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2021年1月14日 (木)

さざれ石

「君が代」の歌詞の中に出てくる。「小石」だ。これがやがて「大岩」になると歌われる。石が時と共に成長するという考えが下敷きになっていると教わった記憶がある。さらに付け加えるとするなら、そこには「石は大きいほうが有り難味も大きい」という思考の方向性をも感じさせてくれる。「巨石信仰」の痕跡をかすかに感じる。

ザクセンの語源を調べていて興味深い話に出会った。現代ドイツ語では「Sachsen」と綴るが、それは古高ドイツ語の「Sahs」(剣)に連なっている。使用する武器が「短剣」だったことからローマ人がつけたあだ名だが、妙に辻褄が合っている一方で、書物によっては「ザクセン」の語源は「石」だという記述もあって混乱していた。

さらに調べる。

古高ドイツ語「Sahs」(剣)は、ラテン語の「Saxum」(石)からの派生語だということがわかった。何故「石」から「剣」が派生するのか不思議だったが、ラテン語「Saxum」は、「大岩」ではなくて「手で持てる程度の石」「小石」の意味だ。実は古くは「剣」が石でできていたことの投影だという。つまり石器だ。当時は「剣」といえば「石」だったのだ。

ザクセンさざれ石。

2021年1月13日 (水)

ケンペル

ウエストファーレン・レムゴ生まれの医師。鎖国真っ只中の元禄時代に日本を訪れて、オランダ商館医師として2度に亘って江戸に赴き、将軍綱吉と謁見した。彼の死後出版された「日本誌」は英語版、フランス語版、ドイツ語版ともに広く人々に読まれた。

帰国後1698年にデトモルト侯の侍医として召されて1716年に没した。彼の遺品は英国の収集家の手に渡ったが、一部の日常品はそのままデトモルトの宮殿に残されて現在に至っている。

ブラームスは1857年から1859年までの3年間毎年9月から3ヶ月間デトモルトの宮廷に勤務した。合唱団の指導や貴婦人たちへのピアノ教授がその職務だったが、比較的時間に余裕があったとされている。

だから、ブラームスがデトモルト宮所蔵のケンペルの遺品、日本の調度品や食器を見た可能性は排除できない。

2020年10月27日 (火)

リーガとウニオン

1618年から1648年まで、主にドイツを舞台に繰り広げられたカトリックとプロテスタントの争いが三十年戦争だ。典型的な後世のネーミング。1618年にプラハで始まった時には、当事者たちも周囲も「三十年戦争が始まった」とは思っていない。1648年に終わってみて、思えば1618年に始まった戦争だと総括した結果「三十年戦争」と命名された。

東軍対西軍の図式ではない。プロテスタント側を「ウニオン」といいカトリック側を「リーガ」という。「リーガ」の正式名は「Katholische Liga」という。ドイツサッカー国内リーグは「Bundesliga」の「リーガ」だ。

さて、その三十年戦争が終結した時点で、ドイツ国内におけるカトリックとプロテスタントの勢力図がかたまった。日頃「ドイツの作曲家」とひとくくりにされている作曲家たちを、出生地をキーにカトリックとプロテスタントに分類してみた。

<ウニオン>プロテスタント同盟

  1. シャイデマン
  2. シュッツ
  3. ブクステフーデ
  4. エルレバッハ
  5. パッヘルベル
  6. テレマン
  7. バッハ
  8. ヘンデル
  9. シューマン
  10. メンデルスゾーン
  11. ブラームス

<リーガ>カトリック同盟

  1. シュメルツァー
  2. ビーバー
  3. ハイドン
  4. モーツアルト
  5. ベートーヴェン
  6. ウェーバー
  7. シューベルト
  8. ワーグナー
  9. ブルックナー
  10. リヒャルト・シュトラウス
  11. マーラー

出身地がカトリックの領域で、没地がプロテスタントの領域である場合、またはその逆のケースなど厳密さに欠けるがそこはお遊びだ。このメンバーでサッカーをしたらどちらが強そうかなど、話題には事欠かない。

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年10月25日 (日)

働き口

バロック時代の音楽家の働き場所は、およそ2つに分類できる。毎度毎度のおおまかな話である。

  1. 王侯貴族に雇われる
  2. 教会で働く

このうち王侯貴族に雇われるについては、宮廷楽団の団員、宮廷付き作曲家、家庭教師などなど考えられる。どれほど小さくても宮廷は宮廷ということになるなら、中央集権で王様が1人よりも、各地に小国が分立している方が働き口は多くなるに決まっている。

ということはだ。

三十年戦争によって、神聖ローマ帝国を構成する小国に主権が認められたのは追い風だ。ドイツ中に小さいながらも宮廷があり、そこには音楽家にとっての就職口があったはずだ。楽団を抱えるほどの宮廷かどうかはともかく、作曲家や演奏家あるいは教師までも含む音楽家には、一定の需要が発生したはずである。

このことがドイツバロック音楽の発展にどう寄与したのか興味深い。

2020年10月24日 (土)

ウエストファリア条約

三十年戦争の講和条約、1648年10月24日に締結されたから、本日は372年メモリアルデーである。

三十年戦争は、ドイツの国土が荒廃したという意味では、第二次世界大戦と双璧をなす。1600年からおよそ150年間と定義されるバロック時代のうち、初期バロックと呼ばれる最初の50年間は三十年戦争と重なる。

