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カテゴリー「612 シュミーダー」の10件の記事

2024年6月 6日 (木)

氷山の一角

私のバッハ体験を思い出してみる。大学1年でブランデンブルク協奏曲の5番がほぼ初体験。それ以前は、中学の音楽の時間の「小フーガト短調」があるくらい。あるいは「G線上のアリア」や「グノーのアヴェマリア」をBGM的に体験したかもしれない。

学生オケ時代、バッハが定期演奏会で取り上げられることはなかったが、団内の様々なイベントでバッハに接した。ブランデンブルク協奏曲全般に横展開することに始まり、ヴァイオリン協奏曲から2つのヴァイオリン、オーボエとヴァイオリンの両協奏曲に波及するのはさしたる時間もかからなかった。やがてヴァイオリンとチェロの無伴奏作品に興味が移るとほぼ同時に、一連のクラヴィーア作品や、「トッカータとフーガニ短調」でオルガンも聴いた。

声楽への興味はベートーヴェンの第九止まり。カンタータはもちろんマタイもヨハネも遠い遠いよその話だった。

今になってこれらを俯瞰すると、膨大なバッハ作品から見れば量的には氷山の一角だ。それだけでバッハを好きと思えた。「木を見て森を見ず」あるいは「水を見て小川を見てない」か。小川はやがて大河となって大海に注いでいた。

「バッハ作品目録2022」の助けもあって、今やっとそのことに気づき始めた。45年かかった。

 

2024年6月 4日 (火)

淡々公平

「バッハ作品目録2022」の淡々とした記述。BWV番号順に全作品に触れる。カンタータに始まって、モテット、受難曲、ミサ、オルガン、クラヴィーアと続く。淡々と事実の列挙が繰り返される。

現代のバッハ作品受容の濃淡には影響されていない。どんなに有名な作品であっても、あるいは無名の作品でも記述に差はない。ほれぼれとするばかりの一貫性だ。私個人の作品の好みがいかに偏っていて、所有するCDの枚数に差があろうと、同書の扱いは公平。

身が引き締まる思いだ。

マッコークルのブラームス作品目録も、この性格は同じだ。つまり、作曲家研究の起点として作品目録が備えるべき機能とはこうあるべきなのだ。

作曲家研究史の起点になったのが、バッハだということ。その旗振り役を担ったがフィリップ・シュピッタという研究家。

なんとブラームスの友人だ。

2024年4月29日 (月)

網羅性という媚薬

先に買い求めた「バッハ作品目録2022」の話。

膨大なページ数に圧倒はされるのだが、安らぐ。これにバッハの全作品が言及されているという安心感がある。全部が網羅されているというのが心地よい。こちらがドイツ語に不慣れでたどり着かないという可能性はあるが、どこかには必ず載っているという信頼感に浸れる。

19世紀にメンデルスゾーンらによって始められたバッハ復興運動の果実が、たわわである。

今その恩恵をたっぷり浴びている。

2024年4月19日 (金)

辞書は断念

「バッハ作品目録」の話。全作品が列挙されているとはすで何度も述べた。そこにはたった1小節の冒頭譜例も律儀に収載されている。しかしながら、その譜例には、音楽用語が抜けている。「Allegro」や「Agdagio」などの用語や強弱記号が脱落しているということだ。

残念だ。それらもろとも収載されていれば、バッハの音楽用語の貴重なデータベースになっていたはずだ。冒頭部分だけにとどまるにしても、用語が全部わかれば「バッハの辞書」に発展させることもできたはずだ。

2024年4月18日 (木)

人名索引より

先般買い求めた「バッハ作品目録2022年版」の話だ。巻末にほど近い814ページに「Personenregister」とある。「人名索引」だ。

バッハ作品目録中に出現するさまざまな人物の名がアルファベット順に集約列挙されている。人名に次いでBWV番号が付記され、その人物が言及される作品がたちどころにわかる仕組みだ。

なんと。

なんとそこにはブラームスもある。下記8カ所でブラームスが関与しているとわかる。

  1. BWV150 カンタータ150番
  2. BWV244-2 マタイ受難曲新版オルガンパートへの関与
  3. BWV596 ヴィヴァルディop3-11の編曲
  4. BWV944 クラヴィーアのための幻想曲とフーガ
  5. BWV951-1 アルビノーニの主題による幻想曲とフーガ
  6. BWV1001 無伴奏無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ フィナーレのピアノ編曲
  7. BWV1004 無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ シャコンヌのピアノ編曲
  8. BWV1079 音楽の捧げ物

そりゃあバッハの息子たちやメンデルスゾーンにはかなわないが、8カ所も出てきてうれしい。ちなみにベートーヴェン2カ所、モーツアルト5カ所、シューマン15カ所、クララ・シューマン2カ所となっている。

2024年4月11日 (木)

BWVの部立て

「バッハ作品目録2022年版」の話。BWV番号順に全作品がジャンル別に列挙される。折角なのでそのジャンルをドイツ語で抜き出してみる。ウムラウトは赤文字にしてある。末尾の数字はページを表す。

  • Kantaten und verwandte werke 25
  • Motetten 294
  • Messen,Magnificato 302
  • Passionen,Oratrien 321
  • Viestimme Chorale 365
  • Werke fur Orgel 410
  • Werke fur Clavier 488
  • Werke fur Laute und Lautenclavier 565
  • Kammermusik 569
  • Orchesterwerke 588
  • Kanons,Musikalisches Opfer,Die Kunst der fuge 609
  • Theoretische Aufzeichnungen 623
  • Ubersicht:vergebene Nummer in BWV2,2a,3 625

