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カテゴリー「591 イギリス」の17件の記事

2021年4月 3日 (土)

スイングルシンガーズ

中古ショップを徘徊中に驚くべきCDを入手。バッハとモーツアルトの有名どころの小品がアカペラの声楽アンサンブルで収録されている。Swingle Singersというのが演奏者の名前だ。元々フランスで結成されたらしいが今は英国で活動する声楽8重唱団。ソプラノ、アルト、テノール、バス各2人で構成される。バッハが21曲モーツアルトが18曲の2枚組みが700円だった。

ブランデンブルク協奏曲第3番の第一楽章がおすすめ。

これをブラームスでやってはもらえまいか。

2020年2月 2日 (日)

Brexit

昨日、英国がEUから離脱した。2016年の国民投票から難産の末の離脱だ。真価が判明するのはまだ先なのだろう。良い方に向かえばと願うばかりである。

 

 

2015年6月20日 (土)

英国への伝播

ブラームスの初期の室内楽を、世間に紹介するという意味で、クララ・シューマンの功績は誠に大きい。

クララは自身の演奏会で進んでブラームスの室内楽を取り上げた。当時のプログラミングの習慣として、ピアノ独奏曲だけのリサイタルは、むしろ稀にしかありえなかった。室内楽や歌曲を織り交ぜるのが恒例だったから、室内楽の採用それ自体は珍しくも無かったが、気鋭の作曲家ブラームスの作品を取り上げたという点が、ユニークだったということだ。ブラームス作品の常として、演奏家のテクニックの披露は第一義ではなくなっている。ましてや室内楽は、作品への深い理解と様式感を持ち合わせねばならない。要求されるテクニックは高いのに、聴衆にはそう聞こえないという厄介な一面を持つ。聴衆の期待は絢爛豪華なピアノ曲だったに違いないのだが、クララは自分の流儀を押し通し、やがて英国の聴衆にそれがクララのスタイルであると認知されるに至った。

ピアノパートはもちろんクララが受け持つ。演奏の準備としてのリハーサルは、独奏曲以上に手間がかかる。

作曲家ロベルト・シューマンの妻にして当代最高のピアニストであるクララのおメガネに叶うということが、どれほど強い後ろ盾だったか想像に難くない。

生涯に19度の英国遠征を企てたクララは、その初期において、ブラームスの無名作品をしきりに取り上げた。ピアノ四重奏曲第2番、ピアノ五重奏曲の英国初演はクララの手によるものだ。

2015年1月10日 (土)

タイムズ

1785年に遡る世界最古の新聞。ロンドンタイムズとも呼ばれる。保守系高級紙として君臨するがブラームスの伝記にも現れる。チャールズ・スタンフォードの証言によれば、本人もほとんど乗り気だったケンブリッジ訪問が、タイムズ紙のスクープによりご破算になったという。本人指揮による第一交響曲英国初演がこれで水泡に帰した。名士扱いを嫌うブラームスが報道を知ってへそを曲げたというのだ。

私が興味を持つのはひねくれた視点。ブラームスはその報道をどうやって知ったのだろう。タイムズ紙を定期的に購読していたのだろうか。あるいは誰かが気を利かせたつもりで教えたのだろうか。ずっと気になっていたのだが、また別の可能性に思い至った。

昨日の記事「カフェ三種の神器」がヒントになる。ウィーンの有名カフェには、欧州の新聞がずらりと取り揃えてあった。英国のタイムズが置かれていたことは間違いない。ブラームスはウィーンのカフェで、タイムズを読んだのではあるまいか。

2014年11月17日 (月)

世界一周の所要時間

ブラームスが生まれた頃、世界一周の所要時間はおよそ150日だったという。英国ロンドンをスタート&ゴールに固定して考えると、明細は以下の通りである。

<1830年代初期> 合計150日

  1. ロンドン→横浜 80日 いわゆる極東航路。当然ながら喜望峰経由の蒸気船だ。
  2. 横浜→サンフランシスコ 30日 太平洋航路。
  3. サンフランシスコ→ニューヨーク 25日。大陸横断鉄道はまだ無かった。
  4. ニューヨーク→ロンドン 15日。北大西洋航路。

それでも蒸気船だからこの程度で済む。帆船だったらもっとかかる。

<1869年> 合計80日
  1. ロンドン→横浜 45日。スエズ運河の開通で劇的短縮。
  2. 横浜→サンフランシスコ 20日 ひとえに船の性能アップ。
  3. サンフランシスコ→ニューヨーク 8日。大陸横断鉄道による劇的な短縮。
  4. ニューヨーク→ロンドン 8日。これも船の性能アップ。

スエズ運河と大陸横断鉄道の開通が同じ年だというのが地味に凄い。これだけで52日の短縮である。ジュールベルヌが名高い「80日間世界一周」を書いたのが1872年なのは偶然ではない。1869年に起きたこの大短縮の結果としての80日が忠実に反映しているのは明らかだ。

<1901年> 合計40日

  1. ロンドン→横浜 16日。シベリア鉄道の開通で劇的短縮。
  2. 横浜→サンフランシスコ 14日 ひとえに船の性能アップ。
  3. サンフランシスコ→ニューヨーク 5日。
  4. ニューヨーク→ロンドン 5日。ドヴォルザークの記録よりは若干短い感じ。

いやはやシベリア鉄道は凄い。日本陸軍が恐れただけのことはある。カナディアンパシフィック鉄道が1887年にヴァンクーバーとモントリオールを結ぶと時間的には早まった。

