出版前最終校正
作曲家が出版社に作品を渡す直前に実施するチェック。
音符の正誤はもちろんのこと、ダイナミクス記号や、アーティキュレーションの指図の位置や種類の配置が適正かどうかを作曲者の目でチェックしていると思われる。「同じ楽曲中の複数の場所での表記が矛盾を引き起こしていないか」等、チェックすべきことは無数にあると思われる。小さな整合性の積み重ねが軽んじられていないことが重要である。
実はブラームスはこの「出版前最終校正」が念入りだったと信じるところが「ブラームスの辞書」の原点になっている。曲の立ち上げの発想記号、ダイナミクスには特に気を配ったと推測出来る。第一主題や第二主題も同様だろう。そうした主題が同一曲中で回帰する場面にも人一倍敏感だったと思われる。
一旦楽譜が出版されれば、作品は演奏者の手に委ねられる。自作がはるか後世まで正しく演奏されることを願わなかった作曲家はいないはずだ。作曲家の意思が正しく演奏家に伝わるような段取りをおろそかにしていたとは思えない。その最後の機会が出版前最終校正であるに違いない。
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