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カテゴリー「699 仮置き」の6件の記事

2022年4月 6日 (水)

Fahr Wohl

作品番号93aとしてまとめられた6曲のうちの4番目。「さよなら」という邦題が与えられている。変イ長調8分の6拍子で、全長19小節、演奏時間にして2分弱の愛らしい合唱曲。混声四部合唱がリュッケルトのテキストをアカペラで歌う。

1897年4月6日ヨハネス・ブラームスの葬儀の日、棺は自宅からウィーン中央墓地に直行せずに長く親しんだ楽友協会に立ち寄る。葬列の到着にあわせて歌われたのがこの曲だ。

楽友協会への到着とともに歌い始められて、最後まで演奏したとしても2分弱だ。伴奏を持たぬアカペラということも屋外での演奏に適していたと思う。屈託のない変イ長調というのが、かえって悲しみの表現に相応しい。

誰の選曲だろう。数あるブラームス作品の中から1曲を選ぶ困難な作業を誰が受け持ったのだろう。合唱団は急遽集められて練習したのだろうか。あるいは万が一の場合はこの曲をとばかりに生前のブラームスが誰かに託したのだろうか。

 

 

2019年11月 2日 (土)

せめてもの思いやり

1896年5月20日クララ・シューマンがこの世を去った。

本ブログの主人公ヨハネス・ブラームスとの交流は広く音楽愛好家に知られているところである。ヨハネス・ブラームスの死は、クララ・シューマンの死から1年たたぬ1897年4月3日だった。歴史に「たられば」は禁物だけれど、もしクララ・シューマンがあと1年長く命を保っていたら、ブラームスが先に世を去ったということだ。

周知の通りクララの夫ロベルト・シューマンは1856年にこの世を去っている。さらに2人の間に生まれた8人の子供たちのうち4人が、母であるクララより先にこの世を去った。「まるで子供を送るために生きているようだ」と嘆くクララをブラームスが心から慰めたというエピソードは有名だ。この上14歳も年下のブラームスまでも見送ることにならずに済んだのは、クララにとって幸せなことだったのかもしれない。

音楽の神様のせめてもの思いやりに違いない。

 

 

2019年8月 3日 (土)

フルッチョ・ブゾーニ

イタリア・エンポリ生まれのピアニストで作曲家。ウイーンを訪れたこともあるらしく、ブラームスと面会したという記録もある。ブラームスに長く親しんでいると、時々出くわす名前である。バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌのピアノ編曲は有名である。左手1本用にしてしまったブラームスと違って、ブゾーニは両手用だ。これはもうキャラの違いという他はないのだが、華麗な編曲である。ブラームスを聴き慣れてしまった耳には、少々毒でさえある。同じ作品を編曲しているということで、興味を持ったのが、ブゾーニとの接点その1であった。

接点その2はヴァイオリン協奏曲だ。第一楽章には演奏者によるカデンツァが挿入される。古今のヴァイオリニストがカデンツァを奉っているが、このブゾーニもピアニストでありながらカデンツァを作っている。なんとなんとティンパニやコントラバスまで応援に引っ張り出してのカデンツァである。

そして接点その3。ブラームス最後の作品と目される「オルガンのためのコラール前奏曲」作品122をピアノ独奏用に編曲している。我が家にCDがあるのは、このうちの4,5,8,9,10,11の6曲だ。編曲がこの6曲だけなのかどうかは実は把握できていない。目から鱗の編曲だ。聴けば聴くほどインテルメッツォに聞こえる。ブラームスへの深い理解なしにはあり得ない編曲だと思う。「私だけの秘密のインテルメッツォはいかが」という感じが充満している。

接点1を別とすれば、このブゾーニという人はブラームスが好きだったのではないかと思えて仕方がない。接点2のヴァイオリン協奏曲はともかく、接点3のオルガン作品をわざわざ編曲するとは、並の傾倒ぶりではない。

