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カテゴリー「535 暗譜」の11件の記事

2012年1月 2日 (月)

百人一首を暗記せよ

この冬休み次女に課された宿題のうちもっとも達成困難なもの。冬休みは12月23日から1月9日まであるのだが、オーケストラ部員は休み中にも部活がある。とりわけ次女はアンサンブルコンテストへの参加が決まっているから完全なオフは昨日までの3日間しかなく、今日は初部活のために早くも登校。体育系の強豪は、正月休み返上なのは当然だから驚くにはあたらないのかもしれないが、百人一首の暗記にとっては厄介である。

まだニ十数首しか暗記していない。オケで練習している曲なら軽々と暗譜してしまうくせに、百人一首の暗記となると途端に立ち往生というこの不思議。「そりゃあ、暗譜とは違うよ」「旋律や和音の流れを助けに覚えられるから暗譜は平気だよ」と次女。パパは何もわかっていないとでも言いた気なニュアンス。いつもなら「ハハー」と感心するのだが、今日は違う。

少し反撃「そりゃお前短歌ってモンを判っていないよ」「五七五七七の短歌にだって、旋律やリズムがあるんだよ」「単なる31文字だと思ってたら大間違い」「あんたたちの暗譜は絶対的な練習量が支えているのであって、百人一首との差は、興味と努力の差だけだよ」と。私は百首全部覚えているから少しは自慢できる。

今日だけは私にも分がある。ここ数日単なる暗記ではなくでリズムや流れを味わうためにカルタをやった。案の定覚えが早い。面白さが判ると吸収のスピードが変わってくる。

百人一首を暗譜せよ。

2009年2月18日 (水)

暗譜安の初見高

「あんぷやすのしょけんだか」と読んで欲しい。どうもこれが次女の癖だ。

ヴァイオリンを一緒に練習していても感じるが、どうも次女は初見が利かない。レッスンで新しい課題が出るともじもじとしてなかなか先に進まない。臨時記号はもちろん弓のアップダウンなど音の高さ以外にも同時に読み取るべき情報は多いが、思うに任せない。あちら立てればこちらが立たずという具合に、複数の情報を同時に処理出来ない感じだ。音符配置を呑み込むまで時間がかかる。この感覚は理解出来る。大学1年でヴィオラ初心者だった私も極端に初見が苦手だった。

ところが、初見苦手で立ち上がる次女のレッスンなのだが、暗譜は得意と胸を張る。これはヴァイオリンでもトロンボーンでも同じらしい。初見が苦手という自覚があるから、一生懸命練習しているうちにいつも暗譜してしまうらしい。「暗譜なら誰にも負けない」と言っている。おおお。

初見はある程度利いた方がいいと思うから、少し初見の練習もしようと思うが、それと引き替えに暗譜力が落ちてこないように注意しなければなるまい。

20世紀初頭を飾る大ヴァイオリニスト、フリッツ・クライスラーは、ウィーン・フィルへの入団を希望したが、「初見の能力」に疑問符がついたために許可されなかったという。

2008年6月20日 (金)

アヴェ・マリア

「Ave Maria」と綴る。「おめでとう、マリア」という程度の意味合いだ。「マリア」とは申すまでもなくイエス・キリストのお母さんである。聖母マリアへの祈祷が反映している。どちらかと言えばカトリックにその傾向が強いという。プロテスタントでは「信仰の対象はイエスだけ」という前提があるらしい。

とはいえブラームスにも「Ave Maria」がある。「女声合唱とオルガンのためのアヴェ・マリア」op12である。

しかし、何と言っても名高いのはグノーである。バッハの平均律クラヴィーア曲集との関連は6月17日の記事「余分に暗譜」で述べた通りである。

原曲のハ長調のプレリュードの暗譜に成功したので、問題の1小節を余分に暗譜すれば、娘たちとアヴェ・マリアの合奏が出来ることになる。

これも暗譜の副産物だ。

2008年6月17日 (火)

余分に暗譜

グノーのアヴェマリアは、バッハの平均律クラヴィーア曲集の第1巻第1番の前奏曲をそっくりそのまま伴奏に借用して、旋律を追加したという作品だ。大抵はそう説明されている。

