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カテゴリー「723 短歌俳句」の26件の記事

2019年2月19日 (火)

鎌倉右大臣

建保7年1月27日、鎌倉三代将軍源実朝が、甥の公暁に暗殺された。北条氏の陰謀とする説も根強いとか。これで源氏の直系が途絶えた。享年28歳。12歳で征夷大将軍に任じられ、武士として初めて右大臣になった。百人一首にある「鎌倉の右大臣」とは彼のことだ。

実は、日本史上の人物の中では大好きな人。伊能忠敬と双璧をなす。短歌の世界でも相当な位置づけにある。

冒頭に掲げた命日を新暦に直すと1219年2月19日だ。つまり本日は没後800年のメモリアルデーということで、「バロック特集」をさっそうと中断して記念の記事をさしはさむ。

2018年3月29日 (木)

春の野に出でて若菜摘む

復活祭直前の木曜日は「緑の木曜日」とも言われている。ドイツにはこの日、野原に出かけて以下7種の植物を摘んできて食する風習がある。

  1. サラダ菜
  2. ホウレンソウ
  3. パセリ
  4. 浅葱
  5. すかんぽ
  6. たんぽぽ

日本の七草は下記の通り。

  1. せり
  2. なずな
  3. ごきょう
  4. はこべら
  5. ほとけのざ
  6. すずな(かぶ)
  7. すずしろ(だいこん)

日本の1月はもとより、復活祭2日前となると3月下旬から4月ということもある。だから「我が衣手に雪は降りつつ」と続けても違和感がない。

2017年9月20日 (水)

かまどの煙

万葉集巻1舒明天皇の御製。

大和には群山あれどとりよろふ

天の香具山登り立ち国見をすれば

国原は煙立ち立つ海原は鴎立ち立つ

うましくにそ秋津島大和の国は

国見の歌だ。為政者が高いところから領地を検分する行事。言霊信仰にも関連があるとされている。聖なる王者が誉めることにより豊穣祈願の予祝行為とも思われる。「国原から立ち上る煙」がとりわけ重要だ。主に炊煙であることがポイント。どんなに譲っても稲わらを焼く煙までだ。中には煙の立ち上りが少ないことを見て減税をした王もいるという。煙は人々の営みの反映。立ち上る煙の本数はもしかすると世帯数だ。

ブラームスの歌曲にもこの意味の煙が出現する。至宝「永遠の愛について」op43-1に「Rauch」として現れる。

Dunkei, wie dunkel in Wald und in Feld!

Abend schon ist es,nun schweiget die Welt.

Nirgend noch Licht und nirgend noch Rauch,

Ja, und die Lerche,sie schweiget nun auch

3行目の末尾に鎮座する。「暗い暗い森も野も」「はや夜が更けてものみな静まる」「いずこにも灯りは見えず、煙も途絶え」「ひばりも今は押し黙る」と歌われる。「暗い森と野」は恋人を家に送る道中の描写であると同時に、2人の置かれた状況の暗喩にもなっている。その暗さを補強するのが3行目「灯りも煙も無く」というフレーズ。この煙はタバコや火災ではあり得ない。十中八九かまどの煙だ。人々の営みが途絶えている様子の描写と見て間違いない。舒明天皇の国見歌と同じである。

2017年8月26日 (土)

万葉集に並ぶ

現存する日本最古の歌集と称えられる「万葉集」に収載された歌は、4519首だ。数え方により異論もあるらしいが高校ではそう習った。

本日のこの記事は、ブログ「ブラームスの辞書」開設以来4519本目の記事である。記事の数が万葉集の歌数に並んだということだ。4519首目の作者は、編纂者とも目される大伴家持である。彼の命日は旧暦ながら8月28日だ。惜しい。2日違いだ。これがピッタリだったらちょっとしたサプライズになるところだった。

2015年5月22日 (金)

俳諧連歌の発句

正統な連歌に、庶民性、娯楽性、遊戯性を加えたものを特に「俳諧連歌」と呼んだ。近世になって本家の連歌から独立したという。本家を凌ぐ人気で瞬く間に広まった。

ところが松尾芭蕉という人が、このうちの発句だけを独立させた。せっかく「庶民性」「遊戯性」「娯楽性」を売りにして普及したというのに、わざわざ芸術性を付与してしまったのだ。

「俳諧連歌の発句」とは、日本が世界に誇る「俳句」である。連歌において発句が背負っていた決まり、つまり「季語」と「切れ」が必須になっている。俳句とはそこから俳諧連歌を始めるためのネタと言い換えることも出来るのだ。「奥の細道」は俳諧連歌のネタ帳だ。

「ブラームスの辞書」は本もブログもブラームスネタの集成である。一つ一つの記事は根拠も掘り下げも不足気味だが、愛好家が集まれば連歌のように話題を展開することが出来る。「ブラームスネタの発句集」である。

2015年5月21日 (木)

連歌

「れんが」と読む。中世に起源を持つ日本に特異な文学の形態。短歌(五七五七七)を上の句(五七五)下の句(七七)に分け、それを別人が詠むというのが発端。下の句の次にはまた五七五が加えられ、36句、百句になるまで続く。直前の歌の特徴を捉え巧みに続けて行く面白さを味わうものだ。

座を盛り上げるためにいくつかの決まりもある。

  • 発句 最初の句だ。季語と切れ字を必ず入れねばならない。
  • 挙句 最後の句。

複数の人が一つの作品を作るという意味では、興味深い例がある。

ご存知「FAEソナタ」だ。大ヴァイオリニスト・ヨアヒムの到着を待って、ロベルト・シューマン、アルバート・ディートリッヒそれにブラームスがヴァイオリンソナタを合作したのだ。第1楽章つまり発句はディートリッヒで第2楽章はシューマンだ。ブラームスはスケルツォ第3楽章を担当し、第4楽章すなわち挙句をシューマンが受け持った。この3人の中で一番年少のブラームスは発句や挙句を任せてもらえなかったという訳だ。