2017年12月20日 (水)

第九初演

1833年5月7日はブラームスの誕生日だが、そこからちょうど9年前の1824年5月7日にもまた音楽史に残る出来事があった。ウイーンでベートーヴェンの第九交響曲が、作曲者自らの指揮で初演された日でもあるのだ。

第九交響曲は、言わずと知れたベートーヴェンの最後の交響曲だ。ドイツ系音楽の過去を統合する意味合いさえ持ち合わせている。統合の次に待っているのは、大抵は拡散である。第九交響曲は後に続く作曲家たちにとって規範であり、壁であり、破壊の対象であり目標であり続けた。管弦楽作品とりわけ交響曲を書こうと志すものにとっては鬼門でさえあった。ある者は正面から挑んであえなく挫折し、ある者はピアノ小品に迂回し、またあるものは交響詩や楽劇に逃れたという。もちろん「交響曲で出来ることはもはやない」という言い訳を添えることも忘れていない。

ブラームスは、それらを横目で見ていた。慎重に機が熟すのを待った。最初の管弦楽作品、「管弦楽のためのセレナーデ」の冒頭に第九と同じ「空虚五度」を配することを忘れなかった。

ベートーヴェン第九交響曲の初演から、キッチリ9年後に生まれたブラームス、その第一交響曲は、「第九」の後継という意味を込めて「第十」と呼ばれることになる。この間流れた歳月はわずかに52年。東京オリンピックが56年ぶりだと考える両方とも初演を聴いたという人がいてもおかしくない間隔なのだ。

2015年8月 2日 (日)

祝70万アクセス

おそらく昨夜遅く、開設以来のアクセスが70万に達した。

室内楽ツアー真っただ中、昨日7番目の室内楽・ホルン三重奏曲への言及が終わったところで、ピタリと通算70万アクセスに到達するとは、日ごろの信心の賜物に違いあるまい。創設3717日目なので、一日平均188アクセスなのだが、この平均値にはあまり意味がない。開設当初は閑古鳥が大挙して住み着いていたからだ。

2012年9月19日 (水)

WBCドイツ代表

WBCは野球の世界大会・ワールドベースボールクラシックの略称。紆余曲折はあったものの日本の出場も決まった。

日本はこれに2連覇し、野球の現ワールドチャンピョンだ。ブログ「ブラームスの辞書」では、日本の3連覇を阻止すべく、ドイツが大会に参戦するという極秘情報を独自にキャッチした。以下にスカウティングレポートをお届けする。

  • 1番 ショート ロベルト・シューマン(デュッセルドルフ)
  • 2番 サード フェリクス・メンデルスゾーン(ライピチヒ)
  • 3番 センター リヒャルト・ワーグナー(バイロイト)
  • 4番 ファースト ルートヴィッヒ・ヴァン・ベートーヴェン(ボン)
  • 5番 ライト リヒャルト・シュトラウス(マイニンゲン)
  • 6番 指名打者 ゲオルグ・フィリップ・テレマン(ハンブルク)
  • 7番 レフト カルル・マリア・フォン・ウェーバー(ミュンヘン)
  • 8番 キャッチャー ゲオルグ・ヘンデル(ハレ)
  • 9番 セカンド ヨハネス・ブラームス(ハンブルク)
  • P  ヨハン・セバスチャン・バッハ(ライプチヒ)

<守備>

父が投げ母が受けるといった感じの息のあったバッテリーだ。バッハ投手は球種、スタミナ、スピードを兼ね備えた本格派だ。ショート・シューマンとセカンド・ブラームスの併殺コンビは一見の価値がある。外野はオペラ組で固めた鉄壁の布陣だ。

<攻撃>

ワーグナー、ベートーヴェン、Rシュトラウスのクリーンナップは強力だ。出塁率のいい1,2番との連携で、爆発的な得点力を生み出す。弱点は左打者不在か。

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