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カテゴリー「301 バッハ」の405件の記事

2020年9月25日 (金)

グールド

ブラームスのピアノ協奏曲第1番をめぐるバーンスタインとのやりとり。そのブラームスのピアノ小品の演奏、新旧のゴールドベルク変奏曲をはじめとするバッハ作品のキラメキ。

今までだってずっとグールドには一定の敬意を払ってきた。超生意気に言えばどちらかと言えば好きな部類の演奏家だ。

しかし心をもっとも揺さぶられたのは、チェロのレナードローズと録音したバッハのガンバソナタだ。2人の演奏家のアンサンブルでありながら、ピアノの両手とガンバによる事実上のトリオソナタという曲本来の来歴をカラリとあっけなく音にしてくれるとでも申せばいいのだろうか。ピアノの左右の声部がくっきりと聴こえる。加えて本人のハミングを交えた四重奏だというジョークも一笑に付せない説得力がある。

鍵盤楽器のためのバッハ作品では、チェンバロ演奏が好きなのだが、グールドだけは例外だ。ガンバソナタだけではない。ラレードとのヴァイオリンソナタも同じ意味で同列。

彼は1932年9月25日のお生まれ。今日は誕生日だ。

 

 

2020年9月24日 (木)

バッハ全集

ブラームスが晩年に至って人生を振り返る中つぶやいた言葉にバッハが出てくる。

「人生での二大事件は、ビスマルクによるドイツ帝国の創設と、バッハ協会によるバッハ全集の刊行だ」という言葉。
前者は普仏戦争勝利によりウィルヘルム1世がヴェルサイユ宮殿で戴冠したことに象徴される。ナポレオンによって蹂躙される屈辱を味わったドイツ人の悲願だ。列強に囲まれながらドイツは、あるいはドイツ語の話者は小領邦に分裂したままだった。欧州にとっても大事件であり、世界史の教科書にだって「鉄血宰相」の名と共に特筆される出来事だ。
あろうことか、バッハ全集の刊行がその大事件と、ブラームスの脳内で拮抗しているというのだから驚きだ。含蓄が深すぎて言葉が継げない。
ドイツ人の民族意識の高まりは、科学、産業、芸術などあらゆる分野に反映している。「列強には負けないぞ」「ドイツって凄いんだ」という具合に肩に力が入ってくるのだ。音楽面では、ベートーヴェンと並んで、バッハ本人の民族意識の有無とは関係なく、ドイツの象徴へと祭り上げられた。音楽家のブラームスにとって、バッハ全集はドイツ統一と表裏でさえあったはずだ。
そのバッハ全集とはもちろん、今では「旧バッハ全集」とされている。

 

 

2020年9月23日 (水)

シェリング

大好きなヴァイオリニスト。「Szeryng」は、グリュミューほどではないが癖のあるスペリングだ。私の史上初がいくつも彼のLPになっている。

  1. 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータのLP最初に買ったのがシェリング。
  2. ベートーヴェンのコンチェルトのLPもシェリング。
  3. ブラームスのコンチェルトも最初はシェリング。
  4. ブラームスのソナタも最初はルービンシュタインとのカップリングだった。
  5. ヘンデルのヴァイオリンソナタもシェリングだった。こちらはCDになっていた。
無伴奏作品は今も世の中の定番扱いだし、ヴァルヒャと組んだバッハのヴァイオリンソナタの演奏は私の中ではグリュミョー盤と双璧をなす。世の中の愛好家からは語りつくされているから、わざわざ私ごときが言うのも気がひけるが、どうしても言及しておきたい。端正とか清潔とか、月並みな単語しか用意がない。
昨日がお誕生日だった。

2020年9月21日 (月)

ドイツ語の音名

音名のネーミングのお話。欧米諸国はアルファベットが基本。日本語では「イ」からイロハ順に「ト」までの7文字だ。アルファベットだと「A」から「G」までの7文字だと思いきや、ドイツ語だけは「H」を用いる8種類になっている。

これには「悪魔の音程」ともいわれる増4度音程にまつわる複雑な経緯があると聞く。増4度はピアノの白鍵で申すなら「FとH」が作る音程だ。黒鍵を用いない限り増4度はこれだけだ。欧州では古来不吉と言われ何かと忌避されてきたのだが、何故ドイツでだけ「H」を用いたのか謎も多い。詳細は専門家に譲るとして、私は日ごろドイツ語の音名を愛用している。

何が嬉しいと言ってドイツ語の音名を愛用すると「H」が使える。

ああ。

BACHのスペリングが全て音名に存在するのはドイツ語のみだ。他の言語では「H」を用いないために「BACH」が完成しない。

偶然にしては出来過ぎだ。

 

 

 

2020年9月19日 (土)

短調の言い回し

バッハの「平均律クラヴィーア曲集」に関する話題だ。ご存知の通り、クラヴィーアの鍵盤上の12種の音全てについて、それらを主音に長調短調を網羅した24曲の前奏曲とフーガからなっている。バッハが残した自筆の楽譜帳の1ページ目には、もちろん自筆の標題が鎮座している。その標題において長調・短調という部分が独特の言い回しをされている。長調という部分は「長3度つまりドレミ」と表現されているし、短調に相当する部分は「短3度つまりレミファ」と表現されているのだ。

黒鍵を全く使わないとすれば、連続する3音の両端が長3度になるのは「ドレミ」か「ソラシ」か「ファソラ」に限られる。我々は調性の話をする際には、判り易さに配慮してハ長調を例にとる場合が多いから、これを「ドレミ」に代表させるのは理解できる。

