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カテゴリー「524 ワイン」の86件の記事

2024年7月19日 (金)

野田シェフのドイツ料理

このところ宴会が多いとかいた。宴会までの時間つぶしに近くの書店に立ち寄っていてお宝に遭遇。

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2010年刊行の料理本。ドイツというのが決め手。ドイツ料理が様々な切り口から語られる。人物、地理、歴史、食材など様々な角度からドイツ料理に切り込んでいる。著者は名高いドイツ料理のシェフだ。

問題は人物。取り上げられているのは下記。

  1. バッハ
  2. モーツアルト
  3. ベートーヴェン
  4. シューベルト
  5. メンデルスゾーン
  6. シューマン
  7. ワーグナー
  8. ヘルムート・コール
  9. カール・ベンツ
  10. マレーネ・ディートリヒ
  11. フランツ・フォン・ジーボルト
  12. ゲーテ
  13. グーテンベルク
  14. ルートヴィヒ2世

簡単な略歴に始まり、ゆかりの土地を切り口に料理に切り込む。1人最低1つはレシピーが写真付きで紹介される。

素材や料理はさすがに詳しい。

ハンバーグ、キャベツ、じゃがいもなど目から鱗の詳しさ。そしてそしてビールやワインも地場の特徴が雄弁に語られる。特筆すべきはお酢だ。他の欧州系の料理に比べドイツ料理はお酢の使用頻度が段違いだと指摘して、お酢の効能まで事細かである。

ドイツとひとくくりにしてしまいがちな点に釘をさす。キーワードは「多彩さ」だ。地域ごとの特性だったり、郷土料理ならほとんど家庭ごとの多彩さだと何度も何度も念が押される。

2021年10月22日 (金)

Freundeskreis

酒宴系歌曲を物色しているとすぐに気づく。合唱曲にも同じノリが多い。CDショップをうろついていて興味深いCDを見つけた。

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シューベルト世俗合唱曲全集だ。7枚組には下記の通りのタイトルがついている。

  1. Verganglichkeit うつろい
  2. Liebe 愛
  3. wigkeit 永遠
  4. Heldentum 英雄
  5. Natur 自然
  6. Feste 祝祭
  7. Freundeskreis 語らい

3巻の「永遠」と6番の「祝祭」には、どう見ても宗教的な作品がはいっているなど突っ込みどころはあるけれど、7巻がズバリ酒宴系になっている。どれもピアノ伴奏付の合唱曲だがこの7巻が一番楽しめる。

酒宴系作品を収録順に列挙する。

  1. Trinklied D356 ?
  2. Trinklied D148 カステッリ
  3. Trinklied D183 ケルナー
  4. Trinklied D267 ?
  5. Trinklied D75 シェッファー
  6. Trinklied aus dem 16Jahrhundert D847 グレッファー
  7. Trinklied im Mai D427 ヘルティ
  8. Trinklied im Winter D242 ヘルティ

いやもう独唱よりは層が厚い。酒宴だから列席者で唱和するのが美しいということか。大好きなヘルティが2曲もある。昨日紹介した独唱歌曲とのテキストの重複はD183のケルナーだけ。独唱も合唱も同じD183を背負っている。D356は未完でピアノパートをチェルニーが補っているという。とにかく突っ込みどころ満載で飽きない。

そしてそしてブックレットにはオリジナルのテキストが全文掲載されている。見ての通りジャケットはビールがモチーフになっているから、もしやと思ったが、テキストにビールは全く出ない。全てワインだ。ジャケットのオクトーバーフェスト然とした絵は紛らわしい。楽しいから許すけど。

シューベルトは仲間との語らいのために、多くはアルコール入りの集まりのためにふさわしいテキストを選んでしきりに曲を付けていたと解したい。それは独唱歌曲よりむしろ合唱曲に重心がある。独唱というテーマからは千鳥足気味の逸脱だ。

 

2021年10月21日 (木)

酒宴好き

酒宴好きは洋の東西を問わない。万葉集にも飲酒や宴会礼賛の歌を見かけるが、シューベルトの独唱歌曲にもざっとタイトルに現れるだけで以下の通り存在する。

  1. 酒宴の歌 Trinklied D183 ケルナー
  2. 宴会の歌 Tischerlied D234 ゲーテ
  3. トカイ賛 Lob des Tokayaers D248 ゲーテ
  4. 宴席の歌 D306 ダインハルトシュタイン
  5. 結婚の歌 D463 ライトナー
  6. 酒宴の歌 D507 マティゾン
  7. 酒宴の歌 Trinklied D888 シェークスピア
  8. 酒宴でのヴァレンシュタインの槍兵 D931 ライトナー

