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    2012年3月28日から4月4日まで、次女の高校オケのドイツ公演を長男と追いかけた珍道中の記録。厳選写真で振り返る。

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    自分で買い求めて賞味したビールの写真。ドイツとオーストリアの製品だけを厳選して掲載する。

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カテゴリー「534 教師」の10件の記事

2013年5月16日 (木)

マエストロ

娘らのオケの顧問でもある指揮者は、高校の音楽の先生。音楽家であるのと同等かそれ以上に優秀な教育者。部活動という性格上、2年でメンバーが完全に入れ替わってしまうオケを、毎度毎度高みに導いてくれている。代それぞれにメンバー数も、生徒のキャラも違う中、多感な乙女たちを纏め上げ、まばゆいゴールに到達する。

メンバー全員に向かうべき頂上を指し示す。生徒は一人ひとりの立場からそれぞれの方法で頂上を目指す。生徒の自主性に任せ緩やかに穏やかに目を光らせる。時に家父長であり、時に担任であり、そしてもちろん指揮者。そしてかなりのアイデアマン。何かのサプライズをいつも考えている感じ。生徒は慣れたものだ。少々のハプニングがあっても「また先生のサプライズか」くらいに動じない効果もあるらしい。

彼が次女たちオケに着任して最初に指導したのが30代だったというから、教え子の数も増えてきた。我々が先日味わったようなコンサートが7年連続しているということだ。その7年を支えたメンバーの中から先般のコンサートでは、78名がOGオケとして演奏を披露した。ホルストの「火星」と「木星」。手の内の知り尽くした仲間が集まったクラス会のノリなのだが、演奏は素晴らしい。「現役と違って練習時間が短いから」とメンバーは謙遜するが、演奏には大人の香りも備わっていた。たった7回の合奏練習だったと聞いて驚いた。常設のオケではないのがもったいないくらい。大学オケの水準を軽々超えて見せて、振り返ってウインクかます感じ。過去4回聴いた中では最上の出来だったと思う。現役の演奏とはまた一味違う味わいがあった。

すべてマエストロのお人柄。

2012年8月 8日 (水)

トレーナー

私が所属していた頃、私の大学オケには、トレーナーがいた。通常の練習や合宿でお世話になった。弦楽器に3名、木管に1名、金管に1名、打楽器に1名だったと思う。常任指揮者のほかにプロの音楽家から定期的に指導を受けた。

次女の高校オケにも、トレーナーがいる。いるどころではない。各楽器に1人いると申してよい。たとえば弦楽器はヴァイオリンには2名いる他、ヴィオラ、チェロ、コントラバスのほか、こともあろうにハープにもいらして計6名。木管はフルート、オーボエ、クラリネット、ファゴットに各1名で4名。金管楽器はトランペット、ホルン、トロンボーン、チューバに各1名で4名。打楽器には2名おられて、なんと総勢16名になる。

費用は部費から支払われる。定期的に練習を見てもらうほか、合宿にも交代でおいでいただける。弦楽器で申せばパート練習の指導が中心だが、弦分奏や個人練習にもおつきあいいただくことになる。コンクール前は凄い密度の練習になる。

我が家の長女6歳と次女4歳が、ヴァイオリンのレッスンを始めたとき私が探した先生が実は、ヴァイオリンのトレーナーだったりする。2008年と2010年には春のドイツ遠征のために、レッスンが1週間抜けることがあった。たくさんの土産話をしてもらいながら、「うちの高校においでよ」と勧められていた。

次女のドイツ遠征は、こうした縁を積み重ねた頂点にある。

2012年7月17日 (火)

お盆のファンタジー13

「ふるさと」をめぐってさんざん盛り上がったあと、ブラームスがおどけた表情で「ふるさとの後、3曲目のアンコールが一番気に入った」と次女に語りかけた。今年はあんまり長居なので、すっかり打ち解けた次女は、これがブラームス独特のジョークだと悟ったらしく、間をおかずに「はい。私たちも一番練習に時間をかけました」とニヤリと笑って応酬した。

先般聴いたCDのラスト、アンコール2曲目の「ふるさと」の演奏に続く長い喝采の後に、サプライズがあった。拍手がサーっと引き、だれもがアンコール曲だと思った次の瞬間、タクト一閃とともにオケ全員が「Ein Zwei Drei,aufwiedersehen」と唱和して全員が手を振り始めたのだ。日本語でなら「1,2,3、ごきげんよう」くらいの意味。意表を付かれた聴衆の大爆笑がおきた。だれもが心から笑ってのスタンディングオベーションがそれに続いた。

