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カテゴリー「519 リゾート」の34件の記事

2016年9月 4日 (日)

競馬の話題

ドイツ競馬の最高峰「バーデン大賞」の話を続ける。

クララ・シューマンは1868年9月4日バーデンバーデンからブラームス宛に手紙を書いた。用件をいろいろ書いた後、「当地では、競馬の話題で持ちきりです」と結ぶ。これがまさに「バーデン大賞」の話題である。同レースは9月第一日曜と決まっている。手紙を書いた9月4日は金曜日だから、レースの前々日だ。前々日となれば出走馬はもちろん、枠順だって決まっているはずだから、人々は盛んに話題にするだろう。

記事「バーデン大賞」でブラームスが同レースを見たかもしれない年を列挙したが、この手紙の存在により、1868年は候補からはずれる。もしブラームスがバーデンバーデンに滞在中なら、それを知らせる手紙を書くはずがないからだ。

一方で、手紙の結びに話題として同レースを引き合いに出すということは、ブラームスがこのレースを知っていた証拠でもある。

2016年9月 3日 (土)

バーデン大賞

ドイツ最強馬を決めるレース。バーデン・バーデンで開催される。国際的にも有名な保養地に集まるセレブ向けにと開催されたのがキッカケ。避暑客目当てのため夏の開催になる。第一回は1858年。今では毎年9月第一日曜日に開催される。

バーデン・バーデン近郊のリヒテンタールは、下記の通りブラームスが夏に滞在したことでも知られている。

  • 1865年
  • 1866年
  • 1867年
  • 1868年
  • 1869年
  • 1871年
  • 1872年

このうち1868年までは、滞在というより短期の立ち寄りに近い。1869年以降は長い滞在になる。1870年は普仏戦争によって滞在をあきらめていると思ったら、バーデン大賞自体も中止だった。レース翌日の新聞に優勝馬の名前が載ったに決まっているから、競馬に興味が無くても目には留まっていた可能性が高い。

2016年1月30日 (土)

録音の状況

ご機嫌なCDに出会った。

アンネマリー・アストレムというフィンランドの女流ヴァイオリニストのCD。まずは収録された作品の顔ぶれに軽い驚きがある。FAEソナタ 全曲版 ブラームスが担当した第三楽章スケルツォを含む全楽章に加えて2つのクラリネットソナタの作曲者ブラームス自身の編曲によるヴァイオリン版。
驚きの理由は、正規のヴァイオリンソナタに目もくれていないことだ。そしてそこには意図がある。FAEソナタはヴァイオリンとピアノの二重奏のための現存作品としてはブラームス最古の作品だ。そしてクラリネットソナタのヴァイオリン編曲は、最新の作品ということになる。ヴァイオリンとピアノのデュオとして最古と最新の作品を収録したという意図は明白だ。
演奏の場所はオーストリア・ミュルツツーシュラークのブラームスムゼウム。使用されたピアノは同館所蔵の1880年製のシュトライヒャーのグランドピアノ。もともとはウィーンのフェリンガー家の屋敷にあったものだ。リヒャルト・フェリンガーは、ブラームスの友人でジーメンス社のハプスブルク支社長。屋敷にブラームスを招いてサロンコンサートを催した。後期ブラームスの室内楽のいくつかが初演前に私的に演奏されている。その屋敷にあったシュトライヒャーをリヒャルトのひ孫にあたる人物が寄贈したという伝説の逸品だ。
もちろんブラームスもこのピアノを弾いたことがある。エジソン発明の蓄音機にブラームス自身の演奏でハンガリア舞曲が録音されたが、そのときの使用楽器がこのピアノだ。そしてミュールフェルトとクラリネットソナタさえ演奏している。
またとない設定の演奏だ。クラリネットソナタのヴァイオリン版は、ヴィオラ版に比べるとCDの数が少ないから大変貴重だ。そしてそしてこのFAEソナタの演奏の出来映えが素晴らしい。

2015年1月22日 (木)

ラムザウアー

ブラームスの立ち寄りが確認されているイシュルのカフェ。1828年創業の老舗で建物が現存しているばかりか営業中でもある。

ブラームスの立ち寄りの目的はヨハン・シュトラウス2世との懇談だったと目される。この店はブラームスのゆきつけではなくて、ヨハン・シュトラウス2世のごひいきだったという。

2014年9月17日 (水)

