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    2012年3月28日から4月4日まで、次女の高校オケのドイツ公演を長男と追いかけた珍道中の記録。厳選写真で振り返る。

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    自分で買い求めて賞味したビールの写真。ドイツとオーストリアの製品だけを厳選して掲載する。

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カテゴリー「708 演奏会」の18件の記事

2013年5月17日 (金)

朧月夜

まだまだ続き。娘らオケの第20回スペシャルコンサートの話。彼女らのコンサートでは、開演前、休憩時間、閉演後にも演奏がある。お客様がしばしくつろぐロビーで小規模なアンサンブルを披露する。通称「ロビコン」。木管、金管、弦、打などのセクションごとの演奏だ。

第一部と第二部の間の休憩時間に弦楽器のメンバーによる演奏があった。唱歌「朧月夜」の弦楽合奏版だ。

いやあ、これが必殺の「涙腺キラー」だった。難儀なテクを駆使するわけではないが、心に届くものの質において最強の演奏。当然のごとき暗譜演奏で、プレイヤー相互の緊密なコミュニケーションが前面に押し出される。強引なところは全く無し。押し付けがましさとは無縁のきめ細な音色。後から気づくのだが、コンミスだけがひそかに別のパートを弾くという構成。それでいて周囲と音色が溶け込んでいるからソリスティックな見てくれにならない。親しみ易い旋律がじかに心に響く。

この質感がオケのベースにあるということだ。オケの持つ底力の一つに違いない。いくつもある引き出しを今日は全部聞かせますという気迫を感じた。

次女はセカンドヴァイオリンで演奏に参加した。終始絶やすことのなかったかすかな笑みと、ボウイングとヴィブラートの滑らかさが心にしみる。仲間とのアンサンブルを心から楽しんでいることは明らか。お互いの信頼関係が半端ではない感じ。力技とは対極の位置ある「朧月夜」だった。これがあの子の音楽なのだ。

ロビコンはこのあと、合唱部の演奏に移る。4日に定期演奏会で聞かせてもらったばかりの合唱部。3年生抜きのメンバーなのだが、やはり勘所はキッチリと押さえてくる。「ホタル来い」と「五木の子守唄」を披露してくれた。演奏がどうのというより、所作立ち居振る舞いが見事。「本日はスペシャルコンサートおめでとうございます」「20周年とお聞きして駆けつけてまいりました」という口上が秀逸。こういう言葉が自然に放たれているのが素晴らしい。演奏のキリリとした透明感と合わせて、心を打たれた。ブラボーを入れそこなったのが心残り。

2013年5月 5日 (日)

準決勝の出来

次女の高校の音楽系部活合同の定期演奏会があった。「マンドリン」「吹奏楽」「合唱」「オーケストラ」の4部合同だ。オーケストラ部以外の3つの部活では、昨日をもって3年生が引退となる。それにしても、器楽系3部に囲まれた唯一の声楽系・合唱部の演奏は、素晴らしかった。およそ1時間のステージが完全な暗譜演奏。オケに比べてステージ上の動きが少なく、吸い込まれるような緊張感。よくよく見ると部員一人ひとりが少し揺れているのが、神秘的だ。2曲目の「Lauda Sion」がとりわけ気に入った。ダイナミクス「ピアノ」の内側が5段階くらいに分かれている感じ。

さてさてオーケストラ部には一週間後にもう一度引退公演ともいうべきスペシャルコンサートが待っている。だから気分は準決勝。準決勝のプログラムは以下の通り。

  1. 「カヴァレリア・ルスティカーナ」より前奏曲
  2. 仮面舞踏会
  3. 「となりのトトロ」より「風の通り道」
  4. 八重の桜
  5. ボロディン;交響曲第2番 全曲

まずはカヴァレリ。熟成を重ねた間奏曲ではなく前奏曲。あの子達のオケの土台を形成する作品。第一ヴァイオリンのメンバー全員の音が溶け合ったせいだろうか、響きに奥行きがある。

