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カテゴリー「075 ドイツ語」の122件の記事

2017年1月19日 (木)

ドイツ語辞典

記事「グリム兄弟」で少しだけ言及した。兄弟のライフワークだ。原題を「Deutshes Worterbuch von Jakob Grimm und Wilhelm Grimm」という。全16巻32冊の大著だ。世に名高い「ゲッティンゲン7教授事件」に巻き込まれて失職した兄弟の救援事業として発案されたとも言われている。32冊の1冊1冊が数百ページに及ぶというヴォリュームには圧倒される。

単語の意味の解説はシンプルなものだ。記述の力点は用例の列挙や歴史的背景の解説にある。ルターからゲーテにいたる広範な書物の中から適切な用例が列挙されている。オランダ語、デンマーク語などゲルマン兄弟語への言及や、ゴート語など古語への配慮も手厚くなっているらしい。刊行が始まると同時に「非実用的だ」という批判も後を絶たなかったとされる一方で、リルケ、ホーフマンスタール、トーマス・マン、ヘッセなど錚々たるメンバーが絶賛している。一度ページを開くとしばらく読み耽ってしまうという証言が複数存在する。

少なくともグリム童話のような家庭的な内容を期待した人々はがっかりしたと思われる。アルフェベット順に執筆が進められたが兄弟の生前には完成するはずもなく、最後まで残ったヤーコプは、「Fruicht」(果実)の項まで書いたところでこの世を去ったという。

「意味の解説はごくごくシンプルで、用例の列挙に力点がある」という編集方針を読む。事実上辞書の体裁を持った博物誌だ。僭越ながら「ブラームスの辞書」と同じである。必要箇所を引くというより最初から読まれたいという点でも一致するような気がする。

2017年1月16日 (月)

ウイルヘルムテル

ロッシーニで名高い「ウイリアムテル」の元ネタも、「ドイツ伝説集」に載っていた。我が子の頭上のリンゴを見事射抜く話だ。日本では専ら「ウイリアムテル」と呼び習わされている。「ウイリアム」は「甲冑」を意味する。ドイツではこれが「ウイルヘルム」に変化する。

周知の通りこの話はスイスの独立のエピソードだ。スイスは国内にいくつかの言語が公用語扱いされている。ドイツ語のほかにフランス語やイタリア語を話す人々が混在しているという。「ウイルヘルム」は、フランス語なら「ギョーム」だし、イタリア語なら「グリエルモ」だ。

「ドイツ伝説集」518番が「ウイルヘルムテル」になっているのは、何だか嬉しい。

2017年1月13日 (金)

ドイツ伝説集

原題を「Deutsche Sagen」という。グリム兄弟の名前で1816年に刊行された。「グリム童話集」初版刊行から4年後のことだ。兄ヤーコプが童話収集の過程で集めた伝説集だ。内容的に童話と被るエピソードもある。童話集との大きな違いは「いつ」「どこで」「だれが」という記述が具体的な人名地名時代名を伴うことだ。より具体的だが、文学としての味わいよりも、文献学的網羅性が優先されている感じである。

場所にちなむ伝説362編、歴史にちなむ伝説217編というヴォリュームは、童話集を凌ぐ。地名説話、国境説話、寺院の起源説話などを豊富に含む。家庭への浸透という意味では、童話集には劣るものの、詩人作家など玄人筋からは高く評価された。ハイネ、メーリケ、シャミッソーを筆頭とする数多くの文筆家たちを刺激した。もちろん一部の作曲家たちからも参照されていた。「ローエングリン」「タンホイザー」「ウイリアムテル」が収録されている。

序文に記された兄ヤーコプの言葉がある。

「童話は詩的で、伝説は歴史的である」

和訳もされているが貴重。図書館で借り浸りである。

2017年1月11日 (水)

ゲッティンゲンの7人

女性の王位継承を認めないサリカ法のせいで、ヴィクトリア女王はハノーファー王位に就けなかった。代わりにとハノーファー王になったのがエルンスト・アウグストという人物。ヴィクトリア女王の叔父にあたる。同国は英国の影響もあって民主的な政治が行われており、ブラームスが生まれた1833年には新憲法が採択されていたほどだ。

ところが、1837年の即位早々の王エルンスト・アウグストがこの新憲法の破棄を宣言してしまったことから、世論が沸騰する。迂闊に抵抗できない市民に代わってという形で、ゲッティンゲン大学の教授7名が、抗議書を公表した。これがゲッティンゲン7教授事件である。このとき抗議書に署名した7人を「ゲッティンゲンの7人」という。ドイツ語では「Gottinger Sieben」と呼ばれている。西部劇「荒野の7人」がこれに影響されていはいないか真剣に考えているところだ。大学関係者が尊厳をかけて権力に抵抗する事件があると、これにちなんだ言い回しをされることがアメリカでも起きているから西部劇への影響も突飛とは言えまい。

この7人の中にグリム兄弟がいた。

世論は7人に共感したが、皆失職の憂き目にあう。グリム兄弟のライフワーク「ドイツ語辞典」は失職中に構想されたものだが、1840年プロイセン王フリードリヒ・ウィルヘルム4世によってベルリン大学に招聘される。