歴史的水害

イタリアのヴェローナは、「ロミオとジュリエット」の舞台として名高い。町全体が世界遺産になっている。同地のシンボル的存在が、円形劇場だ。紀元30年の完成と言われている。ローマ、ナポリに次ぐ大きさの巨大建造物の柱の一つに、洪水を記憶するためのプレートが埋め込まれている。水が達した高さを示す役割があるのだが、同時にその洪水が起きた日が刻印されている。

「1882年9月17日」とある。

記事「橋崩落」で紹介した、シューマンの4女オイゲーニエの手記にある豪雨は、実はこの水害の証言でもある。

一行はクララの誕生日9月13日をコモ湖畔のベラッジオで迎えた。15日に人と会う予定があるために、ミラノ、ヴェローナを経てヴェネツィアに行かねばならないのだが、13日から降り出した豪雨のために、ブラームス他1人は出発を見合わせる。結局クララ母子だけで雨をおして出発した。一旦雨は上がったものの翌14日にミラノを発つ際には再び豪雨となった。ヴェローナに程近いアイジュ川をクララ一行を乗せた列車が渡り終えた後、その鉄道橋が濁流に流された。これが恐らく14日だ。ヴェローナ市街への浸水は、プレートにある通り17日だったら辻褄が合う。

オイゲーニエによればブラームスのヴェネツィア着は遅れに遅れて18日と目される。鉄道の復旧には数週間かかったとオイゲーニエが証言するが、17日に街が洪水にあったとすれば、復旧に時間がかかったとして不思議は無い。

円形劇場の柱に埋め込まれたプレートが、実はブラームスにも遠くでつながっているというおそらくここでしか読めない話。この夏日本はあちこちでひどい豪雨に襲われた。いたましい被害も伝えられている。本日の記事をもってお見舞いに代えたい。

2014年8月16日 (土)

温泉の決め手

産業革命の先陣をきった鉄道の位置づけからして、初期の鉄道が貨物輸送目的だったことは事実である。しかしながら蓋を開けてみると想定以上に旅客が集まった。鉄道会社にとって嬉しい誤算だ。

鉄道会社は荷物の獲得同様に、集客に工夫を凝らすようになる。ビジネス目的の都市間移動は今ほど見込めなかった時代ではあるのだが、保養地、リゾート地へ人々を輸送することを画策する。目をつけたのは温泉だ。数ある温泉地は先を争って鉄道駅を誘致するようになる。駅の無い温泉は衰退の憂き目にあった。自慢の「ドイツ鉄道地図」巻末の索引で「Bad~」という駅を数えた。213箇所あった。他に「Baden」がつく駅も6つある。

ドイツ語版のウイキペディアで調べると、ドイツ国内で「Bad」で始まる地名は181箇所とされている。全てに駅が最低1個ある計算だ。

2014年7月19日 (土)

ランケン

音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第1巻120ページ。ジョージ・ヘンシェルは1876年の夏をリューゲン島のザスニッツでブラームスと共に過ごした。7月19日ヘンシェルは一足先にベルリンに戻ることになり、ブラームスが駅まで送ってくれたと証言する。その駅を「ザスニッツから3マイルのランケン」だと明記している。

この「ランケン駅」が見つからなかった。3マイルだからおよそ5km。愛用の道路地図でザスニッツから5km付近を捜しても「ランケン」が見当たらない。英国生活が長いヘンシェルが使うマイルは「1600m」の方だ。

このほど買い求めた「ドイツ鉄道地図」で全ての謎が解けた。何のことはない終着駅ザスニッツの一つとなりの駅がランケンだった。「Lancken」という綴りも判明した。道路地図でもザスニッツの隣町に駅の記載があるのだが、その街の名は「Klementalvitz」という名前になっていた。道路地図だから街や集落の名前は書かれていても、そこの駅名は省かれている。集落名がそのまま駅名ではないことはよくある話だ。道路地図なのだから仕方が無い。

なお残る疑問は、距離程。ザスニッツからの距離は直線距離なら2マイルほどだ。これが3マイルと記したヘンシェルの証言と合わない。よくよく地図を見直すと、現行ザスニッツ駅から東に1km少々のところにSasnitzhafenという駅が、書いてある。今は無い駅だが、ブラームスの存命時はこちらがザスンニッツ駅だったかもしれない。ザスニッツのフェリー乗り場が後に移動したこともあって、廃止されたようだ。こちらの旧ザスニッツ駅を起点にすれば、ランケンは概ね3マイルの距離で矛盾がなくなるがかなり苦し紛れ。