しかし「そっくりそのまま」という言葉には注意が必要だ。グノーの側には、バッハオリジナルには存在しない小節が1つだけ加えられている。原曲の22小節目と23小節目の間に1小節加えられているのだ。だから厳密にはそっくりそのままではないのだ。

原曲となった前奏曲ハ長調を含む「平均律クラヴィーア曲集」は古来、ピアノ演奏の「旧約聖書」にもたとえられるほどの名曲だから、おびただしい数の筆写譜が存在した。18世紀から台頭した楽譜出版社は、出版にあたって特定の筆写譜を底本に採用した。問題の1小節は、数多い筆写譜のうち、1783年にシュヴェンケという人の残した筆写譜にしか現れない。困ったことに18世紀から19世紀にかけて、当時もっとも普及していたチェルニー版をはじめ多くの版が、このシュヴェンケの筆写譜を底本にしていたのだ。

1883年、この点に注意を喚起したビショフ版が出現するまで、1小節多いバージョンが一般に流通していたことになる。グノーのアヴェマリアは1859年の発表だ。アヴェマリア作曲の際、グノーの手元にあったのは、シュヴェンケに準拠した楽譜であったことは間違いない。アヴェマリアの余分な1小節はこれで説明が付く。グノーはバッハ作品に勝手に1小節挿入する程傲慢ではなかったのだ。

音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第1巻162ページに興味深い記述がある。クララ・シューマンの高弟であるフローレンス・メイの証言だ。ブラームスはピアノレッスンの教材にバッハの作品を使う場合、チェルニー版を推奨しているのだ。彼女の証言は1871年のことだ。つまりビショフ版が出る前である。だからその中のハ長調の前奏曲は、シュヴェンケの写本の通り1小節多い版であることは確実だ。

それからさらに遡って少年時代のブラームスはマルクセン先生の許でバッハを学び、「平均律クラヴィーア曲集」全48曲を暗譜していたらしいが、この1小節分を余分に暗譜していた可能性が高い。

今日はグノーさんの190回目の誕生日である。

2008年5月26日 (月)

暗譜からの教訓

5月18日の記事「大人の暗譜」で、バッハのハ長調のプレリュードを暗譜したことを報告した。暗譜したことで景色がすっかり変わってしまったと書いた。

全長35小節の小品ながら飽きることがない。全部で34回和音が移ろうのだが、その移ろいこそが味わいの根幹である。もちろん1個1個の和音に意味も機能もあるのだとは思うが、やはりその移ろいこそが肝であると感じる。

私のブログもそうありたいものだ。

1個1個の記事に十分な意味を持たせることは当然だが、それに加えて公開される記事の順序にも特段の配慮をする。後で振り返った時に、記事の羅列に必然性が宿っているのが好ましい。つまりこれが「移ろい」に相当するというわけだ。ブラームスに関係したネタに限定するという自主規制を、和音進行の決め事に見立てることも出来る。

きれいな和音といえども、ただ行き当たりばったりに羅列しただけでは、飽きられるのも早いというものだ。

2008年5月18日 (日)

大人の暗譜

4月26日の記事「96分の1」でバッハの平均律クラヴィーア曲集第1巻から、ハ長調のプレリュードの暗譜に挑戦すると述べた。あれから1ヶ月。どうやら暗譜にこぎつけた。それでも弾けるとは限らない。頭に次の音が浮かんでいても、指がその音がする鍵盤にたどり着けないことあるからだ。このところまずまず止まらないようになった。

連休中に暗譜出来てしまうとタカをくくっていたのだが、手こずった。たった35小節が思うに任せなかった。ピアノの演奏経験ゼロとはいえこれほど苦労するとは思わなかった。毎回軽々暗譜できてしまう娘たちとは脳味噌が違うのだ。理屈抜きに楽譜を丸々脳味噌あるいは指にコピーするかのような子供のやり方ではだめだ。連休中盤からあきらめてやり方を変えた。

作品の構造や和音の移ろいを把握するようにしたのだ。

全35小節、毎小節和音が変わり全部で30通りの和音で構成されている。それら30個の和音はただ行き当たりばったりに並んでいるのではない。和音から和音への「うつろい」にこそバッハの音楽性が込められているのだ。暗譜することは後回しにして、そうした和音の「うつろい」や「ストーリー」を記憶しようと考えた。結果としてそれが正解だった。

