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カテゴリー「075 ドイツ語」の183件の記事

2024年7月18日 (木)

起源接頭辞「Ur」

ドイツ語の話だ。

その気で探すとかなりある。「Ursprung」は起源だし、「Urquel」は元祖だ。「Ur~」で起源や大元を指し示す機能があるから「起源接頭辞」としゃれ込んでみた。

音楽に目を転じるならなんと言っても「Urtext」だ。クラシック音楽の世界は何かと作曲家の意向が尊重され、原典主義などと呼ばれる。裏を返せば広く流布する楽譜には怪しいものも混入しているということだ。

原典版の定義となるとかなり難しい。作曲家自筆譜が候補には違いないが、乱筆で読めないなど課題も多い。ブラームスは出版に際して作曲者自身が印刷屋さんに手渡した楽譜が一番だと持論を述べる。あるいはできあがったゲラ刷りに対する修正稿かとも。

バッハの場合、かなり複雑だ。自筆譜が残っていない場合もある。写譜に写譜が重ねられて始原の姿が分からぬ作品も多い。バッハ作品で原典を名乗るのはよほどの学術的根拠がいる。

素人の私だと出版社の氏素性もポイントだ。ヘンレ、ブライトコップフ、ベーレンライターあたりだとかなり安心。もはや信仰の自由という領域。

2023年7月 3日 (月)

さようならイニエスタ

一昨日7月1日にJリーグヴィッセル神戸のイニエスタのラストゲームがあった。

愛するアントラーズにおけるジーコのような存在を象徴する一連の感動的なエピソードについてはもはや論を重ねるまい。

彼の名前イニエスタは「Iniesta」と綴る。その綴り冒頭に「H」を付与して「Hiniesta」となるとこれは植物のエニシダを指すスペイン語だ。欧州原産のこの植物の日本伝来は17世紀とされている。日本語名のエニシダは、スペイン語名「イニエスタ」のなまったか形という説がある。この手の語源ネタは眉に唾の二度塗りが要るものだが、もう少し続ける。

人名「Brahms」はドイツ語におけるエニシダ「Brahm」に所有を表す「s」が付与された形だという。つまり「エニシダの息子」だ。

サッカー選手としてのイニエスタへの敬愛とは別に、私にとってはずせない話。

 

2023年6月18日 (日)

性別の決定

ドイツ語の名詞の性について素朴な疑問がある。

外来語の名詞が新たにドイツ語に定着した際、名詞の性別はどのように決定されるのだろうか。元々名詞に性別がある言語から導入された場合、元言語における性別にしてしまうというのが考えられる。厄介なのは元々名詞の性別が無い言語から採用された場合だ。

日本語はどうだろう。外来語の導入が盛んだ。元の単語の発音やスペルを元にカタカナの綴りがあてがわれるだけだ。言語の構造として格や数量による語尾変化が無いのは好都合に思える。格の変化は名詞そのものではなく、後ろに添えられる助詞が表現するのだ。助詞「てをには」の難しさは別として、外来語の導入だけなら容易だと感じる。

 

 

2023年5月13日 (土)

歓喜と友

日本語で表記しては通じまいとばかりにドイツ語にしてみる。

  • Freude  歓喜
  • Freunde 友

似ている。「歓喜Freude」に「n」が挟まるだけで友になる。中学時代にはまった第九の終末合唱のテキストの話だ。カタカナで丸暗記を試みる中で、まず感じたのは「Freunde」が英語「Friend」に似ているということだ。ドイツ語と英語は言語学的には近いということを実感した最初の経験であった。次に感じたのは「フロインデ」と「フロイデ」の類似だ。第九で初めて声楽が現れるバリトン独唱は「オーフロインデ」とうたって始まる。ここはまだシラーのテキストではない。ほどなく始まる歓喜のメロディーからがシラーのテキストで「フロイデ シュネル ゲッターフンケン」と走り出す。「フロインデ」と「フロイデ」がいやでも対比される構造。

「歓喜」と「友」が似ているなんてかっこいいなと夢想する中学生だった。

2023年5月11日 (木)

ドイツ語初体験

話は前後する。中学生で第九に目覚めた当時、やはり断然フィナーレだった。シラーのテキストによる歓喜の歌の大合唱という、大上段へのふりかぶりっぷりが中学生の脳味噌には刺激的だった。早々に買い求めたスコアを片手に聞きまくった。

そのテキスト、意味も分からぬまま覚えてしまった。「おお友よ、こんな調べにあらず」で始まるベートーヴェン自作の部分も合わせて丸暗記。「オーフロ~インデ、ニッヒトディ~ゼテーネ」という具合だ。まだ中学生だ。義務教育上の英語の学習が始まったばかりの脳味噌に、初めてドイツ語がしみ込んでいった。偏差値の足しにならぬドイツ語なのに、なんだか楽しかった。

これが今も大好きなドイツ語初体験であった。

2023年4月 1日 (土)

Aprilscherz

「エイプリルフール」のドイツ語形。直訳すると「四月の冗談」くらいの意味。ドイツ語以外の様々な言語で「エイプリルフール」に相当する言い方を調べた。

  1. フランス 「poison d'avril」 四月の魚
  2. イタリア 「pesce d'aprile」 四月の魚
  3. スペイン 「pes de abril」 四月の魚
  4. スコットランド 「April goek」 四月のカッコウ
  5. ドイツ 「Aprilscherz」 四月の冗談
  6. スウェーデン 「Aprilskamte」(aはウムラウト) 四月の冗談
  7. デンマーク 「Aprirnar」 四月のバカ
  8. ノルウェイ 「Aprilnarr」 四月のバカ
  9. オランダ 「Eerste April」 四月一日
  10. 中国 愚人節

