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カテゴリー「362 シュットクハウゼン」の5件の記事

2021年10月17日 (日)

シュトックハウゼンのやらかし

オットーエーリヒドイチュ先生の功績はもはや語り尽くされている。ブラームスとの関係で言えば、とても大切なことがある。ブラームスは友人で大歌手のユリウス・シュトックハウゼンのために、シューベルト歌曲を管弦楽に編曲している。下記の通りだ。

  1. 馭者クロノス D369
  2. メムノン D541
  3. タルタルスの群れ D583
  4. 秘め事 D719
  5. 老人の歌 D778
  6. 夕映えの中で D799
  7. 孤独な男 D800
  8. エレンの歌2 D838

上記の内6番と7番はマッコークルの「ブラームス作品目録」に記載がないけれど、フィッシャーデュースカウ先生の「シューベルトの歌曲をたどって」の458ページに書いてある。

さて問題は、シュトックハウゼンはこれらの未出版の楽譜を携えて英国に渡り、そこで紛失(はあっ!!!)したとされている。3番「タルタルスの群れ」だけはシュトックハウゼンがレパートリーにしていなかったため携帯されずに難を逃れたという。ドイチュ先生は1936年英国ウインザー宮の図書館でこれらのうち、「馭者クロノス」「「秘め事」「メムノン」を発見して難を逃れていた「タルタルスの群れ」と合わせて出版した。フィッシャーデュースカウ先生の著書では「メムノン」のところが「ミニヨン」と記載されているがこれでは辻褄が合わない。おそらくは「メムノン」の誤記。

5番の「老人の歌」はマッコークルに載っているのでドイチュ先生ではないルートで再発見されている模様。6番「夕映えの中で」7番「孤独な男」はまだ発見されていないということだ。

紛失とは人騒がせなシュトックハウゼン先生とそれをまんまと発見するドイチュ先生。

 

2021年5月31日 (月)

シュトックハウゼン

ユリウス・シュトックハウゼン(1826-1906)はアルザス生まれのバリトン歌手。ブラームスの親友で、クララとも親交があった。ピアニストのクララやヴァイオリニストのヨアヒムに声楽で匹敵する大歌手だ。シューベルトの「美しき水車小屋の娘」を初めて公開の席で歌うという栄誉に浴した。これは歌曲集をチクルスという形で演奏する先駆けとなった。加えて1861年にはハンブルクでも同曲集を歌っているのだが、伴奏はなんとなんブラームスであった。かくかくしかじか欧州中で同曲集を演奏して回るのだが、ペテルブルクではアントン・ルービンシュタインが伴奏している。シューベルト歌曲のいくつかの管弦楽編曲をブラームスに依頼し、後に初演している。

リートの分野では19世紀最高のバリトン歌手と申してよい。その証拠にシューマンの演奏でも事情は似ている。いくつかの歌曲で初演の栄誉を担い、1861年にはブラームスを伴奏者に従えて「詩人の恋」を歌った。翌年には同じく「詩人の恋」を、クララのピアノで歌った。

ブラームス唯一の連作歌曲集「ティークのマゲローネのロマンス」op33はシュトックハウゼンに献呈されている他、出世作「ドイツレクイエム」の初演でバリトンを務めたのもこの人だ。

シューベルト、シューマンそしてブラームスの歌曲いずれについても深く濃く関与している。歌曲ネタを連ねる以上、外せない人である。

2019年11月 9日 (土)

伴奏者クララ

ここで言う「伴奏者」とは声楽の伴奏という意味だ。

19世紀屈指のピアニストだったクララが、公の場で歌曲の伴奏をしたケースは非常に少ない。クララを伴奏者に従えて歌ったことがある歌手は男女それぞれ1名だけだという。男性はバリトン歌手ユリウス・シュトックハウゼンで、女性はコントラルト歌手アマーリエ・ヴァイスだ。大ヴァイオリニストのヨアヒム夫人は、超一流の歌手だったことがわかる。

だからハンブルク女声合唱団の名誉会員だったクララが、たとえ練習の折にでも、ピアノ伴奏をしてくれていたら、それはそれで大変なことなのだが、なんだかやってそうな気がして仕方がない。

