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カテゴリー「794 書籍」の67件の記事

2019年10月 8日 (火)

友情の書簡

みすず社という出版社からブラームスとクララの書簡集が出版されている。1950年原田光子訳で出版されたものの復刻だ。長らくその存在だけは知っていたが、復刻されたので思わず購入した。

かなりの分量だ。お互いに手紙を変換し合って廃棄したが、そうでもないようだ。クララ側の廃棄が甘いことが見て取れる。どうもクララの娘たちが、捨てたと見せて拾っておいたらしい。

 

 

2019年8月17日 (土)

読み手側の知識

ヤープ・シュレーダー先生のご著書「バッハ・無伴奏ヴァイオリン作品を弾く」という書物のことはすでにお話した。実に興味深い。2012年くらいに、シャコンヌの情報収集目的で購入した。ブラームス編曲のピアノ左手版のネタ仕入れの一環でもあった。当時はシャコンヌ関連の記述だけ読んで残りは斜め読み程度だった。

今バロック特集大詰めのここにきて、また読んでみると、記述内容への理解が数段深いことに気付いた。バロック特集の準備の過程で脳みそがもみほぐされたせいだ。必要に応じて引用されるバッハ以外の作曲家全てが「知っている人」になっていた。読み返してみるとバロック楽器中心の記述がなんの違和感もなく入ってくる。展開される論理がどこに向かっているのかわかるというのは、読書の効率を高めるのだとつくづく思う。

著者は最初からそういっているのに、こちらが気づけないだけと、思い知らされるばかりである。

げに尊きは予備知識。

2019年8月16日 (金)

ヤープ・シュレーダー

1925年生まれのオランダのヴァイオリニスト、指揮者だ。とりわけバロックヴァイオリン演奏の大家だ。演奏活動に加えて著述にも意欲を見せる。「バッハ無伴奏ヴァイオリン作品の弾き方」なる著書は、思うだに魅力的だ。無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ全6曲をバロックヴァイオリン演奏の立場から解説した代物なのだが、興味深い指摘に満ち溢れている。とりわけシャコンヌに言及する部分の前段はシャコンヌ演奏史の小論文の様相を呈する。

18世紀初頭からのバッハ無伴奏ヴァイオリン作品の演奏史、受容史をコンパクトにまとめてくれている。

登場人物についての視点はバッハへの愛にあふれてはいるのだが、本質からの逸脱には容赦がない。言葉を慎重に選びながら言いたいことだけは必ず言い切る。シューマンやメンデルスゾーンによるピアノ伴奏パートの付与に対して、ヨアヒムの言葉を借りる形で慎重にダメ出しするし、ウィルヘルミやラフの管弦楽編曲に対しても、好意的に見てもそっけない範囲にとどまっているほか、ストコフスキー、斉藤秀雄らの編曲には言及もしない。わずかにライネッケの4手用ピアノ版については「非常に優れた」と賛意を示している。

ブラームスの親友で当時最大のバッハ研究家であるシュピッタが発したシャコンヌについての見解も紹介されている。「バッハがシャコンヌに盛り込もうとした着想を完全に再現するのはオルガンかオーケストラでない限り無理」というこの宣言は、多くの編曲版を生む「暗幕」になったと喝破する。

一方リストが発した「トランスクリプションに余りにも多くの素材を付け加えるべきではない。原曲に対して、婚姻関係における貞節のようなものを守ることが常にもっとも好ましい」という言葉を好意的に紹介する一方で、あられも無い編曲版にリストが賛辞を贈ったという鋭い指摘も忘れない。

もっとも手厳しいのはブゾーニ版に対するコメントだ。「マーラー風の過剰な表現」とバッサリだ。ブゾーニ自身の「オルガンを想定した」という言い訳に対しても「意味がない」ときっぱりである。地味なことだが、マーラーも暗に批判されている。

様式や奏法に言及した他の部分の説得力が抜群なために、この部分にも納得させられてしまう。

 

 

2019年7月17日 (水)

メルケルさんの伝記

「わたしの信仰」という本だ。著者はアンジェラ・メルケルその人。別に編者と訳者がいるから、彼女の文章なり言動なりを取りまとめて和訳したものだとわかる。信仰を切り口としたメルケル伝と思っていい。あるいはメルケルさんを切り口にした現代ドイツの信仰とも言い換えうる。

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昨今の世界情勢に照らして興味深い記述にあふれている。ますます彼女が好きになる。最近体調がすぐれぬともきく。何卒ご自愛を。そしてハッピーバースデー。

2018年8月 3日 (金)

バッハの旅路

バッハ65年の生涯のうちで、最大最長の旅はと問われれば、1705年11月の徒歩旅行と唱えても誤りとはなるまい。当時の任地アルンシュタットから、尊敬するブクステフーデのいるリューベックへの徒歩旅行だ。リューベック聖マリア教会のブクステフーデは当時最高のオルガニストだ。

