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    自分で買い求めて賞味したビールの写真。ドイツとオーストリアの製品だけを厳選して掲載する。

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カテゴリー「636 クリスマス」の11件の記事

2018年12月25日 (火)

「StilleNacht」初演200年

1818年12月25日にオーストリア・オーベルンドルフの教会で初演されたドイツ語のクリスマスキャロル「Stille Nacht」だ。英語への転写で「Silent night」となり、日本では「きよしこの夜」と呼ばれている。もっともポピュラーなクリスマスソングと断言したところで、たいしたお叱りを受けるとも思えない。

日本ではにぎやかで楽しい側面が強調されがちだが、本来こういう静寂こそが似合うものなのだと思う。

今日は初演200年のメモリアルデー。

展開中のバロック特集を悠然と中断して言及するために、我が家所有のCDに収録された「きよしこの夜」ばかりを集めたCDを作った。ドイツ語で歌われたものに限るという自主規制付きのため、英語で歌われているBCJやキングズシンガーズは涙を飲んだ。

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これが手製のジャケット。

  • ミヒャエル・ハルトマンさんはミュンヘンの聖ボニファティウス教会のオルガン演奏でのエントリー。オットー・マリング(1848-1915)という作曲家の「Die Geburt Christi」op48から第3楽章「ベツレヘム」。エンディングで、まさにこの「きよしこの夜」が荘厳に響き渡る、曲集の冒頭にふさわしい。
  • 「RIAS Kammerchor」は、1948年創設の合唱団。第二次大戦後西ベルリンに進駐した米軍向けの放送局と関係があるらしい。新旧両盤があった。特筆すべきはアレンジだ。なんとオイゼビウス・マンディチェフスキーである。ブラームスの弟子だ。ウィーン楽友協会の司書を務めたほどの大物。
  • Calmus ensemble は、気鋭の声楽アンサンブル。ライプチヒトマス教会合唱団出身者4名にソプラノ1を加えた編成。
  • Wienersangerknaben は、ウイーン少年合唱団のこと。
  • RegensburgerDomspatzen は、レーゲンスブルク大聖堂の合唱団。「Spatzen」は「雀」の意味。実力はローマ法王のお墨付きである。
  • ThomanenchorLeipzigは、ライプチヒトマス教会の合唱団。バッハが合唱長を務めていたズバリその合唱団である。録音場所がトマス教会でないのが残念ではあるけれども、とても上手。
  • Singerpurもまた声楽五重唱で、レーゲンスブルク出身。アレンジが現代風。ミステリアス志向の和音遣い。
  • Lubeckerknabenkantorei 昨日紹介したCDのエンディングに入っている。合唱団のテクならライプチヒには負けているのだろう。けれどもこれはコンクールではない。ハープに横溢する透明感、「天井高い感」、私自身が現地で買い求めたこともあり総合的にはライプチヒを凌ぐ。
  • ラストトラック1分08秒の収録は「きよしこの夜」ではない。トマス合唱団CDのエンディングに入っていた「トマス教会の鐘の音」を据えた。

全長30分の手作りCDだが、どうしてどうして感動的。

メリークリスマス。

2018年12月24日 (月)

リューベックのクリスマス

演奏会のあと、教会ショップをうろつくのはもはや定番になった。その教会での演奏が収録されたCDに出会える確率が高いからだ。素晴らしいコンサートの余韻をCDでと思うのは自然なことだ。

マリエン教会の演奏を収録したクリスマスソング集を買い求めた。

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リューベッカークナーベンカントライの合唱、マリエンカントルの指揮に、マリエンオルガニストのオルガン伴奏だ。それだけで記念になると中身も聴かずに即買いだった。帰国して聴いたらこれがまた素晴らしい。選曲のセンスがいい。オルガンやハープの控えめな伴奏も好感が持てる。CDから伝わる響きだけで、「天井高いっす」感が充満してコンサートの余韻に浸ることができる。

