まずは黙って以下のランキングをご覧頂きたい。
- ピアノ 2510
- ヴァイオリン 1056
- チェロ 610
- ヴィオラ 596
- ホルン 303
- クラリネット 208
- ファゴット 144
- フルート 104
- オーボエ 97
- コントラバス 76
- ティンパニ 45
- トロンボーン 33
- トランペット 28
- ハープ 19
- コントラファゴット 16
- ピッコロ 10
- オルガン 9
- チューバ 6
何の順位だかお判りいただけるだろうか?正解は私の著書「ブラームスの辞書」全400ページの中で言及される回数のランキングである。「ブラームスの辞書」の中で楽器名がいっぱい出てくるが、それをWordの検索機能を使って頻度を調査した結果である。
そのつもりでもう一度見ていただくと、これがなかなか面白いデータだと判る。
「ブラームスの辞書」の構成は、ブラームスが楽譜上に記した音楽用語を抽出し、それらがどのような作品のどこの場所のどのパートに現われているかのリストが売りの一つになっている。木管楽器全部に付与される場合には「木管楽器」と記載される。弦楽器も同様だ。そして列挙されたケースのうち私の目から見て興味深い場所を取り上げてコメントを施している。
ブラームスが手厚く用いた楽器ほど「ブラームスの辞書」上に頻度高く現れることになる。さらに著者の私自身が面白いと思えば引用される回数が増える。私は弾いていて聴いていておいしいところを積極的に引用したから、おいしい出番が多くあてがわれている楽器名ほど出現頻度が増す。総合的に申せば、ブラームスの楽器の好みに、私自身の好みがブレンドされた頻度になっているハズである。
断トツで第1位のピアノ、第2位のヴァイオリンは順当なところだ。声楽に室内楽に独奏に、はたまた2曲の協奏曲まで存在するピアノは、ブラームス自身の愛奏の楽器だけあって他の追随を許さぬ地位になる。何のかんの言ってもヴァイオリンだって相当なものだ。協奏曲には2度ありつけるし、出番に恵まれないのはチェロソナタとクラリネットソナタ、それから管弦楽のためのセレナーデの2番だけだ。第3位のチェロだってそうだろう。おそらく3位までのこの並びは予想通りだ。
第3位のチェロと僅かの差で第4位がヴィオラになったことには驚いている。著者の私が「ブラームスの辞書」の中であと15回余計にヴィオラという単語を使っていれば、チェロを逆転していたことになる。クラリネットソナタを全てヴィオラソナタと表現していることも貢献しているだろう。私のヴィオラ贔屓の賜物だが、そこにはブラームス本人のヴィオラ贔屓も関係していると思いたい。
管楽器に目を移そう。何と管楽器のトップ、総合でもヴィオラに続く第5位はホルンだ。ヴィオラが第4位になったことと同様に、ブラームスの気質・志向が「ブラームスの辞書」に反映しているような感じがしてとても嬉しい。そして第6位はクラリネットだ。おそらくクラリネットソナタという単語を全部ヴィオラソナタに置き換えるという特別措置が無かったら、ホルンを抜いていたことだろう。
ある意味でもっともブラームスっぽい現象は第7位のファゴットだ。フルートやオーボエを押さえてのこの位置は何やら象徴的である。
「ブラームスの辞書」の出版後に調査をしたこの結果には意味がある。執筆中はブラームスの魅力をただ表現したいだけで必死だった。楽器名の引用頻度など全く気にしないで書いた結果がこの通りであることは、かえって客観性を増していると思う。
多くの歌曲は声種を限定していないため、ソプラノ、アルト等の声種では同様な結果は得られない。また「op1」「op2」「op3-1」のように検索すれば作品別のランキングも出来そうだが、これには重大な欠陥がある。たとえば「op1」と検索すると「op11」も「op12」も「op100」もヒットしてしまうのだ。だから作品ランキングは今のところスッパリ諦めている。
この暑い中、おバカな企画が止まらない。
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