一方のバッハは、二十歳。1703年8月9日にアルンシュタット新教会のオルガニストになったばかり。つまりブクステフーデは当代最高の同業者ということになる。リューベックは、アルンシュタットの真北、直線距離でおよそ350kmの位置にある。勤務先に4週間の休暇を申し出て徒歩でリューベックを目指した。

先に紹介した「バッハの街」の313ページに驚くべき記述がある。このときバッハのたどったコースが通過した都市名を添えて詳細に紹介されている。

せっかくなので、手持ちのドイツ道路地図をたよりにバッハの旅路を再現してみる。

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見開きに掲載の地図で、アルンシュタットとリューベックの位置関係を確認しておく。

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現代の地図ではアウトバーンが地形に関係なく張り巡らされているからわかりにくいが、アルンシュタットの北方は、ハルツ山地が横たわっている。これを直線的に突き抜けるコースは取れないから、図の直線はあくまでも目安となる。

2018年7月 7日 (土)

五十音順の奇跡

欧米系の言語で辞書を作ろうと思ったら単語の配列はアルファベット順だ。日本語だと間違いなく五十音順になる。「あ」から始まる。

バッハ事典は、欧米系の言語で書かれる限り、アルファベット順で固く、日本語なら五十音順で自然だ。バッハ事典の先頭は「アイゼナハ」が来る。これを奇跡と呼ばずになんとする。1685年3月21日にバッハはアイゼナハで生まれた。アイゼナハは生まれ故郷だ。ドイツ語での綴りは「Eisenach」だからアルファベット順だと先頭に来るはずがない。バッハ事典が生まれ故郷の記述から始まる日本語版はなんだか感慨深い。

2018年7月 5日 (木)

記念碑委員会

記事「バッハの街」で紹介した本の話題。巻末に人名索引がある。そこにブラームスがたった一度だけ出てくる。228ページに駆け込むとそこはライプチヒの項目。バッハ臨終の地で、生涯を捧げたトマス教会の所在地。

ハッハ没後100年の1850年にバッハ記念碑造営の計画が持ち上がり、1869年になって記念碑設置委員会が組織されたという。発起人の一人がブラームスの友人のハインリッヒ・ヘルツォーゲンベルクというより、リーズルの夫だ。だからという訳でもなかろうがブラームスは組織委員会に関与し始めたという。
言及はここ一箇所だが、何だか嬉しい。モーツアルトもベートーヴェンも、ワーグナーも言及がない。メンデルスゾーンやシューマンに混じってブラームスはバッハ本の常連なのだ。

2018年7月 4日 (水)

バッハの街

ご機嫌な書物のタイトル。マルティン・ベッツォルト著「Bachstaetten」という本の和訳版。2005年に刊行されている。

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生地アイゼナハ、没地ライプチヒを筆頭とするバッハゆかりの街々をバッハの人生とともに書き記した好著。何と言っても都市が切り口になっている。バッハとのかかわりに軸足を置きながら、観光ガイドの目的も忘れていない。

著述の姿勢は圧倒的な細部へのこだわりと網羅性。原語スペリングへの配慮と和訳のバランス。作品や人生との接点を折り目正しく丁寧に辿る。持ってドイツに行きたい。出来れば地図もだ。
そしてそして読後におそってくるのは、ブラームスで同じことをした本はないのかという切迫した気持ち。鉄道の興隆によって拡大したブラームスの行動範囲をつまびらかにした本は現地ドイツでは出されていないのか。
都市とバッハというコンセプトが優れていればいるほど、無いものねだりが止まらない。同時にブログ上で「バッハ地名辞書」という企画を展開する意味が消滅させられている。

2018年4月 3日 (火)

ルターと賛美歌

良い本に出合った。

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ルターの賛美歌厳選12作の詳細な解説。読み進めるうちに、宗教改革の歴史や、ルターの人柄など、基本的な情報が会得できる仕組みになっている。昨年の刊行だからおそらく宗教改革500年を意識しているのだろう。このような本を店頭で手に取って購入してしまうのだから、私も変わった。相変わらずの浅学無信仰なのだが、ドイツバロック音楽への理解を深めようと思うと、プロテスタント賛美歌の知識は必携だ。深みと奥行きが違う。

本日ブラームスの命日に合わせて本記事を公開するとともに、カテゴリー「421ルター」を開設する。

2018年3月 6日 (火)

ビバルディ伝

偕成社1998年のヴィヴァルディの伝記の第二版が2015年になって刊行されていた。

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青少年向けという建前らしく、ふりがなが丁寧につけてある。読みやすい上にカラー写真が満載で楽しい。とてもよいシリーズで他にはドヴォルザークも所有しているのだが、どうしたことかブラームスがシリーズがから漏れている。

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