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カテゴリー「556 初版」の16件の記事

2015年5月18日 (月)

初版の所見

記事「室内楽の出版」で室内楽作品24曲に、ピアノ三重奏曲第1番の改訂版にFAEソナタを加えた26曲の初版データを掲載した。

26曲のうち22曲がジムロック社からの出版になっている。ブライトコップフが1曲、リーターヴィーダーマンが2曲、ドイツブラームス協会が1曲だ。大したもんだ。

記事「室内楽の初演」と見比べることで、興味深い現象が浮かび上がる。ピアノ三重奏曲第1番の初版を唯一例外として、残り全ての作品が、出版前に初演されている。作るそばから演奏され、出版は後からついてきたことがわかる。

2015年5月17日 (日)

室内楽の出版

ブラームスの室内楽作品について、その最初の出版についてデータを集約掲載しておく

  1. ピアノ三重奏曲第1番ロ長調op8初版 ブライトコップフ社 1854年6月10日
  2. ピアノ三重奏曲第1番ロ長調op8改訂版 ジムロック社ベルリン 1890年12月13日
  3. 弦楽六重奏曲第1番変ロ長調op18 ジムロック社ボン 1862年1月
  4. ピアノ四重奏曲第1番ト短調op25 ジムロック社ボン 1863年夏
  5. ピアノ四重奏曲第2番イ長調op26 ジムロック社ボン 1863年6月
  6. ピアノ五重奏曲ヘ短調op34 リーターヴィーダーマン社 1865年12月
  7. 弦楽六重奏曲第2番ト長調op36 1866年7月 ジムロック社ボン
  8. チェロソナタ第1番ホ短調op38 1865年7月 リーターヴィーダーマン社
  9. ホルン三重奏曲変ホ長調op40 1866年7月 ジムロック社ボン
  10. 弦楽四重奏曲第1番ハ短調op51-1 1873年11月 ジムロック社ベルリン
  11. 弦楽四重奏曲第2番イ短調op51-2 同上
  12. ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op60 1875年11月 ジムロック社ベルリン
  13. 弦楽四重奏曲第3番変ロ長調op67 1876年11月 ジムロック社ベルリン
  14. ヴァイオリンソナタ第1番ト長調op78 1879年11月 ジムロック社ベルリン
  15. ピアノ三重奏曲第2番ハ長調op87 1882年12月 ジムロック社ベルリン
  16. 弦楽五重奏曲第1番ヘ長調op88 1882年11月 ジムロック社ベルリン
  17. チェロソナタ第2番ヘ長調op99 1887年4月 ジムロック社ベルリン
  18. ヴァイオリンソナタ第2番イ長調op100 1887年4月 ジムロック社ベルリン
  19. ピアノ三重奏曲第3番ハ短調op101 1887年4月 ジムロック社ベルリン
  20. ヴァイオリンソナタ第3番ニ短調op108 1889年4月 ジムロック社ベルリン
  21. 弦楽五重奏曲第2番ト長調op111 1891年2月 ジムロック社ベルリン
  22. クラリネット三重奏曲イ短調op114 1892年3月 ジムロック社ベルリン
  23. クラリネット五重奏曲ロ短調op115 1892年3月 ジムロック社ベルリン
  24. クラリネットソナタ第1番ヘ短調op120-1 1895年6月 ジムロック社ベルリン
  25. クラリネットソナタ第2番変ホ長調op120-2 同上
  26. FAEソナタ 1906年 ドイツブラームス協会

2012年7月25日 (水)

出版の仲介

ロベルト・シューマンは、若きブラームスを楽壇に紹介したことと並んで、有力出版社にブラームスを紹介したことはよく知られている。ライプチヒのブライトコップフ社だ。

あまり知られていないが、ブライトコップフ社にブラームスを紹介しようと試みた人物がもう一人いる。最近ブログで話題にしているフランツ・リストその人だ。

演奏旅行のパートナー・ヴァイオリニストのレーメニとの決裂を報告したヨアヒム宛の手紙でブラームス本人がそのことに言及している。このままでは故郷には帰れないから、リスト先生からブライトコップフ社に手紙を書いてもらうのに期待するかというニュアンスだ。リストは「なんならブライトコップフを紹介してもいいよ」くらいの口約束はしていたのだと思う。