もはやロシア物はオハコかと思わせる仮面舞踏会。カヴァレリと同じオケとは思えぬワイルドな音色。引き出しがこっちにもという感じ。

「風の通り道」にあるコンサートミストレスのソロ。いいねぇ。丸くてギスギスしてないほっとする音色。

最後のボロディンはオケフェスからまた上乗せがあった。第一楽章の「Sul G」の連発はホンの名刺代わり。松脂の煙たなびく大熱演なのだが、そこはボロディンの意図通り、疑問が疑問のままに終わる。第一楽章の後で盛大な拍手が来てしまった。続く手に汗握る第2楽章はキビキビとすばしこく飛び跳ねるオケ。それが第3楽章の美しさの前触れでしかないという仕掛け。やっぱりまた拍手をもらってしまった後、実は超しっとり系の第3楽章こそが、全曲のヤマなのだと確信。薄皮一枚を丹念に貼ったり剥がしたりの自在のニュアンス。花丸を特大であげたいクラリネットとホルンの肝っ玉の座りっぷりと、それを掌に包み込んで「はいどうぞ」とばかりにそっと差し出すようなオケの風向き。木管はとにかく見せ場の連続なのだが、度胸試しばかりされるホルンとハープの「ポロン」という和音から、音も無く立ち上がるクラリネットの繊細さは筆舌に尽くし難い。

フィナーレに繋げるセカンドヴァイオリンの5度が、今日はやけに身にしみた。曲が4楽章に差し掛かると、オケ全体に「ココまで来ればもう大丈夫」というオーラが充満する。ちゃんと音に出ている。打楽器とコントラバスのキレは最早伝統なのだろう。ノーブルで誇り高きピッコロは、抜群の安定感でスパイスを効かせてくれる。毎回感心するので、最早まぐれではあるまい。第一楽章で解決されずに残ったままの疑問が、すっきりと片付けられる。指揮者だけでなく、みんながそうしたストーリーを呑み込めている感じ。

次女はといえば顧問の指揮者の左膝元の指定席で、四方八方にアンテナを張り巡らすよう。作品の持つストーリーの段落ごとに仲間とのコミュニケーションを楽しんでいる風情。

いつもより念入りに感想を文字にした。宣伝のためだ。嘘だと思うなら7日後のスペシャルコンサートに足をお運びください。

何とも回りくどい親ばか。

2013年4月 8日 (月)

スペシャルコンサートのお知らせ

次女が高校オケに入ってから2年間、その周辺の記事を高い頻度で発信してきた。しかしながらそれらは全て後追い記事だった。オケにまつわるイベントが終わったあとに、レポートを発信する体裁。ドイツ公演でさえ、事前の言及は控えた。それが基本姿勢と決めてきた。本日の記事はその基本姿勢から外れている。

次女たち36代の部活現役引退となるコンサートを事前に告知する。

千葉県立千葉女子高等学校オーケストラ部

第20回スペシャルコンサート

ボロディン作曲 交響曲第2番 他

およそ3時間のステージ。

最後の瞬間部活に戻るけどご容赦。

2013年5月12日(日)13時開演(開場12時30分)

場所:習志野文化ホール (JR津田沼駅前)

チケット 全席自由800円

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お時間の都合がつく方、何卒娘ら36代の集大成を聞きに足をお運びください。

演奏会まであと5週間を切って、事前告知はしないなどとカッコをつけている場合ではなくなった。少しでも多くの人の前で成果を披露させたいという親心、そして絶対に損はさせないという少々の手前味噌。2年間親バカモード全開で言及し続けた、娘らオケの実態を実際にご覧いただきたく記事にする。お叱り頂戴も覚悟の上である。娘を見に来て欲しいのではない。「娘のオケ」を見に来て欲しい。これから本番まで、毎日の記事から本日のこの記事にリンクを貼る。

何卒。

2012年5月15日 (火)

シーズンチケット

スポーツチームやオーケストラなどプロの興行には、年間の通し券が設定されている場合がある。1回あたりの単価は低くなっているが、支払いの合計はそこそこまとまった金額になる。だからこれを購入することは一種のステイタスになっている。年間を通して定期演奏会に出かけるとなると相当コアなファンだということだ。

