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カテゴリー「763 妻」の44件の記事

2023年3月 5日 (日)

我が家の一番長い日

先週の日曜日、長女の結婚披露宴が行われた。昨年4月に入籍して新居に移り住んでいたから、ほぼ10か月遅れの挙式披露宴となった。亡き妻、あるいは父のご加護か、一日中好天に恵まれた。

我が家の一番長い日は、車で母と次女を6時半に美容院に送り届けるところから始まった。更新したばかりのマイカーを仕立てて長男と合わせて4人で都内の某ホテルに向かって出発したのが9時。渋滞なしの快適なドライブ50分で地下駐車場に滑り込む。ロビーに待機すること30分、一日我が家族の面倒を見てくれるという係の女性が、優雅に名乗り出てくれた。端正に引き締まった挨拶をされて、さっそくこの後の大雑把な流れの説明に続き、最初の課題はお父様である私の着替えだと知らされた。不慣れなモーニングに着替えねばならぬ。そ、そ、そうだった。私は新婦の父だ。思いのほか簡単に着替えが出来て、親族控室に通された。

親族紹介と写真撮影が11時30分から。互いの親族を新郎新婦が紹介する例のあれである。カメラマン3名。花嫁のドレス整え係と化粧係の2人が片時も新婦から離れない。いったん控室に戻って歓談するも、我が家担当の女子が次なる指示をと忙しい。

12時30分。挙式。エレクトーン、ハープ、チェロの伴奏に4名の女声アンサンブルがBGMを敷き詰める中、新郎が先に挙式会場入りしてワンテンポ置いて母のベールダウン。新婦側の親族の涙腺決壊。一部が新郎側にも伝播した。2歳1ケ月で母を亡くした長女のベールダウンに祖母が間に合った。今年88の祖母が、杖も車椅子も使わずに、凛としてベールダウンに臨む光景は、間違いなく本日前半のクライマックス。背伸びして背伸びしてベールダウンする祖母を気遣って、頭をできるだけ低くする長女、一旦下りたベールのしわをさりげなく整える祖母にまだ涙はない。続くヴァージンロードウォークは、緊張した。スピーチなら15分だろうと1時間だろうと全く緊張しない私だが、このウォークはがちがちに緊張した。ほぼ一日中カメラマンに徹していた長男が後から「三苫の1ミリ」ならぬ「父の15m」と命名したが、インパクトとしては祖母のベールダウンにはかなわぬ。

そりゃあ今どきの披露宴だ。プロの司会者の手慣れた進行。媒酌人なしはもちろん、職場の上司もいない。親戚と仲間が抽出された宴席。新郎新婦作成のウエルカム映像に、キレッキレの音楽で開宴。乾杯の発声はあったものの、友人代表のスピーチが1名分。出席できない仲間のビデオメッセージが続く。入れ代わり立ち代わり出席者が新郎新婦に近づいては声がけと撮影。笑顔笑顔笑顔。

新婦お色直し退場をエスコートするのは次女。次女の簡単なスピーチ。この時祖母も加わった3名で写真撮影。祖母はもう号泣である。

お色直しで二人とも離籍した後、二人の生い立ちを紹介する映像が流れた。そういえば長女が我が家のアルバムから熱心に材料となる写真を探していた。亡き妻や母も一部写っているのを見てまた泣き出す祖母。