2007年3月 3日 (土)

ブラームス雛

あったらいいなのブラームス雛を選定する。

<お内裏様>ロベルト・シューマン ここにブラームスでは洒落になるまい。

<お雛様>クララ・シューマン 穏当なところである。

<三人官女>

  1. アガーテ・フォン・ジーボルト
  2. エリザベート・フォン・ヘルツォーゲンベルグ
  3. ユーリエ・シューマン

<五人囃子>

  1. ヨーゼフ・ヨアヒム(ヴァイオリン)
  2. ハンス・フォン・ビューロー(ピアノ)
  3. リヒャルト・ミュールフェルト(クラリネット)
  4. ロベルト・ハウスマン(チェロ)
  5. ユリウス・シュトックハウゼン(バリトン)

<左大臣>ヨハン・セバスチャン・バッハ

<右大臣>ヨハネス・ブラームス

当初は、お内裏様にブラームス、お雛様にクララを据えた過激バージョンを作ったのだが、気分的に収まりが悪くて改訂した。ブラームスとクララのペアにしないということは、デリカシーに属する問題である。ブラームスの理解も得られると思う。五人囃子のメンツは完璧である。白酒ならぬワイン好きのブラームスの右大臣は何だかお似合いのような気がする。日本史を紐解けば右大臣は左大臣より位置付けが若干低いが、左大臣がバッハなら、ブラームスは文句を言わないと思われる。カバン持ちか何かで私も入りたい。

おバカな企画が続くものだと我ながら感心する。こういうネタにはつい力が入ってしまう。

2005年11月29日 (火)

創作のスタッフ

ブラームスの作品が生み出されてゆく過程は、あまり透明とは言い難い。膨大な量のスケッチを残したベートーヴェンとは大きく様相が異なる。それゆえブラームスと親交があった友人たちの証言が貴重である。

ブラームスは、自身が優れたピアニストだったことは周知の事実だが、彼の周囲には優れた演奏家が取り巻いていた。テクニック面はいうに及ばず、感性においても時代の泰斗であった演奏家との親交は枚挙に暇が無い。ピアノは言わずもがなの御大クララ・シューマンだ。ロベルト・シューマンの妻にして当代最高のピアニスト。ブラームスは新作の草稿を送り彼女の批評を受けてから発表することが常だった。いくつかの作品の破棄を相談したことさえ記録に残っている。ヴァイオリンもまた言わずもがな。これまた当代最高のヴァイオリニスト、ヨーゼフ・ヨアヒムその人だ。演奏家としてはもちろん、作曲家、教育者としても優秀であった。ヴァイオリン協奏曲の初演時の独奏者だ。ブラームスの協奏曲に熱狂する一方で、シューマンの協奏曲は終生演奏しなかったらしい。

そのほかにも歌手シュトックハウゼン、評論家ハンスリック、指揮者ビュウロウ、クラリネットのミュールフェルトなどキラ星のごとくだ。さらに凄いのは、音楽的素養の高いアマチュアもブラームスを豊かな大気のように厚く覆っていた。外科医ビルロートが代表格だ。

インスピレーションはもちろんブラームスの天性によるものだが、周囲の優秀なスタッフに恵まれたことも才能のうちなのではないかと思えて来る。

実はこれからが今日の本論。ささやかな本論。実はブログ「ブラームスの辞書」にも暖かい支持者が何名か存在する。定期的にコメントを書き込んでくださる人たち。ブックマークをしてじっと読みながら、時々メールで励ましてくれる人たち。そうした反応は、ブログを継続するモチベーションの一つになっている。その中の一人で、今opus49を所有している女性は、アマチュアピアニストとしての実演奏の観点から「ブラームスの辞書」についての感想を伝えてくれる。いつも真っ先の反応がありがたくモニターとしても頼ってしまっている。明日、ブログ「ブラームスの辞書」開設半年を迎えるにあたり、彼女のアイデアを全面的に採用した記事を掲載して、日ごろのご好意に応えたいと思う。

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