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カテゴリー「075 ドイツ語」の165件の記事

2018年11月10日 (土)

生誕535年

今日11月10日はマルティン・ルターの誕生日。1483年だから生誕535年である。

ブログ「ブラームスの辞書」が展開する「バロック特集」準備の過程で、ルターと宗教改革は避けて通れぬ情報群となっていたが、浅学無信仰の私ごときが不用意に言及するのは、はばかられる存在だ。

しかし、今日は敢えて誕生日を祝福する。

ゆかりの街アイゼナハのブログ上報告を終えたばかりのタイミングでこの日がきたことを喜んでいる。ライプチヒを出た列車がベルリンに向かう途中でもうひとつルターゆかりの街を通る。

20180814_104458_2

1517年10月31日、同地の教会の扉にルターが95箇条の論題を貼りだしたことから宗教改革が始まった。つまり宗教改革発祥の地だ。だから「Lutherstadt」となっている。

2018年8月 3日 (金)

バッハの旅路

バッハ65年の生涯のうちで、最大最長の旅はと問われれば、1705年11月の徒歩旅行と唱えても誤りとはなるまい。当時の任地アルンシュタットから、尊敬するブクステフーデのいるリューベックへの徒歩旅行だ。リューベック聖マリア教会のブクステフーデは当時最高のオルガニストだ。

一方のバッハは、二十歳。1703年8月9日にアルンシュタット新教会のオルガニストになったばかり。つまりブクステフーデは当代最高の同業者ということになる。リューベックは、アルンシュタットの真北、直線距離でおよそ350kmの位置にある。勤務先に4週間の休暇を申し出て徒歩でリューベックを目指した。

先に紹介した「バッハの街」の313ページに驚くべき記述がある。このときバッハのたどったコースが通過した都市名を添えて詳細に紹介されている。

せっかくなので、手持ちのドイツ道路地図をたよりにバッハの旅路を再現してみる。

20180414_162835
見開きに掲載の地図で、アルンシュタットとリューベックの位置関係を確認しておく。

20180414_113605

現代の地図ではアウトバーンが地形に関係なく張り巡らされているからわかりにくいが、アルンシュタットの北方は、ハルツ山地が横たわっている。これを直線的に突き抜けるコースは取れないから、図の直線はあくまでも目安となる。

2018年4月14日 (土)

冠詞

ヨーロッパ系言語特有の品詞。英語で申せば「a」「an」「the」だ。これが不定冠詞と定冠詞に分かれることも周知の通りである。英語はシンプルだと気づくのはドイツ語の学習が始まって間もなくだ。名詞の性や格によって変化する上に、形容詞の格変化にも影響する。幸い英語同様に複数形には用いられないが、中には複数形にも付着してしまう言語もあるらしい。

冠詞が無い日本人には厄介な概念だ。「a bed」「the bed」あるは冠詞無しの「bed」では、意味が変わってしまうことも少なくない。

黙って以下の3つを眺めて欲しい。

  1. ドイツ語 Ein Deutsches Requiem
  2. 英語 A German requiem
  3. 日本語 ドイツレクイエム

どれもブラームスの作品番号45を指している。そもそもどうして不定冠詞「Ein」「A」が用いられるのかが実感として理解出来ない。「Das Deutsche Requiem」ではいけない理由がイメージ出来ない。見ての通り日本語ではその手の論点は発生しない。けれども原文が「Ein Deutsche Requiem」だろうと「Das Deutsche Requiem」だろうと、その違いを日本語へ反映させようと思うと大変なことになるので結局は「ドイツレクイエム」落ち着かざるを得まい。

2018年4月13日 (金)

大文字と小文字

アルファベットには大文字と小文字がある。その使用方法については欧州諸言語において細かなルールが設定されている。文頭は大文字になるというのがその代表例。ドイツ語においては名詞の語頭は文中でも大文字。

世界最高のブラームス本マッコークルの「ブラームス作品目録」は、ドイツレクイエムを「Ein Deutsches Requiem」と記している。我が家のスコアはオイレンブルク社製で「Ein deutsches Requiem」となっている。大文字か小文字かの違い。通常であれば有無をいわせずマッコークルの見解を採用するのだが、こればかりは少々勝手が違う。

  1. マッコークル 大文字
  2. オイレンブルクスコア 小文字
  3. ブライトコップフ 小文字
  4. ウィーン初演のポスター 小文字
  5. シューマンのスケッチ帳 大文字らしい

その他CDのジャケットは大文字小文字入り乱れているというか全部大文字もあったりしている。ジャケットデザインの都合なども絡んでいそうだから参考程度なのだと思うが、アクセンタスなど小文字も存在するというのが心強い。こうなるとブラームスの自筆譜を確認したくなるのだが、現物を拝めていない。「小文字だ」という情報があるのだが、この目で見ないことには落ち着かない。

