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カテゴリー「703 お叱り覚悟」の39件の記事

2021年3月23日 (火)

BWV547

言うまい言うまいと思っていたが、こらえきれずに記事にする。バッハの前奏曲とフーガハ長調BWV547の話だ。後半のフーガがブラームスの第二交響曲の第4楽章に似ている。

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あちらはニ長調でこちらはハ長調だが、移動ドで読む限り一致している。拍子はどちらも2分の2だ。第二交響曲では音価が2倍に拡大されている。その後に続く連続する4度下降もなんだか怪しい。

この手の似ているネタは得てして偶然だ。だからお叱りも覚悟だ。誰かに言われるくらいなら自分で言っておきたいという因果な性格である。

 

 

2021年1月26日 (火)

楽器の法王

かつてピアノを楽器の王様と認定しながら、人の声の優秀さを話題にした。ところがメンデルスゾーンは、オルガンを「楽器の王様」と断言しているらしい。

このところバロック特集を展開する中で新たな考えが浮かんだ。オルガンには発音後の減衰を伴わぬというセールスポイントがあるし、歴史は控えめに見積もってもピアノの数倍はある。

かといって、「楽器の王様」の称号をピアノから剥奪するのも乱暴だと思い一計を案じて良いことを思いついた。オルガンを「楽器の法王」に認定する。単に「王」だと俗界のトップという感じがするが、「法王」だと聖界の長というニュアンスがこもる。「皇帝」となると「王」より上っぽくてややこしい。オルガンの来歴を考えると、信仰と密接不可分だ。「法王」という提案にはその含みもある。

「オルガンのイメージはどうみてもプロテスタントでしょ」という突っ込みを受ける覚悟だけは出来ている。「法王」というとローマに住んでいるイメージがあるけれど、「楽器の法王」は是非ともリューベックかハンブルクにお住まいいただきたい。

2019年8月22日 (木)

通説を疑う

連続して左手のためのシャコンヌについてのブラームスとクララのやりとりを紹介した。

クララでも右手を出したくなるのかなどと笑っている場合ではない。古来語られるシャコンヌの編曲の動機は、クララの右手の脱臼ではない可能性も浮上する。クララ自身がこの返信で述べているように「当地(キール)について右手で机の引き出しを開けようとした際に筋を痛めた」のが事実とするなら、ブラームスが脱臼の見舞いのために作曲したという通説と矛盾する。クララ自身が右手を痛めたのとほぼ同時に左手のシャコンヌが届いた偶然に驚いているからだ。

そういえば紹介したブラームスの手紙には「クララの脱臼」を気遣う文が欠けていた。右手を脱臼した見舞いにと「左手のためのシャコンヌ」を贈ったのなら、添えた手紙がそれに言及しないのはおかしい。
往復書簡集の出所など他に確認すべきことも多いが、やっかいな矛盾が噴出したものだ。

2019年7月10日 (水)

シャコンヌの尻尾

無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番の5曲目、てゆーか「シャコンヌ」の話。一番最後の音は「D」だ。そしてそのひとつ前の音も「D」になっている。「レレー」と聞こえる。まあ、エンディングだということもあって、奏者によっては大きくテンポが緩んでいるので「レレー」どころではなく、「れーーーれーーーーーーーーーー」くらいに聞こえることもある。

この連続する「D」はデジャブだ。

どこかで聴いたことがあるのだ。それはきっとパルティータ第1曲「アルマンド」の冒頭だ。アルマンドは、アウフタクトで立ち上がるお約束がある。ここでも例外ではない。シャコンヌの尻尾と同じ連続する「D」で立ち上がる。デジャブの原因はきっとこれだ。音の高さまで完全に一致する「D」だ。

フィナーレに置かれたシャコンヌの尻尾は、第一曲アルマンド冒頭のエコーと聴こえる。

2019年6月13日 (木)

賛美歌フリー

「ロミオとジュリエット」は、イタリアヴェローナの貴族社会が舞台だった。これを20世紀ニューヨークに転写したのが「ウエストサイドストーリー」だということはよく知られている。これにより生じる受け手側のイメージが、物語の進行を円滑にする。全体がフィクションであるからこそ、こうしたディテイルのリアリティが説得力を生む。物語に幅と奥行きが出る。受け手に「ありがち」と思わせる舞台設定はとても大切だ。受け手がそこそこ舞台を知っているということだ。

