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カテゴリー「422 源実朝」の23件の記事

2020年8月 7日 (金)

母方の祖母

私の母の母、つまり母方の祖母の話題だ。もうすで他界している彼女の名前は「むめ」という。私が小さい頃とてもかわいがってもらった。もちろん明治の女だが、子供心に変な名前だと思っていた。母に由来を聞いても「はて」と言うばかりだった。還暦を記念する「令和百人一首」選定の過程で古語に親しむ中から意外な、そして劇的なオチにたどり着いた。

「むめ」はどうも「梅」らしい。学校のテストだったら「うめ」と書かねばならぬのだが、古くは「むめ」と標記したらしい。源実朝のお導きだ。

  1. 出で去なば主無き宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな
  2. 君ならで誰にか見せむ我が宿の軒端に匂ふ梅の初花

どちらの実朝の作。1番は辞世と伝わる。2番は紀友則の本歌取りだ。実朝は梅を愛した。それだけで十分だ。生涯の歌人と奉るにふさわしい因縁ではないか。

そうそう、源実朝は後鳥羽院の一回り遅れのねずみ年。そして私も。

2020年7月15日 (水)

お盆のファンタジー40

5杯目を飲み干してブラームスさんが「ところで源実朝って誰じゃ?」と聞いてきた。鴎外先生が「いかんいかんまだ説明出来とらん」と頭を掻く。「あなたを生涯の作曲家と決めて40年、このほどようやく生涯の歌人を決めました」「それが源実朝です」と即答する私。

「いやいや実朝某を私になぞらえているのでな」とブラームスさんが身を乗り出す。歌人と作曲家を紐付けた試みのことだ。

  1. 大伴家持   662 バッハ
  2. 紀貫之      718 モーツアルト
  3. 源俊頼     1055 ハイドン
  4. 藤原俊成  1114 ベートーヴェン
  5. 西行        1118 シューベルト
  6. 藤原家隆   1158 ショパン
  7. 藤原定家  1162 ワーグナー
  8. 九条良経  1169 メンデルスゾーン
  9. 後鳥羽院  1180 シューマン
  10. 源実朝     1192 ブラームス
  11. 藤原為家  1198 チャイコフスキー
  12. 後嵯峨院  1220 ドヴォルザーク
  13. 京極為兼  1254 ドビュッシー
  14. 伏見院     1265 マーラー
  15. 足利義政  1436 シェーンベルク

「日本の有名歌人たちの位置づけを急ぎ飲み込むにはうってつけの資料だな」とブラームス先生。「ブラームス先生が遅れてきたロマン派である点やバッハ先生への傾倒、シューマン先生との関係、ワーグナー先生の位置づけ、もろもろ全て熟考の成果です」と私がどや顔気味にまくしたてる。「ブルックナー先生やリスト先生にあてていたら、その歌人の位置づけはすぐにばれますよね」と付けくわえた。

「シューマン夫人やマーラー夫人がいないのが残念だ」とブラームスさん。「いやいやそうは申しても」と鴎外先生が割って入る。「女流歌人の位置づけは女流作曲家の位置づけよりも格段に高いんじゃよ」と。「そういえばわしが曲をつけた詩人は男性ばかりだった」とブラームスさんが感心しきりだ。

私が次女に合図を送った。次女がいそいそと二人に包みを差し出す。「開けてください」と私。

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「令和百人一首書籍版をマスクのお礼に差し上げます」と次女が高らかに言い放つ。「表紙は源実朝なんですよ」と付け加えた。

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ぴったりサイズの特製ケース入りだ。パラパラとめくっていた鴎外先生が奥書きを見て驚いた。「10部印刷なのか?」と。「製版代もばかにならんじゃろ」と出版事情にも詳しいブラームスさんが割って入る。「まあオンディマンド印刷ですわ」と私。限定10部の1番を鴎外先生に用意しましたと。「わしのは7番になっとるわい」とブラームスさん。「一応お誕生日に合わせました」と控えめなどや顔の私。

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2020年7月12日 (日)

ハンドルネーム変更

ブログ開設15周年記念事業だ。名刺新調に続く第二弾。こちらはお金がかからない。ブログ上管理人の私はハンドルネーム「アルトのパパ」を名乗ってきた。還暦も過ぎたし、子供たちも成長したことだし、いつまでも「パパ」ではあるまいと考えてこれを改めるとこととした。

新しいハンドルネームは「実朝の弟子」である。ブログタイトル「ブラームスの辞書」を改めることはないし、運営方針にも変更はない。「実朝」は申すまでもなく「源実朝」のことだ。還暦記念企画「令和百人一首」の末尾で源実朝への愛情を告白し、彼を生涯の歌人と決めた。ブログタイトルには生涯の作曲家「ブラームス」が入り、ハンドルネームには生涯の歌人の名前が入るということだ。2033年5月7日のゴールまでこのハンドルネームで突き進むことになるはずだ。

