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カテゴリー「077 ドイツ史」の397件の記事

2017年3月14日 (火)

もうひとつの墓参り

ミュンヘン中央駅からマリエンプラッツに向かうなら徒歩がいい。カール門を通り過ぎるとほどなく、聖ミヒャエル教会がある。

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カール門。

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これが聖ミヒャエル教会だ。ここの地下にバイエルン王ルートヴィヒ2世が埋葬されている。ノイシュヴァンシュタイン城を建てるなど功績も伝えられるが、功罪両面の評価が錯綜する。墓室は撮影が禁じられている。彼の金属製の重厚な棺には花が添えられていた。いろいろあるけれどバイエルンっ子たちには人気があるらしく花が絶えないという。

正直なところ足が震えた。ブログ「ブラームスの辞書」では、森鴎外やビスマルク、あるいはシシィを取り上げた際にルートヴィヒ2世にたびたび言及したこともあり、無関心ではいられない。墓室以外は撮影が出来るのは幸いだった。

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2017年2月20日 (月)

ボヘミア王国

長男が集めたサッカーグッズの中に、FCボヘミアンズプラハというクラブのタオマフがあった。かの国のサッカー国内1部リーグには、首都プラハに本拠を置くチームが4つある。しょっちゅうプラハダービーがあるということだ。

そのうちのひとつが「ボヘミアンズプラハ」だ。

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言われてみて再認識した。さして強豪とは呼べないこのクラブが掲げる「ボヘミアンズ」という名称は、由緒正しいものだ。今でこそチェコ共和国だが、神聖ローマ帝国の枠組みの中で、ボヘミア王国は無視し得ぬ位置づけにあった。特にボヘミア王にして神聖ローマ皇帝のカレル4世の治世において絶頂期を形成した。昨年2016年は彼の生誕600年のメモリアルイヤーで、プラハにもニュルンベルクにも関連するポスターが目立った。

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2017年1月19日 (木)

ドイツ語辞典

記事「グリム兄弟」で少しだけ言及した。兄弟のライフワークだ。原題を「Deutshes Worterbuch von Jakob Grimm und Wilhelm Grimm」という。全16巻32冊の大著だ。世に名高い「ゲッティンゲン7教授事件」に巻き込まれて失職した兄弟の救援事業として発案されたとも言われている。32冊の1冊1冊が数百ページに及ぶというヴォリュームには圧倒される。

単語の意味の解説はシンプルなものだ。記述の力点は用例の列挙や歴史的背景の解説にある。ルターからゲーテにいたる広範な書物の中から適切な用例が列挙されている。オランダ語、デンマーク語などゲルマン兄弟語への言及や、ゴート語など古語への配慮も手厚くなっているらしい。刊行が始まると同時に「非実用的だ」という批判も後を絶たなかったとされる一方で、リルケ、ホーフマンスタール、トーマス・マン、ヘッセなど錚々たるメンバーが絶賛している。一度ページを開くとしばらく読み耽ってしまうという証言が複数存在する。

少なくともグリム童話のような家庭的な内容を期待した人々はがっかりしたと思われる。アルフェベット順に執筆が進められたが兄弟の生前には完成するはずもなく、最後まで残ったヤーコプは、「Fruicht」(果実)の項まで書いたところでこの世を去ったという。

「意味の解説はごくごくシンプルで、用例の列挙に力点がある」という編集方針を読む。事実上辞書の体裁を持った博物誌だ。僭越ながら「ブラームスの辞書」と同じである。必要箇所を引くというより最初から読まれたいという点でも一致するような気がする。

2017年1月16日 (月)

ウイルヘルムテル

ロッシーニで名高い「ウイリアムテル」の元ネタも、「ドイツ伝説集」に載っていた。我が子の頭上のリンゴを見事射抜く話だ。日本では専ら「ウイリアムテル」と呼び習わされている。「ウイリアム」は「甲冑」を意味する。ドイツではこれが「ウイルヘルム」に変化する。

周知の通りこの話はスイスの独立のエピソードだ。スイスは国内にいくつかの言語が公用語扱いされている。ドイツ語のほかにフランス語やイタリア語を話す人々が混在しているという。「ウイルヘルム」は、フランス語なら「ギョーム」だし、イタリア語なら「グリエルモ」だ。

「ドイツ伝説集」518番が「ウイルヘルムテル」になっているのは、何だか嬉しい。

2017年1月15日 (日)

伝説の偏在

グリム兄弟の「ドイツ伝説集」下巻には、話の舞台が地名の提示により明確にされていることが多い。収載された話の舞台を地図上にプロットすると興味深いことがわかる。少々の重要な例外が発生する危険を顧みずに申せば、収載の伝説はドイツの西部あるいは南部が舞台になっている。ライン地方、シュヴァーベン、バイエルン、フランケンの諸地域に手厚い。川で申すならライン・ドナウの両大河流域に固まっている。北東に行くほどまばらになり、いわゆる「エルベの東」はほぼ空白となる。

東ゲルマン系のゴート族やケルト系の伝承はほぼ全滅だ。イエス本人の神性をみとめないアリウス派を信仰したゴート人は、ローマ帝国内の勢力争いで、アタナシウス派に破れ、信仰もろとも歴史から抹殺されたとされているが、伝説の分布もそれを裏付けているように見える。

同じことは覇者フランク族以外の部族では、大なり小なり起こりえた。カール大帝によるキリスト教化の過程で起きた抑圧により、多種多様な伝説もまた永遠に失われた。「ドイツ伝説集」下巻で伝説が濃厚に残存する地域は、カール大帝の勢力圏と概ね一致する。カールへの抵抗が根強かった地区ほど伝説が空白化しているかのようだ。

