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カテゴリー「056 拾葉百首」の15件の記事

2020年7月17日 (金)

ひとまず決着

昨日、鴎外先生とブラームスさんを見送ったことで、1月10日から続いた和歌への脱線をひとまずお開きとする。

明日から徐々に本来のネタに回帰する。リハビリが要りそうだ。

2020年6月29日 (月)

拾葉百首総集編

脳内第三百人一首たる「拾葉百首」をまとめておく。

いやはや快適だ。

 

2020年6月28日 (日)

行書縦書き

やはりというか案の定というか。書籍版「令和百人一首」はお歌が横書きになっている。この度の「拾葉百首」を選んだついでに試しに縦書きを試みた。フォントも行書にしてみた。

20200519_114851

小倉百人一首の読み札仕様とでも申せばいいのだが、いやはや何とも雰囲気が出る。やはり和歌は行書縦書きがいい。パソコンでこのありさまだから本当の毛筆ならもっと盛り上がるだろう。実際のところ漢字がもう少々大きい方がいいけれど十分美しい。

2020年6月26日 (金)

手の力

拾葉百首の05足利尊氏のお歌。

 軒の梅は手枕近く匂ふなり窓の隙漏る夜半の嵐に

あるいは小倉さんちの周防内侍

 春の夜の夢ばかりなる手枕に甲斐なく立たむ名こそ惜しけれ

手枕だ。このうちの「手」に注目している。「手~」という言葉も実は「脳内補正語」なのだが「令和百人一首」本体には現れなかった。なんとしてもこれを話題にしたくて、補足版の「拾葉百首」を急ぎ公開したというのが本音だ。

名詞に限ってもたくさんある。

手合い、手垢、手当て、手合わせ、手入れ、手植え、手遅れ、手弱女、手鏡、手書き、手加減、手数、手形、手刀、手柄、手切れ、手首、手暗がり、手際、手ぐすね、手癖、手管、手心、手駒、手籠め、手先、手さばき、手触り、手塩、手下、手品、手順、手隙、手すさび、手すり、手狭、手助け、手立て、手練れ、手づかみ、手付き、手付け、手伝い、手綱、手詰まり、手取り、手直し、手並み、手習い、手縫い、手ぬかり、手ぬぐい、手の内、手延べ、手の者、手始め、手筈、手放し、手番、手引き、手拭き、手札、手ぶら、手弁当、手ほどき、手本、手間、手前、手招き、手土産、手向け、手持ち、手元、手盛り、手分けetc

名詞以外でも以下の通り。

手荒い、手控える、手厳しい、手強い、手慣れた、手緩い、手走る、手早く、手短

手が先頭に来ないケースもある。

大手、勝手、搦手、後手、衣手、上手、先手、苦手、下手、不手際、担い手、得手、元手、番手

「しゅ」と発音するケース

手腕、手芸、手動、手術、手段、手工業

何より大和言葉の雰囲気が充満する。どこか優雅な感じ。これが「脳内補正語」になるのはそのせいだ。もう「hand」の意味は相当薄れてはいまいか。「手が1音の単語だからだ」というのは通じない。元々ひらがな一文字の名詞には身体に関する語彙が多くて「手」以外にも「胃」「尾」「毛」「背」「血」「歯」「目」などがあり、実は「気」や「名」も怪しい。なのにこうした機能は「手」が群を抜く。直立歩行を獲得した人類が、歩行に使わなくなった前足を「手」として発展させたからとまで申すには気も引けるが、「手は口ほどにものを言い」と言いたいくらいだ。諸外国の言語ではどうなっているのだろう。もし人類の直立歩行に原因があるならどんな言語でも同様の傾向があるはずだ。英語に「hand」を含む単語や慣用句がどれほどあるか興味深いが、受験英語の範囲ではあまり記憶がない。

手が語尾に来るケースでは英語でいう「~er」(~する者)の意味があるかもしれない。将棋でいう「turn」(手番)の意味も含んでいるように見える。「自ら」「反自動」などさまざま分類を試みている。

もはや微妙な意味を付加する「微調整語」あるいは「五七五七七の韻律合わせ語」として発展したのではないかとさえ思えてくる。

 

 

 

2020年6月25日 (木)

