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カテゴリー「306 メンデルスゾーン」の43件の記事

2023年12月23日 (土)

聖トマス教会合唱団のクリスマス

手許に1枚のDVDがある。ライプチヒ聖トマス教会合唱団によるクリスマスコンサートだ。25曲が収録されている。指揮はゲオルグ・クリストフ・ピラーという人物。録音時点でのトマスカントルだ。

ご機嫌な内容で満足。作品は合唱だけではない。オルガン独奏がときどきさしはさまれて退屈しない。25曲中最多は9曲でバッハ。他にはパレストリーナ、アンブロジウス、シャイン、シュッツ、メンデルスゾーン、レーガーなど多岐にわたる。ほんのりと合唱音楽の歴史もトレースしているかのよう。ブラームスが呼ばれていないのが残念だが、ライピチヒとの関連が優先されているようだ。

興味深いのは「きよしこの夜」だ。全体の最後から1個前に収録されているのだが、作曲者がグルーバーではなく、グスタフ・シュレックとなっている。この人は1892年から1918年までトマスカントルだった人。トマス教会の内部では「きよしこの夜」の作曲者がシュレックであると伝承されてるらしい。「編曲者」がいつのまにか「作曲者」と伝えられたのかもと想像が膨らむ。

あきない。

2019年8月 6日 (火)

驚きのコンサート

1835年8月6日だから、今から184年前の今日のことだ。

 

ライプチヒ聖トマス教会で、オルガン演奏会が開かれた。演目は下記の通り。

<第一部>

  • バッハ 前奏曲とフーガ 変ホ長調BWV552
  • バッハ コラール「装え、おお愛する魂よ」BWV654
  • バッハ 前奏曲とフーガ イ短調BWV543

<第二部>

  • バッハ パッサカリア ハ短調BWV582
  • バッハ パストラーレ ヘ長調BWV590
  • バッハ トッカータとフーガ ニ短調BWV565

堂々たるオールバッハプログラムだ。シューマンはこの演奏会の様子をクララに書き送っている。オルガニストはメンデルスゾーンである。メンデルスゾーンの発案によるバッハ記念碑建立のためのチャリティ―演奏会。この手のチャリティーコンサートが3度あったうちの初回だ。

これによって建てられたのが以下の記念碑だ。

 

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すぐそばにメンデルスゾーンの像もある。

ブラームスは2歳そこそこだった。

2019年7月23日 (火)

即興伴奏

1840年のことだ。バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番がライプチヒで公開演奏された。ヴァイオリンを弾いたのはフェルエディナンド・ダーヴィッド。メンデルスゾーンの盟友で、ヴァイオリンコンチェルト初演にあたり独奏を託されるほどの間柄。当時のバッハ演奏の第一人者で、もちろんバッハ協会の発起人の一人だ。

このシャコンヌの演奏が記録に残る限り初の公開演奏だったとされている。このときメンデルスゾーンが即興でピアノ伴奏した。それを実地でシューマンが聴いていたという濃いエピソードだ。

シューマンは演奏を聴いて「バッハの無伴奏ヴァイオリン作品に新たな声部を付与するのは不可能だというバカげた意見を述べた人がいるが、メンデルスゾーンの伴奏はそれに対するこの上ない反論である」と語った。

現在では、バッハがヴァイオリン1本という制約の中で果たそうした狙いが正しく認識されているのだが、当時はこのありさまだったということだ。一般に旋律楽器と認識されているヴァイオリン1本で、複雑なポリフォニーが過不足なく表現されていること、それがシャコンヌという制約の多い形式の中に盛られていること自体がバッハの狙いなのだが、わざわざピアノ伴奏を施すという風潮だったということだ。ピアノがその機能を飛躍的に拡大させていった時代と重なるのは偶然ではあるまい。ピアノが2本の腕、10本の指でフルオーケストラの響きさえ再現可能な万能楽器として認知されるに及んで、ピアノ以外の独奏はピアノに伴奏されることが当たり前になった。ピアノソナタだけが「無伴奏ピアノのための」と呼ばれないことがその証拠だ。

1847年にメンデルスゾーンのピアノ伴奏付「シャコンヌ」が出版されたのを筆頭に、1854年にはシューマンが無伴奏ヴァイオリン曲全6曲のピアノ伴奏付加版を出版した。シャコンヌでのみ、両者の聴き比べが可能だ。

