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カテゴリー

カテゴリー「422 源実朝」の17件の記事

2020年3月11日 (水)

令和百人一首33

【065】足利義満

 頼むかな我が源の石清水流れの末を神に任せて

【066】足利義政

 更に今和歌の浦波収まりて玉拾ふ世に立ちぞ帰らむ

【コメント】この二人祖父と孫。まずは祖父の足利義満。「足利氏が源氏の末裔である」という強い自負と、自らがその棟梁であるとの自覚で出来た歌。京都の石清水八幡が源氏の氏神であるという基礎知識をもって味わうべき。一族の未来への加護を願い出ている。三代将軍義満の時代、室町幕府は政治的頂点を迎える。その孫義政は、政治的に不遇で応仁の乱を招いたと一様の記述の一方で芸術活動に専念し云々と教科書に載っている。鵜呑みはおろかだ。建築、絵画、和歌、茶の湯、連歌、能の第一人者だ。本作は和歌の退潮を嘆く意図がある。和歌の聖地、紀州「和歌の浦」の波が収まると切り出してそこをつく。五七五七七の律動の切れ目と意味の切れ目がずれている。言わばシンコペーションだ。「1.5句切れ」とでも申すか。「玉拾ふ」は優秀な和歌を集めるの意味で、具体的には勅撰和歌集の作成を指す。新古今集の完成時に序文執筆の九条良経が詠んだ「敷島の大和言葉の海に出て拾ひし玉は磨かれにけり」の本歌取りかと。「玉拾ふ」は、たしかに「秀歌収集」の意味で使われている。実際義政は後花園天皇に勅撰和歌集の選出を執奏し、天皇の下命に至ったが、応仁の乱で幻となった。

もうひとつ絶対に義政をはずせぬ理由がある。その切り口は源実朝の歌集「金槐和歌集」だ。古くから流布した定家本の他に貞享本がある。奥書きには「柳営亜槐」と署名されている。だから別名「柳営亜槐本」ともいう。歴代の勅撰和歌集には定家本には収載がなく、柳営亜槐本にのみ存在する作品が8首見えるからバカにしたものではない。その「柳営亜槐」は「幕府にあって大納言だった人」の意味だが、それを義政にあてる説がある。15歳から23歳の間の義政の官職に一致するという。賛否あるからくれぐれも鵜呑み厳禁だけれども義政という学説が打ち出され、そこそこの賛同もあるというだけで義政のキャラがそれなりだとわかる。だから彼は和歌のシェーンベルク。

2020年3月 3日 (火)

令和百人一首28

【055】二条為世

 雪とのみ桜は散れる木の下に色変へて咲く山吹の花

【056】冷泉為相

 山元の竹より奥に家居して田の面を通ふ道のひと筋

【コメント】定家の息子為家の晩年、さまざまな事情により相続問題が発生し訴訟沙汰になった。歌道宗家の内輪もめだが、勅撰和歌集撰者争いもからんで複雑化する。054京極為兼、055二条為世、056冷泉為相に皆「為」の字がつくようにこの三家に藤原御子左家が分裂したということだ。つまり「ライバル歌合せ」である。為世は藤原為家の孫だし、為相は息子だ。皇統が大覚寺統と持明院統に分裂したこととも関係があるらしい。京都に本拠を置いたのが二条と京極で、冷泉は鎌倉だ。二条為世の本作は雪と見まがう桜の散り際を詠む常套を踏みながら、次に控える山吹に目を転じ白と黄色のコントラストを指摘する。為相は、祖父定家の「里びたる犬の声にぞ聞こえつる竹より奥の人の家居は」を本歌取りし、鎌倉の住いを詠んだ。人呼んで「藤谷殿」。

さて、二条為世は歌道宗家の当主として、13番目「新後撰和歌集」と15番目「続千載和歌集」の撰者を務めた。勅撰和歌集の撰者を生涯で2度務めるのは、そりゃあもう大変な栄誉だ。ではあるのだが祖父・為家が撰者となった11番目の「続古今和歌集」に収載されていた源実朝「我が背子は真土の山の葛かづらたまさかにだに来るよしもがな」を、13番目の「新後撰和歌集」にも採用してしまった。重複採用がどれほど大問題なのか知らぬが、実朝の勅撰入集は93回92首ということになっている。