オルガンコラールは、受け手側に賛美歌の知識が存在する。「みなさんよくご存じのあの賛美歌」を、「私が料理しました」ということだ。「オルガン自由曲」は、何が自由かというと基礎としての賛美歌がありませんがという意味だ。「賛美歌フリー」である。

元々生活の中にキリスト教の信仰が根付いていない私が、オルガン作品に親しもうと思ったら、まずはオルガン自由曲から入る方が垣根が低いと思った。

一連のオルガン頭出しCDはそのキッカケだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年4月21日 (日)

誉め方の作法

使っている側に悪気が無いだけに厄介だ。作曲家Aを論ずる中に現れる「AはB以前で最も重要な作曲家である」という表現だ。Aは作曲家の名前が入るが、Bは作曲家だったり時代名だったりするのだが、とりわけ作曲家名だった場合、注意が要る。

大抵はAさんをプラスに評価する文脈の中に現れる。個人のブログの感想ではなく、きちんとした解説書の中にだって現れる。Aにブクステフーデ、Bにバッハを代入してみよう。「ブクステフーデはバッハ以前で最も重要な作曲家である」というよく見る文章になる。ここでブクステフーデはバッハに先行するオルガンの大家として演奏と作曲の両面で高い評価を与えられていると見ていい。ところがだ。

ところが、「これはバッハよりは劣るけれど」というニュアンスを濃厚に含む。Aにパッヘルベルを代入しても同じことだ。

信じ込んでいた。最近ブクステフーデやパッヘルベルのオルガン作品に親しんでみると、違和感を感じる。「高い高いバッハの評価ありき」の言い回しではないのかと痛感する。それが学会の通説だと言われれば仕方ないが、普通に「パッヘルベルやブクステフーデはバッハの一世代前の素晴らしい作曲家だ」あるいは「バッハと遜色がない」と言えばいい。使う側は無意識かもしれぬが、ブクステフーデやパッヘルベルへの上から目線さえ感じる。そうまでして持ち上げなくてもバッハは十分素晴らしい。

テレマンの評論に現れる「当時はバッハより有名だった」や、CPEバッハについて言われる「当時はバッハと言えばカールフィリップエマニュエルだった」も同じ香りがする。

ぜーんぶ誉め言葉のつもりだけに厄介だ。最近なんだか違う気がしてきた。ブラームスに訊いてみたい。

2018年5月 5日 (土)

GWマルクス

「GW」はゴールデンウィークではない。

1849年16歳のブラームスが「ロシアの思い出」と題するピアノ連弾作品を出版にこぎつけた。このときは本名を名乗らず、「GWマルクス」というペンネームを用いた。なぜこの名前を選んだのだろう。「マルクス」は恩師「マルクセン」に関係があるのだろうか?

今試しに「GWマルクス」でグーグル検索してみるといい。若きブラームスのペンネームなどヒットしたりはしない。資本論で名高いマルクスの「GWの公式」が大量にヒットする。「GWのGはお金、Wは商品云々」だ。「GWマルクス」は「Marks」であり、資本論のマルクスは「Marx」だが、デューデンの苗字辞典には「Marks=Marx」と書いてある。偶然なら相当怖い。

カールマルクスは1818年5月5日生まれだから、生誕200年のメモリアルデー。

迷った末バッハのトマスカントル就任の記事を前日に押しやっての言及だ。

2017年7月11日 (火)

オーデルの向こう側

ドイツ方言学上の重要な線、ベンラート線がアーヘンからフランクフルト・アム・オーデルまで繋がっていると書いた。平地ドイツ語と高地ドイツ語の境界を形成する。

一方ベルギー国内でフランス語圏とオランダ語圏を分かつ境界線の東端がアーヘンで、ベンラート線と接続するとも書いた。

これら言語学上の重要な線が、接続するという偶然を驚いたつもりだったが、少し考えが変った。これはもしかすると必然かもしれないと。フランス語の方言分布を調べていると、六角形状の国土の6つの隅に少数言語が分布するのだが、その一つベルギー系方言と本来のフランス語の境界線が、リールの南あたりで、先の境界線と接するからだ。元々はフランスからベルギーを経てドイツを横断する一つの線が、下記の通り言語圏によって役割を変えているように見える。