現在演奏会で取り上げられる機会は、ブラームスの担当した「第3句」が一番多くなっている。

2013年12月22日 (日)

その子二十歳

与謝野晶子先生の絶唱。

その子二十歳櫛に流るる黒髪のおごりの春の美しきかな

今日長女二十歳。

2012年1月 3日 (火)

万能下の句

父が俳句に親しんでいたことは既に述べてきた。小学校で百人一首に目覚めたころ、いろいろな替え歌を教えてくれた。短歌五七五七七のうち、最初の五七五が上の句で最後の七七が下の句と呼ばれている。父はどんな上の句にも合う「万能下の句」を教えてくれた。

「それにつけても金の欲しさよ」

上の句は何でもいいから当てはめてみる。

「古の奈良の都の八重桜それにつけても金の欲しさよ」

「古池や蛙跳びこむ水の音それにつけても金の欲しさよ」

なるほどという感じだ。同じ事が俳句にもあって、「根岸の里の侘び住まい」がそれにあたるという。

「五月雨や根岸の里の侘び住まい」「行く春や根岸の里の侘び住まい」という具合だ。

同じノリが学生歌にもある。「エルゴ・ビバムス」(Ergo Bibamus)だ。何とテキストはゲーテ作。ラテン語とドイツ語のチャンポンになっている。このタイトルはラテン語で「だから飲もう」という程度の意味。これがまさに本日のお題「万能下の句」だ。「今日は天気が悪い。だから飲もう」「今日は天気がいい。だから飲もう」という調子だ。前半でどんな議論が展開されていようとも。結論はいつでも「だから飲もう」に収まる。

学生たちはこういうノリが好きだ。だから学生歌「エルゴ・ビバムス」は、大抵の歌集やCDに採録される定番になっている。

2012年1月 2日 (月)

百人一首を暗記せよ

この冬休み次女に課された宿題のうちもっとも達成困難なもの。冬休みは12月23日から1月9日まであるのだが、オーケストラ部員は休み中にも部活がある。とりわけ次女はアンサンブルコンテストへの参加が決まっているから完全なオフは昨日までの3日間しかなく、今日は初部活のために早くも登校。体育系の強豪は、正月休み返上なのは当然だから驚くにはあたらないのかもしれないが、百人一首の暗記にとっては厄介である。

まだニ十数首しか暗記していない。オケで練習している曲なら軽々と暗譜してしまうくせに、百人一首の暗記となると途端に立ち往生というこの不思議。「そりゃあ、暗譜とは違うよ」「旋律や和音の流れを助けに覚えられるから暗譜は平気だよ」と次女。パパは何もわかっていないとでも言いた気なニュアンス。いつもなら「ハハー」と感心するのだが、今日は違う。

少し反撃「そりゃお前短歌ってモンを判っていないよ」「五七五七七の短歌にだって、旋律やリズムがあるんだよ」「単なる31文字だと思ってたら大間違い」「あんたたちの暗譜は絶対的な練習量が支えているのであって、百人一首との差は、興味と努力の差だけだよ」と。私は百首全部覚えているから少しは自慢できる。

今日だけは私にも分がある。ここ数日単なる暗記ではなくでリズムや流れを味わうためにカルタをやった。案の定覚えが早い。面白さが判ると吸収のスピードが変わってくる。

百人一首を暗譜せよ。

2009年9月 5日 (土)

曲を贈る

古来日本には短歌を贈るという慣習があった。歌に託して相手のご機嫌を伺うのだ。男女のやりとりも多い。万葉集にも数多く見られる。私が一番好きなのは以下のやりとりだ。

大津皇子 足引きの山のしずくに妹待つと我立ち濡れぬ山のしずくに

石川郎女 吾を待つと君が濡れけむ足引きの山のしずくにならましものを

まずは男性である大津皇子が「あなたを待っていたら山のしずくに濡れてしまいました」と贈る。「山のしずく」はここでは「霧」で湿っぽくなったことも含まれるかもしれない。雨と言わぬところに奥行きも感じる。じつはこの言葉がやりとりのキーである。

贈られた石川郎女は「わたしは、あなたが濡れたという山のしずくになりとうございます」と返す。贈られた歌のキーになっていた「山のしずく」を巧みに用いてラブリービームを返す。男の発したサーブも見事だが女のリターンはもっと鋭い。リターンエースが決まった感じがする。

こうしたやりとりの妙は恋の成就の決め手であったことさえあるという。相手の教養や品格を効率よく推し量るツールになっている。人々に歌の素養があればこういうことが出来たのだ。

歌の素養でなく作曲の素養があったブラームスも作品を人に贈っている。献呈だ。しかし献呈の手続きを経ていない作品にも以下の通りプレゼント用の作品がある。

  1. FAEソナタ 大ヴァイオリニストで友人のヨアヒムの到着を待って作られた。
  2. 弦楽六重奏曲第1番第2楽章のピアノ編曲 クララへの誕生日プレゼントだ。
  3. 左手のためのシャコンヌ 右手を脱臼したクララへの見舞い。
  4. クラヴィーア組曲イ短調 9月2日の記事参照
  5. 子守歌op49-4 ベルタ・ファーバーへの出産の祝い。
  6. 雨の歌op59-3 他歌曲3曲を1873年のクララの誕生祝い。
  7. 聖なる子守歌 op91-2 ヨアヒムの長男誕生祝い。
  8. ヴァイオリンソナタ第1番第2楽章 フェリクスの病を見舞ってクララに。

やはりクララはこの点でも特別の存在だ。

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