旅行先でたくさん写真を撮る。それらをブログ上で公開する場合に、写真の一角に個性を主張できるアイテムを映しこむ。
お気づきの向きは多いだろう。今回の主眼の一つが作曲家たちの墓参だ。日本から生花を持参するわけにもいかないし、現地で首尾よく買えるか不安もあった。それでもやはりお花をささげたいので、造花で飾ったリースを持参した。撮影の時にはそばにおいて映しこむけれど、撮影が終わったら持ち帰る。パッヘルベルのお墓でも、バッハのお墓でも写真に映し込んでいる。
愛用の帽子と共に映っているこのリースだ。
有名作曲家のお墓の写真はネット上にあふれている中、手作りのリースが置かれているだけで、写真の「とっておき感」が上がる気がする。
旅のお供用ペットにと持参した猫のペットボトルホルダー、セバスチャンくんもこの系統の狙いだ。
長男の癖なのだろう。4年前もそうだった。旅行中現地の人に出来るだけ話しかけるというのが、彼の方針だった。
単なる変な人にならないように空気を読むことも必要だが、そうして意気投合した人の写真を撮るのだ。隠し撮りではなく了解を求めての話だ。今回も大した数の写真がそろった。もちろんブログで公開は出来ないが、我が家専用のアルバムとして思い出とする。
一人ひとりにみな思い出があり、写真を見れば、どこで撮ったかを含め、どういう話の流れだったかもよく記憶している。
1853年10月1日シューマン邸をブラームスが訪ねたことで音楽史が変わった。そのシューマン邸があったのがここデュッセルドルフ。2日目3月29日午後に訪問した。昼食の後市庁舎前のライン川に行く。ちょうど1854年2月27日にロベルトが投身したといわれている場所に近い。とうとう来てしまったかという感じ。ケーニヒスアレーに戻って解散し自由行動。ビルカーシュトラーセ15番地にあるシューマンハウスに一目散だった。もちろん練りに練った予定の行動。
夫妻の部屋は2階だそうだが1階にシューマン協会の事務所がある。ドアは施錠されている。思い切って呼び鈴を押すと中に人の気配。協会のお兄さんが出迎えて、中に招き入れてくれた。日本から来たブラームス好きですとつたえ、レクイエムの3楽章の独唱を口ずさんで見せると「レクイエム」という嬉しい反応があって意気投合。訪問者名簿にサインした。感動して声が上ずってしまう。
ここで大失態が発覚。献呈するつもりだった「ブラームスの辞書」をバスにおいてきた。あちゃーという顔をした私を、長男が慰める。日本に帰ってから私の著書を送るから受け取ってくれと伝えると、名刺を取り出して住所欄にマーカーを引き私に差し出す。お礼に日本から持参した北斎の絵葉書を渡すとえらく喜んでくれた。
シューマン協会オリジナルの絵葉書32種類壁に飾ってある。1枚40円程度なので全部くれと申し出ると驚いた表情。一度に全部買う客は初めてだそうだ。長男が彼と私のツーショットで写真を撮ってくれたが、個人情報なので非公開。
門を出るとき、長男にドアをたたく仕草をさせて一枚撮った。シューマン邸を訪ねたブラームスは二十歳だった。3月15日に二十歳になったばかりの長男の出番というわけでこれを公開する。
長男の希望で市電に乗って駅に行く。夕食まで少し街を観察することにした。
夕食後デュッセルドルフの中心街ケーニヒスアレーの東すぐに位置する聖ヨハネ教会で次女たちのオケが最初の演奏会を開いた。3月29日19時の開演。
プログラムは以下の通り。
<セレモニー>
日本国デュッセルドルフ総領事の挨拶。日本青年館の挨拶。デュッセルドルフ市長からの挨拶。県知事からの親書と記念品の贈呈があった。
200人の聴衆にはお年寄りも多い。杖をつきながら倒れこむように着席してじっと聞き入ってくれた人もいる。およそ15万円の寄付が集まり、全額を小児ホスピスに寄付となった。