「あれは一体誰のアイデア」とブラームス。「もちろん指揮者です」「彼はいつもそういういたずらを考えています」「5月の演奏会ではファリャのラストで全員が立ち上がるというサプライズを決行しました。」「そういういたずらほど熱心に綿密に練習しますが、家に帰って親に絶対話すなという口止めも忘れません。」「だからあの日のスプリンクラーもまた彼の演出かと思った人もいます」次女がいきいきと説明する。

「あれには私も笑わせてもらった」とはビューロー。「こいつは楽団員に厳しく接するばかりで、ユーモアとか余裕が感じられない」とはブラームスのビューロー評。「楽団員どころか聴衆にも説教を始めるからな。ちっとはこちらの先生を見習ってもらいたいもんだ」

「あんたのゴツイ作品の前後にユーモアのサプライズなんか挟めるものか」「毎度毎度振らされるこっちの身にもなってみろ」と反撃のビューロー。どうやら仲間割れが始まった。

2012年4月23日 (月)

顧問の先生

学校の部活動には顧問の先生がいる。大きな所帯になると複数の教師が駆り出されることもある。次女のいるオーケストラ部にはたしか5人だった。校内での練習はもちろん学外に出る場合には引率となる。

そしてオーケストラの演奏に不可欠の指揮者も、顧問の先生が務めている。次女の高校の音楽の先生で仮にK先生とでもしておこう。指揮と声楽を学んだ経歴がある。先生のモットーは、「音楽はハート」「部活動は情操教育」というものだ。口先だけでない証拠に、子供たちからの信頼は分厚い。確固たる信念と音楽性で生徒たちを導いている。演奏を聴けばその信頼関係が万全であることはすぐに判る。過酷な練習を生徒たちに課す一方で、礼儀、勉強への指導も忘れない。ときどきオヤジギャグを挟んで和ませる。生徒たちだけではなく、保護者からの信頼も厚い。私も心から尊敬し共感している。子供を安心して預けている。おそらく一生の肥やしだと思う。無理やり「巨人の星」で申せば伴宙太と天野先生を足して二乗したくらいの存在。

一連のドイツ公演の記事で、いやそれどころか昨年の入学以来、K先生に対する直接の言及は抑えてきた。ここで一気に放出するためだ。私が生で観た中では最高の指揮者だとあえて断言する。つまりそれはショルティより上ということをも意味する。この1年間のオケの活動に接してみて人柄音楽性を心から尊敬する。高校オケ2年間をK先生と過ごす次女の幸せを心から嬉しく思う。

ドイツ公演のヤマ場で図らずも作動し始めたスプリンクラー。動揺する客席の雰囲気が否応無くステージにも波及しかねない状況で、敢然とした姿勢を貫いて子どもたちを動揺から守りきった無言の指導力は見事の一語。彼の精神力やとっさの機転を称賛するには日本語の語彙はあまりに不完全だ。

「三角帽子」5曲目をエンディングに導いた後、彼は少しだけ客席後方のスプリンクラーを見遣るものの、オケのメンバーはその方向を見ようとするものなど一人も無く、ただ指揮者の次の指示を待つ。この瞬間に私は生徒たちとK先生の間の信頼関係の厚みを深く思い識った。K先生が意を決したようにメンバーに向き直るとき、私はその先生の表情を正面から見る位置にいた。あのキリリとした表情を私は一生忘れないだろう。緊張で固い表情とも違う。「恐れるな行くぞ」という静かな決意の乗った表情。家父長的ダンディズム。同年代の男としてうらやましい限りだ。

さあK先生のその決意が生徒らに伝わらぬハズがない。タクト一閃とともに始まった「終幕の踊り」は「スプリンクラーをねじ伏せた演奏」としてずっと後世に語り継がれるべきものだ。音楽とはまことに不思議なもので一致団結のオケの気迫は、あっけなくドイツ人にも伝わってしまう。演奏後に発生した大喝采は異質ともいえる分厚さだった。

演奏会で3度もらったスタンディングオベージョンは、指揮者K先生なくしてはあり得ない。

2011年7月12日 (火)

