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カテゴリー「077 ドイツ史」の417件の記事

2017年9月 6日 (水)

葬儀の翌月

ロベルト・シューマンの葬儀は1856年7月31日だった。没したのが29日だったからその翌々日の葬儀。ボン市長まで参列していたから、翌日の新聞くらいにはキチンと載っていたと思われる。

その葬儀から1週間以内という極めて近い時期に、歴史の教科書には必ず載っている発見があった。発見の場所はシューマン夫妻が住んでいたデュッセルドルフの東およそ13kmにある、洞窟の中だ。発見の詳しい日付は不詳だ。石灰岩採掘の作業員が骨片を見つけた。これが人骨であるという鑑定結果が出るのにおよそ1ヶ月かかり、地元の新聞には9月6日に掲載された。

これこそが名高いネアンデルタール人の発見である。ネアンデルの谷で発見された古代人なのだが、その洞窟は石灰岩の採掘のために取り壊されてしまった。それどころかネアンデルの谷もとろも削定されていた。産業革命を支えたセメントの材料を採掘するために、渓谷が丸ごと取り潰されてしまい、そこを流れる川は平地の真ん中を流れる川になってしまっていた。現在は学者の努力で、発見場所がほぼ特定されているが、谷間の洞窟までは復元されていない。

世界史の教科書には必ず掲載されるネアンデルタール人だが、音楽史的には無視されまくる。

2017年8月15日 (火)

終戦の日

何の断りもなく「終戦の日」といえば日本では8月15日のことだ。戦没者追悼式が行われるし、甲子園では高校生の野球を中断して黙祷が行われる。ところがアメリカで対日戦勝記念日といえば9月2日だし、中国やロシアでは9月3日になる。9月2日は降伏文書調印の日で、翌3日は北方領土占領の日どいうそれなりの根拠がある。天皇がポツダム宣言の受諾を決めたのは14日だったが、玉音放送の15日というのは大きな区切りだ。

さて日本と同じ敗戦国のドイツはどうなっているのだろう。ドイツでは「終戦と国民社会主義からの開放の日」とされ5月8日となっている。連合国側も5月8日が「戦勝記念日」なのだが、ロシアは9日になっている。

ヒトラーが4月28日に自決して「第三帝国」は事実上崩壊していたから、降伏は国防軍司令部の名でアイゼンハワー将軍に通告された。これが5月7日で、降伏文書への調印は5月8日だった。連合国とドイツではこの日が「終戦の日」ということだ。ソ連はスターリンが別途降伏文書への調印式を要求したことから、5月8日付けの文書に5月9日に調印する形になった。だからロシアの戦勝記念日は1日遅れている。

ブラームスの誕生日5月7日は、これら終戦の日の直前ということになる。

2017年7月 6日 (木)

お宝地図

方言特集に入ってドイツ語の辞書を引くようになった。ところがこれが電子辞書ばかりだった。最近方言地図を探して学生時代の辞書をめくっていてお宝にめぐり合った。巻末にドイツの地図が載っている。およそ30cm四方のコンパクトな地図。私が大学に入ると同時に買い求めた辞書だから、当然ドイツは東西に分かれていたころの地図である。

道路や鉄道は省略されていて川と街が記載されている。土地の高低が緑色と茶色のグラデーションで表現されている。ドイツの地理を大まかに頭に入れるにはちょうどいい。シュワルツワルトやボヘミアの森、テューリンゲンの森も薄茶色で描かれている。

裏面にはドイツの方言地図のほかにドイツの行政区分が載っている。行政区分図は旧東ドイツの州がキチンと描いてある。今の州よりも少々細かい。方言分布図に近い感じになる。

こんな便利な資料が持ち腐れになっていた。もっと早く探していれば良かった。さっそく私のデスクの横に貼り出した。

2017年7月 1日 (土)

ドイツ系アメリカ人

昨日、キッシンジャー元国務長官がドイツの出身だと書いたばかりだが、ドイツからの移民を先祖に持つアメリカ人のこと。これがちっとも舐めたモンではなくて、場合によっては米国民の20%と見積もる人もいる。ペンシルバニア州や五大湖沿岸を中心に北東部に多く住んでいる。

独立戦争の際、英国軍にはヘッセンの出身者が多かった話を思い出した。19世紀までに10万人がアメリカに渡ったとされている。アイゼンハワー大統領の名前も何やらドイツっぽい。

メジャーリーグやフットボールの中継を観ていてもドイツっぽいと感じる名前が出てくる。たとえばニューヨークヤンキースの永久欠番3番と4番だ。3番ベーブルースの本名はGeorge Herman Ruth だ。ドイツ風に読むと「ゲオルグ・ヘルマン・ルート」で、最後の「Ruth」は、開墾地を表す「Reuth」や「Roth」との関係を伺わせる。4番はルーゲーリッグだ。Gehrigという綴りがいかにもな感じである。

かの地では「ドイツ訛りの英語」あるいは「英語訛りのドイツ語」が話されている。ドイツ語の一方言として捉える研究者もいるらしい。

2017年6月30日 (金)

キッシンジャー

ヘンリー・キッシンジャーはアメリカの政治家で、ニクソン、フォードの両大統領の時代に国務長官を務めた。1923年5月27日ドイツ・バイエルン州フュルトの生まれだ。

そのバイエルン州の北部にバートキッシンゲンという、古くからの温泉保養地がある。原文では「Bad Kissingen」とつづる。地名語尾「ingen」だ。これに産地語尾「er」をつける場合、お約束で末尾の「en」を取り除いてから「er」をつける。つまり「Kissinger」だ。