この1年次女たちオーケストラの演奏に数多く接した。以下に列挙する。

  1. 入学式 →こちら
  2. スペシャルコンサート →次女のオケデビュウ 34代引退。
  3. 駅コン →第35代デビュウ
  4. 美術館コンサート →ファリャ初公開
  5. 文化祭コンサート →ショスタコ初公開 
  6. コンクールリハーサル →一週間前の実情
  7. コンクール →革命の終楽章 前を向け。
  8. オーケストラフェスタ →年末恒例
  9. ジョイントコンサート →初トップ
  10. アンサンブルコンクール →セントポール組曲
  11. 説明会コンサート ドイツ演奏旅行の説明会に参集した保護者向けの演奏会。ドイツ本番を1ヵ月後に控えて、「たくさん間違えなさい」と訓示された子供たちの熱演。休憩なしノンストップ80分は体力の限界に挑む主旨もあった。
  12. 聖ヨハネ教会コンサート 国内ゲネプロ ドイツ演奏旅行を8日後に控えてリハーサルが保護者にも公開された。和太鼓アンサンブルを初めて聴いた。
  13. ニュルンベルクコンサート 国内ゲネプロ 出発3日前の公開リハ。これだけ欠席。
  14. デュッセルドルフ聖ヨハネ教会コンサート →ドイツ公演一回目
  15. ニュルンベルク公演 →ハプニングねじ伏せ
  16. 合同定期演奏会 →あと1回
  17. スペシャルコンサート →誇り高き5月

親が鑑賞可能な機会には出来るだけ出かけるように心がけた。事実上シーズンチケットを持っているようなものだ。毎回違う作品が聴けるわけではなくて、あらかじめ決められた作品群が完成度を高めて行く過程を楽しむという感覚だ。上記の2番と17番にあるスペシャルコンサートが区切りになる。そこで3年生が引退するからだ。そこまで1年間の集大成と位置づけられている。3番の駅コンから16番のスペシャルコンサートまでが一つのユニットになる。

同じ作品を何度も聴く。たとえばショスタコーヴィチの交響曲第5番のフィナーレは上記の5.6.7.8.11.13.15.17という具合に8回演奏され、そのうち7回聴いた。飽きるなどということは全くない。回を追うごとに完成度が高まるのが判る。ほんの1ヶ月前と別人の演奏になる。

忘れてならないのが、上記16の合同定期演奏会から、上記17のスペシャルコンサートに至る8日間の緊張。5月6日のゲネプロからの言いようの無い高揚感。娘の姿を横から見守るだけだというのに、親の私が痺れた。「ショスタコ」や「ファリャ」や「マイスタージンガー」の個人練習を家で聴くのも残りわずかかと思い、時間よ止まれとさえ祈った。

もっとも大切なこと。これらの中にブラームスの音符は一つもなかった。我がブログ的には脱線もいいとこなのだが、もはやそうした視点は霞の彼方に追いやられてしまっている。

2012年5月 5日 (土)

合同定期演奏会

昨日次女の通う学校の音楽系サークルが一堂に会する合同定期演奏会があった。マンドリン、吹奏楽、合唱、筝曲それにオーケストラが出演する。12時30分開演で全員による校歌演奏というエンディングが16時の長丁場。原則として3年生の引退演奏会という性格を帯びている。

昨年の文化祭コンサートで、オーケストラの前に演奏した合唱部が、あまりに上手だったので楽しみにしていたら、今回も案の定凄い演奏だった。人の声のハモリの美しさを再確認出来た。ラテン語のモテットあり、アヴェマリアあり、英語ありの柔軟性。筝曲部とジョイントの「さくらさくら」にも身震い。凄い子どもたち。ブラームスの作品が聴きたい。それからドボルザークのモラヴィア二重唱かなんかやってはくれまいか。

そしてオケ。

  1. ニュルンベルクのマイスタージンガー
  2. 篤姫
  3. 三角帽子

というプログラム。全部ドイツでやった曲。どっしりと地に足のついた堂々たる演奏。マイスタージンガーでは風格さえ感じられた。ドイツの経験が肥やしになった模様。スプリンクラーを泣かせた三角帽子のキレはドイツそのまま。スプリンクラーなんぞ無くても「やるときゃやるよ」という気合いが感じられた。てゆーか上手くなっている。マイスタージンガーや篤姫や江の熱演の後、颯爽とファリャを弾ききる懐の深さに感動。

アンコールの「ラデツキー行進曲」では、4月に入ったばかりの1年生が舞台袖に現れて手拍子を担当。ああ娘も去年は手拍子担当だったんだという感慨。

2012年4月11日 (水)