授業料

教育の対価として支払われるお金のことだ。幼稚園や保育園では月謝と呼ばれることが多い。個人のレッスンでも月謝袋が使われている。単発の研修会などにおいては受講料となる。いろいろ不文律もあるのだろう。

1843年10歳のブラームスの腕前を見込んだ興行師が、渡米を提案した。両親はコロリと賛成したが、当時の教師コッセルは反対した。1ランク上の教師を紹介することで両親を説得した。紹介したのはコッセル自身の教師でもあるエドゥワルド・マルクゼンだ。「二顧の礼」の結果、週1回1時間ブラームスのための時間を割くことになった。

マルクゼンは当時ハンブルク随一の教師だったが、ブラームスから授業料を受け取らなかったという。現在たとえば東京で最高のピアノ教師から1時間の個人レッスンをつけてもらったら、いくらになるのだろう。毎週1時間、およそ10年続いたのだ。計算するのも恐ろしい。

それ程貧しかったということだ。つまり取ろうにも取れなかったのだと思われる。程なくマルクゼンがその才能に気付いたというのが真相だろう。太っ腹な話である。

ありがとうマルクゼン。

2011年4月27日 (水)

エプシュタイン

ユリウス・エプシュタイン(1832-1926)は高名なピアニストで、ウィーン音楽院のピアノ教授も勤めた。

ブラームスの伝記への登場のしかたが面白い。1864年のことだ、エリザベート・フォン・シュトックハウゼンという乙女がブラームスの前に現われた。相当な才能と、これまた並大抵でない容姿に恐れをなしたブラームスは、彼女の指導を他人に押し付ける。このときエリザベートの指導を委ねられたのがエプシュタインだった。この乙女こそが後にハインリヒ・フォン・ヘルツォーゲンベルクと結婚したリーズルその人だ。

ブラームスとエプシュタインとは歳も近く、気を許したお友達だった。

時は流れて1875年。このころ既にウィーン音楽院のピアノ教授になっていたエプシュタインの前に15歳の少年が現われた。ピアノ演奏を聴いて感銘したエプシュタインは、少年をいきなり上級クラスに受け入れた。以降少年はエプシュタインの薫陶を受けて才能を開花させてゆく。ブラームスにとってのマルクゼンにも匹敵する存在だ。

少年の名はグスタフ・マーラー。

2010年3月16日 (火)

田舎のカントル

バッハの伝記や「のだめ」を読む限り、「カントル」と言えばなんだか神聖不可侵なイメージがある。ライプチヒ・トマス教会のカントルともなれば、王侯貴族と同等かそれ以上の有り難みなのだと思う。

ところがドヴォルザークの伝記を読んでいると、これまたそこいら中にカントルが出て来る。言葉は悪いが二束三文な感じである。トマスカントルとのイメージの落差が激し過ぎる。

それもそのはずだ。ドイツ、オーストリアやチェコの田舎では、村の教会のオルガニストが初等学校の校長先生を兼務というパターンが多く、そういう人々もまたカントルと呼ばれていたのだ。むしろそれこそが「カントル」本来の意義かとも思う。そういえばバッハだって教会附属学校の教育責任者だった。もちろんバッハほどではないが、そこそこの音楽家が子供たちの音楽の手ほどきをしていたと考えて良い。だからチェコでは首都のプラハ以外からも優秀な音楽家を多数輩出したと関連づけられている程だ。ドヴォルザークもそうした土壌の中から台頭したということだ。

思い当たる節がある。「対位法のよい教師はいないか」と尋ねられたブラームスは、「どこか田舎のオルガン弾きが良い教師になる」と答えている。妙に辻褄が合う。

2008年4月23日 (水)

指先

クララ・シューマンの弟子の女流ピアニストがブラームスのレッスンを受けた時のエピソードだ。

「左手の3,4,5の指の音の出し方について、何を考えて音を出すのですか?」という問いかけに対するブラームスの答が質問者本人によって証言されている。

「まず第一に音を出してくれる指先のことを考えなさい」とある。

このエピソードを知って愕然とした。何て凄いことを言うのだろう。何せピアノ演奏には疎いので、こうした言葉の効能は判らぬが、確かに考えるキッカケになるだろう。誰あろうブラームスに言われるのだから、言われた側のインパクトは相当なレベルだと思われる。何か大切なことを伝えたくてこう言ったに決まっているのだが、それは何だろうと底まで考えさせられる凄みが感じられる。誰しもが「ここまで考えていない」と舌を巻いた後、真剣に考えること請け合いである。誰もが同じ結論に至るとは思えないが、考えることは無駄ではないのだろう。