さて、昨日シューマン協会へ「ブラームスの辞書」を贈る手配をした。SchwarzKatzeで名高い会社の海外便を使って3100円だ。およそ1週間で届くはずだ。
帰国した翌々日から部活が復活した次女。バタバタしていて旅の感想をまとめて聞く機会が持てていないが、印象はよかったようだ。「また行きたい」という一言が全てを物語っている。
次回またドイツ公演があるとすれば、今年入学してくる新入生が主力となるはず。彼らにドイツのすばらしさをきちんと伝えるのが私たちの役目だと殊勝なことを言っている。なんだか成長した感じ。
さて、我々親子3人は、6泊8日のドイツ旅行で、1600枚の写真を撮影してきた。シャッターを切った数ならもっと多い。ピンボケやダブリなどを削除してこの数だ。内訳は次女90枚、私550枚、長男1000枚だ。このほどその写真が整理できた。250枚収納のアルバムにして7冊になる。撮影の時間順に並べるのではなく、「鉄道」「ビール」「演奏会」「人物」「景色」「建物」「グッズ」などのテーマ別の構成になっている。我が家の宝物が加わった感じ。
全7巻。中央の小さなアルバムは失敗写真用↑
青色のアルバムでは旅行全体の流れを追いかける。ローテンブルク、バンベルク、ニュルンベルクなどの歴史的景観、あるいはボン、デュッセルドルフなどの街並みはこちらで。
赤色のアルバムは主に長男のプロヂュース。緑色は私の担当。黒はピンボケ写真や同等の写真の重複を避けるためにアルバムからは排除された写真。これだけでも100枚以上ある。捨てる訳にもまいらず別途収納。
これはデータのCD↑
次女の写真。最近の携帯電話の画質はすばらしい。何気ない景色が驚くほどシャープできれい。長男は何と言っても量。ICEやアウトバーン走行中の車窓からの景色が丹念に拾われている。街の表情の切り取り方にも独特の個性がある。サッカー場の写真も多い。ピントがずれた写真が多いのが残念。私のは鉄道関係が充実。さすがに演奏会の写真も多い。これは次女が撮影できないから私と長男でまかなうほか無かった。
このうちブログで公開しても差し支えのないものだけ公開することにした。左サイドバナーおみくじの下、掛け軸の上からアクセス出来る。今回はこちらからもどうぞ。新しいものほど上にあるので、一覧表の最下段の写真から入り前へ前へとたどると時間順にご覧いただけます。
生まれて初めて書店の洋書売り場で買い物をした。行きつけの書店に洋書売り場があることは以前から気づいていたが、その一角にドイツ語本コーナーがあると知って恐る恐る訪ねてみた。そうしたらお宝にめぐり合った。
ご覧の通り。ドイツ民謡の本だ。A5判320ページの上製本。265曲の民謡がコードネーム付きの楽譜として掲載されている。おまけに代表作32曲をおさめたCDがついて2000円。ご機嫌の買い物となった。いやいや面白い。昨日の御三家は全て収められていた。
265曲も入っているとブラームスが編曲で関与した曲も多い。しょっちゅうという感じ。一方ブラームス創作という作品で唯一収載されているのが、昨日も話題にした「子守唄」だ。かの地ドイツの民謡業界でも「子守唄」は民謡扱いになっていた。
ブラームスの生まれた町。ドイツ最大の港町。「Hamburg」と綴る。
「burg」は「城砦」を意味する。外敵から町を守るために町の周囲を城壁で囲んでいたことの名残である。城砦があった町全てに「burg」が付くかというとそうでもないし、「burg」がついていない町には城壁が無かった訳でもないところに様々な事情もありそうだ。「山」を意味する「berg」と紛らわしいので少々注意がいる。
お気づきの方も多かろう。前企画「マーラー」は会期中にハンブルク関連記事が多かった。ビューローの葬儀がハンブルクで行われたエピソードが幕開けだったし、ハンブルク大火、ハンブルク市立歌劇場、なども話題にした。いよいよブラームスの故郷ハンブルクを取り上げる。