2016年9月29日 (木)

コハク

古代の植物の樹脂が地中で石化したもの。実質的に鉱物扱いされる。遠くローマの時代から人類に愛好された。ゲルマン人とローマ人の交易品の代表格だ。ゲルマン側からの輸出品の超目玉である。吸血性昆虫が封じ込められたコハクから、恐竜のDNAを再生をするのには欠かせない素材でもある。

産地はバルト海沿岸。ゲルマン人の故郷とも目される地域。現在世界最大のコハク生産国はポーランドで80%を占める。とりわけグダニスクだ。ブラームスの生きた時代はダンツィヒと呼ばれ、プロイセン領だった。コハクといえばプロイセンだった。

英語で「Ambar」というから、ドイツ語で何と言うか調べたら驚いた。「Bernstein」だった。同名の名高い指揮者がいた。

2016年9月27日 (火)

風の眼

古代ゲルマン人の住居について調べている。紀元前1世紀以降、ローマ人との接触により歴史に書き残されている。ローマ人の感覚で見れば「粗末な小屋」だったらしい。竪穴式住居の大型のものというイメージ。縦4~6m、横6~10mの長方形。家畜と一緒に住んでいたようだ。

出入り口は1つか2つで窓は無い。換気用の穴が壁に開けられている程度だ。だからこの穴は「風の眼」と呼ばれた。現代のドイツ語では「Windauge」と綴る。「Wind」は「風」で、「Auge」は「眼」あるいは「眼差し」である。ブラームスの歌曲「君の青い瞳」の原題「Dein blaues Auge」としてなじみ深い。

そう。一部の言語学者たちは、この「Windauge」を、英語でいう「窓」つまり「Window」の語源ではないかと考えているという。

「窓」の語源が「風の眼」とは風流である。

2016年9月 8日 (木)

Limes

異民族の侵入を柵で止めようという発想は、どうも東西共通らしい。中国の万里の長城程ではないが、欧州にも似たような遺跡がある。これを「Limes」(リーメス)と呼んだ。ローマ人がゲルマン人の侵入に備えた柵だ。

一般にローマ人とゲルマン人の勢力範囲はライン川とドナウ川を境界線として均衡したとされているが、それだけでは説明に苦しむ時もある。ライン以東やドナウ以北にローマ人の遺跡が見つかることもあるからだ。このとき「Limes」を想定すると説明がし易くなるという。

ライン沿岸のボンの東南からドナウ沿岸のレーゲンスブルクまでおよそ550kmにわたる長大な柵である。方言や一部地名の分布が「Limes」と一致するケースが見られる。

2016年7月16日 (土)

バッハ事典

某古書店にて発見した。音楽の友社が1993年に刊行した「バッハ事典」だ。1985年バッハの生誕300年を機会に企画されたが刊行までに9年かかったということだ。

注意しておきたいのは「作品事典」ではないということだ。たとえば「ブランデンブルク協奏曲」という語は収載されているが、切り口が作品解説になっていない。

早い話が読んでいて楽しい。必要な言葉を引くのではなく最初から丸ごと読んでいる。収録の内容は「人名」「地名」「音楽用語」「研究用語」など多岐にわたる。「ブラームス」も載っている。ブラームスとバッハの関係が記述される。

定価6500円のところ3700円とはお買い得だ。

さて楽しいことは楽しいのだが、読んでいるうちに悲しくなってきた。このノリで「ブラームス事典」はないものか。マッコークルは「作品事典」だからノリが少し違う。

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2016年7月 7日 (木)

バラモン

世界史を履修していれば必ず暗記する言葉。インド・カースト制度の最上位「司祭者階級」のこと。漢字では「婆羅門」と書く。これをドイツ語でどう綴るのかというと「Brahma」となる。私がこの話をわざわざ言及する理由がおわかりいただけるだろう。作曲家ブラームスとスペルが似ている。

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2016年7月 5日 (火)

2つのカール

まずは黙って以下のリストをご覧いただく。

<A群>

  1. カール大帝
  2. カール・ベンツ
  3. カール・マルクス
  4. カール・マローン
  5. カール・ハインツ・ルンメニゲ

<B群>

  1. カール・タウジヒ
  2. カール・ゴルトマルク
  3. カルル・マリア・フォン・ウェーバー
  4. カール・フィリップ・エマニュエル・バッハ
  5. カール・シューリヒト
  6. カール・タイケ
  7. カール・ツェルニー
  8. カール・ベヒシュタイン
  9. カール・ヤストレムスキー
  10. カール・ルイス

見ての通りカールさんの集合だ。このうちA群は「Karl」と綴られる一方、B群は「Carl」と綴る。数の上では「Carl」優勢。一般に「Carl」の方が古いとも言われるが「カール大帝」や、歴代の神聖ローマ帝国皇帝たちは「Karl」なので一概には言えない。

これが地名になると「カールスルーエ」「カルルスバート」など「Karl」が優勢になるから不思議だ。

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