本日から徐々に設定を変えて行く。

 

 

2020年7月 4日 (土)

よくあるポジション

大学オケの仲間と野球をやった。これが意外と盛り上がる。後の飲みとセットだったせいでもある。当時のモットーは「ベルリンフィルより野球がうまくて、ヤンキースよりアンサンブルがうまい」というものだった。ベルリンフィルにしたのは訳がある。アメリカのオケたとえばシカゴ響だと。野球で負けてしまいかねないと危惧してのことだ。「ベルリンフィルよりサッカーがうまくて、バイエルンミュンヘンよりアンサンブルがうまい」としてしまうと、サッカーでベルリンフィルに勝てるかいう難問も生じる。こんなことを飲みながら議論した。頭がいいんだか悪いんだかわからん。

私のブログのポジションをこれに習って考える。

「ブラームスより和歌に詳しくて、実朝より音楽に詳しい」という図式が浮かび上がる。つまりよくあるポジションということだ。けれども、ブラームスと実朝を両輪に据えたブログはそう多いとは思えない。

これから本ブログにおける実朝の位置づけを上げて行くことにする。

 

2020年7月 2日 (木)

非売品

オンディマンド印刷にかけた「令和百人一首」の画像がこれ。

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これが表紙。もちろん源実朝だ。

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こちら裏表紙は後鳥羽院だ。

思い通りのクオリティ、限定10部の少部数ながら、もうこれだけで心が震える。

 

2020年6月12日 (金)

手の込んだ告白

本年年明け早々の1月10日から始まったブログ内企画「令和百人一首」は、私自身の還暦と令和改元を記念すると位置付けてきた。実はもう一つある。大好きな源実朝の立ち位置確認作業だった。源実朝を愛するのだが、その足元を固めたくて和歌史を学び、古今の秀歌に触れ、自らの和歌の好みを掘り下げ、それでもなお実朝が好きかを自問した。欧州の古典作曲家でなら20人くらいは熱く語れるのに、歌人でそれが出来ぬとは情けないと思い詰めてもみた。

結果から言うなら、源実朝への思いは微動だにしなかった。熱く語れる歌人は10名に近づくし、普通に語れる歌人なら20名を超えた。それでも源実朝の位置づけは変わらぬ。大好きな実朝を和歌史という大きな背景の前にそっと置いてみてますます好きになった。40年前にブラームスを生涯の作曲家と決めたように、源実朝を生涯の歌人と決めた。実朝は素材。歴史はソース。和洋揃った。

本企画「令和百人一首」は源実朝への手の込んだ愛の告白であった。

2020年3月11日 (水)

令和百人一首33

【065】足利義満

 頼むかな我が源の石清水流れの末を神に任せて

【066】足利義政

 更に今和歌の浦波収まりて玉拾ふ世に立ちぞ帰らむ

【コメント】この二人祖父と孫。まずは祖父の足利義満。「足利氏が源氏の末裔である」という強い自負と、自らがその棟梁であるとの自覚で出来た歌。京都の石清水八幡が源氏の氏神であるという基礎知識をもって味わうべき。一族の未来への加護を願い出ている。三代将軍義満の時代、室町幕府は政治的頂点を迎える。その孫義政は、政治的に不遇で応仁の乱を招いたと一様の記述の一方で芸術活動に専念し云々と教科書に載っている。鵜呑みはおろかだ。建築、絵画、和歌、茶の湯、連歌、能の第一人者だ。本作は和歌の退潮を嘆く意図がある。和歌の聖地、紀州「和歌の浦」の波が収まると切り出してそこをつく。五七五七七の律動の切れ目と意味の切れ目がずれている。言わばシンコペーションだ。「1.5句切れ」とでも申すか。「玉拾ふ」は優秀な和歌を集めるの意味で、具体的には勅撰和歌集の作成を指す。新古今集の完成時に序文執筆の九条良経が詠んだ「敷島の大和言葉の海に出て拾ひし玉は磨かれにけり」の本歌取りかと。「玉拾ふ」は、たしかに「秀歌収集」の意味で使われている。実際義政は後花園天皇に勅撰和歌集の選出を執奏し、天皇の下命に至ったが、応仁の乱で幻となった。