デュッセルドルフ

1853年10月1日シューマン邸をブラームスが訪ねたことで音楽史が変わった。そのシューマン邸があったのがここデュッセルドルフ。2日目3月29日午後に訪問した。昼食の後市庁舎前のライン川に行く。ちょうど1854年2月27日にロベルトが投身したといわれている場所に近い。とうとう来てしまったかという感じ。ケーニヒスアレーに戻って解散し自由行動。ビルカーシュトラーセ15番地にあるシューマンハウスに一目散だった。もちろん練りに練った予定の行動。

夫妻の部屋は2階だそうだが1階にシューマン協会の事務所がある。ドアは施錠されている。思い切って呼び鈴を押すと中に人の気配。協会のお兄さんが出迎えて、中に招き入れてくれた。日本から来たブラームス好きですとつたえ、レクイエムの3楽章の独唱を口ずさんで見せると「レクイエム」という嬉しい反応があって意気投合。訪問者名簿にサインした。感動して声が上ずってしまう。

ここで大失態が発覚。献呈するつもりだった「ブラームスの辞書」をバスにおいてきた。あちゃーという顔をした私を、長男が慰める。日本に帰ってから私の著書を送るから受け取ってくれと伝えると、名刺を取り出して住所欄にマーカーを引き私に差し出す。お礼に日本から持参した北斎の絵葉書を渡すとえらく喜んでくれた。

シューマン協会オリジナルの絵葉書32種類壁に飾ってある。1枚40円程度なので全部くれと申し出ると驚いた表情。一度に全部買う客は初めてだそうだ。長男が彼と私のツーショットで写真を撮ってくれたが、個人情報なので非公開。

門を出るとき、長男にドアをたたく仕草をさせて一枚撮った。シューマン邸を訪ねたブラームスは二十歳だった。3月15日に二十歳になったばかりの長男の出番というわけでこれを公開する。

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長男の希望で市電に乗って駅に行く。夕食まで少し街を観察することにした。

夕食後デュッセルドルフの中心街ケーニヒスアレーの東すぐに位置する聖ヨハネ教会で次女たちのオケが最初の演奏会を開いた。3月29日19時の開演。

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プログラムは以下の通り。

  • 和太鼓演奏 菅谷大樹:「ひかり」 「日本から来ました」という名刺代わり。打楽器担当の生徒8人が大小さまざまな打楽器9種類を演奏する。「気をつけ。礼」という挨拶に始まって同様の挨拶で終わる。本当にユニークで和の魂にあふれたオープニングでアウェイ聴衆の心をいきなり鷲づかみ。弦楽器の席を全部取り払った場所での演奏。次の作品の前に弦楽器奏者の椅子を並べねばならないのだが、その手際のよさは見事なものだ。整然としたその動きを見ているだけですがすがしい気持ちになる。

<セレモニー>

日本国デュッセルドルフ総領事の挨拶。日本青年館の挨拶。デュッセルドルフ市長からの挨拶。県知事からの親書と記念品の贈呈があった。

  • ワーグナー:マイスタージンガー前奏曲 
  • オルガン独奏 バッハ:「主イエスキリストよ我ら汝に感謝し奉る」BWV623
  • オルガン独奏 バッハ:「神よ我らを助けたまえ」BWV624 日本ではありえぬくらいの長い残響。教会独特の響きがもっともマッチする。客席からはオルガンの席は見えない。演奏のはじめと終わりにバルコニーみたいなところに出てきてお辞儀。本場の教会で聞くオルガン。
  • 高野辰之作曲、岡野貞一作詞「朧月夜」 
  • 山田耕作作曲、三木露風作詞「赤とんぼ」  
  • シャルパンティエ:テデウム ここから現地のユースオケとの合同演奏。
  • ビゼー:カルメン組曲より「前奏曲」 
  • ビゼー:カルメン組曲より「ジプシーの歌」 
  • 川手誠:「OKINAWA」 世界初演。再び次女たちのオケだけの演奏。
  • マスカーニ:「カバレリアルスティカーナ」より間奏曲 

200人の聴衆にはお年寄りも多い。杖をつきながら倒れこむように着席してじっと聞き入ってくれた人もいる。およそ15万円の寄付が集まり、全額を小児ホスピスに寄付となった。

さて、昨日シューマン協会へ「ブラームスの辞書」を贈る手配をした。SchwarzKatzeで名高い会社の海外便を使って3100円だ。およそ1週間で届くはずだ。

2012年4月 6日 (金)