「マーラー特集」に続いて「ハンブルク特集」が始まる。
ブラームスの誕生日。しかも今年はラフォルジュルネでも取り上げられたというのに、本日のタイトルはいかにも怪しい。
じゃがいもはドイツの食糧事情の改善に大きく貢献した作物である。救荒作物としてのじゃがいもの効用だ。日本ではどうなっていたのかと調べた。申すまでもなく日本の主食は米だ。貨幣の代わりでさえある。だが救荒作物かと申せばそうではない。救荒作物とは米の不作を補う存在でなければならない。さつまいもや雑穀が地域の実情に合わせて栽培されていたという。全国共通という視点からなら味噌が俄然注目される。保存性抜群の蛋白源で、いざというときには藁を粉にして味噌をまぶして食べるなどという用法もあったらしい。味噌のたくわえがあれば餓死しないとまで言われている。江戸時代の飢饉は1年で収まらなかった。完全な終息には5年かかるケースも珍しくない。江戸の4大飢饉の中で最後にやってきた天保の飢饉は天保4年に始まった。やませの影響を強く受ける東北地方の被害が大きく終息までに5年かかったとされている。
毎度毎度の飢饉にいためつけられた人々は工夫もした。備蓄米だ。脳味噌のスランプに備えてせっせと記事を備蓄するのに似ている。その保存性が見込まれて味噌も重要な備蓄物資になった。時には5年に及ぶ飢饉の被害を見越して、東北の旧家では味噌7年分の備蓄を家訓として最近までこれが守られていたという話もあるくらいだ。
飢饉が始まった天保4年を西暦に直すことが本日最大のオチになる。それは1833年だ。ブラームスの生誕から5年間日本は未曾有の飢饉に襲われていたということだ。
昨夜ブラスマスイヴは、珍しくフランスワインで乾杯。貴腐にしては格安のお値段につられて買い求めたが、正解だった。
次女が通うことになった高校は、次女にとっては第二志望だったのだが、母と私にとっては一押しだった。最寄の駅から学校まで歩く途中の左側にある小学校は、私自身が小1途中から小2の3学期まで通った学校だ。次女は私が小学校から就職までを過ごした街の隣町に通うということだ。何よりもその高校は私にとっては憧れで、文化祭にも行ったことがある。
だから次女が志望校を選ぶ2校に残った時こちらを推した。最終的には次女の意思を尊重したけれど、第一志望を前期受験して失敗し、第二志望で後期試験で合格したのは、何かの導きに違いない。
昨日、母と私は懐かしい懐かしい街並を眺めながら入学式に向かった。
その入学式は感動的。オケが主役を食うばかりだった。式典の要所要所にフルオーケストラが音楽を差し挟む入学式は、華麗の一言だ。保護者が着席をはじめて間もなく、オケがリハーサルを始めた。「美しく青きドナウ」だ。冒頭のホルンを準備するヴァイオリンのトレモロを聴いて背筋が冷たくなった。心洗われるシュトラウス。震災以降心に折り重なっていたモヤモヤを丹念に洗い流すかのよう。リハーサルで既にこの有様だった。
入場はマイスタージンガー、退場は威風堂々、何度か聴いたパターンだが、今までのは全部吹奏楽バージョンだった。厚い弦楽器がもたらす響きの奥行きは何にも代え難い。校歌が弦楽合奏で伴奏されたのが飛び切りの格調だった。
式からの帰り道、各サークルのメンバーが新入生の勧誘に忙しい。満開の桜の下で、弦楽五重奏によるアイネクライネナハトムジークを聴かせてくれていた。軽々の暗譜がまぶしかった。勧誘されるまでもない。次女の決意は既に固まっている。あと2年少々このエネルギーの中に身を投じることになる。
ブラームスのご加護を。
本日新カテゴリー「743 高校オケ」を創設する。
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