2020年3月 2日 (月)

令和百人一首27

【053】伏見院

 花の上の暮れ行く空に響き来て声に色ある入相の鐘

【054】京極為兼

 立ち帰り人待ち顔に響くなり遠山寺の木隠れの鐘

【コメント】この二人師弟だ。054為兼が師匠で年長なのだが、伏見院は帝なので左方に寄せることとした。この措置により、052後嵯峨院と「祖父と孫裏合わせ」が実現することになる。京極為兼の弟子伏見院は玉葉集を筆頭におよそ300首近く入集する当代きっての歌人。后の永福門院とともに京極派の重鎮として長く君臨した。和歌界のマーラーか。

頂点たる定家・為家以降、和歌が歌道主義、マンネリに堕してゆく中抵抗を試みたと解される。それが京極派だ。光と影、精密な写実を旨に叙景歌を得意とする歌風だ。玉葉集は、言わばファーストアルバムで為兼はその撰者でもある。お叱りまで覚悟で申すなら和歌界のドビュッシーだ。

本2作どちらも体言止めにて鐘の音を愛でる。主役は音だから色彩は必ずしも華麗とは言い難いが、家持の「音のかそけき」にも通じるピアニシモの美学がある。「鐘の音」歌合せ。

9番目の勅撰和歌集「新勅撰和歌集」に25首採用されてデビューした源実朝は、その後21番目の最後まで勅撰和歌集に採られ続けるが、数の上では徐々に収載が減ってゆく。新作が現れないまま、よい歌からどんどん収載がすすめば、先細るのは当然だ。ところがそうした流れは、14番目の玉葉和歌集と17番目の風雅和歌集で、一瞬盛り返す。なんとなんと両者は京極派優位の和歌集だ。偶然ではあるまい。実朝は京極派から好意的に見られていたに違いない。だから京極派大好きという屈折ぶりはブラームスっぽい。

 

 

2020年2月28日 (金)

カテゴリー源実朝

ブログ「ブラームスの辞書」にカテゴリー「422 源実朝」を創設した。私の家族、森鴎外に続く日本人8人目である。自らの還暦と令和改元を記念する企画「令和百人一首」の選定を通じて広がった源実朝への敬意を表すためだ。非音楽、非ブラームスではあるのだが、無理を承知の実朝ネタの発信は今後も途切れることはない。

2020年2月27日 (木)

我ながら巧妙

昨日に引き続き我ながら感心する。

13年前の記事「ブラームス雛 」の中で、ブラームスに関係する人物でお雛様を作った。ロベルトシューマンとクララをお内裏様とお雛様にして、三人官女や五人囃子を選び、最後にブラームスを赤いお顔の右大臣に認定した。左大臣がバッハなら文句もあるまいと。

源実朝を「和歌のブラームス」と認定するはるか以前の記事なのに、私自身がブラームスを右大臣にしていた。源実朝の最終官職が右大臣であることと見事にシンクロする。ブラームスを実朝と同じ右大臣に据えておいた。バッハのおかげとはいえ、つくづく左大臣にしなくてよかった。

2020年2月26日 (水)

苦心の小細工

ご記憶の方がどれほどいるか。

2020年2月13日「令和百人一首22」の記事 だ。そこでは源実朝の歌を発信した。彼が鶴ケ丘八幡宮で暗殺されたのが健保七年1月27日で、これを今の暦になおすと1219年2月13日になる。実朝のお歌の公開は命日だったということだ。没後801年である。今回の「令和百人一首」の公開のスケジュール作成にあたり、もっとも配慮したのがこのことだ。この記事を2月13日に固定して、前後の記事を逆算して配置した。1月12日の発信開始はその結果だ。そうすることで、今上陛下のお誕生日がハーフタイム中にやってくる。

割と凝り性。

2020年2月22日 (土)

五重本歌取り

「令和百人一首」に自作をこっそりしのばせて撰者を気取った。源実朝と見開きペアにして、後鳥羽院と裏合わせという絶妙の位置に自分を置いた。定家が小倉百人一首に自作を選んでいるのを真似た。しかしあちらは勅撰入集歴代第2位にして勅撰撰者二度の大歌人だ。一方こちらは申すまでもないド素人。ただただ源実朝の隣に居たいという思いの現れだ。