最初のD183は1815年の作曲だからシューベルトは18歳だがひるむ様子もない。まずは上記8番。この中では異質。タイトルに「酒宴」があるけれど、短調はこの曲だけだし、演奏時間も3分を越えている。どこか物語調だ。それ以外はみなイケイケの長調で、すかっと短い。「それでは皆様お手許の杯をもってご起立ください」とやったあとにあいさつ代わりに歌われる感じ。どれも2分以内。乾杯前の長い挨拶は得てして嫌われる。5番は「結婚の歌」ではあるのだが、聴いた感じは婚礼の酒宴みたいなイメージなので入れておいた。飲まれているお酒はどうもワイン優勢な感じがする。

問題は、ブラームスの歌曲にはこの手の宴会礼賛の作品は無いことだ。ブラームス自身はお酒好き、宴会好きであったと複数の証言があるけれど、そういうテキストに曲を付けていないということだ。

 

 

2021年8月30日 (月)

トカイ賛

名作ひしめくゲーテ&シューベルトの中でひときわ異色なのが「トカイ賛」D248だ。オリジナルは「Lob des Tokayers」というが少々の予備知識がいる。「Tokayer」(トカヤ)はハンガリーのワイン産地の名前。現地語では「Tokaji」と綴る、世界三大貴腐ワインの一角を形成する。もう2つはフランスのソウテルヌとドイツのラインガウかモーゼルだ。3か所のうちトカイだけがハプスブルク領内とあって、ハプスブルク王室に献上されてきた。秋になるとその年の出来映え監査する勅使が派遣されて、専用列車が仕立てられたという。

皇帝おひざ元のウイーンだからその威光は絶大だった。ブドウに付着するカビの力を借りて糖度を高めた独特の甘口で、細かなランク付けがされていて、ドイツ産の「トロッケンベーレンアウスレーゼ」クラスの上級品は高価だったからシューベルトが賞味したかどうかは怪しいけれど、ゲーテならあるいはという気もする。だからその味わいを詩に遺したのだろう。

さあ行くぞとばかりに張りのあるアウフタクトに始まる高鳴るような行進曲調。トカイワインのヴィンテージものを開けるさいの高鳴りと相通ずるものがある。

2020年7月21日 (火)

接ぎ木術

19世紀後半に欧州ワインを蹂躙したフィロキセラ。新大陸原産の寄生虫への対抗策を模索する中から編み出されたのが接ぎ木だ。

フィロキセラはブドウの根を壊滅させるのだが、北米産のブドウ品種にはこれに対する耐性が備わっていた。北米産のブドウに欧州産のブドウを接ぎ木することで解決を見た。

さらに接ぎ木の技術が急速に進歩し、対フィロキセラ以外にも様々な恩恵がもたらされた。栽培環境に最適な台木と接ぎ木の組み合わせを自由に選ぶことが出来るようになった。

そして毎度毎度のオチ。

北ドイツ音楽の伝統のハンブルクという台木にウィーンを接ぎ木したのがブラームスである。マーラーはブラームスの晩年を指して「堅くこわばっているが甘い果実を結ぶ」と評した。

 

2020年7月20日 (月)

新ドイツワイン

神保町の書店で見つけた本のタイトル。1983年の刊行ながら状態のいい美品が700円だった。世の中の辛口志向につられる前、甘口の白全盛のころのドイツワイン。時代遅れといえばその通りなのだが、補ってあまりある記述、読みやすさだ。

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ブドウ栽培への深い考察、貴腐菌やフィロキセラついての説明も群を抜いてわかりやすい。剪定、亜硫酸添加、エクスレ度、補糖など興味深い事柄が目白押し。ワイン法の解説などは、現行法との違いを覚悟すれば読み物として楽しめる。

世の中に流布するワイン関連本が、ドイツワインに割くスペースを思うと一冊丸ごとドイツワインという状態は本当に貴重だ。

 

 

2019年12月 2日 (月)