ラスト、ハープの静謐な伴奏にのった「きよしこの夜」の最弱音が身に染みる。

2017年2月10日 (金)

プラハのクリスマス

日本と違って12月30日だというのに、プラハ市街にはクリスマスツリーがあちらこちらに飾られている。夜になるとことさら美しい。

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これは市庁舎前だ。ツリーの手前はヤン・フス像のシルエット。あまりきらびやかでないのがそれっぽい。赤や青や緑の電球使用が禁じられているかのよう。

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聖ニコラウス教会の内部。

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プラハ城内にあったクリスマスの飾り。

2014年12月25日 (木)

最強のピアニシモ

去る12月20日、次女の後輩たちのオーケストラ部は、恒例の病院慰問に赴いた。総合病院のエントランスでおよそ90分のクリスマスコンサートだ。13時少し過ぎから、楽器や器材の搬入が始まる。大型楽器はもちろん、ひな壇まで持ち込んでのセッティングなのだが、整然とした作業っぷりで30分もしないうちにリハーサルに入る。演奏会後の撤収と合わせて、キリリキビキビとした動きは、毎度毎度のことながら見事で鑑賞の対象でさえある。続くコンサートの出来映えを量るバロメーターだ。

会場は広くないので、オーケストラを2つに割る。前半は1年生だけのオケだ。1年生オケデビュウである。「星に願い」「ソリすべり」「ふるさと」など、デビュー演奏の緊張感がひしひしと伝わってくる。もはやお家芸のマスカーニ「カバレリアルスティカーナ」より「間奏曲」を聴いて驚いた。入学からわずか8ヶ月の1年生だというのに、DNAを感じさせてくれる演奏だった。再来年のドイツはこの子らが中心になる。この日のカバレリは、その原点となるべき演奏だ。チェロバスの支えががっしりと行き届いた原石。

ハーフタイム。

演奏を終えた1年生が、聴衆ひとりひとりにクリスマスカードを手渡す。カードはオリジナルの手作り。同じものは2つない。急ごしらえの客席に整然と割って入り、言葉をかけながら渡す。もちろん2階席にも来る。デッキ沿いに並んだ車椅子のお年寄りに言葉をかける。膝を床につけて、お年寄りの顔を見上げながら、笑顔で手渡すのを目の前で見た。この気持ちが演奏の基礎になっていると確信した。入部8ヶ月の1年生の自然な仕草に演奏の本質を見せられた思いだ。

実はそのころステージには、2年生たちが音もなく入場していた。クリスマスカードを1年生が配る間、後半の演奏を担う2年生オケが準備するという、見事な段取りである。

その後半スタートはチャイコフスキーの「白鳥の湖」から「情景」だ。冒頭弦楽器のトレモロとハープの伴奏に乗って、超有名なオーボエのソロ。オーボエ独奏の生徒が、実は高校からオーボエを始めたとは、誰も気づくまい。伴奏に回る弦のトレモロが「うちのオーボエ聴いて」というたたずまいだ。ああそれから、毎度毎度の凛としたハープの安心感が空気を引き締める。1年生オケとの違いを見せ付けるお姉さまたちの貫禄が、やがて大きなうねりとなる。

前置きが長くなった。

それは、ラストナンバーのクリスマスソングメドレーの中で起きた。明るめのクリスマスソングが披露された後、潮が引くように音量が静まった中、第一ヴァイオリンが、耳になじみのメロディーを奏で始めた。「きよしこの夜」だ。弦楽器とハープ、そしてクラリネットとファゴットが彩りを添えるシンプルな演奏なのだが、ただならぬ弱音だ。全聴衆が「何が起きたのか」といわんばかりにステージに吸い寄せられた。「救いの御子は」ではさらに音量を落とす。本日発せられた最も小さな音だというのに、この瞬間感動は最大となった。この1年の出来事あれこれ全部を一瞬で思い起こさせてくれるようなピアニシモ。音量は最弱なのに、こめられた思いは最強。「大切なことを小声で」を絵に描いたよう。