神聖ローマ帝国の衰退が決定づけられたほか、19世紀にビスマルクが統一するまで続くドイツの小領邦体制が始まる。ドイツ内部のカトリックとプロテスタントの線引きもおよそ確定する。ナポレオンが踏みにじるまで欧州の秩序はこれにて固まることになる。

信仰が音楽に多大な影響を与えたことを考えると、作曲家の基盤がカトリックなのかプロテスタントなのかには一定の顧慮が必要になる。

2020年10月21日 (水)

ドイツ農民戦争

1524年南部のシュヴァーベン地方で始まった農民反乱。宗教改革に力を得てという側面もあるらしい。うーんと単純化するなら「聖職者の独身が聖書に根拠がないということで、聖職者が結婚できるなら、聖書に書いていない年貢はどうするねん?」という姿勢だ。

当初農民に同情的だったルターは、反乱が過激化するにつれて鎮圧に同意するようになる。農民の落胆は大きく、これをきっかけにプロテスタントに見切りをつけた農民も多かった。今なお南部にカトリックが多い理由をここに求める研究者もいるくらいだという。

1648年ウェストファリア条約によるカトリックとプロテスタントの色分けは、単にこうした結果の追認に過ぎない。

2020年10月20日 (火)

カール6世

神聖ローマ皇帝、というよりマリア・テレジアの父。即位前にスペイン継承戦争が起き、没後すぐにオーストリア継承戦争が起きた。1740年10月20日狩猟先で急死した。今日は命日だ。

ヴィヴァルディはカール6世に謁見したこともあるし、作品を献呈している。カール6世を頼ってウィーンに出たものの、その急死によりオペラ上演にも暗雲が立ち込める中同地にて没した。

三十年戦争以降、退潮傾向にあったとはいえ、神聖ローマ皇帝に謁見できたヴィヴァルディは大したものである。晩年にフリードリヒ大王にお目通りかなったバッハの事例と好一対だ。

 

 

 

 

2020年10月15日 (木)

ザクセン選帝侯領

バロック時代のヴァイオリン音楽の発展をイタリアとともにドイツが支えていたと書いた。ここでいうドイツの中で特筆すべき位置にあったのが、ザクセン選帝侯領の都ドレスデンだ。美術音楽両面でイタリアと密接につながってた。

フリードリヒ大王の即位は1740年のことであり、バッハの没するたった10年前のことである。だからバロック時代の発展に寄与とまではいいにくい。そこでドレスデンなのだ。後世ドイツ帝国はプロイセンを母体に生まれた。その際プロイセン、バイエルンに次ぐ3番目の勢力だったのが、ザクセン選帝侯領の後継ザクセン王国だった。

ドイツバロック関係の情報を収集しているとドレスデンはやけにひっかかる。

 

 

2020年9月24日 (木)

バッハ全集

ブラームスが晩年に至って人生を振り返る中つぶやいた言葉にバッハが出てくる。

「人生での二大事件は、ビスマルクによるドイツ帝国の創設と、バッハ協会によるバッハ全集の刊行だ」という言葉。
前者は普仏戦争勝利によりウィルヘルム1世がヴェルサイユ宮殿で戴冠したことに象徴される。ナポレオンによって蹂躙される屈辱を味わったドイツ人の悲願だ。列強に囲まれながらドイツは、あるいはドイツ語の話者は小領邦に分裂したままだった。欧州にとっても大事件であり、世界史の教科書にだって「鉄血宰相」の名と共に特筆される出来事だ。
あろうことか、バッハ全集の刊行がその大事件と、ブラームスの脳内で拮抗しているというのだから驚きだ。含蓄が深すぎて言葉が継げない。
ドイツ人の民族意識の高まりは、科学、産業、芸術などあらゆる分野に反映している。「列強には負けないぞ」「ドイツって凄いんだ」という具合に肩に力が入ってくるのだ。音楽面では、ベートーヴェンと並んで、バッハ本人の民族意識の有無とは関係なく、ドイツの象徴へと祭り上げられた。音楽家のブラームスにとって、バッハ全集はドイツ統一と表裏でさえあったはずだ。
そのバッハ全集とはもちろん、今では「旧バッハ全集」とされている。

 

 

2020年7月19日 (日)

100のトピック

原書房刊行の「100のトピックで知るドイツ歴史図鑑」という本を買った。グイドクノップという歴史学者が書いた本の翻訳版。原題は「Die Sternstunden der Deustchen」という。「ドイツの世紀の一瞬」くらいの意味。西暦800年から2007年までの出来事100件が収載されている。読み物として面白いのだが、その中に音楽系のトピックが4つある。

  1. 1734年12月25日 ライプチヒ。バッハ「クリスマスオラトリオ」初演。
  2. 1791年09月30日 ウィーン。モーツアルト「魔笛」初演。
  3. 1824年05月07日 ウィーン。ベートーヴェン「第九」初演。
  4. 1876年08月13日 バイロイト。ワーグナー「指環」初演。

興味深い。以下は突っ込みどころだ。

  • 「ドイツの歴史」という場合の「ドイツ」とはったい何だ。「ドイツ語圏」と言い換えないと上記の2番は矛盾をきたす。モーツアルトはザルツブルクの生まれでウィーンで没した。いわゆる小ドイツ主義的には具合が悪かろう。
  • そもそも「魔笛」と「第九」初演の地ウィーンはドイツではない。
  • ブラームスは入っていない。「ドイツレクイエム」や「第一交響曲」の初演はあえなく落選だ。

当然と言えば当然だが、「宗教改革」は筆頭格である。

 

 

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