お色直し後のドレスはワインレッド。同色のお花を手に、全テーブルを回る。母の号泣はまだ続く。

さて、食べて飲んで笑ってが120分を過ぎたころ、新郎新婦の両親がスクリーン前に立つ。我が家はもちろん私と祖母だ。音楽と明かりが消えた。我々と新婦だけに明かりが注がれる中、結びのプログラムが始まった。コミカルにテンポよく進行していた司会者は声のトーンを厳粛なものに変えて「新婦がご家族への感謝の手紙を朗読します」と切り出す。淡々とした長女の朗読が始まった。私、祖母、兄、妹の順に気持ちを伝えるという形式。とりわけ深いのは祖母へのトーク。「幼いころ母をなくした私には母の記憶がありません。もし母が存命だったらと考えたこともありましたが、おばあちゃんの手塩にかけられてここまでこれたからこそ、彼とめぐりあうことができた。だから今幸せです」と静かにしかし決然と断言した。祖母は両手で顔を覆っている。笑いよりによっていた席の雰囲気が新婦のこの朗読で厳粛なものに昇華した。朗読とはいえ、そのテンポ、音の張り、抑揚のバランスは見上げたものだった。「自ら泣いてお涙頂戴にしたくない」という強烈な意思に支えられたスピーチ。親バカの誹りはいかようにも受ける覚悟で申し上げている。続く新郎のスピーチは原稿なしだった。列席者へのお礼に続いて何を言い出すかと思えば、当日一日進行の裏方に徹してくれたホテルスタッフへの感謝を口にした。このとき壁際に控えるホテルスタッフの面々が同時に頭を垂れたのは感動的だった。事前に打ち合わせや練習でもしたのかと思うほど、角度タイミングのそろったお辞儀だった。家族への感謝は新婦の手紙朗読に任せ、新郎は周囲への感謝に的を絞っていた。見事な業務分担だ。

お開き。当日夜は我々家族4人は会場となったホテルに宿泊した。新郎新婦が仲間との2次会で盛り上がっているはずの、お開きから3時間後、ホテルのラウンジで我が家だけの2次会。たった今終わった披露宴の、いや一日の余韻に浸る話に花が咲いた。

我が家の一番長い日。

2022年6月15日 (水)

生きていれば還暦

本日は亡き妻の誕生日。1962年の生まれだから生きていれば還暦ということになる。死んだ妻の歳を数えても仕方がないが、それなりの感慨はある。

 

2022年2月 4日 (金)

小さな奇跡

お気づきだろうか。

これらが3日連続するのは奇跡だ。ブログ「ブラームスの辞書」はこうした、偶然を軽視することなく丹念に拾い集めることで出来ている。

両端の2人は生誕で、挟まれた妻だけが命日だ。これで冥福を祈るのだからある意味幸せ。通算120万アクセスへの到達がこれに花を添えた。もしかすると先月末の異例のアクセスラッシュ で1月中に120万に到達したのは、亡き妻からの返礼のメッセージかもしれぬ。今年はきっと良い年。

2022年2月 1日 (火)

妻二十七回忌

本日は妻の命日。1996年に亡くなったから満26年。つまり二十七回忌ということだ。すでに墓参は済ませたものの法要も会食もなしとするので、せめてブログで言及する次第。

2021年2月 1日 (月)

妻没後25年

亡き妻の命日。25年のメモリアルデーだ。

 

 

2020年11月26日 (木)

Sleeper's Awake

バッハ作カンタータ140番「目ざめよと呼ぶ声が聞こえ」BWV140の通称だ。三位一体節後第27日曜日のためのカンタータだ。この「三位一体節後第27日曜日」というのが厄介だ。この祝日は教会暦上で一年最後の祝日なのだが、発生しない年もあるので順に説明する。

  1. 三位一体節は、復活祭の後第8日曜日と決まっている。
  2. その復活祭は、春分以降最初の満月の日の後の、最初の日曜日。
  3. 復活祭は年によって変わり、1か月程度幅があるので、当然三位一体節も変わる。
  4. 待降節は、11月30日に近い日曜
  5. 三位一体節後第27日曜日が、待降節より後になってしまう場合には設定されない。
  6. 三位一体節後第27日曜日は復活祭が3月26日より前だった年だけに存在する祝日である。

つまりあったりなかったりのレアな祝日だということだ。「春分の日3月21日から3月26日までの間に満月の日と日曜日がこの順で両方存在する」という厳しい条件になる。春分の日は3月21日固定とされて、26日とのわずか5日の間に、満月と日曜日がこの順で収まる必要がある。