この感動は言葉で現すのが難しい。「大切なものを両てのひらでそっとすくい取って、上目遣いで見つめながら、これまた大切なひとにそっと手渡す感じ」とでも申し上げるのが精一杯。気持ちの深さは音量じゃないと教えられた。何よりも素晴らしいのは、この演奏効果、子どもたちは皆腹に入っている。それがわかっていなければ絶対に出せない音色だ。コンクールでも何でもない、このささやかな慰問演奏会のために、先生と一緒になってどれほどの貴重な準備が行われたか垣間見るようだ。

なんて幸せな子どもたち。そして自分の耳が「最強のピアニシモ」に反応したことを心から嬉しく思う。

コーヒー特集を勇敢に中断してメリークリスマス。

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2011年12月25日 (日)

もみの木

ほぼ知らぬ者のないクリスマスソングだ。「O Tannebaum,O Tannebaum」と歌い出される。

しかしクリスマスソングとしての定着は19世紀であるのに対し、文献上最古の痕跡は16世紀まで遡る。この歌が学生歌集に採録されているのだ。クリスマスソングとして定着するずっと以前から、学生たちが歌っていたということだ。よく歌詞を読むと、クリスマスとの直接の関連が無いように思われる。そう言えば、学生歌を調べていて感じるのは、クリスマスの痕跡が無いことだ。単なる忘年会をクリスマスコンパと称して、プレゼント交換までしていた我が大学オケとはえらい違いである。

あちらでは、クリスマスを前に各大学は一斉に休暇に入り、学生たちが帰郷するのだと思う。みんな家族とともにクリスマスを過ごすのだ。だからクリスマスネタの学生歌が無いのだと考える。

次女たちの高校オケも昨日クリスマスパーティーがあった。午前中練習をして昼からパーティー。お菓子やケーキを持ち寄って、ゲームをしたり出し物があったり楽しそうだ。驚いたのはパーティーの後3時から6時まで練習をしたらしい。いやはや厳しい。

2009年12月25日 (金)

平均律ドボヴィーア曲集

長短24全ての調でブラームスのピアノ曲集を作る企画「平均律ブラヴィーア曲集」を公開したばかりだ。現在ドヴォルザーク特集の真っ只中であるから、当然ドヴォルザークのピアノ曲で同じ事がしたくなった。ブログ「ブラームスの辞書」からドヴォルザークへのクリスマスプレゼントだ。