ブラームスは師匠であったシューマンはもとより、メンデルスゾーンだって尊敬していたが「シャコンヌ」の扱いだけは正反対だ。クララの右腕脱臼の見舞いはキッカケに過ぎまい。若いころヨアヒムに弾いてもらった「シャコンヌ」をピアノ編曲するにあたり、「バッハが無伴奏ヴァイオリンでよしとしたなら俺も」とばかりに右腕の参加を拒否したのだ。オクターブ下げる以外何もせんという編曲方針を貫いたのは、シューマンやメンデルスゾーンに対する無言の挑戦と見た。

 

 

 

 

 

 

 

 

2019年3月11日 (月)

蘇演記念日

1829年3月11日ベルリン、若冠20歳のメンデルスゾーンの指揮により、バッハの「マタイ受難曲」が蘇演された。この日取りが東日本大震災の日ということのほかにも、もう1つ大きな意味がある。ライプチヒにおけるバッハ自身の指揮による初演からちょうど100年後の記念日に相当するからだ。

メンデルスゾーンは、総勢158名の合唱を含む大所帯を率いて準備したばかりではなくジンクアカデミーの演奏会場の借用費50ターラーを自腹を切って負担した。歌手たちの中には出演料の受け取りを辞退したものもいた。チケットは数週間前に売り切れ、1000人が入場を断られたという。
一方、完全な上演に4時間を要する大作だけに、当時の聴衆への受けを心配したメンデルスゾーンは、大胆なカットを決断した。後世の愛好家専門家の間では物議をかもすことになるが、当時は誰からも批判されていないことは考慮に値するだろう。
公演は圧倒的な成功を収めた。すぐに再演が企画されちょうど10日後と決まった。つまり再演の日はバッハの誕生日3月21日だということだ。

2018年12月 8日 (土)

ハンブルク散策の小ネタ

ミヒャエリス教会のオルガンコンサートが終わって、ホテルに引き返す途中、ハンブルク中央駅のフードコートに寄り道した。夕食だ。

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カリーブルストとカルトゥッフェルザラート(ポテトサラダ)にビール。樽ナマはおろか瓶や缶でも飲んだことのないDiebelsDunkel⑯にありついた。期待通り。深いコク。極端に冷やしすぎないことはこれまでのどのビールとも共通する。積極的に苦味を訴求しない感じもずっと続いている。カリーブルストとの相性もいい。

ハンブルクの出来事の中で特筆は下記。

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Uバーンの車内での光景。ご主人のひざにあごをのせてじっと見上げる目つきが素敵だ。柴犬のハーベイ君に匹敵する。ドイツでは列車内やレストランの犬は珍しくない。行儀がいいのはみな共通だ。

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犬より扱いが後で申し訳ないが、これがカール大帝の像。ハンブルク市の起源は、カール大帝によるハンマブルクの建設というのが定説だ。だからカール大帝の像があるのはとても自然なことだ。

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こちらはメンデルスゾーン生誕150周年の記念碑の裏側。名高いヴァイオリンコンチェルトの旋律が刻まれている。彼はハンブルク生まれだからこれまた自然。

昨シーズン史上初の二部降格となったHSV。1887年創設だからブラームス存命である。

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長男からタオマフ購入を頼まれていた。まあでも2部とは言え名門である。立派なショップで感心した。街の人々はクール。ここ数年ギリギリで一部残留という成績ばかりだったから覚悟する時間は十分だったという。

2018年11月29日 (木)

合同ムゼウム

ブラームスムゼウムのすぐそばに、MQというムゼウムがある。

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これがその看板だ。ハンブルクゆかりの作曲家の合同ムゼウムという趣だ。マーラー、テレマン、CPEバッハ、メンデルスゾーン姉弟など華麗なメンバーである。ブラームスだけが独立したムゼウムを持っていたのは幸いだった。共通券で入場できるのも助かった。

テレマンの展示が薄いのが気になった。ショップの品ぞろえもテレマンは心細い。

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マーラーはウィーンに進出する前、ハンブルク市立歌劇場の音楽監督だったからハンブルクに深い関係がある。

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19歳のアルマだ。のちのマーラー夫人。こんなところで会えるとは。

テレマンやCPEバッハの業績に深く触れるには、ロマン派色が勝っている。特にショップにおけるテレマンのCDの品ぞろえにはがっかりした。「ターフェルムジーク」でお茶を濁す感がありありだ。

