持ち物には名前
持ち物に名前を書くことは学校生活の基本だ。中学、高校と進むに連れて親が記名することは少なくなって行くが、小学校1年生の時は大変だった。教科書、ノート、ランドセル、上履き体操服、鉛筆、筆箱、消しゴムなどだ。集団生活しかも不慣れな学校だ。物は落とすものだという前提で名前を書いておくという訳だ。
物に名前を書くという行為は、ある種のマーキングだ。所有権の誇示に他なるまい。自分の本に蔵書印などを押すのもそうした意識の反映だと思われる。
こうした人間の心理は日本だけに限るものではあるまい。あるいは時代に左右されるものでもないと思う。物を集める趣味のある人、物を大切にする人はきっと名前を書きたいのだと思う。
ブラームスもきっとそうだ。ブラームスに愛用の辞書があればきっと、表紙に自分の名前を書いていただろう。
私の著書「ブラームスの辞書」は、カバーをはずして眺めると、表紙には題名が書いていない。背には書いてあるが表紙には題名の記載がないのだ。その代わりブラームスの筆跡で「Johannes Brahms」と書いてある。
つまり、ブラームスが愛用の辞書に自ら名前を書いてあるという雰囲気を狙ったデザインなのだ。「ブラームスの辞書」をデザインで表現したと言うわけだ。
こうしておくと、持ち物検査のときに、「ブラームスくんは、キチンと名前を書いてあって感心だ」などと言われるのだ。
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