  1. ハ長調 詩的音画より「セレナーデ」op85-9 ほんわりとどこまでも良心的で暖かい佳曲。本曲集の幕開けにふさわしい。4分の4拍子で始まった音楽が、どこまでもさりげなく8分の6拍子に転換する。注意して聴いていないと気付かぬくらい自然だ。
  2. ハ短調 詩的音画より「バッカナール」op85-10 ドヴォルザーク最高のスケルツォ。主題再帰のさせかたが半端ねぇ感じ。
  3. 変ニ長調 詩的音画より「スヴァターホラ」op85-13 詩的音画のフィナーレを飾る絶唱。27小節目からのピアニシモAs音の連打が心に沁みる。
  4. 嬰ハ短調 組曲イ長調より第2曲op98-2 組曲イ長調の2曲目「Molt Allegro」だ。
  5. ニ長調 牧歌 2番op56-2 意外とニ長調は層が薄い。シンコペーションを前面に押し出しながらも優雅さを忘れないのはバッハのホ長調インヴェンションを思い出す。
  6. ニ短調 スコットランド舞曲 op41 キビッキビの4分の2拍子。 
  7. 変ホ長調 ワルツ op54-8 ドヴォルザークワルツの最高峰。快速痛快に吹き抜ける一陣の風。
  8. 変ホ短調 詩的音画より「古い城にて」op85-3 詩的音画全13曲から何か1曲と言われれば、迷った挙句にこれを採るだろう。ひんやりとした空気の描写は秀逸。調号はフラット3個。  
  9. ホ長調 牧歌 4番op56-4 中間部の左手に「アメリカ四重奏曲」第1楽章冒頭の旋律が短調で出現する宝物。
  10. ホ短調  影絵より 10番 op8-10 長調と短調の中間をさまようかんじだ。ややブラームスっぽい。インテルメッツォop119-2に近い感じ。
  11. ヘ長調 牧歌 1番op56-1 挨拶をかかさぬ律儀なドヴォルザークそのままという印象。
  12. ヘ短調 なし ピアノ連弾にも存在しない完全な空白。全24曲のキッカリどまん中が空白なのは、ハーフタイムのようで気が利いている。
  13. 嬰ヘ長調 フモレスケ B-138 クライスラーのヴァイオリン編曲で名高い変ト長調のフモレスケを僅差で抑えての採用。全24曲の後半立ち上げの作品としてまさにうってつけの可憐さ。思いついたモン勝ちの旋律。
  14. 嬰へ短調  影絵より4番 op8-4 粗野で骨太。繊細なブラームスの嬰ヘ短調とは異質だ。  
  15. ト長調 子守唄 B188-1 子守唄というタイトルだがピアノ独奏曲だ。素朴にして優雅な子守唄。中間部の盛り上がりは子守唄としては異例だがそれもご愛嬌。知名度低くていい私だけの子守唄。
  16. ト短調 エクローグ op52-4 ドヴォルザークの残した最高のエクローグだ。即興曲op52-1やカプリチオB188-2を僅差で抑えての採用。
  17. 変イ長調 詩的音画より「妖精の踊り」op85-8 高音を意図的に用いた効果が圧倒的だ。ブラームスのop76-2を彷彿とさせる。キリリと軽やかな一陣の風。
  18. 変イ短調 詩的音画より「フリアント」op85-7 オタクな調性、シャープな半音進行、キレキレのリズム。
  19. イ長調 詩的音画より「春の歌」op85-4 喜びの表現としてハ長調のセレナーデと双璧をなす。絶えず流れ続ける風としての32分音符が洒脱。涙目で微笑む感じ。
  20. イ短調 ワルツop54-2 ドヴォルザーク版「ドナウ川のさざなみ」。トリオは3拍子1小節を8つに割る快感だ。
  21. 変ロ長調 マズルカ op56-3 長調で立ち上がるには立ち上がるが、それも申し訳程度で、すぐに中島みゆき顔負けの短調に移行する。 
  22. 変ロ短調 フモレスケ op101-8 超名高い7番変ト長調の影に隠れた佳品。
  23. ロ長調 詩的音画より「夜の道」op85-1 記譜上の調号はシャープ2個のロ短調だが、実際にはロ長調が鳴る。
  24. ロ短調 影絵より7番 op8-8 「影絵」の中では一番特徴的。ブラームスのop76-2と精神的につながっている気がする。調と作曲年が一致する他、冒頭の発想記号も近似する。とは言えさらに18年は遡るドヴォルザーク初の交響曲「ズロニツェの鐘」の第3楽章の冒頭主題にも似ている。

2009年12月24日 (木)

オルガニスト

オルガン奏者のことだ。ブラームスは、創作人生の初期と末期に素晴らしいオルガン作品を遺した。作品番号の最大値122を背負った「オルガンのための11のコラール前奏曲」は1902年4月24日に初演された。作品番号付きの作品が、ブラームスの生前に初演されなかったのは、日時が判明している作品では、おそらくこれだけだ。

著名な作曲家が、オルガニストでもあったというケースは珍しくない。ブラームスが敬愛してやまないバッハは、生前はオルガン奏者としての名声が勝っていたという。レーガー、ブルックナーも忘れてはならない。フランスにもいる。メシアン、フランク、サンサーンスという面々だ。