<1939年> 合計30日

  1. ロンドン→横浜 15日。
  2. 横浜→サンフランシスコ 8日 
  3. サンフランシスコ→ニューヨーク 4日。
  4. ニューヨーク→ロンドン 4日。

戦前のピーク時の所要時間。ブラームスの晩年は80日と40日の中間くらいだ。実は記事「モンスニトンネル」で述べたように、ロンドンからベルギーのオステンデに渡って、モンスニトンンルを抜けてイタリアのかかとからスエズに入るルートが成立していた。これによりロンドン横浜45日が5日から10日程度短縮されたものと思われるから、70日程度で世界一周出来たと思われる。

今日は地味にスエズ運河の開業日である。

2014年9月27日 (土)

世界初の鉄道

蒸気機関車牽引による世界初の鉄道が開通したのが1825年9月27日だ。今日はその記念日。ストックトン-ダーリントン間に開通した。石炭の産地と積出港を結ぶ営利目的の鉄道ではあったが、さまざまな理由から世界初の鉄道と看做さない人もいる。

蒸気機関車が牽引して、人と貨物を載せて走ったという意味では、文句のつけ様が無い。

2014年9月15日 (月)

世界初の定義

1830年9月15日、英国でマンチェスター-リヴァプール鉄道が開業した。今日は記念日。世界初の鉄道と位置づけられている。これ以前にストックトン-ダーリントン間で、既に蒸気機関車が牽引する鉄道が開業していたが、運賃やダイヤが設定されていなかったこともあって残念ながら世界初と認めない学者もいる。

ベートーヴェンの死没からまだ3年しかたっていない上にブラームスはまだ生まれていない。

2014年8月22日 (金)

さまよえるオランダ人

名高いワーグナーのオペラのタイトル。ドイツ語では「Der Fliegende Hollander」綴る。英語では「Flying Dutchman」だ。元々は喜望峰がらみの幽霊船の話だったがワーグナーがそれを題材にとった。記事「空飛ぶハンブルク人」で取り上げたベルリン-ハンブルク間の特急列車の名前「Der Fliegender Hamburger」が、この話に由来するのは明らかだ。さすがにこれを「さまよえるハンブルク人」と訳すのは気がひけただけだ。

それにしても幽霊船にまつわる名前を列車名に採用するとは大胆な話であると、早合点してはいけない。1851年英国グレートウエスタン鉄道に登場した特急は、長らく世界最速の列車の座に君臨していた。もちろん蒸気機関車が牽引するのだが、何と300kmの距離を平均時速85kmで駆け抜けていた。その列車の名前が「Flying Dutchman」だった。しかしながら当時英国で無敵を誇った競走馬の名前という説もある。

つまりドイツの空飛ぶハンブルク人は、世界最速の列車を運行するにあたり、過去の世界最速の列車名の中の「ダッチマン」の部分を「ハンブルク人」に差し替えたものだ。幽霊船にちなんだのではなかった。むしろ並々ならぬ決意の表明であった。

和訳には注意が要る。幽霊船なら「さまよえる」で結構だが、列車名としては「空飛ぶ」あたりに落ち着かざるを得まい。

2013年12月23日 (月)

スピットファイア

英国空軍の名戦闘機の名前だ。1840年7月から10月にかけて繰り広げられた「バトルオブブリテン」(Battle of Britain)を英国勝利に導いた一因とされている。英国本土上陸を目指すその準備として英仏海峡の制空権確保を図るドイツ空軍と、それを阻止せんとする英国空軍の戦いを「バトルオブブリテン」という。ドイツが目的達成に至らなかったという意味で英国の勝ちと評価されている。

その戦いから50周年を記念して、ケント州のシェパードニームという醸造所から発売されたのが「スピットファイア」という銘柄だ。同醸造所は1698年創業なので英国では古い部類に属する。味わいは上品なエール。

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ネックの部分を良く見ると、実機スピットファイアのシルエットの下に「Bottle of Britain」と書かれている。「ボトルオブブリテン」は明らかに「バトルオブブリテン」を引っ掛けた言い回しだ。「英国の戦い」と「英国の一本」くらいのニュアンス。おまけに王冠のデザインは英国空軍機が翼に描くマークになっている。

プラモデル好きにはたまらない逸品。

2013年6月10日 (月)

英国とワイン

ワイン関係の少々詳しい書物を読んでも「英国ワイン」が特段に話題になることは無いと断言してよい。ビールやウイスキーや紅茶とは違う。ワインの生産という面ではほぼ話題にならぬ英国だが、ワインの消費地としての位置付けは低くない。英国の人々が好んだのはフランス・ボルドー産とドイツ・ライン産だ。どちらも大西洋に注ぐ大河のほとりという共通点がある。

ヴィクトリア女王もワインが好きだった。ラインガウは「ホッホハイム」(Hochheim)のリースリンクを好んだ。どれほど好きだったかということをよく顕した逸話がある。彼女は自らの好むワインの生産地に行幸したのだ。女王自ら足を運ぶという栄誉に浴した産地は、ただ喜ぶだけではなかった。まさにその畑が「Konigin Victriaberg」(ヴィクトリア女王山)と名乗る許可を取り付けた。この畑で産するリースリンクを原料とした極甘口ワインに「Konigin Victriaberg」(申すまでも無く最初のoはウムラウト)とラベリングして売り出した。大したネーミングライツだ。

この話1845年だ。12歳のブラームスがハンブルクでヴィクトリア女王行幸のニュースを聞いたかどうか定かではない。

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