もうひとつ絶対に義政をはずせぬ理由がある。その切り口は源実朝の歌集「金槐和歌集」だ。古くから流布した定家本の他に貞享本がある。奥書きには「柳営亜槐」と署名されている。だから別名「柳営亜槐本」ともいう。歴代の勅撰和歌集には定家本には収載がなく、柳営亜槐本にのみ存在する作品が8首見えるからバカにしたものではない。その「柳営亜槐」は「幕府にあって大納言だった人」の意味だが、それを義政にあてる説がある。15歳から23歳の間の義政の官職に一致するという。賛否あるからくれぐれも鵜呑み厳禁だけれども義政という学説が打ち出され、そこそこの賛同もあるというだけで義政のキャラがそれなりだとわかる。だから彼は和歌のシェーンベルク。

2020年3月 3日 (火)

令和百人一首28

【055】二条為世

 雪とのみ桜は散れる木の下に色変へて咲く山吹の花

【056】冷泉為相

 山元の竹より奥に家居して田の面を通ふ道のひと筋

【コメント】定家の息子為家の晩年、さまざまな事情により相続問題が発生し訴訟沙汰になった。歌道宗家の内輪もめだが、勅撰和歌集撰者争いもからんで複雑化する。054京極為兼、055二条為世、056冷泉為相に皆「為」の字がつくようにこの三家に藤原御子左家が分裂したということだ。つまり「ライバル歌合せ」である。為世は藤原為家の孫だし、為相は息子だ。皇統が大覚寺統と持明院統に分裂したこととも関係があるらしい。京都に本拠を置いたのが二条と京極で、冷泉は鎌倉だ。二条為世の本作は雪と見まがう桜の散り際を詠む常套を踏みながら、次に控える山吹に目を転じ白と黄色のコントラストを指摘する。為相は、祖父定家の「里びたる犬の声にぞ聞こえつる竹より奥の人の家居は」を本歌取りし、鎌倉の住いを詠んだ。人呼んで「藤谷殿」。

さて、二条為世は歌道宗家の当主として、13番目「新後撰和歌集」と15番目「続千載和歌集」の撰者を務めた。勅撰和歌集の撰者を生涯で2度務めるのは、そりゃあもう大変な栄誉だ。ではあるのだが祖父・為家が撰者となった11番目の「続古今和歌集」に収載されていた源実朝「我が背子は真土の山の葛かづらたまさかにだに来るよしもがな」を、13番目の「新後撰和歌集」にも採用してしまった。重複採用がどれほど大問題なのか知らぬが、実朝の勅撰入集は93回92首ということになっている。

2020年3月 2日 (月)

令和百人一首27

【053】伏見院

 花の上の暮れ行く空に響き来て声に色ある入相の鐘

【054】京極為兼

 立ち帰り人待ち顔に響くなり遠山寺の木隠れの鐘

【コメント】この二人師弟だ。054為兼が師匠で年長なのだが、伏見院は帝なので左方に寄せることとした。この措置により、052後嵯峨院と「祖父と孫裏合わせ」が実現することになる。京極為兼の弟子伏見院は玉葉集を筆頭におよそ300首近く入集する当代きっての歌人。后の永福門院とともに京極派の重鎮として長く君臨した。和歌界のマーラーか。

頂点たる定家・為家以降、和歌が歌道主義、マンネリに堕してゆく中抵抗を試みたと解される。それが京極派だ。光と影、精密な写実を旨に叙景歌を得意とする歌風だ。玉葉集は、言わばファーストアルバムで為兼はその撰者でもある。お叱りまで覚悟で申すなら和歌界のドビュッシーだ。

本2作どちらも体言止めにて鐘の音を愛でる。主役は音だから色彩は必ずしも華麗とは言い難いが、家持の「音のかそけき」にも通じるピアニシモの美学がある。「鐘の音」歌合せ。

9番目の勅撰和歌集「新勅撰和歌集」に25首採用されてデビューした源実朝は、その後21番目の最後まで勅撰和歌集に採られ続けるが、数の上では徐々に収載が減ってゆく。新作が現れないまま、よい歌からどんどん収載がすすめば、先細るのは当然だ。ところがそうした流れは、14番目の玉葉和歌集と17番目の風雅和歌集で、一瞬盛り返す。なんとなんと両者は京極派優位の和歌集だ。偶然ではあるまい。実朝は京極派から好意的に見られていたに違いない。だから京極派大好きという屈折ぶりはブラームスっぽい。

 

 

2020年2月28日 (金)

カテゴリー源実朝

ブログ「ブラームスの辞書」にカテゴリー「422 源実朝」を創設した。私の家族、森鴎外に続く日本人8人目である。自らの還暦と令和改元を記念する企画「令和百人一首」の選定を通じて広がった源実朝への敬意を表すためだ。非音楽、非ブラームスではあるのだが、無理を承知の実朝ネタの発信は今後も途切れることはない。

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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