来ぬ人も惜しかささぎのしだり尾の長き綱手を引けば実朝

これが私の歌。

  • 定家 来ぬ人を松帆の浦の夕凪に焼くや藻塩の身もこがれつつ
  • 後鳥羽院 人も惜し人も恨めしあぢき無く世を思ふゆえに物思ふ身は
  • 家持 かささぎの渡せる橋に置く霜の白きを見れば夜ぞ更けにける
  • 人麻呂 足引きの山鳥の尾のしだり尾の長々し夜を独りかも寝む
  • 実朝 世の中は常にもがもな渚漕ぐ海人の小舟の綱手かなしも

定家、後鳥羽院、家持、人麻呂、実朝の小倉百人一首のお歌からエッセンスを拝借し、最後に実朝の名で体言止めをかました。令和百人一首の選定を通じて感じた和歌という文化への敬意、大歌人たちへの畏敬をこめた五重本歌取りである。「定家、後鳥羽院、家持、人麻呂、素晴らしい和歌の伝統があるけれど、私は実朝を愛します」と言いたいだけの字数合わせにぞありける。

 

 

2020年2月16日 (日)

令和百人一首25

【049】藤原俊成

 夕去れば野辺の秋風身に沁みて鶉鳴くなり深草の里

【050】藤原定家

 見渡せば花も紅葉も無かりけり浦の苫屋の秋の夕暮れ

【コメント】この親子歌合せで「令和百人一首」の前半を締めくくる。定家を最後に小倉百人一首収載の歌人は出ない。ここまで小倉百人一首収載の歌人は26名。つまり74名の収載を見送ったことに他ならない。前半は小倉と重複する時代ながら同一歌を選ばぬ意図があった。この手の配列上の仕掛けを作るのが楽しくて仕方がなかった。

まずは父の俊成。90歳を超える長寿で、息子世代においても歌壇の重鎮として尊敬を集めた。その死は新古今和歌集完成の前年だ。和歌集大成としての新古今を支えた後鳥羽院歌壇の歌人たちの多くを千載和歌集で勅撰デビューさせた撰者としての見識の高さに加えて、歌人としても別格で勅撰入集は422首を数え、貫之、定家に次ぐ歴代3位だ。和歌界のベートーヴェンと呼びたい。

その子が定家。新古今和歌集の撰者。勅撰入集は歴代2位の467首。第7番目でしかない「千載和歌集」での勅撰デビューであることを考えると驚異的だ。その上小倉百人一首の撰者だ。さらに新古今和歌集を和歌史上最大の金字塔とする向きも少なくないとなると、彼の功績は特筆の上、朱筆大書、加えてアンダーラインも要る。よって和歌界のワーグナーと認定する。鎌倉の源実朝は作品を京都の定家に送って指導を乞うた。曲がりなりにも征夷大将軍だった実朝からの付託に応じ、出来たばかりの新古今和歌集に加え、万葉集、古今集、様々な歌書を贈呈している。さらにだ。さらに実朝亡きあと、二度目の勅撰撰者となった9番目の勅撰和歌集「新勅撰和歌集」に実朝作品を25首も入集させた。田舎侍扱いしていないことは確実だ。定家のそうした扱いは以後の規範となり、それに続く12の勅撰和歌集すべてに入集を果たすことになる。

2020年2月13日 (木)

令和百人一首22

【043】源実朝

 時により過ぐれば民の嘆きなり八大竜王雨止め給へ

【044】アルトのパパ

 来ぬ人も惜し鵲のしだり尾の長き綱手を引けば実朝

【コメント】小倉百人一首の撰者・藤原定家は自作を選んでいる。それにあやかって私も自作を無理やりねじ込んだ。撰者の特権乱用で愛する源実朝との歌合せを強引に実現した。その実朝の全作品からたった1首を選ぶという難行苦行の末、たどりついたのが本作。1211年7月の豪雨にあたっての詠歌だ。「八大竜王」は雨を司る神様。日照りなら雨乞いをする相手なのだが、それが嵩じては、かえって民が苦しむからそこそこで切り上げてくれと頼み込む。本質的には「撫民」の歌なのだが、神祇歌のような香気も漂う。人間の代表として竜王に直談判する征夷大将軍源実朝はこのとき19歳。