ドイツレクイエムの初演とマイスタージンガーの初演が同じ年だったことをもって、ドイツ帝国成立前夜のドイツ民族意識の高まり云々と解する向きは多い。ドイツレクイエムはドイツ民族の誇りを高らかに的な解釈もされているが、小文字「d」先頭の「deutsches」は、そこまで大げさではなくて、単に「ドイツ語の」という意味にとどまるのではないかと感じる。仮にシューマンのスケッチ帳が大文字だったとしても、ブラームスはあえて小文字を選んだのではあるまいか。単に「レクイエムなのにドイツ語なんです」という意味。高まりつつあるドイツ民族主義とはあくまでも一線を画す立場。

このことは実は凄い意味がある。「ドイツ民族意識」や「キリスト教」さえ飛び越えた普遍性の表明である可能性を考えている。初演を任された指揮者ラインターラーとのやりとりの中、「ドイツという言葉をはずして人間のという言葉に差し替えてもいいのです」というブラームスの言葉とつながっているような気がする。「ドイツであることに大した意味なんかありゃせんよ」というメッセージを込めた小文字。

2017年12月18日 (月)

Durch と zur

「Durch A, zur B」で「Aを通じでBへ」という意味になる。Aに「Leiden」、Bに「Freude」を代入することで、たちまちおなじみのフレーズ「苦悩を克服して歓喜へ」が出来上がる。ドイツ語お決まりのパターンなのだと思う。

ブラームスの友人にして超一流の外科医ビルロートのモットーもこの形式だ。

「Durch Klarheit, zur Wahrheit」である。「明晰さを通じて真理へ」とでも訳されよう。難を申すとすれば音名化が難しいことくらいか。

2017年10月23日 (月)

フォネティックコード

電話など音声を用いて文字や数字を伝達する場合、聞き違いを防止するために文字特有の単語が設定される。これがフォネティックコードだ。日本語にもある「デンマークのデ」「世界のせ」「富士山のふ」などなどだ。欧米では地名や人名がポピュラーだ。

ブログ「ブラームスの辞書」では、独自にフォネティックコードを設定する。切り口はできるだけブラームスにこだわるという点だ。あるいはブラームスにニヤリとしてもらえるという視点。

  • Agathe そりゃまあそうだ。ブラームスが傷つくかもしれないのが難点。
  • Bismarck 受け狙い。Bachでは面白くない。
  • Clara これも鉄板だがブラームスが傷つくならChopinか。
  • Dvorak 無難。
  • Elisabeth ご存知リーズル。
  • Frankfurt クララの住む街に敬意を表した。
  • Goethe 発音が難しくて判ってもらえないかも。
  • Hamburg 無難すぎて面白みに欠けるが仕方ない。
  • Intermezzo このあたり醍醐味だ。
  • Julie シューマンの三女。
  • Karlsruhe 第一交響曲初演の地。
  • Leipzig バッハゆかりの街、クララの故郷。
  • Musikverein 楽友協会。
  • Neuebahn シューマンの紹介文のタイトル。
  • Orgelpunkt 保続低音。
  • Prater ウィーンっ子憩いの公園。
  • Quartett 苦し紛れ。
  • Regenlied 雨の歌。
  • Schumann 鉄板。Schubertも可。あるいはSonata、Scherzoも。
  • Truxa 長い付き合いの家政婦。
  • Ungarischetanze ハンガリア舞曲。
  • Violine
  • Wien 鉄板。思い切ってWagnerでいいかも。ニヤリとしてもらえる。
  • X 工事中
  • Y 工事中
  • Z Zauberflote 魔笛。

私に電話するときもこの要領で。

  • 2017年9月22日 (金)

    間投詞Ja

    またまた「永遠の愛について」op43-1の話題。第一節を引用する。

    Dunkel, wie dunkel in Wald und in Feld!

    Abend schon ist es,nun schweiget die Welt.