作品の演奏中に居眠りした挙句に、早々にワイマールを辞したという話が、どうも浮いてしまうエピソードである。

2011年3月11日 (金)

初版特集総集編

ワイン、初演に継ぐ企画マラソンの3弾「初版特集」が昨日終わった。以下の総集編である。

  1. 2011年01月25日 発売初日 第4交響曲発売初日の風景。 
  2. 2011年01月26日 初演と初版 初版と出版社に関するあれこれ。
  3. 2011年01月27日 初版出版社一覧 全作品の初版出版社リスト。
  4. 2011年01月29日 初版刊行ランキング ジムロック絶対有利の物証。
  5. 2011年01月31日  シュピーナ シューベルトゆかりの出版社。
  6. 2011年02月03日 ヘンレはどうした 出版社ヘンレは戦後の創業である。    
  7. 2011年02月04日 失態 ゼンフ社が写譜していれば散逸は免れた。
  8. 2011年02月05日  自筆譜の所在 ブラームスの自筆譜はよく残っている。
  9. 2011年02月06日 自筆譜の権威 自筆譜より校正済みスコアのほうが大切。
  10. 2011年02月07日  為替差損 原稿料はマルク建てに限る。
  11. 2011年02月08日 出版社選びのバランス ブライトコップフに絞らない。
  12. 2011年02月09日  声楽得意の出版社 リータービーダーマン社のこと。
  13. 2011年02月10日 本社移転 ジムロックの本社はボンからベルリンに移転した。
  14. 2011年02月11日 代替わり ジムロック社の社長交代の話。
  15. 2011年02月12日 聖霊降臨祭 1860年の聖霊降臨祭の矛盾。
  16. 2011年02月13日 第3ソナタをめぐって 急遽op5におさまったソナタ。
  17. 2011年02月14日  版権 ブライトコップフから版権を買うジムロック。
  18. 2011年02年15日 版権買い取りの範囲 ジムロックはどことどこから買ったか。
  19. 2011年02月16日  もう一つの別れ アガーテ六重奏曲の出版について。
  20. 2011年02月18日 筋を通す ピアノ三重奏曲第1番の改訂で筋を通したか。
  21. 2011年02月19日 ある疑問 ゼンフからブライトコップフへの版権譲渡か。
  22. 2011年02月21日 標準小売価格 楽譜の価格の件。
  23. 2011年02月22日 歌曲の発売単位 楽譜の組版効率で曲数を決めたか。
  24. 2011年02月23日  組版の知識 第3交響曲の組版は早く終わるという見解。
  25. 2011年02月24日  絶版譜の復刻 版権購入の真の目的。
  26. 2011年02月26日  ジムロックの会計年度 出版の空白年度を作らない配慮。 
  27. 2011年02月27日  衰えの兆候 創作力の衰えをジムロックは認識したか。
  28. 2011年02月28日 空白の理由 作品出版の空白年について。 
  29. 2011年03月01日 公然の秘密 ジムロックとブラームスの蜜月は周知か。  
  30. 2011年03月02日 悪ノリついで 初版刊行空白の普仏戦争。
  31. 2011年03月03日  発番の担い手 作品番号付与を本人がコントロール。
  32. 2011年03月04日  出版の遅れ 作曲順と刊行順の違いから読み取る。 
  33. 2011年03月05日  マーケトシェア 19世紀欧州楽譜出版業界の趨勢は。 
  34. 2011年03月06日 ヘルテルの牙城 ブライトコップフ&ヘルテル社の位置付け。 
  35. 2011年03月07日  作曲家全集 ブライトコップフ&ヘルテル社の威光。 
  36. 2011年03月08日  印税 ブラームスの楽譜は印税方式ではなかった。 
  37. 2011年03月10日 熊の由来 ブライトコップフ社の熊についておバカな仮説。
  38. 2011年03月11日 本日のこの記事。

進捗の報告はこちら。   

2011年3月 2日 (水)

悪乗りついで

普仏戦争」が1870年に始まったと書いた。もっと詳しく申せば、1870年7月に始まって翌1871年5月には終結を見た。このことを頭に入れた上で、2月26日の記事「ジムロックの会計年度」をご覧願う。

1869年以降で、ジムロックからブラームスの新作が刊行されなかったのが1度だけある。それはいわゆる「70~71会計年度」だ。1870年10月に始まって1871年9月に終わる1年である。

