったところ、ブラームス自身が夢中になって読んでいるという礼状をもらったとある。

ヴィトマンは、1890年3月のその時点で「普仏戦争」をドイツが行った最後の大戦争という言い回しで表現するとともに、ブラームスが関係する文献全てに目を通していたと証言する。ビスマルクやモルトケ将軍のエピソードは細大漏らさず知っていたと思っていい。

2012年12月12日の記事がこんな普通の記事でもったいない。

2012年10月19日 (金)

ビスマルク演説集

音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第2巻135ページに興味深い記述。友人ホイベルガーの証言によれば、ブラームスが「ビスマルク演説集」を読んでいたことが判る。1895年5月1日にブラームスが最近刊行されたばかりの「ビスマルク演説集」に感心していたと書かれている。ほとんどの演説が準備原稿の無いアドリブだったと推測してブラームスが舌を巻いていたと証言する。ビスマルク支持者だったブラームスの実情を垣間見ることが出来て貴重だ。刊行後すみやかに入手していたことが伺われる。1815年生まれのビスマルクだから、80歳を記念した刊行だったかもしれない。

現地で1895年刊行の同書は、1920年頃一度和訳本が出されたがその後は絶版で、古本屋でも入手困難な上に高値が付いているという。

2012年7月10日 (火)

クラウゼヴィッツ

Karl von Clausewitz(1780-1831)はハレの下級貴族の出身。12歳でプロイセン陸軍に入隊し、シャルンホルストの薫陶を受ける。ナポレオンのロシア遠征を前にロシア軍に投じ参謀を務める。1818年にプロイセンに復職し、ベルリン士官学校の校長になる。この頃から古今の戦史を分析し、ナポレオン戦役への従軍経験を元に思索しながら、それを原稿に書き留める。1813年に没した後遺族の手により順次刊行された。

これが名高い「戦争論」だ。

「戦争とは敵を屈服させることを通じて自己の主張を実現するための暴力行為である」という有名な定義から書き起こし「戦争は政治である」というこれまた有名な結論に至る。今でこそ古典的な地位を獲得しているものの、当時は参謀本部以外では知る人の少ない書物だった。

ここで論じられた方法論を現実の戦場で検証したのがモルトケであった。モルトケがこの本の通りに戦争をして連戦連勝だったことから、普墺戦争以降あっという間に世界中で読まれるようになり、今や堂々たる古典の位置にある。

ブラームスは普仏戦争系の書籍をかたっぱしから読破したと証言されているから、クラウゼヴィッツの「戦争論」をも読んでいた可能性は非常に高いと思う。

2011年2月25日 (金)

普仏戦争

1870年に起こったプロイセンとフランスの戦争。準備万端のプロイセンがあっという間に勝って、ドイツ帝国が成立した。

ブラームス37歳の時の出来事だ。兵隊に志願しようと考えたこともあるという。後年になってもブラームスはこのときの感激を知人に語っている。

歴史好きのブラームスは、詩人ヴィトマンから贈られた「青少年のための普仏戦争史」という書物を熟読したという。

ナポレオンの没落後の欧州を再設計するウィーン会議は、やはりドイツを小国の集まりのままにした。フランスという国はどこまでも地続きの隣国ドイツの強大化を恐れた。「プロイセンはやばい」と感じていたと思う。そのプロイセンに現われた切れ者がビスマルクだ。鉄血宰相のイメージは強いが、内政もしっかりしていた。少ない兵力を効率的に配置することで、多方面作戦に備える。プロイセン国内の鉄道網の急速な発展は偶然ではない。これに加えて巧みな外交だ。残念ながらナポレオン3世よりは役者が少々上だ。

というようなビスマルクをブラームスは賛美する。あるいはビスマルクの右腕モルトケ将軍も同様だ。2人ともブラームスに先んじてハンブルクの名誉市民に列せられていた。

2008年9月15日 (月)

マンディチェフスキー

オイゼビウス・マンディチェフスキー(Eusebius Mandyczewski1857-1929)はブラームスの友人だ。少し詳しい伝記には載っている。友人というより「一の子分」という雰囲気である。もちろんキチンとした音楽家である。私がオケにのめり込み始めた頃のスター指揮者だったカール・ベームやジョージョ・セルの恩師でもあるくらいだから、よっぽどの人物なのだ。

彼はブラームスに心酔するあまりほとんど「無給の秘書」状態だったという。

さて晩年になって十分な収入を得るようになっても、ブラームスは質素な生活をした。趣味は古楽譜や書籍の収集だ。だから彼は膨大なコレクションを残した。手回しのいいブラームスは貴重な文献の寄贈先を生前に決定していた。それはつまりウイーン楽友協会だ。そのウイーン楽友協会の司書を務めていたのがマンディチェフスキーその人である。司書とはまさに楽友協会の蔵書の番人だ。ブラームスライブラリーの管理人としてうってつけの人物である。

もちろん彼の功績はそれにとどまらない。楽譜校訂をさせても一流だった。シューベルト全集の編集主幹として仕切ったことをブラームスに誉められている。そのほかブラームスと共同で何人かの作曲家の楽譜を校訂している上に、御大ブラームス作品の校訂者にもなっている。我が家にもある。「4手のためのピアノ曲楽友協会版」の校訂者がマンディチェフスキーその人になっている。

ブラームスの生きた19世紀後半は、バッハ再興と平行して音楽学が根付いて行った時代だ。ブラームスは気鋭の音楽学者たちとの交流を通じて、最先端の音楽学を吸収していた。音楽の研究にとって、作曲家の自筆譜を含む古楽譜が超一級の資料であることを自覚していたハズだ。自らのコレクションが音楽学に多大な貢献をする宝の山であることさえ知っていたに決まっている。

だからブラームスは迷わずマンディチェフスキーにコレクションを委ねた。ブラームスのコレクションはその全量が散逸することなく今日に伝えられた。

思いがけないところから貴重な楽譜が発見されるという楽しみと引き換えだ。

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