我が愛器・胴長45.5cmの巨大ヴィオラの話は再三している。その大きさには取り回しの苦労がついて回る。
たとえばG線を例に取る。
第1ポジションで人差し指がA音となる。これにピタリと寄り添って中指がB音を取る。薬指でC、小指でDをと書くのはたやすい。中指を人差し指にピタリと寄せると小指で取るD音が低くなりがちだ。「第一ポジションの長三度を2と4で取りにくい現象」が起きる。歯を食いしばり気味に「よいしょ」とばかり小指を伸ばすと中指がずれ上がる。遅いパッセージならそれもありだが、早いテンポや重音だと困る。
この長三度の重音はシャコンヌの冒頭にいきなり来る。オリジナルのヴァイオリンだと低い方から「DーF-A」だが、5度低いヴィオラ版では「GーB-D」となる。一番上はD線の解放弦だが、GはC線上を小指で取り、BはG線上中指でとなる。この時小指と中指が開かぬ。あるいは届いても、いらぬところで指が弦に触れるのできれいな重音にならない。
しからばと考える。
この音を中指と小指で取らずに人差し指と薬指で取ればいいのだ。
何のことはない、これは先日述べた第2ポジションの分類のうちの「B型2ポジ」にあたる。「2と4の拡張を回避するため」とでも言えようか。実は第2ポジションの2つの形「B型」と「H型」のうちB型が断然重宝するのは、この用法のせいだ。
フラット系楽曲の演奏に重宝するB型が、巨大楽器の取り回しのツールにもなるということだ。第1ポジションだと拡張に難があるこの長3度をヴィオラの各弦でどうなるか以下に示す。
- C線 Es-G
- G線 B-D
- D線 F-A
- A線 C-E
これだけ見ればこの長三度がどれだけ実演上貴重かわかることと思う。そうとりわけフラット系の作品で重宝する。
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