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2021年8月21日 (土)

マルクセンのCD

それってなもんで、我が家のCD棚を探すと本当におどろくべきCDがあった。1843年から10年間ブラームスを指導したマルクセンが作曲もしたということ自体は知っていたが、その作品を収録したCDだ。

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歌曲とピアノ曲全17曲。ジャケットは1853年のハンブルクの絵が用いられている細かさだ。解説は目からうろこが十数枚落ちる内容。

ブラームスの伝記作家として名高いマックスカルベックが、1901年にハンブルクの骨董商で、マルクセン全作品の自筆譜を偶然発見したという。現在ウィーン楽友協会に伝わるそれらの中から抜粋録音である。1830年にハイネの詩に作曲した旨、ハイネに書き送ったという記述も出て来るばかりかハイネからの礼状の文面も日本語で読める。昨日話題にしたハイネとマルクセンの文通がここでも裏付けられた形だ。

 

 

 

2021年8月 8日 (日)

欠落の補填

CDでシューベルト歌曲が聴ける女性歌手の中でお気に入りは以下の3名。

  1. エリー・アメリンク
  2. キャスリーン・バトル
  3. 白井光子

フィッシャーディースカウ先生は、訳あって、女声に歌われるべきと考える歌を、全集録音から省いている中、アメリンクさんはフィッシャーディースカウ先生が録音していない作品を6曲も録音してくれている。

  1. 糸を紡ぐグレートヒェン D118
  2. ミニヨンの歌 D321
  3. 子守歌 D498
  4. 恋する女の手紙 D673
  5. 若き尼僧 D828
  6. アヴェマリア D839

バトルさんは以下。フィッシャーディースカウ先生の録音が無い曲はありがたい。そして、それが何故なのか考える参考になる。

  1. 恋はいたるところに D239-6
  2. 奔放な恋をする男 D558
  3. ズライカ D720
  4. 若き尼僧 D828
  5. デルフィーネ D857
  6. 男はみんなやくざなもの D886-3 D866-3

白井光子先生はディースカウとの重複が多くて「若き尼僧」ただ1曲だ。

2021年8月 3日 (火)

収載の可否判断

ディートリヒ・フィッシャーディースカウ先生がグラムフォンに録音したシューベルト歌曲全集を、探索の音源にしていると書いた。その録音の準備を通じて堆積した情報が書籍「シューベルトの歌曲を辿って」に結実した事情も既に述べた。全集と銘打っていながら、実はシューベルトの歌曲全てを録音していない。フィッシャーディースカウ先生がテキストを検証し、未完のもの、明らかな習作、偽作、あるいは男声で歌われるべきではないと判断した作品が控除されている。明快な基準があったに決まっているが、出来上がった21枚組の収載リストだけを見ていても落選組の実態がわかりにくい。

そこで音楽之友社刊行の作曲家別名曲解説全集「シューベルト」巻末の作品リストを参考にしながら落選組の実態把握を試みることにした。独唱歌曲の総数は573曲ある。フィッシャーディースカウ先生はこのうちの406曲を全集に収載しておられる。167曲が落選しているということだ。探索の音源などとはしゃいではみたもののおよそ3割も抜けているということだ。

落選組をざっと眺めるのも興味深い。

とりわけ興味深いのは「男声に歌われるべきではない歌」という基準だ。タイトルだけから判断しても「女子の立場から歌う恋の歌」「母の立場の歌」などが抜けていると感じる。「糸を紡ぐグレートヒェン」D118の落選を見てもシューベルト歌曲としての知名度や重要度が物差しになっていない気がする。この167曲にもふさわしい音源が必要な気がしてきた。

 

 

 

2021年7月17日 (土)

相乗効果

昨日の記事「シューベルトの歌曲を辿って 」で、大歌手ディートリヒ・フィッシャーディースカウ著の書物について述べた。グラムフォンへのシューベルト歌曲全集録音に先立つ作品解釈のために収集した楽譜や資料を分析した結果、1冊の本になったと彼自身が著作の中で述べている。そこでは録音が全歌曲作品でないことも律儀に言及する。いわく「テキストの内容から判断して男性に歌われない方がいい作品は対象から省いた」と。