彼らに共通なのは、オルガンのための作品を書き残しているということだ。素晴らしい作品を書いたブラームスは、ライプチヒのトマス教会がカントルへの就任を打診したくらいだからオルガン演奏も達者だったと思われる。

ここにささやかな謎がある。ドヴォルザークだ。

18歳からプラハオルガン学校に学んだドヴォルザークは12人中2番目の成績で卒業する。オルガン、ヴァイオリン、ヴィオラの演奏は一定の評価をされたが、作曲は芳しくなかった。その能力を生かすべくオルガニストになった時期がある。1874年から1877年までの3年間だ。聖アダルペルト教会のオルガニストに就任したのだ。この時期はオーストリア国家奨学金に応募していた時期に重なる。半ば賞金を目当てに毎年せっせと作曲していたのだ。名だたる作曲家兼オルガニストの諸先輩はオルガン作品も遺しているのだが、ドヴォルザークの作品一覧にはオルガン作品は合唱曲の伴奏に用いているケースを加えてもホンの数例である。ましてやCDにはさっぱりお目にかかれない。

オーストリア国家奨学金の応募規定にオルガン作品が入っていなかったのだろうか。オルガン曲は書いても売れないという現実的な落としどころが見えている。

もっと素朴な疑問は、聖アダルペルト教会のオルガニストとしてどんな作品を弾いていたのだろう。敬虔なカトリックだったドヴォルザークの就職先がプロテスタント教会であるハズがない。だからバッハ作品は演奏していないと推定したら行き過ぎだろうか。

けれどもクリスマスのミサでオルガンを弾いたことだけは確実と思われる。

2008年12月24日 (水)

一輪のバラが咲いて

ブラームスの最後の作品「オルガンのための11のコラール前奏曲」の8番のタイトルだ。その可憐なたたずまいはまさに「オルガンのためのインテルメッツォ」と呼ぶにふさわしい。今のところ、その11曲の中では一番のお気に入りである。

無知というのは困ったものだ。最近バッハのカンタータに触れる機会が多いので、キリスト教と音楽の関係をいろいろ調べていたら、興味深いことが見つかった。

「一輪のバラが咲いて」は古いドイツのクリスマスソングだというのだ。賛美歌96番と同じ「賛美歌21」の246番として賛美歌集にも載っているという。一昨年の8月にオルガン強化月間の最大の収穫としたが、まさかクリスマスソングだとは思わなかった。

賛美歌集に楽譜が載っている。それを見ると2分の2拍子、ヘ長調の4声体だ。調と拍子は一致しているもののブラームスのコラール前奏曲とは似ても似つかない。この旋律を元にした精巧な変奏になっているのだろう。

2007年12月25日 (火)

クララからのプレゼント

1855年12月25日。クララ・シューマンは22歳のヨハネス・ブラームスにクリスマスプレゼントを贈った。ブラームスのシューマン家訪問から2年が経過していた。

何を贈ったのか。それは1851年にライプチヒ・バッハ協会から刊行されたバッハ全集の第1巻だ。新バッハ全集が刊行された今となっては、区別のために「旧バッハ全集」と呼ばれているが、当時は「旧」の文字なんぞ付いていなかった。

「我が愛する友・ヨハネス・ブラームスへ。始まりとして」というクララ・シューマンのメッセージが添えられていたという。

1850年クララの夫ロベルト・シューマンを中心に設立されたバッハ協会の目的は、信頼すべき楽譜の提供だったからその第一巻はまさに待望の初収穫であった。

何よりも嬉しいこと、それは、クララがブラームスをバッハ全集第1巻を贈るに足る人材だと判断したことだ。「豚に真珠」「馬の耳に念仏」「猫に小判」だとは思わなかったのだ。ブラームスの喜びはいかばかりだったろう。