  1. フランス国内ではフランス語とベルギー系フランス語の境界
  2. ベルギー国内では、オランダ語とフランス語の境界。ローマ人の居留区に侵入したフランク人の勢力の南限。
  3. でドイツ国内では高地ドイツ語と平地ドイツ語の境界。

これらの3つの境界線を繋げると中央ヨーロッパの北部を東西に横断する一本の線になるということだ。

ここまで来たからには当然の疑問が湧く。先のドイツを東西に横切ったベンラート線のその先はどうなっているのだろう。オーデル川沿いのフランクフルトで、オーデル川に到達した線は、ポーランド領に入ると忽然と消滅するのだろうか。そんなハズは無い。その手の言語学方言学上の境界線の方が、現代の国境線よりもずっと根強いと思わねばならない。

不気味な符合がある。ベルギーにおける同線が、「ローマ人居住区に侵入したフランク人勢力の南限だ」という話がある。これがオランダ語とフランス語のつまりはゲルマンとラテンの境界だというのだが、ポーランド側もでも同じではないのか。その線がフランクフルトを通っているのが偶然にしては恐ろしい。フランクフルトという地名がフランク人に関係が深いというのは暗示的だ。

ポーランドの方言地図が調べたくなった。

2015年8月23日 (日)

ドキドキの告白

室内楽特集真っ只中。ブラームスの室内楽全24曲から、一番好きな曲を無理やり決める。心情的には無理やりなのだが、実は古くから心の中では決まっていた。

ピアノ四重奏曲第3番ハ短調op60

これがブラームス室内楽の私的ベストだ。弾いていても楽しい。第3楽章冒頭は、ブラームスがチェロに与えた最高の出番だ。延々とピアノとのデュオが続く。

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第4楽章はピアノの相棒がヴァイオリンに代わる。これまた長大なソロ。

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ヴィオラの退屈は第一楽章の236小節目のソロで帳消しだ。

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曲の魅力は個々の楽器のソロの出番のかっこよさにとどまらない。第二楽章はおそらくブラームス最高のスケルツォだ。第一楽章からフィナーレまでのバランス、頑張るだけ報われる奥行き、突き詰めるほど湧いて出るアンサンブルの楽しみなど、褒め言葉はいくらも浮かぶ。

2014年10月 6日 (月)

鉄オタの考えそうなこと

鉄オタ。「鉄道オタク」の短縮形だ。作曲家アントニン・ドヴォルザークはほぼ「鉄オタ」の域にあった。運行ダイヤの暗記は当然で、機関車を運転したいとまで思っていた。

ドヴォルザークが1883年10月にウィーンを訪問して、初演間近だったブラームスの第3交響曲を、作曲者本人のピアノ演奏で聴いたことは、少し詳しい伝記にはよく載っている。→こちら

この出来事が「10月上旬」あるいは「10月初旬」とされているばかりで、日付が不明になっていることが多い。調べを進めていて、愛すべき仮説にたどりついた。

記事「オリエント急行」を見て欲しい。オリエント急行の開通は1883年10月4日だと書いた。補足するとこれは始発駅パリを出発した日付である。一番列車のウイーン着は10月6日の23時15分だった。ウイーン西駅着だ。ここから現在のウイーン南駅に回送されて1時間後の零時15分に発車した。

深夜の出来事ではあるのだが、鉄道オタクのドヴォルザークがこれを見物したとは考えられまいか。ドヴォルザークの住まいがあったプラハは、オリエント急行のルートからはずれている。プラハからもっとも近い停車駅はウィーンだ。当時オリエント急行は時代の最先端の乗り物であり、マスコミもきそって取り上げたから、市民の関心は高かった。ましてや鉄道好きのドヴォルザークが無関心でいられるハズがない。少なくとも交響曲第3番の私演の合間に、オリエント急行がブラームスとの話題になった可能性は相当高いとにらんでいる。

もちろん両者の伝記はこのことには沈黙しているが、このときのドヴォルザークのウィーン滞在が10月6日と7日を含む日程だったのではあるまいか。第三交響曲の私演は、むしろ付け足しで、メインはオリエント急行一番列車の見物だという読み。

この仮説、おそらく世界初(当社調べ)

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