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カテゴリー「524 ワイン」の76件の記事

2016年9月26日 (月)

エッツェル

5世紀に欧州を席捲したフン族の王「アッティラ」のドイツ名だ。「Etzel」と綴る。

現代ドイツの道路地図を開く。目指すは巻末索引だ。「Etzel」で始まる地名は意外と多い。

「Etzelberg」「Etzeldorf」など。本当にアッティラに関係するのかについてはなお、疑ってかかる必要もあるけれど、弘法大師由来の地名起源話と同じく、民衆の願い込みの話だろう。あるいはフン族の侵入の怖い思い出の反映かもしれない。フン族の名は、そのものずばりがハンガリーに投影されているくらいだ。

2015年2月10日 (火)

ドリンク3部作

コーヒー特集が終わった。すでにビール特集を終えている。1000日の長きにわたったアラビアンナイト計画の冒頭とエンディングがワイン特集だった。「ワイン」「ビール」「コーヒー」をもってドリンク3部作と名づけたい。どれもブラームスが愛した飲み物。そのトータル摂取量はおそらく「ビール」「コーヒー」「ワイン」の順だと推察する。

ブログ「ブラームスの辞書」で展開したアラビアンナイト計画の期間内にこれら3部作を公開する予定だったが、次女のオーケストラネタやビスマルクネタが予期せぬ膨張を起こしたために、ビール、コーヒーの公開をアラビアンアイト計画後に延期した。

本当はこれらに「じゃがいも」を加えた食品4部作として構想されたのだが、じゃがいもネタが集まらずに無念の縮小となった。

ひとまずドリンク3部作完結である。

2015年1月29日 (木)

浸透度の違い

コーヒーは、ビール、ワインと並ぶドイツの3大飲料と言われている。しかしながら、ビールやワインが地名や人名に色濃く痕跡を残しているのと違い、コーヒー関連の地名や人名はほぼ存在しないと申していい。

その違いはそれら飲用受容の歴史に起因するものだ。コーヒーのドイツ侵入は16世紀を大きく遡らない。ビールやワインは紀元前に起源を持つ。さらに、コーヒーはドイツ人にとって舶来であるのに対し、麦やブドウはドイツ産である。原料作物の栽培から醸造までが国内で完結するから、生産流通に携わる層は、コーヒーよりも分厚いと見ていい。

コーヒー関連の語彙こそ、そこそこの用例が存在するが、地名人名への非反映は、歴史そのままの反映と見ていい。

2014年8月 3日 (日)

ワイン本線

ライン右岸線の駅の話だ。ライン川東岸を北から南に遡るとしよう。ローレライを過ぎて3つ目の駅がロルヒだ。「Lorch」と綴る。そこから各駅停車に駅を列挙する。

  1. Lorch
  2. Assmanshausen
  3. Rudesheim
  4. Geisenheim
  5. Oestlich-Winkel
  6. Hattenheim
  7. Erbach
  8. Eltville

何と言うことはないドイツにありがちな地名の羅列なのだが、ドイツワイン愛好家はこれだけで頭に血がのぼるハズだ。モーゼルとともにドイツワインの頂点に君臨するラインガウの心臓部だ。これらの地名は同時に高級ドイツワインのブランド名にもなっている。

2番のアスマンスハウゼンの少し南でライン川が大きく曲がり、しばらく東西に横たわると、やがて3番のリューデスハイム。ここはブラームスゆかりの地。この地のワイン業者の妻がベッケラートといい、名高い肖像で有名だ。第三交響曲のために滞在したヴィースバーデンではブラームスを手厚くもてなした。食卓にはラインワインがあったに違いない。

4番は世界的に有名なワイン醸造大学がある。5番目のOestlich-Winkelは2つの地区の合成駅名で、どちらも名高い吟醸地だ。シュロスヨハニスベルクもこの近くだ。何やらフランスっぽ7番エルトヴィレから北上して谷あいに入るとブランド畑のオンパレードだ。

2014年8月 2日 (土)

ワイン列車

乗客にワインを振舞うお座敷列車の類ではない。

ハプスブルク家代々の皇帝は、ハンガリー・トカイ産の貴腐ワインを愛した。フランス・ソーテルヌ、ドイツ・モーゼルと並び3大貴腐ワインと賞される超高級ワインの産地がトカイだ。とりこになったのは皇帝ばかりではなく、シューベルト、ヨハン・シュトラウス、リヒャルト・シュトラウスまでもがその味わいを激賞した。