    Nirgend noch Licht und nirgend noch Rauch,

    Ja, und die Lerche,sie schweiget nun auch

    4行目冒頭の「Ja」は、言ってみれば間投詞。「そう、ひばりも今は黙っている」くらいの意味。この「Ja」は軽い順接。興味深いのはブラームスがこの「Ja」に与えたフレージングだ。前行末尾の「Rauch」から4度跳躍で連なっているように聞こえる。「Ja」の後に続く「und die」の前には四分休符が挟まっているから、「Ja」は直前の「Rauch」とのつながりの方が密接に聞こえてしまう。「Rauch」は、4行目末尾の「auch」と韻を踏んでいるから「Ja」のフレージングは異例だ。2コーラス目の同じ場所ではこの跳躍は封印され、ピアノ伴奏が同じ音をなぞるだけだ。

    実はこの「Ja」こそが曲前半の聞かせどころになっている。歌手たちの個性がにじみでるポイントだ。

    2017年9月21日 (木)

    鉄と鋼

    鉄はドイツ語で「Eisen」という。鋼は「Stahl」だ。英語でいうなら「Iron」と「Steel」。気軽に鉄というけれども実用にあたっては大抵いろいろなものが混ぜられた。鋼は炭素が添加された鉄の総称。「Eisen und Stahl」でそれらが便利に言いくるめられている。日本語の「鉄鋼」は、おそらくドイツ語の「Eisen und Stahl」の訳語だろう。

    ブラームス歌曲の至宝「永遠の愛について」op43-1に「Eisen」や「Stahl」が出てくる。まずは4節目の3行目。

    Fest ist der Stahl und das Eisen gar sehr,Unsere Liebe ist fester noch mehr.

    「Stahl」(鋼)は男性名詞なので「der」を伴っている。中性の「Eisen」には「das」が付く。「鋼や鉄は固いけれども、私たちの愛はそい以上よ」となる。けなげな娘の台詞だ。

    第5節がこれに続く。

    Eisen und Stahl, man schmiedet sie um, Unsere Liebe ,wer wandelt sie um?

    Eisen und Stahl,sie konnen zergehn,Unsere Liebe muss ewig bestehn!

    いやはや鉄と鋼がまたまた登場。「鉄と鋼は鍛えなおせるけど、私たちの愛はどうして変えられましょう」「鉄と鋼は溶けてしまうかも知れないけれど、私たちの愛は永遠です」となる。オペラ顔負けの大げさな修辞だ。ここでは「鉄と鋼」が自分たちの愛の固さを表すツールとなっていることがよくわかる。不思議なのは登場の順序だ。4節では「鋼」が先だ。5節では「鉄」が先になる上に冠詞が無い。「Eisen und Stahl」で1単語扱いになっている気がする。

    2017年9月20日 (水)

    かまどの煙

    万葉集巻1舒明天皇の御製。

    大和には群山あれどとりよろふ

    天の香具山登り立ち国見をすれば

    国原は煙立ち立つ海原は鴎立ち立つ

    うましくにそ秋津島大和の国は

    国見の歌だ。為政者が高いところから領地を検分する行事。言霊信仰にも関連があるとされている。聖なる王者が誉めることにより豊穣祈願の予祝行為とも思われる。「国原から立ち上る煙」がとりわけ重要だ。主に炊煙であることがポイント。どんなに譲っても稲わらを焼く煙までだ。中には煙の立ち上りが少ないことを見て減税をした王もいるという。煙は人々の営みの反映。立ち上る煙の本数はもしかすると世帯数だ。

    ブラームスの歌曲にもこの意味の煙が出現する。至宝「永遠の愛について」op43-1に「Rauch」として現れる。

    Dunkei, wie dunkel in Wald und in Feld!

    Abend schon ist es,nun schweiget die Welt.

    Nirgend noch Licht und nirgend noch Rauch,

    Ja, und die Lerche,sie schweiget nun auch

    3行目の末尾に鎮座する。「暗い暗い森も野も」「はや夜が更けてものみな静まる」「いずこにも灯りは見えず、煙も途絶え」「ひばりも今は押し黙る」と歌われる。「暗い森と野」は恋人を家に送る道中の描写であると同時に、2人の置かれた状況の暗喩にもなっている。その暗さを補強するのが3行目「灯りも煙も無く」というフレーズ。この煙はタバコや火災ではあり得ない。十中八九かまどの煙だ。人々の営みが途絶えている様子の描写と見て間違いない。舒明天皇の国見歌と同じである。

    2017年7月19日 (水)

    シュヴァーベン訛り

    記事「訛り懐かし」でシュヴァーベン地方の方言では、一人称「ich」の代わりに「i」が使われると書いた。類似の現象がブラームスの歌曲のテキストにもあった。

    「Die Schwalble ziehet fort」(ツバメは飛び去ってゆく)op7-3と「Die Trauernde」(悲しむ娘)op7-4だ。

    前者では、「ich」に該当する箇所が「i」になっている他に「ist」が「isch」にすりかわっている。

    後者「悲しむ娘」はさらに興味深い。

    • mein→mei 
    • kein→kei
    • mich→mi
    • Mutter→Mueter
    • nicht→net

    これら全部シュヴァーベン訛りである可能性が高い。

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