独逸遠征

一昨日、次女がドイツ演奏旅行から帰国した。3月28日出発で4月4日帰国の8日間。デュッセルドルフとニュルンベルクで演奏会を開いた。

生徒たちのドイツ演奏旅行を追いかける保護者向けのツアーが募集されたので、私と長男も参加した。夢のような8日間。今は何から話そうかという状態。アラビアンナイト計画を少し中断して、その模様を特集にする。

次女の高校進学で、私が今の学校を推薦したのはまさにこの演奏旅行が最大の要因だった。日本のクラシック音楽愛好家にとってドイツは憧れの地。高校生の部活オケの分際でそんな本場に乗り込んで日頃鍛えた業を披露するなど、そうそうある話ではない。ホームアンドアェイが文化として底流するサッカーであれば、アウェイではそれ相応の理不尽も覚悟せねばならぬ。本場ドイツの聴衆の反応が楽しみというより心配だった。

全くの杞憂。

何と言ってもメインは4月1日のニュルンベルク公演だったのだが、そこで想像を絶するハプニングに遭遇した。一部の最後を飾るファリャ作曲バレエ組曲「三角帽子」の第5曲中盤、ホール客席後方でいきなり破裂音。最初はシンバルか何かを落したのか思って、音のした方向を眺めると、壁板が外れてスプリンクラーから水煙が上がっていた。辺りの椅子が既にびしょぬれの状態。ざわつく客席、動揺が広がって行く。

生徒たちはと見れば、そちらの方向に意識をとられることもなく演奏を続けているが、聴衆の狼狽は徐々に拡大伝染している。指揮者は第5曲をエンディングまで導いた後、客席後方の異変に明らかに気づいた様子だったが、一瞬の間のあと意を決したようにオケに向き直り、さあ行くぞとばかりにタクトを一閃させた。オケのメンバーは何事も無かったように棒に従う。「2年間準備してきたニュルンベルク公演をこれしきのトラブルで台無しにされてたまるか」という、気迫が演奏に乗りうつる。結果かつてない「終幕の踊り」になった。尋常ならざる気迫が込められた凄絶なファリャ。

その決意は音を通して直ちに聴衆に伝わる。相変らず噴霧を続けるスプリンクラーの存在は次第に意識の隅に追いやられてゆく。オケにも聴衆にもこのハプニングをねじ伏せてやるぞという気合が充満し始めた。結果として過去最高のファリャ。終止和音と同時に、ものすごい喝采が沸き上がった。およそ歓声4、拍手3、口笛2、噴霧音1の割合。演奏を終えたオケにかわって聴衆の喝采がノイズをねじ伏せたかのよう。それはそれは感動的な光景。これを見たメンバーの一部が泣き出す始末。

程なく場内アナウンスが、ホールからの退去を促す。ロビーに集まった聴衆は、コーヒーやビールを片手にくつろぎ始めた。我々親は不安いっぱいだったが、ドイツの聴衆は再開を疑っていない風情。やがてロービーからも退去を命じられる。少しずつ駐車場に向かう人も出始めた。これら諸現象の原因が把握できるまで再開は見込めない様子。幸い間もなくロビーへの入場が認められた。程なく30分後に再開とアナウンスされたとき、耳を疑った。ロビーで待つ聴衆から盛大な拍手が沸きあがったのだ。待ってるから続きを聞かせろの意思表示だ。これには目頭が熱くなった。楽屋にいた生徒たちにぜひとも伝えたい話。

考えても見て欲しい。演奏会の本番中に、客席にむかってスプリンクラーが作動した経験の持ち主が、どれほどいるというのだろう。大多数の人にとって初体験想定外のハプニングに遭遇した生徒らの態度は立派の一言。「我々が演奏をやめるのは指揮者が止めたときだけ」と腹に決め、団結して棒に従う姿勢は見事。音のする方向に目をやるものなど一人もいない。はっきりいってこのハプニングをキッカケに音色が変わった。会場の雰囲気も変わった。聴衆との一体感がアップした。震災に負けない日本の決意がうそではない証拠をドイツ聴衆につきつけたようなものだ。