秋も深まる頃ティサ川とボドルク川の合流点トカイでは、川の蒸気で霧が立ち込めることで、貴腐菌ボトリティス・シネレアがブドウに付着する。その収穫は早くても10月末で、年末にずれ込むこともある。トルコ軍の侵攻で収穫が出来なかった偶然が、貴腐の発見だったというまことしやかな起原譚も残っている。約136kgの仕込み樽に、150kgの貴腐ブドウが仕込まれるとトカイ・アスー・エッセンシアという最高級品になる。樽で2~3年の熟成の後、瓶詰めされてさらに1~2年でやっと飲み頃。

ハプスブルクの宮廷には飲み頃になったワインをチェックするための係官がいた。毎年秋に現地に派遣されて出来映えを確認し、規格適合品だけをウィーンに送るためだ。トカイ産貴腐ワインをウィーンに送るために19世紀の後半以降専用列車が仕立てられたという。

2014年2月 9日 (日)

歴史を語りたい

私は何かと歴史を語りたいほうだ。「鉄道特集」の序盤はドイツ鉄道の歴史的側面を意識的に記事にしてきた。過去の特集「ワイン」「ビール」「地名」でも、、歴史を重要な切り口にしてきた。私の興味の方向を無理やりジャンルで規定するなら以下の通りになる。

  1. 歴史
  2. 音楽
  3. サッカー
  4. 地名
  5. 鉄道

「ビール」「ワイン」のようなモノグラフィーは別として、大きな柱はほぼ上記の通りだ。何を語るにも歴史を避けて通れない性格だ。残念ながら次に音楽が来る。当ブログ「ブラームスの辞書」は大音楽家の名前をタイトルに戴いているのに、昨今の展開は音楽からの逸脱が常態化している。「音楽系ブログ」と名乗るには怪しいレベルだと自覚だけはしている。

何か語ろうとするとき、歴史から説き起こさないと落ち着かないのだ。先に歴史ネタを言及し、そこから話題を広げて行くことで、後からリンクを貼れるというブログ運営面での効果も期待している。

ブラームスが鉄道を頻繁に利用したことだけは、状況証拠から見て確実なのに、直接証拠が見当たらない状態は、私にとっては極楽だ。出来るだけ広くネタを収集することが、ブラームスと鉄道の関連を広く担保することになるからだ。それらは全て「ブラームスが知っていたかもしれない話」であると考えると、どんなに小さなことでもおろそかに出来ない。

2013年11月23日 (土)

ブラックベルベット

カクテルの名前だ。詳しいレシピは判らぬが、シャンパンとギネススタウトで作るらしい。ドイツ帝国宰相ビスマルクのお気に入りだったと聞く。1861年にアルバート公の死を悼んで考案されたという。

ギネス社は1759年にアイルランドのアーサー・ギネスがダブリンで起こした会社だ。スタウトと呼ばれるエール・上面発酵ビールだけを作って1886年の時点で世界最大のビール会社になった。世界記録を集めた「ギネスブック」の主催者でもある。

19世紀初頭に同社が発売したスタウトは黒ビールの代表格。白い泡とのコントラストが高貴な感じである。生涯アイルランドはおろか英国にわたることさえ拒んだブラームスだが、1886年時点での世界最大のメーカーだったギネスのフラッグシッププロダクトを賞味していた可能性は低くない。

ビスマルク愛飲のカクテルだって飲んでいたかもしれない。

2013年7月15日 (月)

ビールの牙城

ブラームスの伝記に登場する嗜好飲料は3つある。ビール、シャンパンを含むワインそれからコーヒーだ。

これら嗜好飲料のドイツにおける位置付けについて調べた。現代1998年の一日一人当たりの男女別消費量だ。16歳から64歳を対象とした調査である。男性のランキングを示し、女性の消費量を添えた。

  1. ビール 399.4g 女性86.9g
  2. コーヒー 356.0g 女性360.5g
  3. ミネラルウォーター 245.2g 女性360.5g
  4. ジュース(炭酸飲料含む) 194.3g 女性160.1g
  5. 茶 74.7g 女性76.5g
  6. ワイン 44.1g 女性40.3g
  7. ゼクト 5.5g 女性9.4g
  8. 蒸留酒 5.2g 女性4.4g
  9. 果実酒(ワイン以外) 4.6g 女性4.4g

やはりドイツはビールだと再認識した。400gとは缶ビール1本と少々。どう見ても男の飲み物だ。男女間でこれほど差が大きい飲料は他にない。

無論この値がブラームスの生きた19世紀にただちにあてはまるとは思えない。ミネラルウォーターや炭酸飲料の台頭は20世紀の出来事だ。ワインの相対的地位はもっと高かったと思われる。