徒歩旅行

さまざまな移動手段がある中、あえて徒歩を選んだ場合に「徒歩旅行」と称されることになる。徒歩が当たり前だった時代にも経路によっては船という選択肢が存在した。ブラームスの時代はというと、飛行機と自動車だけは一般的でなかったが、船、馬車、自転車、鉄道は選択肢として十分な可能性があった。1853年以降ブラームスは立て続けにライン地方を訪れている。

  1. 1853年8月26日 単独
  2. 1854年8月10日 ユリウス・オットー・グリムと。
  3. 1855年7月15日 クララと。
  4. 1857年7月12日 クララの遺児のうち男の子、クララ、姉エリーゼと。
  5. 1868年9月4日  父と。

このうち1番2番3番が「徒歩旅行」だったと明言されている。

ライン地方は現在でもドイツを代表する観光地だ。そして何よも何よりもドイツを代表するワイン産地でもある。これらに言及する伝記の記述が具体的な地名を明記していないのは残念というほかは無い。もちろんブラームスご一行とワインの関わりについても言及されない。まだブレーク前のブラームスに高級ワイン三昧は難しいかもしれないが、真夏のこの地区に徒歩で足を踏み入れながらワインを口にしていないとなるとそのほうが余程不自然だ。

5番目は書物によっては「ラインガウ」と明記されている。1865年という最優良ヴィンテージのワインを賞味出来た可能性がある。ドイツレクイエム初演成功とハンガリア舞曲のブレークで少しは金回りが良くなっていたハズだ。

 

 

2018年7月25日 (水)

FOOD,WINE & SONG

これがCDのタイトルだ。驚くべきCD。ザ・オルランド・コンソルトという声楽アンサンブルが出している。時代としてはバロック以前のルネサンス時代で、領域としては英独仏伊に、なんと驚きのブルガリアを加えたもの。

当時の歌の中からワインや食べ物を扱った作品が集められているばかりか、そこで扱われた料理ないしはお菓子のレシピが、取り扱い各国の言葉で載っている。

サイズこそCDサイズだが、体裁は小さな本だ。

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ドイツは3曲。いずれも1500年から1585年くらいまでの歌だ。
辞書片手にレシピを見ながら聴いていると時間を忘れる。いやはや楽しい。

2018年7月15日 (日)

お盆のファンタジー34

ブラームスさんお手製のCDをさっそく聴こうという話になったと思ったら、娘たちが部屋に入ってきた。何かと思えば手にワインを持っている。ブラームスさんが持参したワインを冷やしておいたとか。パパにばれないように野菜庫の奥に入れて大根でかくしておいたと娘が言っている。やけに早い登場はそういう工作のためだったそうだ。

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サプライズのつもりらしい。決勝戦を見ながらとも思ったが、特製CDを聴きながらも悪くあるまい」と自慢気に話すブラームスさんだ。

あんたの慰労だと薦めてくれた右側のアイスワインは絶品だった。

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ご覧の通りのゴージャスな色合い。

2017年6月26日 (月)

1811年

じゃがいもの普及について調べている間に興味深い話を掘り当てた。

1771年は「厳冬と夏の長雨」によって凶作だったらしい。ドイツの穀物生産が壊滅的な打撃を被ったとされている。その一方でじゃがいもの生産は維持されたことから、救荒作物としてのじゃがいもの優秀性が広く認識されるキッカケとなった。

「厳冬と長雨」に対して高い抵抗力を示したじゃがいもだが1811年は、不作に陥ったという。今度は夏の「旱魃」が原因とされている。

ご記憶だろうか。記事「ヴィンテージ」でワインの優良年を列挙した。その中で1811年は特筆されている。この年のワインの出来映えは単なる優良年にとどまらず、19世紀最高のヴィンテージとして記憶されている。シュタインベルクが始めて「カビネット」の称号を用いたり、ゲーテが絶賛したその年だ。

じゃがいもや穀物が深刻な不作に陥った同じ年が、ワインの当たり年になっているということだ。ワインの優良ヴィンテイージは豊作を意味していないということを割り引いても、面白い現象だ。ブドウ、とりわけ主力品種のリースリンクは、十分な日照によってその品質を一層際立たせる。他の作物にとっては旱魃になってしまうような状況が、マイナスに作用しないということかもしれない。

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