クララの判断はこの上なく正しかった。ブラームスはこの後、次々と発行されるバッハ全集諸巻の熱心な購読者になった。ブラームスの遺品となったバッハ全集はそのほとんどが、彼自身による無数の書き込みとともに、現在もウイーン楽友協会に伝えられているという。

その意味でクララのクリスマスプレゼンントは、まことに理にかなったものだった。第1巻に収められているのは、カンタータの1番から10番までだ。このうち4番と8番は、合唱指揮者ブラームスのはずせぬレパートリーとなって行く。特に4番は、早くもデトモルト在勤中に取り上げられている。このようなバッハのカンタータの演奏体験は、ブラームスをバッハ研究の第一人者に押し上げたばかりか、19世紀後半のバッハ復興を実技面から補完補強するものとなった。

やがては1882年に死去したノッテボームの後任としてバッハ全集の編集陣への参画も要請されるほどのバッハ研究の泰斗と目されるまでになった。

クララの慧眼を喜びたい。

2006年12月25日 (月)

テネラメンテクリスマス

インテルメッツォイ長調op118-2「Andante teneramente」は、ブラームスのピアノ独奏曲の中で一番好きな曲である。28歳の頃その素晴らしさに目覚めてからずっと愛好している。この曲を収録したCDがあれば買わずにはいられない時期がしばらく続いていたせいか我が家には47種のCDがある。古今の名だたるピアニストの帰依を勝ち取ってきた証拠でもある。1枚1枚には皆愛着がある。しかし、レーベルを見ずに演奏だけを聴いて誰の演奏かを言い当てるのは、今でも難しい。微妙なニュアンスに心が動くかどうかは聴く側のコンディションにもよるからだ。本日は「演奏時間」という見かけ上客観的な切り口から大好きな「Andante teneramente」を考察したい。

お断りしたいことが3つある。まずCDのジャケットに記載されたピアニストの演奏が収録されているということだけは、無条件に信用することにした。本当はわかったものではないと思うが、「それを言ってはオシメェよ」のノリである。2つめは、演奏時間の数えかただ。CD記載の演奏時間は演奏後の無音の状態まで含んでいることが多い。大抵はバラードト短調op118-3が鳴り出すまでの時間も含まれているのだ。本日の議論をより正確にするために無音の部分の時間を計って補正したデータを使用した。3つめに、この曲を4分の3拍子116小節の曲と考える。49小節目からの8小節間がリピートされるから合計124小節、372個の四分音符の羅列と捉えることが出来る。このリピートを省略している演奏は今のところ見当たらない。演奏時間から逆算して平均のメトロノーム値を計算した。64小節目と76小節目のフェルマータの時間のかけ方や、途中の「rit」の解釈で揺れも生じようが、目安にはなると思われる。