以上。慣れればこれで十分だ。およそ600ページのうち、なんと269ページがカンタータに費やされている。だからこれらが先頭に来るのだ。私をバッハに導いた一連の無伴奏作品やブランデンブルク協奏曲は、室内楽と管弦楽作品に含まれるがたったの40ページでしかない。その少なさに唖然とする一方で、同時にその濃さを改めて実感した次第。

気づけて良かった。

 

2024年3月22日 (金)

1か月経過

「バッハ作品目録2022年版」通称「BWV3」を入手して1か月経過した。暇さえあれば眺めている。ぼんやりと眺めている。けして得意とは言えないドイツ語が脳内を自然に走る。たった1小節の譜例が本当にありがたい。

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付箋紙がヘンレですみません。

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ブラームス先生もあきれ顔だ。

実はひっそりとカテゴリー「612 シュミーダー」を追加しておいた。バッハ作品目録系のネタを取りそろえることが目的だ。

2024年3月 3日 (日)

たとえばBWV82

「バッハ作品目録2022年版」の勢いや恐るべし。目次や索引あるいは凡例で盛り上がって、肝心の中身はということで、ずっとはまり込んでいる「Ich habe Genug」BWV82のページを覗いてみる。

20240225_093758

こんな具合だ。BWV82が「1,2,3」という具合に細分化されている。何かと思えば独唱の声種別になっているのだ。もっとも一般的なのは無論バス用でそれがBWV82-1だ。ソプラノ用がそれに次ぐBWV82-2で、あろうことかホ短調に差し替えられている。最後のBWV82-3はメゾソプラノ用でこれはバスと同じハ短調という具合だ。

第1曲から第5曲まで冒頭の1小節だけが譜例として掲載されている。テキスト作者の名前も見えるし、その原本の出版情報も詳しい。初演は「おそらく1727年2月2日」と読める。もちろんマリア清めの祝日だ。

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というわけでページをめくるとBWV82-2の譜例まである。これはソプラノ用なのでホ短調で記譜される。BWV-3のメゾソプラノ用はバスと同じハ短調というわけで省略かと納得。テキストなどはBWV82-1参照となっているのに、初演だけはBWV82-1とは違う日付になっている。1731年と1736年の2月2日だ。なんとしてもマリア清めの祝日ということだ。

BWV82-2の直下の「Besetzung」は編成だ。「S」はソプラノで、直後の「*」は独唱を表す。「VlⅠ/Ⅱ」はヴァイオリン1と2。つまりファーストヴァイオリンとセカンドヴァイオリン。「va」(ヴィオラ)の後の「BC」は紀元前ではなくて「バッソコンテヌオ」の略で「通奏低音」だ、などとのんきに読んでいてはいけない。その前の「Fl trv」が「フルートトラヴェルソ」だが、これが驚き。バス用やメゾソプラノ用では、オーボエになってるからだ。そういえば我が家のCDでもソプラノ用はオーボエの音がしないのでおかしいと思っていたが、これにて解決。

独唱がテノールのビオンディ盤もトラヴェルソだったということは、ソプラノ用の楽譜で歌っているのかと妙に納得。

この手の楽しみが延々と続いているということだ。

2024年3月 2日 (土)

唖然陶然

あれからずっとはまっている。「バッハ作品目録2022年版」通称「BWV3 」のことだ。見れば見るほどほれぼれする。全編にほとばしるドイツ語をものともせず浸りきっている。辞書片手とはいえ本当楽しい。

凡例だけで数ページある。パート名、楽器名の略称だったり、原典所蔵の博物館の記号だったり、これでもかとばかりの念の入れよう。この手の深入りの仕方は、ドイツ的と感じる。理詰めに次ぐ理詰め。シンプルなロジックの堆積が、明晰さと同居する。

変に日本語になっていなくてよかったとさえ思える。苦労して意味が分かった時の爽快感がその一例だ。点在していた複数の疑問が、ロジック1つの解明で鮮やかに連結するという体験は他では得られまい。

こうした音楽学の台頭は19世紀。実はブラームスの生きた時代に重なる。そしてそのきっかけはメンデルスゾーンによって立ち上げられたバッハ復興だ。没後一旦は忘れられていたバッハを掘り起こす過程でおきた。そしてブラームスの親友フィリップ・シュピッタの著わした「バッハ伝」こそがその最初の果実だ。作曲家の生涯や作品への体系的なアプローチが確立した。

あっと驚いたあと、恍惚がやってくる。この繰り返しだ。

2024年2月28日 (水)

Verzeichnis

「Verzeichnis」は、ドイツ語で「目録」のことだ。またまた先ごろ買い求めたBWV3の話題だ。「Bach Werke Verzeichnis」で「バッハ作品目録」となる。楽譜そのものではないが、そそられるものがある。

およそ大作曲家とみなされている人物には、この手の目録が存在する。後世の音楽学者による詳細な研究成果が盛り込まれるのが普通だ。作曲、演奏、解釈、鑑賞とも違う音楽の一側面を形成し、総じて音楽学とくくられる。

我が家にはこのほど入手したバッハの他にブラームスがある。

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見ての通り、美しい。ブラームスは赤、バッハは青だ。どちらも布張りの重厚な装丁。ブラームスはヘンレ社、バッハはブライトコップフ社というドイツを代表する楽譜出版社が、手塩にかけた逸品。楽譜とはまた違う趣きがある。ほれぼれとはこのことだ。

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私ごときの素人の家に、これらがあるのも気後れするけれど、この先の嘱託生活からのリタイヤに備えるという側面も見え隠れする。

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