そうだ。その年度は普仏戦争とピタリと重なっている。もちろんプロイセン率いるドイツ諸邦連合の圧勝だったとはいえ、作品の出版が滞るというのは十分あり得る話だ。プロイセンひいてはドイツにとっての「危急存亡」のいくさだ。たとえ出版したところで売れ行きが芳しくなかろうと、ジムロックが計算をしていたと考えたら行き過ぎだろうか。

悪乗りも味わいのうち。

2011年2月28日 (月)

空白の理由

1月27日の記事「初版出版社一覧表」でブラームス作品の初版刊行を手がけた出版社を一覧化した。そこには出版社の名前と合わせて刊行年月を添えておいた。本日の記事はその出版年月に注目する。

1853年12月に記念すべきop1が出版されてから、1896年7月に「4つの厳粛な歌」op121が出版されるまで、ブラームスの創作史を作品の出版という切り口から眺めることが出来る。

注意深く眺めていると、作品が出版されていない年があることに気付く。新作の出版が無かった年だ。

  1. 1855年 前年2月27日シューマンのライン川への投身以降、一身を投げ打った献身のためだ。
  2. 1857年~1859年 1856年7月ロベルト・シューマン没に伴う停滞期。
  3. 1885年 10月~翌年9月の欧米風の決算期で見るとかろうじて空白を免れる。
  4. 1894年 「49のドイツ民謡集」WoO33が出ているから事実上セーフ。

1860年以降コンスタントに作品を出し続けていた様子がよくわかる。

2011年2月26日 (土)

ジムロックの会計年度

日本では4月に年度が始まり、翌年3月が年度末になる。これが欧米では10月始まりの翌年9月というサイクルが主流ではあるまいかと12月2日の記事「秋春制」で述べた。ドイツの出版社ジムロックの会計年度も、このサイクルではないかと想像する。

1868年以降ベルリンに居を構えたジムロックは、経営者フリッツと作曲家本人との蜜月関係を背景に、ブラームス作品の刊行を独占して行く様子は、1月27日の記事「初版出版社一覧」で明らかとなった。本日はそれを「会計年度」という切り口から再考する。

1868年10月「4つの歌曲」op46の初版を刊行してベルリン・ジムロック社の躍進が始まる。同年ブラームスの出世作「ドイツレクイエム」がリーターヴィーダーマン社から刊行されているが、ジムロックはその陰でひっそりと歌曲を出していた。

  1. 68/69 op46他3集の歌曲そして何よりハンガリア舞曲でブレーク。
  2. 69/70 「16のワルツ」op39 ハンガリア舞曲の次の矢だ。
  3. 70/71 謎の空白
  4. 71/72 運命の歌
  5. 72/73 勝利の歌
  6. 73/74 弦楽四重奏曲2つとハイドンの主題による変奏曲
  7. 74/75 年度末ギリギリにワルツ愛の歌で一矢報いる。
  8. 75/76 ピアノ四重奏曲第3番
  9. 76/77 弦楽四重奏曲第3番
  10. 77/78 交響曲第1番を年度初頭に、同2番を年度末に出す。
  11. 78/79 ハッスルした前年の反動かモテットとピアノ小品op76でお茶を濁した。
  12. 79/80 ヴァイオリン協奏曲とソナタ雨の歌、ハンガリア舞曲とラプソディop79
  13. 80/81 前年の反動か大学祝典序曲と悲劇的序曲を押し詰まってから出す。
  14. 81/82 ピアノ協奏曲第2番と歌曲3つ
  15. 82/83 ピアノ三重奏曲第2番と弦楽五重奏曲第1番、運命の女神の歌
  16. 83/84 交響曲第3番
  17. 84/85 歌曲5つでごまかす。
  18. 85/86 歌曲2つだけ。ブラ4作曲に2夏かかった皺寄せ。
  19. 86/87 交響曲第4番。チェロソナタ、ヴァイオリンソナタ、ピアノ三重奏曲。
  20. 87/88 ヴァイオリンとチェロのための協奏曲
  21. 88/89 声楽作品4つとヴァイオリンソナタ第3番
  22. 89/90 op109とop110
  23. 90/91 弦楽五重奏曲第2番だけ
  24. 91/92 クラリネット三重奏曲と同五重奏曲
  25. 92/93 ピアノ小品op116とインテルメッツォop117
  26. 93/94 ピアノ小品op118とop119
  27. 94/95 49のドイツ民謡集とクラリネットソナタ
  28. 95/96 4つの厳粛な歌