拾葉百首覚書

「令和百人一首」の選に漏れた歌人を100名集めて、百人一首をもう1セット作った。今回は日本史和歌史への配慮は一切なし。概ね時代順だった「令和百人一首」とは異なる趣向を取り入れた。勅撰和歌集に習って「春夏秋冬」に「雑」という部立て、春と秋をそれぞれ上中下に分けたので全部で9部になる。このうち季節四部では最初から順に読むことで、一年間の季節の移ろいをトレース出来るように歌を配置した。「恋」は独立の部立てとせずに「雑」に含んだ。

予想外の大収穫があった。

なんたって面白いのだ。「令和百人一首」側に和歌界のスター重鎮をもれなく収載してしまっていたにも関わらず、こちらは本当に面白い。季節順の配置というパズル感も寄与している。和歌史日本史への配慮という制約を解いただけで、純粋に歌の好みで選べたことが最大の理由だろう。出典別ではもう圧倒的に新古今。玉葉と風雅がこれに続く。万葉集はただ1首にとどまるという極端な現象が起きた。

実朝はもちろん後鳥羽院も良経もいないけれど、歌集として本当に楽しい。

 

2020年6月24日 (水)

拾葉百首ー雑

<087 醍醐天皇>

 紫の色に心はあらねども深くぞ人を思ひ染めつつ

088 大中臣能宣>

 結ひ初むる初元結の濃紫衣の色に移れとぞ思ふ

089 小野小町

 色見えで移ろふものは世の中の人の心の花にぞありける

090 清少納言

 便りある風もや吹くと松島に寄せて久しき海人の端舟

091 小野篁>

 思ひきや鄙の別れに音衰えて海人の縄たき漁りせむとは

<092 建礼門院徳子

 思ひきや深山の奥に住いして雲居の月をよそに見むとは

<093 平時子

 今ぞ知る御裳裾河の流れには波の下にも都ありとは

<094 平宗盛>

 都をば今日を限りの関水にまた逢坂の影や映さむ

<095 源義経>

 思ふより友を失う源の家には主あるべくもなく

<096 平維盛>

 生まれてはつひに死ぬてふことのみじ定めなき世に定めありける

097 藤原顕輔>

 家の風吹き伝へずば木の許にあたら紅葉の朽ちや果てまし

<098 平経盛>

 家の風吹くとも見えぬ木の許に書き置く言の葉を散らすかな

<099 大友宗麟>

 思ひきや筑紫の海の果てまでも和歌の浦波かかるべしとは

<100 後村上天皇>

 あはれはや波収まりて和歌の浦に磨ける玉を拾ふ世もがな

「雑」の部14首。恋から哀傷そして和歌に至る。エンデョングに御製を据えるのはもはやお約束だ。

 

 

 

2020年6月23日 (火)

拾葉百首ー冬

<075 永福門院少将

 時雨つる夜は雪げになり果てて激しくかはる四方の木枯らし

<076 二条教良女

 夕暮のあはれは秋に尽きにしをまた時雨して木の葉散る頃

077 二条院讃岐

 難波潟汀の葦は枯れ果てて灘の捨て舟あらはれにけり

078 源重之>

 葦の葉に隠れて住みし津の国の小屋も露はに冬は来にけり

<079 光明院>

 霜氷る竹の葉分けに月冴へて庭静かなる冬の小夜中

<080 朔平門院

 草は皆霜に朽ちにし冬枯れに一人秋なる庭の白菊

081 西園寺公経>

 山の端の雪の光に暮れやらで冬の日長き岡の辺の里

<082 藤原貞綱>

 重ねても埋ずみな果てそ稀に訪ふ人の情けの跡の白雪

<083 隆源>

 降る雪に行方も見えず箸鷹の尾房の鈴の音ばかりして

<084 上杉謙信>

 野臥しする鎧の袖も盾の端も皆白妙の今朝の白雪

<085 明智光秀>

 我ならで誰かは植へむ一つ松心して吹け志賀の浦風

<086 北条早雲>

 枯るる木にまた花の木を植え添へて元の都になしてこそみめ

「冬」の部12首。謙信や光秀も粛々と収まる。早雲の歌は春につながる気配があるから「冬」の部巻軸に据えた。

 

 

2020年6月22日 (月)