先般の記事「探索の音源 」で紹介したシューベルト歌曲全集こそがまさにその果実だった。買い求めたのはドイツ版で日本語解説は無いのだが、こちらの書物を読めば演奏家本人の著述による解説が読めるということに他ならない。

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いやもう本当にすごい。大歌手でありながら、知識の裾野が広大で目がくらむ。何よりも何よりもシューベルトへの愛がこぼれるほどだ。作品の一般的は知名度は度外視して、純粋に彼の興味の厚みがそのまま著述の量につながっている感じがする。シューベルトへの傾倒を別として目立つのは、テキストの供給者に対する温かで深い視線だ。それが大文豪であろうと無名の青年であろうと変わらない。

巻末の人名索引にはブラームスも出て来る。これによれば全部で15回ブラームスへの言及がある。有名作曲家の中ではベートーヴェンに次ぐ頻度だ。

2021年6月29日 (火)

探索の音源

歌曲をキーにシューベルトを探索するにあたって必須なCDを買い求めた。

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都内某中古ショップにてゲット。21枚組4600円というハイコスパ。ドイツ版ゆえ日本語解説がない。時間とお金の制約もあってさまざまな演奏家をあれこれ聞き比べるというのは現実的でないとなると、御大ディートリヒ・フィッシャーディースカウが穏当なところだ。シューベルト歌曲全集というふれこみながら一部収載漏れもあるし、パンフには歌詞も載っていないが、ドイチュ番号とドイツ語のタイトルと作詞者だけで十分機能する。パンフ巻末の索引は、タイトルと歌いだしでディスク番号とトラック番号にたどり着く優れもの。

ところでご覧の通りフィッシャー・ディースカウさんお若い頃の写真なのだが、誰かに似ている。

最近大ブレークのMLBロサンゼルスエンゼルスの大谷翔平に似てはいまいか。新たな視点、しかも旬。

2021年6月27日 (日)

歌曲から室内楽へ

ヴァイオリンソナタ第一番ト長調op78は「雨の歌」と呼ばれている。第三楽章の主要主題が歌曲「雨の歌」op59-3の旋律をそっくりそのまま採用しているせいだ。歌曲オリジナルは嬰へ短調だが、ヴァイオリンソナタへの移植にあたってト短調に移調されているものの、雨脚の描写かとも思われる伴奏の16分音符までそっくりである。

歌曲旋律の室内楽への転用はシューベルトにまばゆい前例がある。「ます」と「死と乙女」である。どちらも変奏曲の主題となっている。

シューベルト大好きのブラームスが真似したのかもしれない。

やっと、シューベルトにたどり着いた。

 

 

 

2021年6月16日 (水)

我が歌

調性別ベスト歌曲集 をご覧いただく。嬰ヘ短調に「雨の歌」op59ー3が入っている。嬰ヘ短調のベスト歌曲という位置づけだ。調性の制約を廃したベスト歌曲24 に目をやると、その中に「雨の歌」は無い。嬰ヘ短調の調性別ベストではあるのだが、歌曲ベスト24からははずれるということに他ならない。困ったのは歌曲ベスト24の中、22番目に来る「我が歌」op106-4だ。オリジナルは「MeineLieder」というが、なんと嬰ヘ短調だった。

調性別ベストに洩れながら白井光子先生の絶妙の歌唱により土壇場で「雨の歌」をうっちゃって入選だ。テキストにしてたった6行の小品ながら深い深い味わいがある。12年前には気にとめていなかった。

2021年6月15日 (火)

最愛の座

歌曲特集開催、調性別ベストの選定、私的ベスト24の選定などの目的のため、所有する歌曲CDを片っ端から聴きなおした。選定は悩ましくも楽しい作業で12年前の自分と向き合ういい機会となった。結論から申せば最愛の歌曲の座は、12年前と変わらなかった。