このところすっかりバッハのインヴェンションの室内楽版にはまっているおかげで、楽器に触る時間だけはやたらに増えたが、もっと指先のことを考えて弾かなければならない。ピアノとヴィオラで演奏上の共通点がそうそうあるとも思えないが、先のブラームスの言葉には、一笑に付せない含蓄がある。

練習不足で無くなりかけていた指先の「弦ダコ」がこのところ厚みと堅さを増している。今のところ人差し指、中指、薬指だが、これが小指にも出来てくればしめたものだ。

2008年3月12日 (水)

BWV797

「インヴェンション」と「シンフォニア」は「平均律クラヴィーア曲集」と並びバッハの教育的作品の根幹を形成する。

ブラームスがピアノを教える際の教材に「平均律クラヴィーア曲集」を用いていた話は既に書いた。同じ教育的作品であるインヴェンションやシンフォニアも教材にしていたのだろうとは思っていたが、このほどその証拠を見つけた。音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第一巻のフローレンス・メイの文章の中である。

本日のお題「BWV797」を背負ったト短調のシンフォニアの冒頭から数えて3小節目と4小節目の小節冒頭に発生する不協和音についてのブラームスの見解が証言されている。

本作を形作る3声のうちの最上声が、作品冒頭から1小節毎に「G-F-Es-D」と順次下降して来る。問題の3小節目冒頭は「Es」、4小節目冒頭は「D」である。これらの音が中声部によって直前の小節からタイで引き延ばされた「D」や「C」と衝突するのだ。それら小節の冒頭における衝突は、当該小節の末尾でその都度解決する。

小節の冒頭から「衝突→解決」の連続になる。その流れを意識して打鍵せよというのが、ブラームスの見解だと証言されている。

実際に聴いてみる。チェンバロやピアノによる演奏では、あまり衝突という感じがしない。もっと過激な和音に慣れてしまっているせいかと思っていたら、先般入手した室内楽版だとくっきりと聞こえる。衝突と解決という概念が弦楽器の特性のおかげでより具体的に実感できる感じだ。ピアノを弾きながらこうした和音進行の聴かせ所に注意を喚起するとは、何だかしみじみありがたい。

おそらくこれはほんの一例だ。ブラームスのレッスンはきっとこの手の指摘に溢れていたのだろう。

娘たちと3声のシンフォニアに取り組むとしたら、真っ先にこのBWV797を選びたい。3小節目と4小節目の冒頭の衝突は、上2声を担当する娘たち2人のパート間で起きるはずだ。そのときに私が、ブラームスに成り代わって講釈をたれるのだ。

2007年3月 8日 (木)

旋律用の指

ブラームスにとっての親指のこと。ブラームスの弟子の一人の証言によれば、ブラームスは時折、自らの親指のことを「旋律用」もしくは「テノール用」として自慢していたらしい。

また、クララ・シューマンの弟子の女流ピアニストを含む何人かの弟子たちが、ブラームスのピアノ奏法の特徴を示すキーワードとして「親指」を挙げている。事実ブラームスが作曲した「51のピアノ練習曲」には、明らかに親指の鍛錬を目的にした曲が収録されている。黒鍵への親指の使用へのこだわりも見え隠れする。ピアノ奏法における親指のあり方に感心を示していた証拠が散見される。

「親指が旋律用だ」ということは何を意味するのか?誤解を承知で敢えて断言してしまうならば、それは「旋律がソプラノに来ない」ということなのだ。控え目に見ても「ソプラノに旋律が来ない瞬間が多い」あるいは「ソプラノに旋律が来ない瞬間がおいしい」と推定することは許されよう。両手をクロスさせない限り、2つの親指は鍵盤の中央付近を舞うことになるのだ。

私にとって、もっとも素敵なことは、そのあたりの音域がヴィオラという楽器にとって、もっともおいしい領域になっているということだ。管弦楽や室内楽に目を移せば、ブラームスの言行一致がたちまち確認出来る。

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