第1の段落は11小節目までだ。11小節目で「G」の和音に収まるまで、左手は穏やかな動きに終止する。10小節目のDA以外、左手は3度以内の音程になる。この間の見せ場は5小節目のA。コードネームで言うと「Am」である。左手が「CE」のまま、右小指で触れる「A音」の可憐さにしびれた。次いで8小節目の左手の「HC」がおいしい。次の9小節目では右手が変わらぬまま、Aに降りる。

第2の段落は、11小節目の「G」が減七和音によって崩落して始まる。左手は「GH」「GB」「FA」「FAs」「EG」と進み19小節目の「C」に至る。この「C」は、冒頭の「C」のオクターブ下だ。つまり響きの底のような感じである。

第3の段落は、29小節目までで私にとっては最大の難所。面白い和音が頻発する。25小節目の「C/G」は一段落の踊り場だ。ここからソプラノが「E→F→Fis→G」と進む山場。26小節目の多分sus4が心地よい。

第4の段落は、残り6小節。オリジナルの段階では存在せず後から加えられた部分だ。

この要領でストーリーを意識することで、暗譜が格段に進んだ。

しかし、先ほど「正解だった」と申したのは単に暗譜が進んだことだけを指す訳ではない。バッハが繰り出す和音の羅列に酔ったと申し上げるべきだろう。何度も聴いていた曲なのに景色が全く変わってしまった。

2008年4月26日 (土)

96分の1

ブラームスがバッハの「平均律クラヴィーア曲集」を全部暗譜していたことは既に述べた。

オクターブ内に存在する12の音全てについて長短それぞれでプレリュードとフーガを書いた。これだけで48曲だ。さらにそれらが1巻2巻2セットあるからしめて96曲である。

今年の大型連休は娘たちの部活もあって、どこにも行かずに過ごす。例年ブラームスネタの発掘を兼ねた調べ物をしているのだが、今年は風向きが変わった。

実は平均律クラヴィーア曲集第1巻のハ長調BWV846の前奏曲を暗譜しようと思い立ったのだ。グノーのアヴェマリアで名高いあの曲だ。というより、ピアノを習った経験の無い私に手が届くのはこの曲しかないと思いつめた結果のチャレンジだ。右手と左手が同時に動くことが無いから、とても都合がいい。

というわけで大型連休中電子ピアノをチェンバロモードにして、コツコツと練習する予定だ。目標は途中でつっかえずに通せるようにするという程度である。

全部暗譜していたブラームスの96分の1である。

2008年1月11日 (金)

暗譜の謎

12月1日の記事「平均律クラヴィーア曲集」でブラームスが全48曲を暗譜していたということに言及した。おそらくは少年時代恩師マルクセンやコッセルの指導の元で寝ても覚めてもバッハ漬けだったのだろうと推定した。

師匠に言われるままに夢中で練習していたら、いつの間にか暗譜していたというのは、とても健全だと思う。ある日急に楽譜を取り上げられて「暗譜で弾いてみろ」と言われて試してみたらあれよあれよと弾けてしまったというシーンを想像する。

けれどもマルクセンやコッセルの指導は「平均律クラヴィーア曲集」の暗譜が目的ではあるまい。暗譜は目的ではなく後からついてきた副産物だと信じたい。

暗譜は音に現われるのだろうか?暗譜しての演奏と楽譜を見ての演奏には結果として発信される音楽に違いが発生するのだろうか?私にはそれを聞き分ける自信はないが、判る人には判るのだろうか?超絶技巧の難曲に挑むピアニストの目の前に楽譜が置かれていないか、閉じたままになっているのを見た聴衆に与える心理的効果は小さくないと思うが、私は今までその違いを感じたことはない。複数の演奏の微細な相違を感じることがあっても、それが暗譜の有無に起因すると断言出来たことが無い。目の前に楽譜を置いて開いていながら見ていない演奏の位置付けも曖昧に感じる。

一方で多くのコンクールや発表会が演奏者の暗譜を前提にしている事実もある。それは暗譜の有無が音楽の出来に影響するからなのか、単に「凄いでしょ」の意味なのか答えを見つけきれていない。

