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カテゴリー「804 譜例」の5件の記事

2006年7月 9日 (日)

涙を呑んだもの

自費出版においてネックになるのは、多くの場合ご予算である。マイカーよりは安い出費とはいえ、なかなか思うようにならない。大抵は「やりたいこと」と「限られた予算」の綱引きがある。「やりたいこと」に優先順位をつけて、予算との折り合いをつけるのだ。

「ブラームスの辞書」とてその例外ではなかった。予算のかねあいでいくつか諦めたこともある。ハードカバーにこだわったためにページ数を400ページまで切り詰めることにしたというのが一番大きい。原稿の段階では、そういうことは気にせずに、全部を盛り込んでから完成後にカットをした。カットの憂き目にあったのは「譜例」「拍子ネタ」「調性ネタ」だった。

見出し項目数約1170の辞書だから、各項目に1箇所ずつ譜例を入れても千箇所を軽く超える譜例が必要になる。ましてや見出し一箇所について譜例は一箇所で収まるわけがないのだ。入れたいだけ譜例を入れていたら1000ページにだって届きかねないのだ。だからキッパリ譜例は諦めた。

それでもまだ多い。「拍子ネタ」とはブラームスの作品における拍子に関連するお話だ。思い切ってこれもカットした。20ページ分くらいになったと思う。これはあまり苦痛を伴うことは無かった。大変だったのは「調性ネタ」だ。ブラームスの調の扱いは微妙で書きたいことはいくらでもあった。しかし、調はなかなか微妙でブラダスを駆使した統計には、なじみにくい面もあった。1箇所2箇所という具合に数えにくいのだ。断言が難しいケースが多い。これは涙を呑んでというよりも次回の楽しみ的にカットした。

カットの結果、372ページくらいになった。400ページまでまだ余裕が出来た。この28ページ分に譜例を復活させることにした。どの部分の譜例を載せるのかが悩ましくも楽しい作業になったが、結果として173箇所の譜例を復活させることが出来た。通常の音楽書の常識からすれば、はるかに少ないが、バッサリ切られた部分の無念を晴らす意味でも気合を入れて切り貼りした。この173は偶然だ。今年のブラームス生誕173周年に引っ掛けたわけではない。

だから「ブラームスの辞書」はきっちり400ページになっている。

2006年5月 4日 (木)

譜例

音楽関連の書物において論説を展開する上で、あるいはその論説についての読者の理解を深める上で不可欠なツール。これの充実した書物は読んでいて楽しい。もちろん紙幅の都合が付いてまわるだけに、いつも総譜をそのままベッタリ転写しているわけではない。読者が話題の場所を効率よく想起出来ることが目的だから、必要に応じて省略されている。この省略のしかたにセンスが感じられるケースも多い。

ひるがえって「ブラームスの辞書」に目をむけると、まさにこの譜例がアキレス腱になっている。ご予算の都合というよくあるパターンで、十分な数の譜例を盛り込むことが出来なかった。元よりオタク寄りに偏ったネタの集成本だから、譜例無しは読者にはちと辛かろう。「ブラームスの辞書」は読者が既に楽譜を持っていて、必要に応じて参照しながら読まれることをアテにしている書物なのである。

それでも173箇所の譜例がある。項目数が約1170なので全体の15%程度だ。市販の楽譜作成ソフトを使って自ら譜例を作成し、なんと切り貼りをした。幸い出来上がった本には、切り貼りの痕跡は跡形もないことが救いである。入れたいだけ入れていたら、1000ページにだって届いていたと思う。泣く泣くカットになった譜例に心の中で詫びている。

昨年の今頃譜例を選定していた。

2005年6月16日 (木)

切り貼り完結

原稿への譜例の切り貼りが今夜完了した。173箇所の切り貼りに目論見の4時間よりやや少なめの3時間40分を要した。切り貼りが存在するページについては、ついでに誤植のチェックをしたが、一箇所も見つからなかった。400ページ中の165ページくらいに目を通したことになる。それで誤植が見つからなかったということは、統計学的には良い傾向だと思われる。

譜例は1段から5段まで4種類ある上に、同じ段数でも幅が微妙に違う。仮線の多い少ないや、スラーのかかり方によっても幅が変わる。だいたい譜例一段あたりワードの行数にして3行というのが目安だが、173箇所それぞれについて譜例貼り付け余白行数を設定しておいた。実際に貼ってみて何箇所か幅が合わない箇所があるかもしれないと心配していたが、杞憂であった。幅を読み違えた場所はひとつもなかった。よいことだ。譜例には通し番号だけが振ってあり、曲名は記していないが、厳選した173箇所だけに全部どの曲だか覚えていた。扱う内容に比して譜例の少なさはこの本が背負う弱点の一つだ。コストの関係で泣く泣く切られた場所の分まできらめいて欲しい。3時間40分の単純作業だが、ちっともつらくなかった。終わってしまうのが惜しいくらいだった。今までの人生で味わったことのない不思議な達成感がある。

あさって18日の「完全版下手渡し」を控えて、明日もう一日校正をすることとする。間違いが出ればそのページだけ新たに印刷して差し替える事とする。

切り貼りの朝

今晩から、いよいよ譜例の切り貼りをはじめる。

すでに短冊状に切っておいた譜例を173箇所に貼り付けるだけだ。粛々と進めるだけの単純作業である。一番気になるのは作業の過程で誤植がみつかることだ。一文字が抜けたとか間違えたという誤りならともかく、修正のため行の増減が発生するような間違いだと厄介である。すでに譜例のためのスペースが全ページで確定していて、一つの修正でそこいら中に影響が出ることにもなりかねない。

それでも、誤植が今みつかる方がいい。永遠に残るキズになってしまうところを土壇場で救ったということだからだ。生まれてくる子供がただ、健康であることを祈っていたのと似ている。自らの手で事前に存分な校正が出来ることに感謝しなければならない。今回の出版の過程に即して言えば、切り貼り作業は、まとまった作業としては著者側に残された最後のプロセスである。と同時に最後の校正のチャンスである。ここまで来たら微塵も労力を惜しんではなるまい。

2005年6月 3日 (金)

校正のプロフェッショナル

04月29日初回の校正が施されて原稿が帰ってきた。さすが校正のプロである。見ず知らずのライターの文章原稿用紙にして約900枚分をわずか2週間で3回読み、てをにはの間違い、誤字脱字、標記の揺れ、送り仮名の不統一を指摘してくれている。普段、だらしなく日本語を使っているということを嫌でも思い知らされる。恥ずかしい限りだ。指摘一つ一つが確固たるポリシーに貫かれていて気持ちがいい。すべての指摘箇所を注意深く修正する作業は、一回り以上も年上の顔も見ぬ校正者と会話を楽しむかのようである。彼には音楽の知見があるわけではないのに驚くほど鋭敏に急所を突いてくる。単なるブラームスオタクの若造の文書と見下すような姿勢は微塵も無い。身が引き締まる思いだ。コストを節約するために完全版下作成式を選んだが、校正だけはプロに依頼するようにしたことを心の底から喜びたくなった。どうもありがとう。修正はあっと言う間であった。

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