2013年6月30日 (日)

続ドルフ考

8月10日の記事「ドルフ考」の続きだ。というよりこちらを効果的に発信するための前振りが先般の記事だったと申し上げてよい。

ワインのことを調べているうちに某図書館で興味深い資料を見つけた、1979年のドイツワインのブドウ園のリストだ。5千数百のブドウ園の名前がエリアごとに列挙されている。道路地図が扱う地名よりももっと小さな単位、日本で申せば小字程度の地名が丹念に拾われている感じだ。結果として優秀な地名リストになっている。

ワインの銘柄はエリア名、地区名、畑名が順につながれている。最後の畑名は買い手へのアピールの効果も狙ってか奇抜なものも少なくないから、純粋な地名とは区別も必要だが、その一つ上の地区名は、道路地図の索引にも載っている。大体これが1200程度収載されている。いわばそれはブドウ園の存在する地名リストと考えてよい。このリストに「~dorf」という地名は以下の12しか現れない。1%である。

  1. Mosel Saar Ruwerの Ellenz-Porsterdorf
  2. Mosel Saar Ruwerの Bausedorf
  3. Mosel Saar Ruwerの  Mertesdorf
  4. Mosel Saar Ruwerの  Onsdorf
  5. Mosel Saar Ruwerの  Sehndorf
  6. Nahe の Oberndorf
  7. Rheinpfarzの Nussdorf
  8. Badenの Altdorf
  9. Badenの Nimdorf
  10. Badenの Markdorf
  11. Wurttembergの Schorndorf
  12. Frankenの Repperndorf

ドイツ道路地図での出現率は6%強だから、数分の1のオーダーだ。語尾以外の位置にDorfが来る地名もかなりな数あるが、ワイン園のリストではゼロだから実感としては10分の1という感じがする。特にブラームス在世の19世紀における最高の産地ラインガウ地区ではブドウ畑にドルフという地名が現れないということだ。

「ブドウ産地に地名語尾ドルフは現れにくい」という仮説を提案する次第である。記事「石の山」で、植物としてのブドウの特性を述べた。「石ころだらけの斜面」を好むと書いた。これにより主食の小麦やじゃがいもと耕作地が重ならないと指摘した。一方8月10日の記事「ドルフ考」では、ドルフの起源は「畑」であると紹介した。

これら一連の現象が「ブドウ園の存在する場所に地名語尾dorfが現れにくい現象と符合しているように思えてならない。小麦やじゃがいもの栽培に適した土地こそが「dorf」なのではあるまいか。ブドウはドルフを嫌い石の山に追われていったことを地名の偏在が仄めかしてはいないだろうか。

ワインの原料であるブドウの生産は、穀物に対しておよそ5倍の収益があるけれど、投入する労働力は9倍になる。土地生産性は高いけれど、労働生産性は低いといわれている。出来不出来が天候に左右されることはどちらも同じだ。どちらを選ぶか農民に選択の余地があったわけではない。気候や土壌によりブドウが出来ない土地も多い。よい土地があればひとまず穀物かじゃがいもを作っておくのが無難だった。

本日のネタ実に私好みだ。惜しむらくはブラームスに関係がない。

2013年6月28日 (金)

ラインガウ

水辺語尾「au」を調べていると悩ましいこともある。「bau」「chau」「dau」「hau」「sau」などさまざまな子音を伴う「au」が等しく「水辺語尾」でよいのかという問題だ。「このうち「sau」は意味がよろしくないから「所有のs+au」という解釈でストレスを減じることが出来るが、その他は相当悩ましい。

その代表格が「gau」だ。ワインの大産地「Rheingau(ラインガウ)」を思い出す。地名語尾「gau」は「水辺の森林」「水の豊かな森林」を表すらしい。水辺語尾ともいえるが、森林であることが必須だ。ラインガウを写真で見ると、畑の上部の山の方は、こんもりとした森に見える。実はこれがブドウ生育条件の目安になっているとも聞く。こんもりとした森の下は良いブドウ畑の印だという訳だ。地名語尾「gau」の定義に符合する。

ラインガウはカール大帝の王宮があったインゲルハイムの対岸という絶妙の位置にある。雪解けのタイミングからブドウ栽培の適性を見抜いたという伝説には用心を怠らないにしても、ラインガウの古文献初出は西暦772年であり、これがカール大帝即位の4年後だという不気味な符合には驚かされる。

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