2018年9月19日 (水)

朝の散歩Leipzig

8月11日の朝。時差ぼけというものか早く目覚めるのをいいことに5時前にホテルを出て散歩。駅を再度じっくり見てから市内に繰り出す。

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見ての通り人影まばら。地図だけを見ていたのではわからない微妙な傾斜と街並み。石畳と重厚な建物。やがて不意に目の前にニコライ教会である。

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17時からのコンサートで来るのだが場所の確認をかねて来てみてよかった。6時を告げる鐘の音を聞きながら、ほぼ独り占め状態の写真が撮れる。バッハも演奏経験がある由緒正しき教会だ。

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こちらはゲーテ像。

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そして地下鉄のマルクト広場駅である。

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メンデルスゾーン像。

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歩き回るうちにクララの生家跡のプレートを発見。

2018年6月12日 (火)

天にまします父よ

オリジナルは「Vater unser im Himmelreich」という。

  1. バッハ BWV636,682,683,760,761,762
  2. ブクステフーデ  Buxwv219
  3. パッヘルベル  P48,475,476
  4. テレマン  TWV31:1

ご覧の通り4名全員の引用がある。それもそのはずの基本中の基本のコラール。プロテスタント必携の5つの教え「教理問答」を丸暗記よりも歌でとばかりに作られた「教理問答賛美歌」の中に入っている。ルター謹製のコラール。

さて、先に記事「8大コラール筆頭」で、「罪びと我を罰したもうな」を、上記4名に加えてブラームスが「別テキスト同旋律」の「心に願うは安き安住」を残していることをもって、筆頭認定した。

この度、8大コラールの序列2位を本作「天にまします父よ」と決定する。

理由は、同コラールはメンデンルスゾーンのオルガンソナタ第6番に現れる。第一楽章が本コラールを主題とする変奏曲、第二楽章が同主題のフーガになっている。

つまりこのコラールはバッハ、ブクステフーデ、パッヘルベル、テレマン、メンデルスゾーンの5者そろい踏みということになる。

2018年6月11日 (月)

深き悩みより

ドイツ語で「Aus tiefer Not Schreischrei ich zu dir」というコラール。コラダス分類では「1000」つまり4名のうちバッハだけが取り上げている。BWV745だ。

1523年ルターは友人にシュラパティンに「ドイツ語テキストの賛美歌集の必要性」を説き、協力を依頼した。依頼の肝は同じ旋律で何番でも歌えるよう、テキストの行数と音節を整えることだ。

翌年これが結実して史上初のドイツ語の賛美歌集となる。

カトリックをはじめとする従来の教会では、歌は聖歌隊が歌い、会衆はこれを聴くという図式だったのを打破する。「みんなで歌おう」という思いを実現するためにドイツ語テキストでシンプル平易を心掛けた歌集だ。

この依頼状に「たとえばこんなふうに」とばかりに添付されたのが本日話題の「深き悩みより」だ。だからもちろんルター作である。

さて、バッハだけと申したが、実は、このコラールはメンデルスゾーンのオルガンソナタ第3番ハ短調op65-3の第一楽章にも現れる。

2018年6月10日 (日)

オルガンソナタ

メンデルスゾーンには6曲のオルガンソナタop65がある。

  1. ヘ短調
  2. ハ短調
  3. イ長調
  4. 変ロ長調
  5. ニ長調
  6. ニ短調

「op65」と言えば、あの名高いヴァイオリン協奏曲の一つ後の番号だ。

メンデルスゾーンは、英国の出版社がバッハオルガン作品集出版にあたって楽譜の校訂を依頼されるくらいの見識の持ち主だ。オルガンソナタは同じ出版社から作曲が持ちかけられたことが作曲のきっかけだった。メンデルスゾーンはオルガン演奏とバッハ解釈で当時の第一人者だったということだ。もともと単一の小品の集合だったのを、メンデルスゾーン自身が6曲のソナタにまとめ上げた。

注意が要るのは、ここでいう「ソナタ」は、古典派以降定着した「ソナタ形式による器楽作品」を意味してはいない。バロック時代における「教会ソナタ」というイメージだ。コラールとフーガを含むことが基本である。

メンデルスゾーンのバロック音楽とりわけバッハに対する深い見識のたまものだ。

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