10歳で小倉百人一首を暗記して始まった私の和歌体験は、50年を経た今、源実朝にたどり着いた。中学生からクラシックを聴き始め19歳で生涯の作曲家をブラームスと定めたように今、源実朝を生涯の歌人に決めた。令和百人一首選定で感じた和歌の歴史への敬意と実朝への思いを歌に込めた。あろうことか定家、後鳥羽院、人麻呂、家持、実朝の小倉百人一首収載歌を対象とした五重本歌取りと言いたいところだが、「定家、後鳥羽院、家持、人麻呂たち長い和歌の歴史はあるけれども私は実朝を選ぶ」とただ言いたいだけの字数合わせ。

実朝の勅撰和歌集デビューは新古今には間に合っていない。かといって次の「勅撰和歌集」で25首入集したときにはすでにこの世を去っていた。勅撰入集は13集にまたがる92首を数えるが、本人はそれを知らない。だから私がはしゃぐ。勅撰入集は歌人の格を便利に推し量る目安だが、鵜呑みは厳禁だ。でないと在原業平、後鳥羽院、大伴家持、崇徳院より実朝が上位に来てしまう。さぞうれしかろう。

源実朝を…

実朝を…「和歌のブラームス」と位置付けてやまない。

なんだか

泣きたい。

2020年2月10日 (月)

贈られた

源実朝をお祀りした御首塚のとなりに、東田原ふるさと公園がある。売店で新鮮な野菜が売られている。何気なしに立ち寄ったところ、梅の鉢植えが目についた。太い幹につぼみがたわわだ。2500円。魅入られたように買い求めた。高いのか安いのかは関係ない。文字通り吸い寄せられた。実朝は何かと梅に関係がある。

君ならで誰にか見せむ我が宿の軒端に匂ふ梅の初花

まずは、こちら。実朝の側近だった塩屋朝業に贈った歌。庭の梅が初めて咲いた日に枝を添えて届けさせたという。「あなたにこそ見てもらいたい」と詠む。これは紀友則の「君ならで誰にか見せむ梅の花色をも香をも知る人ぞ知る」の本歌取りだ。価値のわかる人にこそ見せたいの気持ちを濃厚に含む。受け手がこの本歌取りを理解することが前提のプレゼントに決まっている。贈られた朝業は「うれしさも匂いも袖にあまりけり我がため折れる梅の初花」と返す。政治の実権はもっぱら北条氏に握られ云々と語られがちだが、かれこれ14年間も将軍の座にあったのだから、忠誠を尽くす家臣が居ても不思議はない。朝業は実朝の死をもって出家したという。

実朝の屋敷の軒近きその梅はよほど大切なのだろう。

出で去なば主無き宿となりぬとも軒端の梅よ春を忘るな

吾妻鏡に載せられた源実朝の辞世だ。菅原道真の名高いお歌「東風吹かば匂ひ起こせよ梅の花主無しとて春な忘れそ」の本歌取りかとも思える。ひとかどの武人ともなると、いつ落命してもいいように、常に辞世を持ち歩いていたかとも伝わる。だから、実朝の御首塚のほとりで、梅の鉢植えを見たとき心が揺れた。実朝からの強烈なメッセージと思えた。この鉢植えは私に買われるためにここにいたと思った。

実朝のお参りに来たという事情を話すとお店の人は、車で持ち帰れるようにと有り合わせのダンボールに新聞紙を丸めて並べ、鉢が動かぬように固定してくれた。地元の人はここに実朝の御首が埋葬されたことをまったく疑っておらず、私の訪問を心から喜んでくれている感じがした。私はといえば、この梅をトランクになど押し込めるはずもなく、段ボールごと後部座席のシートベルトで固定して持ち帰った。メーターのディスプレイには後部座席に人が乗っているマークが点灯した。そうだ。その通り。実朝に決まっている。

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源実朝から私への還暦のお祝いだと解さねばならぬ。

 

 

 

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