まさにキッシンジャー元国務長官と同じつづりになる。彼が生まれたフュルトは、地名語尾「ingen」と「ing」のすみわけで申せば、「ing」地区になる。おそらく祖先の誰かが「キッシンゲン」に関係があるかもしれない。

2017年6月26日 (月)

1811年

じゃがいもの普及について調べている間に興味深い話を掘り当てた。

1771年は「厳冬と夏の長雨」によって凶作だったらしい。ドイツの穀物生産が壊滅的な打撃を被ったとされている。その一方でじゃがいもの生産は維持されたことから、救荒作物としてのじゃがいもの優秀性が広く認識されるキッカケとなった。

「厳冬と長雨」に対して高い抵抗力を示したじゃがいもだが1811年は、不作に陥ったという。今度は夏の「旱魃」が原因とされている。

ご記憶だろうか。記事「ヴィンテージ」でワインの優良年を列挙した。その中で1811年は特筆されている。この年のワインの出来映えは単なる優良年にとどまらず、19世紀最高のヴィンテージとして記憶されている。シュタインベルクが始めて「カビネット」の称号を用いたり、ゲーテが絶賛したその年だ。

じゃがいもや穀物が深刻な不作に陥った同じ年が、ワインの当たり年になっているということだ。ワインの優良ヴィンテイージは豊作を意味していないということを割り引いても、面白い現象だ。ブドウ、とりわけ主力品種のリースリンクは、十分な日照によってその品質を一層際立たせる。他の作物にとっては旱魃になってしまうような状況が、マイナスに作用しないということかもしれない。

2017年6月25日 (日)

じゃがいも

ブラームスの伝記、食事の場面に出くわすことは多いとは言えない。けれどもブラームスがじゃがいもを食べていたことはほぼ確実だ。フリードリヒ2世が救荒作物として普及を奨励したと伝えられている。彼は1786年に没したが、当時のドイツ諸邦の人口は合計で1600万程度だったらしい。これは2600万のフランスに負けていた。ところが19世紀後半の普仏戦争の頃になるとフランス4000万に対しドイツは6000万となった。国境付近のアルザスやロートリンゲンをどのようにカウントするかにもよるが、人口が逆転したことは大きい。ドイツ帝国の成立はプロイセン、なかんずくビスマルクの功績大とされているが、この人口逆転も無視出来ぬファクターだったと思われる。

ここまで来れば本日の文脈はおよそ察しがつくだろう。つまりその人口増をささえたのがじゃがいもだったということだ。寒冷地ドイツで食糧の安定供給は簡単ではない。じゃがいもがこれを解決したことはとても大きい。もともと勤勉なドイツ人から飢えの不安を取り除いてやれば、国力の飛躍的な向上はさして不思議なことではなくなる。

2017年6月23日 (金)

イングとインゲン

道路地図の巻末索引を頼りに、地図上にプロットする作業は本当に楽しい。かれこれ80種の地名語尾についてやってみた。地名の数が少ないと散漫な結果になるにはなるのだが楽しさは無限だ。

地名語尾として「~のところ」を意味する「イング」と「インゲン」にも鮮やかなすみわけがある。ブラームスとの交流で名高い「マイニンゲン」も、アガーテと出会った「ゲッティンッゲン」もドナウ川の水源として名高い「ドナウエッシンゲン」も「インゲン」の仲間だ。

まずはそのインゲンの分布から。

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これは、先に話題にした「ザーレの東」には分布しないというパターンだ。ラインの西、ドナウの南と断言できないところもいわくありげで楽しい。まずこれをご記憶いただいたうえで「イング」の分布を示す。

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ミュンヘン近郊に分布する。バイエルン方言の分布と鮮やかにシンクロする。小麦ビールで名高い「エルディング」が思い浮かぶ。

2017年6月21日 (水)

大胆過ぎる仮説

グリム兄弟が編んだ「ドイツ伝説集」下巻に登場する話の舞台が、ドイツの南部か西部に偏っている話は既にしておいた。その領域がカール大帝の勢力圏と一致する可能性については、グリム兄弟自身が序文で言及している。いやはや、この序文は面白い。本文に負けないくらい貴重な情報が埋もれている。

既に私は地名語尾「heim」の分布が、カール大帝に何らかの関係があるのではないかと述べた。本日はそこから話を一歩進める。

「ドイツ伝説集」下巻収載のエピソードの分布域と、地名語尾「heim」の分布域が似ているのだ。どちらも南あるいは西に手厚い。ドナウ・ライン両大河の流域に分布する。

2017年6月20日 (火)

ハイムとハウゼン

「Heim」「Hausen」どちらも「家」を意味する。ドイツ語のネイティブな使い手でもない限り、これらの区別は難しい。これらが地名末尾に据えられるケースがある。「インゲルハイム」「ザンクトゴアハウゼン」などだ。

例によって毎度毎度の道路地図の巻末索引を頼りに分布図を作成した。まずは地名語尾「heim」から掲示する。

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見ての通りだ。南部とりわけライン川流域、ワインの産地で言うラインヘッセンに特異的に分布する。カール大帝の御所があったインゲルハイム近郊にと申したらお叱りを頂戴するだろうか。

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次いで地名語尾「hausen」の分布。「heim」とのすみわけが美しい。地名語尾「ハイム」の密集域(赤囲み)が見事に空白になっている。

「蝸牛考」に従うなら、インゲルハイム近郊が「京都」だ。あとから起こったハイムに、旧来のハウゼンが駆逐され、僻遠の地に残るという図式が容易に思い起こされる。

こうした地名の分布が何らかの歴史的事実や方言分布の反映でないとしたら恐ろしい。

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