バッハはそのレアな祝日のために1723年のトマスカントル就任から8年待った。待っただけのことはある傑作がカンタータ140番「目ざめよと呼ぶ声が聞こえ」BWV140。1731年の三位一体節後第27日曜日のために作曲されその年に初演されたとわかっている。ちなみにバッハがトマスカントル在任中「三位一体節後第27日曜日」が存在したのは、1731年と1742年の2回だけだから、どれだけレアかわかる。

初演はその早いほう1731年11月25日だ。テキストは花婿の到着を待つ花嫁の準備の比喩で、用意周到を奨励する寓意を含む結婚話である。

亡き妻との結婚披露宴には大学オケの仲間が祝典合奏団を組織してかけつけ、BGMを生演奏したのだが、開宴前来賓の入場の際のBGMとして同曲を流した。結婚準備をモチーフにしたコラールだから披露宴にピッタリだと私が選んだのだが、披露宴が1731年11月25日の初演からピッタリ259年後というのがセールスポイントでもあった。昔からおバカだった。

 

 

 

2020年11月25日 (水)

結婚30周年

亡き妻との結婚披露宴には大学オケの仲間が祝典合奏団を組織してかけつけ、BGMを生演奏したのだが、開宴前来賓の入場の際のBGMとして「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」を流した。結婚準備をモチーフにしたカンタータだから披露宴にピッタリだと私が選んだのだが、披露宴が1731年11月25日の初演からピッタリ259年後というのがセールスポイントでもあった。

あれから30年たった。つまり本日は「目覚めよと呼ぶ声が聞こえ」BWV140の初演からは289年の記念日だ。

2020年2月 1日 (土)

妻没後24年

本日妻の命日。没後24年にあたるのが土曜日ということもあって墓参して還暦と「令和百人一首」の完成を報告することとする。和歌に興味があったわけではないから、なんというだろう。

2019年9月16日 (月)

敬老の日

ブログ開設以来15回目の敬老の日は特別なものとなる。

千葉県が未曽有の台風に襲われた1週間前9月9日に亡き妻の父が他界した。子供たちの祖父でもある義父85歳。千葉県中が今も苦しむ停電から奇跡的に我が家を守ったのはきっと彼だ。通夜の前日11日深夜に見舞われたこれまた経験のないくらいの雷雨は義父最後のかみなりだったに違いない。そもそも我が家の歴史は今から30年前の1989年9月29日に私が彼に「お嬢さんをください」と言ったところから始まった。

今時珍しい7人の孫たちが通夜、告別式、出棺、火葬と打ち続く流れに心から寄り添った。身内だけのささやかな送りだが慈愛に満ちたものとなった。

これにより我が家の子供たちの祖父母4名のうち、我が家のおばあちゃんが最後の一人になる。その母は、全日程を孫とともにし、凛とした喪服姿で空気を引き締めていた。

子供らの義父の冥福を祈る気持ちは、そのまま、祖母である母への慈しみに変わった。

2018年4月 4日 (水)

二次会の会場

私の結婚披露宴の二次会の話だ。通常の披露宴の後、小さなホールで仲間を集めて、ブラームスの第4交響曲を演奏した。大学オケの仲間が大挙して駆けつけてくれた。私がヴィオラのトップサイド、妻がセカンドのトップサイドに着席することで、隣同士になる。およそ40分入場無料の二次会だ。

その二次会の会場は、ルーテル市谷センターだった。およそ1年前に徹夜で会場確保に並んだ。そこで確保できた日取りに合わせて披露宴本番の会場をおさえるという二次会優先の荒業。仲間とのブラ4優先ということだ。第一ヴァイオリンには大学オケの歴代コンマスが居並ぶという豪華さだった。

当時は何とも思っていなかった。立地、会場費、規模などもろもろ考慮してベストのホールだった。ご承知の通り「ルーテル」は「ルター」だ。ブログ「ブラームスの辞書」にカテゴリー「421ルター」を立ち上げた今、妙に感慨深いものがある。

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