2017年1月14日 (土)

ドイツ伝説集の下巻

グリム兄弟が著した「ドイツ伝説集」は面白い。家庭への浸透度という面では、「グリム童話」に一歩譲るが、最近ドイツネタに浸りきっている私の脳味噌にとっては、伝説集の方が興味深い。とりわけ下巻だ。様々な歴史的伝説が200篇以上収載されている。

ザクセン族、フランク族などおなじみの民族の起源が次々と語られる。何よりも人名、時期が具体的になっているのがありがたい。タキトゥスやシーザーなどローマ人の著述とはまた違った味わいがある。カール大帝やオットー大帝など英雄たちのエピソードも豊かで飽きない。

記述の中に「今」という言葉が現われると、グリム自身か訳者が、「ここでいう今はいついつのことである」と必ず注釈してくれるのも徹底されていて気持ちがいい。

何よりも何よりも地名が具体的なのがありがたい。地名の起源を説明した話がそこここに現われる。鵜呑み厳禁と肝に銘じながら読んでいても、ついつい引き込まれる。

2017年1月13日 (金)

ドイツ伝説集

原題を「Deutsche Sagen」という。グリム兄弟の名前で1816年に刊行された。「グリム童話集」初版刊行から4年後のことだ。兄ヤーコプが童話収集の過程で集めた伝説集だ。内容的に童話と被るエピソードもある。童話集との大きな違いは「いつ」「どこで」「だれが」という記述が具体的な人名地名時代名を伴うことだ。より具体的だが、文学としての味わいよりも、文献学的網羅性が優先されている感じである。

場所にちなむ伝説362編、歴史にちなむ伝説217編というヴォリュームは、童話集を凌ぐ。地名説話、国境説話、寺院の起源説話などを豊富に含む。家庭への浸透という意味では、童話集には劣るものの、詩人作家など玄人筋からは高く評価された。ハイネ、メーリケ、シャミッソーを筆頭とする数多くの文筆家たちを刺激した。もちろん一部の作曲家たちからも参照されていた。「ローエングリン」「タンホイザー」「ウイリアムテル」が収録されている。

序文に記された兄ヤーコプの言葉がある。

「童話は詩的で、伝説は歴史的である」

和訳もされているが貴重。図書館で借り浸りである。

2017年1月11日 (水)

ゲッティンゲンの7人

女性の王位継承を認めないサリカ法のせいで、ヴィクトリア女王はハノーファー王位に就けなかった。代わりにとハノーファー王になったのがエルンスト・アウグストという人物。ヴィクトリア女王の叔父にあたる。同国は英国の影響もあって民主的な政治が行われており、ブラームスが生まれた1833年には新憲法が採択されていたほどだ。

ところが、1837年の即位早々の王エルンスト・アウグストがこの新憲法の破棄を宣言してしまったことから、世論が沸騰する。迂闊に抵抗できない市民に代わってという形で、ゲッティンゲン大学の教授7名が、抗議書を公表した。これがゲッティンゲン7教授事件である。このとき抗議書に署名した7人を「ゲッティンゲンの7人」という。ドイツ語では「Gottinger Sieben」と呼ばれている。西部劇「荒野の7人」がこれに影響されていはいないか真剣に考えているところだ。大学関係者が尊厳をかけて権力に抵抗する事件があると、これにちなんだ言い回しをされることがアメリカでも起きているから西部劇への影響も突飛とは言えまい。

この7人の中にグリム兄弟がいた。

世論は7人に共感したが、皆失職の憂き目にあう。グリム兄弟のライフワーク「ドイツ語辞典」は失職中に構想されたものだが、1840年プロイセン王フリードリヒ・ウィルヘルム4世によってベルリン大学に招聘される。

2016年12月25日 (日)

フォーティフ教会

1853年2月18日だからブラームスがデュッセルドルフにシューマン邸を訪ね、長い滞在を切り上げた後の大事件のあった日。この日ウイーンで皇帝フランツ・ヨーゼフ1世暗殺未遂事件がおきた。

皇帝は武官一人をお供に従えて散歩に出た。現在の国立歌劇場のあたりで暴漢に襲われた。幸い怪我は軽くて程なく回復した。これを祝して建てられたのがフォーティフ教会だ。

実は事件当日の夜宮廷主催の舞踏会が予定されていた。招かれた賓客の中に、皇帝の母ゾフィーの妹バイエルン公后ルドヴィカとその長女ヘレーネがいた。23歳の皇帝フランツ・ヨーゼフの見合いが設定されていた。当然事件のために見合いは中止となり、翌年夏にイシュルに延期された。イシュルの見合いでは、皇帝がヘレーネの妹エリザベートに一目ぼれしてしまうこととなる。このエリザベートこそがシシィ皇后である。

もし、暗殺未遂事件が無かったら、フォーティフ教会が建てられることはなかったことは確実なのだが、欧州一の美貌を誇ったエリザベート皇后も誕生していなかった可能性が高い。

2016年12月24日 (土)

同じ誕生日

何かの集まりに出て自分と同じ誕生日の人がいると親近感が湧く。ましてや同じ年の同じ日だったらなおさらだ。ブラームスの周辺でもあった。生年は違うけれど、クララ・シューマンとシェーンベルクが目立つ。

さて、興味深いケースを加えることにする。オーストリア后妃エリザベートとコジマ・ワーグナーだ。2人とも1837年12月24日の生まれ。美貌の后妃とワーグナーの妻という話題性に加えて、それがクリスマスイブだという奇遇。

「ブラームスの辞書」的にはど真ん中の2人ではないけれども、きわどくストライクゾーンをかすめる。

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