算盤の名人は、暗算をするとき頭の中に算盤が浮かぶという。頭に浮かんだ算盤を弾いているのだ。将棋名人にしても数十手先を読む際には頭の中に盤面が浮かんでいると聞いた。同様に考えると暗譜は頭の中に楽譜が思い浮かんでそれを見ながら弾いている状態だろう。だから事実上楽譜を見ているのと同じなのだと思う。楽譜を思い浮かべることもなく、指が勝手に動くのが本来の意味の暗譜かもしれない。

毎度軽々と暗譜出来てしまう娘たちから、この点を質問されたことがないのは幸いである。

2007年4月 5日 (木)

子供の脳味噌

作りが違うという他はない。子供たちの脳味噌は私とは違うのだ。発表会まで1ヶ月を切った。作品の仕上げもさることながら、暗譜も完璧にしなければならない。

昨日不意に楽譜を見ずに弾かせてみた。「音程は少々目をつぶるから楽譜見ないで通して見ろ」と告げた。ベリオに挑むお姉ちゃんは、「ハイよ」とばかりに楽譜をこちらによこした。結論から申せばすんなり通るだけなら通ってしまった。楽譜を見ていたときよりもむしろ流れた感じだ。「音程を大目に見るから」と言われてのびのび弾いていた感じだ。暗譜はそこそこでいいから、音程しっかりねと言いたくなる。

しかし、お姉ちゃんが音程は別にしてすんなり暗譜してしまうだろうというのは、ある程度予想していた。演奏が難しい分だけメリハリがつけ易いと思っていた。

驚いたのは次女だ。バッハのイ短調ヴァイオリン協奏曲の第1楽章は、似たような音形が繰り返し現れるので、暗譜には手こずると思っていたのだが、こちらも呆気なく弾けてしまった。笑えるのは本人もびっくりしてしまったことだ。楽譜を見ずに弾かせたのは今日が初めてだったのだが、自分でも暗譜で最後まで通るとは思っていなかったらしい。「指が勝手に動いた」と言っている。

何だか希望が湧いてきた。

2007年1月18日 (木)

矛盾

数日前の夕食の時、中学1年の長女が語尾上げ調で尋ねてきた。「パパは百人一首って知ってる↑?」だ。「誰に口聞いてんだ」と言ってやりたいのをこらえて「知ってるけど、どうして?」と聞き返した。百人一首から10首選んで暗記してくる宿題が出たと言っている。

「パパは全部覚えてるけど」と言うと「ウソ!全部って100だよ」と目を丸くしている。「当然でしょ。小学校4年の時全部覚えたよ」と鼻高々である。「覚えると何かいいことあるの?」「昔はお正月に親戚が集まるとみんなでカルタ取りして遊んだからね」と受け流すと驚くべき反応。「ええっ!!百人一首ってカルタだったの?」である。「おいおい」と言ったがそう言えば我が家では「坊主めくり」しかしたことがない。

「先生も10首みたいな半端な宿題出さずに全部暗記にすればいいのにねぇ」と余裕の応答である。「どうしたら覚えられるか、いい方法ないかな?」とまたお決まりのちゃっかり質問だ。「簡単だよ。好きになればいいんだよ」とつけ上がり気味の対応をした。

娘相手とは言えつけ上がるものではない。今晩になって「パパってブラームス好きだよねぇ」と長女。「はあ~、いつもそう言ってるだろ」と私。これが娘の逆襲だとはこの時点でちっとも気付いていない。「じゃあ、ブラームスの曲なら暗譜簡単だよね」と痛いところをつかれた。「好きになれば覚えられるって訳じゃないよね」ととどめを刺された。

覚える方法を訊かれた時、「実際にカルタをしてみて、得意な札を見つけること」くらいな返答にしておけば良かった。

9歳の私が覚えた最初の歌は清少納言作の「夜をこめて鳥の空音ははかるとも世に逢坂の関は許さじ」だった。最後に覚えたのは紀貫之。「人はいざ心も知らぬ古里は花ぞ昔の香に匂いける」だった。こういうことは事細かに今も覚えているのに、大好きなブラームスの作品とはいえ、暗譜は決定的に苦手である。ブラームスを好きな脳と、暗譜をする脳は違うのだと思う。

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