CDやDVDにする予定の公演だから、その噴霧音は歓迎されざるノイズ。聴衆を帰したあと、オケだけでリテイクも考慮されたが、生徒たちはそれを圧倒的多数で否決する。「あんなテンションの演奏は二度と出来ない」「客のいないホールで、ただ録音のための演奏であの気迫を再現できるはずもない」というのがその理由だという。見上げた見識だ。演奏会後の打ち上げで、渾身の力でオケをささえ続けた打楽器のパートリーダーの挨拶が極上だった。「私たちの演奏でスプリンクラーまでも泣かせた」とメンバーの心意気を代弁したのだ。

この話から始めざるを得ない強烈なインパクト。

2011年4月16日 (土)

哀悼の意

1897年4月16日グスタフ・マーラーはモーツアルトのレクイエムを本拠地ハンブルクで演奏した。この時次なる1897年~98年のシーズンからウィーン宮廷歌劇場指揮者への就任が決まっていたから、慣れ親しんだハンブルクでは最後のコンサートになった。

しかも、ハンブルクの生んだ巨匠ヨハネス・ブラームスは、わずか2週間前にウィーンにて没したばかりだった。マーラー自身のウィーン進出をアシストしたブラームスは、モーツアルトのレクイエムの優秀な校訂者でもあった。この選曲が哀悼の意思表示でなかったら、いったい何だったというのだ。

絶妙の選曲と言わざるを得ない。

2010年3月26日 (金)

偵察

事前に敵情を探ること。人工衛星の発達により居ながらにしてということも多くなって来ている。戦う前に敵を知ることは勝利の第一歩である。

来月には次女が中学3年になる。進路の決定を迫られるということだ。夏には高校見学にも行くようだ。本日は第一志望と目される高校オケの演奏会に出かけた。昨年5月に聴いたオケとは別の高校だ。会場は私の大学オケがいつも使用していたホールだ。

<第一部>

  1. ジョン・ウイリアムス メドレー
  2. モーツアルト フルートとハープのための協奏曲より第2楽章 
  3. マーラー 交響曲第1番より第4楽章

<第二部>

ミュージックパフェ 踊るオーケストラ

<第三部>

  1. バーンズ 交響曲第3番より第3楽章、第4楽章 OBOGの演奏。
  2. チャイコフスキー 交響曲第5番より 第4楽章 OBOGの演奏。
  3. ラヴェル ボレロ

全てにおいて想像の斜め上を行く演奏会だった。開演前や休憩時間にはサロンでコンサートがあるし、濃密な2時間半だった。特に第二部はミュージカルを観るかのよう。ステージどころか客席狭しと走り回るマーチングオーケストラである。コーラス、独唱、ダンスまで含めて全てオケのメンバーによるものだ。高校生たちのエネルギーと真摯な姿勢に触れた極上の時間。

次女が「ここに決めた」とつぶやいていた。一昨年夏の学校見学で学校が気に入ったことが長女の受験を支えるモチベーションになったが、今日の経験は次女にとってそれにも劣らない衝撃だったことは間違いない。あのエネルギーの渦の中に娘を送り込みたい。

偵察の甲斐があった。

2010年3月22日 (月)

2回目の定演

ちょうど1年前の記事「定演デビュウ」で次女のブラバンの定期演奏会のことを書いた。昨日2度目の定期演奏会があった。2年生として迎える定期演奏会だ。次女の1年間の取り組みを確認する大切な日。

もちろん今年も、ブラームスは演奏されなかった。ドヴォルザークも無い。けれどもこれに触れない訳には行かない。昨年よりは10倍安心して見ていられた。全12曲もりだくさんの2時間。同世代の仲間とのアンサンブルは本当に貴重だ。4歳から始めたヴァイオリンでも、定期的に発表会に出演してきたが、いつも先生とのアンサンブルだ。対等な関係ではない。一方中学入学と同時に始めたブラスバンドでは、トロンボーン初心者からのスタートだったが、練習量だけは半端でない。加えて同世代の仲間との濃密なやりとりは、ヴァイオリンの演奏面にさえ大きな影響を与えてきている。

定期演奏会といいながら、実は巣立って行く3年生を送る会という性格を帯びていたのは昨年と同じだった。これは毎度感動的。全12曲のうち4曲は1,2年生だけの演奏だった。演奏会が終わる頃には最上級生の顔付きになっていた。

来年の定期演奏会は大変なことになる。

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フォト

ブラームスの辞書写真集

  • Img_0012
    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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