上記3番1870年~71年のシーズンに空白を作って以降、ジムロックがブラームスの新作を手がけなかった年度は無い。蜜月関係を背景にブラームスの財産管理人でもあったジムロックが、万が一経営で失態を犯して社業が傾くと、財産管理を委託していたブラームスも困るのだ。ジムロック社の楽譜事業の基幹がブラームスであることは確実だから、空白の年度を作らないように配慮していたと感じる。

2011年2月22日 (火)

歌曲の発売単位

昨日の記事「標準小売価格」を書くためにマッコークルを調べていて、わくわくするような仮説にたどり着いた。ジムロック社がボンからベルリンへ移転するのは1866年のホルントリオop40の後だ。おそらくこの間に社長の交代があり、ブラームスの友人フリッツ・ジムロックが父から経営権を譲り受けた。それを前提に以下の表をご覧いただく。歌曲の作品一覧と、初版のページ数を示す。

op19のジムロックは父だが、op46は息子である。息子つまりベルリンのジムロックになって初めて手がけたブラームス作品がop46だった。その後op49まで4つの歌曲が続けざまにジムロックから刊行されたが、全て刷り上り15ページになっている。収録曲数は4、5、7、5とまちまちだが、全部15ページだ。

  1. 6つの歌曲op3 15ページ ブライトコップフ
  2. 6つの歌曲op6 23ページ ゼンフ
  3. 6つの歌曲op7 13ページ ブライトコップフ
  4. 8つの歌曲op14 23ページ リーターヴィーダーマン
  5. 5つの歌曲op19 13ページ ジムロック
  6. 9つの歌曲op32 26ページ リーターヴィーダーマン 
  7. 4つの歌曲op43 19ページ リーターヴィーダーマン
  8. 4つの歌曲op46 15ページ ジムロック
  9. 5つの歌曲op47 15ページ ジムロック
  10. 7つの歌曲op48 15ページ ジムロック
  11. 5つの歌曲op49 15ページ ジムロック
  12. 8つの歌曲op57 15ページ リーターヴィーダーマン 
  13. 8つの歌曲op58 15ページ リーターヴィーダーマン 
  14. 8つの歌曲op59 上巻21ページ リーターヴィーダーマン
  15. 8つの歌曲op59 下巻14ページ リーターヴィーダーマン
  16. 9つの歌曲op63 上巻20ページ ペータース
  17. 9つの歌曲op63 下巻20ページ ペータース
  18. 9つの歌曲op69 上巻19ページ ジムロック
  19. 9つの歌曲op69 下巻22ページ ジムロック
  20. 4つの歌曲op70 15ページ ジムロック
  21. 5つの歌曲op71 19ページ ジムロック
  22. 5つの歌曲op72 19ページ ジムロック
  23. 5つの歌曲op84 23ページ ジムロック
  24. 6つの歌曲op85 19ページ ジムロック   
  25. 6つの歌曲op86 21ページ ジムロック
  26. 5つの歌曲op94 14ページ ジムロック
  27. 7つの歌曲op95 23ページ ジムロック
  28. 4つの歌曲op96 15ページ ジムロック
  29. 6つの歌曲op97 19ページ ジムロック
  30. 5つの歌曲op105 21ページ ジムロック
  31. 5つの歌曲op106 19ページ ジムロック
  32. 5つの歌曲op107 15ページ ジムロック
  33. 4つの厳粛な歌op121 19ページ ジムロック

私は自費出版に向けたやりとりの中で、ページ数は出来れば16の倍数がいいと言われた。どうしてもだめなら8の倍数になるようにと薦められた。そうすると組版の効率がいいからだ。効率がいいとはすなわちコストを下げられるということだ。上記のページ数は表紙を「1」と数えている。たとえば15ページと言えば8枚の紙に両面印刷して綴じた感じである。つまり実質16ページだ。

交響曲など大作については刷り上りページ数を考慮することなど無理に決まっているが、書き溜めたストックからその都度適宜印刷に回していた歌曲の場合、組版効率のいいページ数に収まるように作品を選んでいた可能性を考えている。上記の表の中で色をつけたのが「4n-1」というページ数を持つ作品だ。実質のページ数が4の倍数になるということだ。