英語圏は「Aprilfool」で決まりと思っていたがスコットランドが面白い。ラテン語圏では「魚」が共通する。釣られ易いという意味だろうか。日本の「四月バカ」はデンマークやノルウェイに近い。

さて、ブラームスの伝記にも「エイプリルフール」が登場することは既に話題 にした。日本語の伝記では「エイプリルフール」になっているが、原文では「Aprilscherz」になっていたことと思う。

2022年2月25日 (金)

Wissen

ドイツ語の辞書を引く。動詞なら「知っている」という意味で、名詞なら「知識」だ。「Wissenschaft」と続けば「学問」になる。

私が通った大学には生協売店があった。その2階が喫茶店になっていたが、その喫茶店の名前が「Wissen」だった。当時は気にも留めていなかったが、今思うとなかなかのネーミングである。学生たちにはなじみ過ぎて女性とのロマンスの舞台にはなりにくいメジャーな場所だったような気がする。

2022年2月14日 (月)

女帝

日本なら「女性の天皇」の意味。欧州なら「女性の皇帝」だろう。

オーストリア・ハプスブルク家で申せばほぼ「マリア・テレジア」の代名詞だ。ドイツ語では「Kaiserin」という。「Kaiser」の女性形だ。しかししかし、カイザーというのは王の中の王だ。神聖ローマ帝国は「女帝」を認めていないから、彼女は厳密に言うと皇帝ではなく、女帝とは言えない。

「事実上の女帝」である。皇帝はあくまでも婿のフランツ1世である。プロイセンにいちゃもんを付けられたが、実質的には家事から国事まで全てを掌握してた国の母であった。

オーストリアの地図を開く。首都ウィーンの南およそ40kmの場所に「Theresiendorf」という地名があるほか、「Maria」または「Marien」で始まる地名がオーストリアには大変多い。

 

 

2022年2月13日 (日)

大公

ドイツ語「Erzherzog」の訳語。単なる公爵「Herzog」より偉いという意味がある。

神聖ローマ帝国では、皇帝を選ぶ選挙があって、投票権の保有者を選帝侯と呼んだ。制度正式発足時7名が名を連ねた。不思議なことにこの7名にハプスブルク家が含まれていない。長らく疑問だった。

これは当時の皇帝、ボヘミア王カール4世の陰謀だ。ルクセンブルク家出身のカール4世はライバルであったハプスブルク家をはずしたのだ。1396年の金印勅書でそう決めた。

ところがこれを逆手に取る切れ者がハプスブルク家に現れた。ルドルフ4世という。ハプスブルク家は選帝侯たちより上位にあるからといって、「オーストリア大公」を名乗った。公爵より上だという理屈だ。「選帝侯はどんなに偉くても選ぶ側」であり、ハプスブルク家がそれに入っていないのは「選ばれる側」だという理屈だ。

後にハプスブルク家が皇位を独占する法的根拠になったから、この知恵比べはルドルフ4世の勝ちだ。ベートーヴェンのパトロンとして名高いルドルフ大公など、オーストリア・ハプスブルク家には何かと「大公」が登場するのはそのせいだ。

 

 

2021年12月10日 (金)

詩人ストッカー

根拠レスな直感で申し訳ないが、一般の音楽人名事典は、歌曲のテキストの供給者の記述が薄いと感じる。作曲家と演奏家に偏っていると思う。もしかするとオペラの脚本家や演出家もそうした偏りの被害を受けてはいまいか。古今のドイツリート作品にテキストを供給した人の詳細なリストを見てみたい。そこに記載された顔ぶれを架空ながらひとまずA群と位置付ける。次に参照したいのは一般の人名辞典だ。その中の詩人のリストをめくる。そこの記載された詩人たちをB群とする。作家辞典ならなお好適なのは申すまでもない。

そらまあ話題がドイツリートである以上A群にはドイツ語の話者が並ぶのが自然だ。B群からドイツ人を抽出してC群としなければなるまい。オーストリア、スイスの人もあるいは加えてもいいこととする。

A群とC群を比べよう。詩人たちを以下のように分類する。

  1. A群にもC群にもいる。そらまあゲーテもシラーもハイネもここだ。訳詩までOKならシェークスピアもここだ。
  2. A群にいてC群にはいない。
  3. A群におらずC群にいる。生まれた時代が極端に古かったり新しかったりも影響すあるかと。
  4. どちらにもいない。数の上ではここが一番多いのかと。

断然興味深いのは2番だ。「ドイツリートのテキスト供給者としてしか知られていない詩人」という位置取り。さらにこの人たちをどの作曲家が付曲しているかで分類する。シューマンの末っ子4男フェリックスはここに入るはずだ。ブラームスが確か3曲付けている。この要領で作曲家をカウントすると、人数でも頻度でもシューベルトが多い気がする。それは歌曲作品の絶対数を考慮するにしてもだ。シューベルティアーデで交流のあった友人のテキストに曲を付けてそれが不滅の位置にいるケースも少なくない。

これがつまり詩人ストッカーだ。もちろん私の造語。妄想が止まらぬが、世はすでに芸術の秋。

 

 

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