オリジナルでは「Feldeinsamkeit」op86-2だ。「野のさびしさ」「野に一人いて」など邦訳に決定版が無いことは相変わらずだが、作品自体は私的ベストの座に君臨する。白井光子先生の歌唱を得てその座は盤石。12年前からこれがベストだった自分が少し自慢でさえある。

2021年6月13日 (日)

四つの厳粛な歌再考

まずは改めて「四つの厳粛な歌」op121を確認しておく。

  1. 人に臨むことは
  2. 私は改めて虐げの全てを見た
  3. おお死よなんと苦しいことか
  4. たとえ我、人々天使の言葉で語ろうとも

作曲の経緯についてはもうこれ以上語るまい。

この度の歌曲特集開催にあたり、手持ちの歌曲CDを片っ端から再聴した中、「四つの厳粛な歌」の響き方が明らかに変わっていた。昔から好きではあったのだが、還暦を過ぎてじっくり聴いてみると好き嫌いを越えて迫りくるものがある。定年、母、子らの成長、親しいの人の訃報もある。加えて昨今のコロナ禍など死と人生に向き合わざるを得ない。

いくつか感じたことを改めて整理しておく。

  1. やっぱりディートリヒフィッシャーディースカウが心に沁みる。
  2. 我が家のCDは17種。4曲が必ずセットで録音されている。この曲集に関して抜粋は無い。
  3. 先に公開したブラームス私的ベスト24の選定にあたって、4曲全て採用すべきか悩んだ。私の中では4曲の序列があることを忠実に反映させて、心を鬼にして1番と4番を落とした。当初は3番だけのつもりだったが、2番も収載した。本当に本当に悩んだ。
  4. その3番の歌いっぷりでディートリヒ・フィッシャーディースカウが群を抜く。
  5. 3番だけは、17名誰の演奏なのか聴いただけでほぼ、わかる。器楽ではあり得ぬ。

2021年6月10日 (木)

プレミアム24

ブラームス歌曲の調性別ベストのプライヴェートCDが殊の外楽しめたこともあって、調性の制約抜きに私的ベストを選んでみた。調性別ベストに「平均律歌曲集在宅版 」と命名したので、区別のためにこちらは「プレミアム24」と名付ける。「私的ベスト」には二重の意味がある。作品としても演奏としてもベストを選定するということだ。

演奏家は以下の3名となった。

  • ディートリッヒ・フィッシャーディースカウ DFDと略記。
  • ヘルマン・プライ HPと略記。
  • 白井光子 MSと略記。

24曲の内訳は以下の通り。

  1. エーオルスのハープに寄せて op19-5 MS
  2. いかにおわすか我が女王 op32-9 HP
  3. 永遠の愛について op43-1 HP
  4. 五月の夜 op43-2 HP
  5. 日曜日 op47-3 HP
  6. あの娘のもとに op48-1 DFD
  7. 子守歌 op49-4 MS
  8. 君の青い瞳 op59-2 MS
  9. 夕立 op70-4 DFD
  10. ミンネリート op71-5 HP
  11. おお涼しき森よ op72-3 DFD
  12. 夏の宵 op85-1 DFD
  13. 森のしじまに op85-5 HP
  14. 野に一人いて op86-1 MS
  15. 夢遊ぶ人 op86-2 DFD
  16. 野を渡って op86-3 MS
  17. サッフォーの頌歌 op94-4 MS
  18. 死は爽やかな夜 op96-1 MS
  19. 我らはそぞろ歩いた op96-2 HP
  20. 調べのように op105-1 HP
  21. セレナーデ op106-1 DFD
  22. 我が歌 op106-7 MS
  23. 私は顔を向けてみた op121-2 DFD
  24. おお死よなんと苦々しいことか op121-3 DFD

平均律曲集在宅版と同じ全24曲、総演奏時間は76分20秒で、これまたCD1枚にピタリと収まる。私的ベスト24曲ではあるのだが、収録は作品番号順とした。三名の演奏家に8曲ずつ出番がある。

聴いてみる。

先に完成した「平均律歌曲集在宅版」より、さらになじむ。6番でディートリッヒ・フィッシャーディースカウが現れたとき、鳥肌が立った。

 

 

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