歌曲において一つの作品番号に収める作品の数に規則性がありはせぬかと、ずっと考えていたが極めて難解だった。組版効率のよいページ数になるようブラームスが協力していたということは無いだろうか。ジムロック社の経営実権を握ったフリッツの提案で、ブラームスが協力したなどということは考えすぎだろうか。

「4n-1」になっていない作品のうちop63とop69にはその理由もある。これらは「青春」「郷愁」というテーマを持たせた事実上の連作歌曲だから刷り上がりページ数の調整が難しい。

ピアノ小品の事情も歌曲と似ている。

  1. バラードop10 23ページ ブライトコップフ
  2. 8つの小品op76 上下各18ページ ジムロック
  3. 7つの幻想曲 op116 上巻18ページ ジムロック
  4. 7つの幻想曲 op116 下巻15ページ ジムロック
  5. 3つのインテルメッツォop117 15ページ ジムロック
  6. 6つの小品 op118 19ページ ジムロック
  7. 4つの小品 op119 19ページ ジムロック

見ての通り「4n-1」が目立つ。

作品が一定数たまるとその都度印刷に回すという出版形態の場合、単一作品番号にどう収録するかには、組版効率も十分に考慮され、演奏に支障の無い限りブラームスも承知していたと考えたい。

2011年2月19日 (土)

ある疑問

ジムロックが当時絶版になっていた3曲のピアノソナタを新たに刊行するためにブライトコップフ社から版権を買い取ったらしい。音楽之友社刊行の「ブラームスのピアノ音楽」には、「op1、op2、op5について初版の出版人であるブライトコップフから版権を買い取った」と明記されている。

おかしい。

マッコークルによればピアノソナタ3曲のうちブライトコップフ社から初版が刊行されているのは1番と2番だけで、3番はゼンフ社から出されている。「3つともブライトコップフ」ではない。

2月15日の記事「版権買取の範囲」でブライトコップフ以外に初版を刊行した出版社には版権の買取を仕掛けなかったのかと疑問を提示した。ゼンフ社もそのうちのひとつだ。もしかするとゼンフ社は同じライプチヒのブライトコップフに何らかの形でピアノソナタ第3番の版権を譲渡したのではないかと感じる。

1888年ジムロックがブライトコップフから版権を買い取った時点で、ピアノソナタ第3番の版権がブライトコップフに移っていた可能性がある。

2011年2月 9日 (水)

声楽得意の出版社

1月29日の記事「初版刊行ランキング」の中、首位のジムロックに続く2位にリーターヴィーダーマン社がある。何かと話題のブライトコップフ社を押さえての2位だというのになかなか話題に上らない。

彼等の本拠はスイスだ。ヴィンタートゥールという街である。ブラームス作品の初版刊行を最初に引き受けたのはおそらく1861年の「アヴェマリア」op12だ。最後の作品は「8つの歌曲」op59である。

1859年1月27日、ライプチヒにおけるピアノ協奏曲第1番のさんざんな評判は、各出版社にブラームス作品の取り扱いを尻込みさせる結果となった。シューマンから直接紹介されたライプチヒのブライトコップフでさえ、「管弦楽のためのセレナーデ」op11を機に、しばしの空白になる。フリッツの父の代だったジムロックも同様だ。

そうしたドイツ系出版社の尻込みに乗じて台頭したのがリーターヴィーダーマン社だった。手がけた作品を見ると、ピアノ協奏曲第1番が最初に目につく。一連の尻込みの元になった曰く付きの作品だ。敢えて火中の栗を拾うように、ドイツ系各社を押しのけて初版刊行に踏み切ったようにも見える。その後順調に初版の刊行を引き受けるが、どうも出版の分野が声楽作品に偏っている。「シューマンの主題による変奏曲」op23と名高い「ワルツ」op39が例外だ。

そうした声楽得意路線は、やがてブラームスの出世作「ドイツレクイエム」op45初版の刊行を任されることで頂点に達する。1868年のことだ。リーターヴィーダーマン社の得意な様子が目に浮かぶ。

ジムロックはおそらくその年かその前年に、社長が交代した。ブラームスの親友フリッツが父親から経営権を引き継ぐ。ジムロックの逆襲をリーターヴィーダーマン社が予期していたか興味は尽きない。

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フォト

ブラームスの辞書写真集

  • Img_0012
    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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