本日の記事、苦労して7月19日に割り当てた。暑い夏こそ細か過ぎを恐れない。

2014年7月 6日 (日)

廃線マニア

鉄道マニアと一口に言ってもその範囲は広い。「車両」「運転」「特急」「夜行列車」「駅名」「時刻表」「グッズ」「写真」「旅行」「キップ」など、それぞれの分野でのディープな愛好家が存在する。「廃線マニア」もその一つである。かつて鉄道が走っていた痕跡に愛着を感じる人々だと仮に定義する。

今はさびついた線路、朽ち果てた駅舎、かすかに盛り上がった軌道跡、橋脚の名残りまでものが愛好の対象だ。古地図を片手にテクテクと散策という世界である。

1896年5月22日。クララの訃報をイシュルで受け取ったブラームスは急ぎフランクフルトに向かう。グムンデンを経由してヴァルスからパッサウに抜けようと画策したが、ヴァルスで乗り換え損なってリンツまで行くという失態を犯した。地図を広げた直感では、イシュルからザルツブルクに抜けて、そこからミュンヘン経由でフランクフルトを目指す方が効率的にも見えるが、イシュル-ザルツブルク間に鉄道が無いから、グムンデン経由もむべなるかなと一応納得した。

ところが、あれこれと調べているとどうも昔は、イシュル-ザルツブルク間に鉄道が敷かれていたらしい。ヴォルフガング湖南岸をかすめるルートだ。現代のガイドブックでは、ヴォルフガング湖へはバスを利用すると書いてある。1879年代から20世紀初頭まで鉄道があったとされている。つまりクララの訃報を受けたブラームスは、鉄道でザルツブルクへ抜けることも出来たということだ。惜しむべきはこの鉄道が軌道幅1000mmの狭軌で、ザルツブルクでは必ず乗り換えになってしまうということだ。クララにもしものことがあったら、グムンデン経由にすると決めていたに違いない。

2014年6月30日 (月)

Nerobergbahn

ウィースバーデン郊外にある登山鉄道。標高245mのネロベルクに登るための小さな鉄道なのだが、マニアの間では有名。世界唯一の水力鉄道だ。ワイヤーでつながれた2両のうち頂上側車両のタンクに水を満載し、その重みで傾斜を下ると、麓側の車両が引っ張られる仕組みだ。麓駅に着いた車両のタンクから水が抜かれ、同時に頂上についた車両のタンクに注水される。頂上側へはポンプで水をくみ上げているから、完全なエコではないものの、発想がユニーク。冬季は水の凍結を理由に運休という設定がすばらしい。

ブラームスは1883年夏ウィースバーデンに滞在した。ここで交響曲第3番を作曲したことで名高い。当時ブラームスが滞在した家は、市街中心のマルクトプラッツから、ネロベルグに向かう途中にあった。もしやブラームスが乗車しているかと思って調べたが、開業が1888年だった。フランクフルトから近いので、乗車の可能性はゼロではないことが救いだ。

「Nero」はイタリア語で「黒」だ。「Neroberg」は「黒山」かもしれないが、ローマ皇帝ネロに関係があるかもしれぬと妄想ばかりがふくらむ。

2014年6月23日 (月)

ポーター

荷物を運ぶ人。たくさんの荷物を運ばねばならない客にとって心強い存在。音楽之友社刊行「ブラームス回想録集」第3巻78ページ。ヨーゼフ・ヴィトマンの証言の中に貴重な言及がある。

ブラームスは非実用的なことについては容赦なく批判したと言う実例として、スイス鉄道でのルールを挙げている。ブラームスはスイスではポーターが客の荷物を持って客車内に入って来れないということを、声高に批判したと証言する。

夏のリゾートへの旅だとすれば、まとまった時間滞在するブラームスの荷物はバカにならない量になっていたと思われる。その荷物を持って駅まで辿り着いたというのに、ポーターは列車の戸口までしか運んでくれないと文句を言っているのだ。他の国では車内の座席まで運んでくれるということが下敷きになっていると思われる。

ドイツやオーストリア、あるいはデンマークやオランダではそんなルールは無いと言いたいのだろう。スイスだけの馬鹿げたルールに立腹していると解される。

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