以下が録音年代順のリストである。録音年/ピアニスト/国籍/演奏時間/MM換算となっている。赤い文字は女性である。

  1. 1956年 ウィルヘルム・バックハウス(GER) 4分48秒 MM=77.50
  2. 1960年 グレン・グールド(CAN) 5分42秒 MM=65.26
  3. 1962年 ジュリアス・カッチェン(USA) 6分00秒 MM=62.00
  4. 1964年 ウイルヘルム・ケンプ(GER) 4分27秒 MM=83.60
  5. 1969年 ワルター・クリーン(AUT) 4分48秒 MM=78.59
  6. 1971年 ヴァン・クライバーン(USA) 6分11秒 MM=60.98
  7. 1975年 ペーター・レーゼル(GER) 5分37秒 MM=66.23
  8. 1976年 ドミトリ・アレクセーエフ(RUS) 6分18秒 MM=59.05
  9. 1976年 ラドゥ・ルプー(ROM) 5分51秒 MM=63.59
  10. 1980年 インゲル・ゼーデルグレン(SWE) 6分36秒 MM=56.36
  11. 1981年 ステファン・コバシェビッチ(USA) 5分00秒 MM=74.40
  12. 1981年 アナトリイ・ヴェデルニコフ(RUS) 6分27秒 MM=57.67
  13. 1981年 ヴァレリー・カステルスキー(RUS) 5分24秒 MM=68.89
  14. 1984年 杉谷昭子(JPN) 5分39秒 MM=65.84
  15. 1986年 ミハイル・ルディ(UZB) 5分35秒 MM=66.63
  16. 1989年 イディル・ビレット(TUR) 5分08秒 MM=72.47
  17. 1989年 ゲルハルト・オピッツ(GER) 6分34秒 MM=56.65
  18. 1989年 ディルク・イエレス(GER) 5分35秒 MM=66.63
  19. 1989年 ドゥブラフカ・トムシッチ(SLO) 6分12秒 MM=60.00
  20. 1991年 エマニュエル・アックス(POL) 6分18秒 MM=59.05
  21. 1991年 カルメン・ピアッツィーニ(ARG) 5分03秒 MM=73.66
  22. 1992年 ヴァレリー・アフェナシェフ(RUS) 7分53秒 MM=47.19
  23. 1992年 イヴォ・ポゴレリチ(SER) 8分43秒 MM=42.68
  24. 1993年 フリードリヒ・ウイルヘルム・シュヌア(GER) 5分26秒 MM=68.47
  25. 1993年 マリー・ジョセフ・ジュード(FRA) 6分02秒 MM=61.66
  26. 1994年 田部京子(JPN) 6分49秒 MM=54.57
  27. 1995年 エレーヌ・グリモー(FRA) 5分45秒 MM=64.70
  28. 1995年 梯剛之(JPN) 5分33秒 MM=67.03
  29. 1996年 エディト・ピヒトアクセンフェルト(GER) 6分17秒 MM=59.20
  30. 1996年 岡田博美(JPN) 5分00秒 MM=74.40
  31. 1996年 ヤン・ミキエルス(BEL) 6分30秒 MM=57.23
  32. 1996年 ナオミ・ザスラフ(CAN) 5分29秒 MM=67.84
  33. 1997年 ポール・バーコヴィッツ(CAN) 6分23秒 MM=58.28
  34. 1998年 仲道郁代(JPN) 7分04秒 MM=52.64
  35. 1998年 ホアキン・アチュカーロ(ESP) 5分59秒 MM=62.17
  36. 2001年 園田高弘(JPN) 5分38秒 MM=66.04
  37. 2001年 山根弥生子(JPN) 4分34秒 MM=81.46
  38. 2001年 イリーナ・メジューエワ(RUS) 6分54秒 MM=53.91
  39. 2001年 伊藤理恵(JPN) 7分8秒 MM=52.15
  40. 2002年 ラルス・フォークト(GER) 6分10秒 MM=60.32
  41. 2002年 エレーナ・クシュネロヴァ(RUS) 6分13秒 MM=59.84
  42. 2002年 フランク・レヴィ(SWZ) 5分43秒 MM=65.07
  43. 2002年 ハコン・アウシュトボ(NOR) 5分47秒 MM=64.32
  44. 2003年 シュテファン・ヴラダー(AUT) 6分16秒 MM=59.36
  45. 2003年 エフゲニー・ザラフィアンツ(RUS) 6分27秒 MM=57.67
  46. 2004年 エリザベート・レオンスカヤ(RUS) 6分30秒 MM=57.23
  47. 2005年 マルク・パンティヨン(FRA) 6分05秒 MM=61.15

全演奏の平均は5分59秒。MM=62.09である。標準偏差αは47.73秒

競馬なら1964年のケンプが圧勝である。83.6というメトロノーム値は「allegretto」に肉薄しかねない。ディープインパクトさながらである。実際に聴いてみるとバタついている感じはしない。フレーズの切れ目切れ目で立ち止まらないといった感じである。競馬と違って早けりゃいいというモンでもないところが問題である。

この順番でipodに取り込んで、「作品118-2」の歴史を体験している。全部再生すると約4時間以上かかる。

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ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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