拾葉百首ー秋下

<059 堀河院>

 敷島や高円山の雲間より光さし添ふ弓張の月

<060 宇都宮景綱>

 君守る鶴の岡辺の神垣に万代かけよ月の白木綿

<061 法然>

 月影の至らぬ里は無けれども眺むる人の心にぞ住む

062 藤原公任>

 澄むとても幾夜も澄まじ世の中に曇りがちなる秋の夜の月

<063 菅原道真母

 久方の月の桂も折るばかり家の風をも吹かせてしがな

<064 美福門院加賀

 三笠山道踏み初めし月影に今ぞ心の闇は晴れぬる

<065 鴨長明>

 宵の間の月の桂の薄紅葉照るとしも無き初秋の空

066 壬生忠岑>

 久方の月の桂も秋はなほ紅葉すればや照り勝るらむ

067 光孝天皇>

 月の内の桂の枝を思ふとや涙の時雨降る心地する

<068 伏見院宰相

 秋深き寝覚めの時雨ききわびて起き出でてみれば村雲の月

<069 八条院高倉

 神南備の三室の梢いかならむなべて野山も時雨する頃

<070 源頼実>

 木の葉散る宿は聞き分くことぞ無き時雨する夜も時雨せぬ夜も

<071 二条為子

 物思ふ雲のはたてに鳴き初めて折しも辛き秋の雁がね

072 藤原義孝>

 秋はなほ夕間暮れこそただならぬ荻の上風萩の下露

<073 西園寺実氏>

 眺むればすずろに落つる涙かないかなる時ぞ秋の夕暮

074 道因>

 晴れ曇り時雨は定め無きものを降り果てぬるは我が身なりけり

「秋ー下」16首。主役は月から萩をかすめて時雨に至る。063と064は母親どうし。美福門院加賀は定家さまのご母堂である。どちらも息子を思う親心が月に託されている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2020年6月21日 (日)

拾葉百首ー秋中

049 藤原清輔>

 薄雲の籬の花の朝じめり夕べは秋と誰か言ひけむ

050 凡河内躬恒>

 風吹けば落つるもみぢ葉水清み散らぬ影さへ底に見えつつ

<051 土御門院>

 春の花秋の紅葉の情けだに憂き世に留まる色ぞ稀なる

052 曽根好忠>

 春雨の綾織りかけし水の面に秋は紅葉の錦をぞ敷く

053 能因>

 瑞垣に梔子染の衣着て紅葉に紛ふ人や祝り子

054 源経信>

 山守よ斧の音高響くなり峰のもみぢ葉よきて切らせよ

<055 石田三成>

 散り残る紅葉はことにいとほしき秋の名残はこればかりとぞ

<056 藤原顕宗>

 いかなれば同じ時雨に紅葉するははその森の薄く濃からむ

<057 花園院>

 霧晴るる田の面の末に山見えて稲葉に続く峰のもみぢ葉

<058 阿仏尼

 いろいろに穂向けの風を吹きかへて遥かに続く秋の小山田

「秋ー中」の部10首。主役は紅葉である。石田三成もすっかり溶け込んでいる。049は秋の歌ではないかもしれないが苦し紛れでここに。

 

 

 

2020年6月20日 (土)

拾葉百首ー秋上

<039 北畠親子

 秋にこそまだなりぬれと思ふより心に早く添ふあはれかな

<040 藤原俊成女

 色かはる露をば袖に置き迷ふうら枯れてゆく野辺の秋風

<041 高倉院>

 白露の玉もて結へるませの内に光さへ添ふとこなつの花

<042 藤原彰子

 見るままに露ぞこぼるる後れにし心も知らぬ撫子の花

<043 後土御門天皇>

 鳴る神の音は高雄の山ながら愛宕の峰にかかる夕立

044 俊恵>

 夕立のまだ晴れやらぬ雲間より同じ空とも見えぬ月かな

045 良選>

 逢坂の杉の群立ち引くほどにをぶちに見ゆる望月の駒

046 平兼盛>

 望月の駒引き渡す音すなり瀬田の長道橋もとどろに

047 遍照>

 名に愛でて折るるばかりぞ女郎花我落ちにきと人に語るな

<048 北畠親房>

 露に濡れ霧にしをれし足引きの山分け衣干すひまも無し

「秋ー上」10首。露、なでしこ、夕立、女郎花まだまだ序盤だ。041高倉院は、後鳥羽院の父である。御製にある「とこなつの花」は「なでしこ」のことだ。045と046は「お馬渡し」の歌。東国産の馬を朝廷に献上する際の引き渡しの儀式である。「望月の駒」は信濃特産の馬を指す。

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