問題は短調だ。黒鍵を使わない前提で、連続する3つの音の両端が短3度になるのは以下の通り4種類ある。

  1. レミファ
  2. ラシド
  3. ミファソ
  4. シドレ

このうち「ミファソ」と「シドレ」は2音目がいきなり半音の「フリギア状態」なので脱落だが、「ラシド」と「レミファ」は甲乙つけがたい。長調で「ソラシ」を選ばずに「ドレミ」にした趣旨からすれば、「ラシド」でもおかしくないのに、短調代表に「レミファ」を選んでいるのが不思議に感じる。

ここまで考えてはたと思いついた。バッハにとっては「ラシド」も「レミファ」も調号なしの調なのではないかということだ。私はかつてこのことに記事「ドリアンリート」や「ドリアンブーレ」で言及してきた。フラット系の短調の曲に最後のフラットを省いた調号を用いるケースが頻発する傾向のことだ。調号なしからは旋律的短音階にも和声的短音階にも臨時記号一個でたどり着くのだ。長調を「ドレミ」、短調を「レミファ」とする言い回しと同根と感じる。

現在では一般に、調号なしの短調としてはイ短調を想起するのが自然だが、バッハの時代はニ短調もその候補だったのかもしれない。

2020年9月18日 (金)

基本はバッハ

1992年に音楽之友社から出された本。ハーバード・クプファーベルクというアメリカ人が著者で、その和訳だ。短いコラムの堆積でサクサク読める上に、最初から順番に読むとそれがバハの生い立ちのトレースにもなっている。切り口も語り口も斬新で、驚きのネタにあふれている。

著者の苗字の綴りは、Kupferbergだ。おそらくドイツ移民の子孫だ。ドイツ語だと解するなら「銅山」の意味である。古書店で購入したが1600円。もともと1400円なのに古書で値上がりしている。つまり引く手あまたということだ。読んでみてそれも納得だ。

 

 

2020年9月16日 (水)

疑問の根っこ

バッハの残した器楽作品が何かと6曲一組だと述べてきた。加えて記事「トッカータ」では、元来7曲のトッカータのうち、7番ト長調が様式的に浮いていることを根拠に、「やっぱり6か」と色気を見せておいた。

現代に伝えられているバッハの作品は、厳密な出版管理の結果ではない。ブラームス作品は、出版が作曲者本人に管理されていたから、残された作品の全貌がそのまま「残したいと欲したブラームスの意図」を反映しているのに対し、バッハはかなり多くの作品が散逸している。現代の愛好家が参照可能な作品リストは、「運よく散逸を免れた作品」のリストであるとも言い換え得る。

だから、器楽作品が何かと6曲一組が多いとドヤ顔で指摘したところで、「それは、必ずしもバッハの意図ではないでしょ」と、鋭い突っ込みを誘発する。ブランデンブルク協奏曲を6曲としたのはバッハ自身だし、ヴァイオリンやチェロのための無伴奏作品が6曲であることも、おそらくバッハ本人が絡んでいるにしてもだ。

問題を言い換えることにする。

「散逸を免れた結果残る作品が何故いつも6曲なのか?」ということだ。

 

 

2020年9月15日 (火)

トッカータ

即興的な小品を意味する「トッカータ」は、バッハの初期鍵盤作品として知られている。BWV番号で申せば910から916までの7曲である。何かにつけ例外のト長調BWV916を除いて、序奏→フーガ→間奏→フーガという枠組みになっている。音楽之友社刊行の作曲家別名曲解説ライブラリー「バッハ」には、これら7曲は収録されていない。嬰へ短調BWV910以外には、自筆譜が残っておらず、他者の写譜が頼りの危うさが名曲扱いされていない原因なのかもと勘繰るばかりだが、どうしてどうしてこれが相当楽しめる。

  1. BWV910 嬰へ短調
  2. BWV911 ハ短調
  3. BWV912 ニ長調
  4. BWV913 ニ短調
  5. BWV914 ホ短調
  6. BWV915 ト短調
  7. BWV916 ト長調
最後の7番ト長調だけが3楽章制を採る。写本によっては「コンチェルト」とタイトリングされているものもあり、様式的にも浮いた存在になっているらしい。
諸賢はお気づきだろう。この7番を何かの拍子に紛れ込んだ異端だとするなら、真のトッカータは6曲になる。偶然と笑い飛ばす度量は持ち合わせていない。バッハにとっての常用調、インヴェンションとシンフォニアを構成する15の調に含まれない嬰へ短調が一際目を引く。、

 

 

2020年9月14日 (月)

出版上の慣習

バッハが「6」を好んでいたかのような話題が続いた。

今度はヴィヴァルディに飛び火する。ヴィヴァルディ生前の出版は作品番号にして1から14である。

これら作品番号について調べると驚かされる。各々を構成する作品の数はどれも「6」か「12」だ。さらにこのうち作品13と14はヴィヴァルディ本人が関知していなかったということなので、本人関与は12までということになる。

出版に際して6か12にこだわるのは当時の慣習だということなのだろう。

 

 

2020年9月13日 (日)

6の内訳

昨日の記事「6がお好き」の続き。

  1. オルガンのためのトリオソナタ 525~530
  2. イギリス組曲 806~811
  3. フランス組曲 812~817
  4. パルティータ 825~830
  5. 無伴奏ヴァイオリンのためのソナタとパルティータ 1001~1006
  6. 無伴奏チェロ組曲 1007~1012
  7. ヴァイオリンとチェンバロのためのソナタ 1014~1019
  8. ブランデンブルク協奏曲 1046~1051

昨日列挙した収録曲6曲からなる曲集8つを子細に調べる。これら8つの曲集のうちブランデンブルク協奏曲のみがその成り立ちついて細かくわかっている。ブランデンブルク辺境伯への就職活動の一環で、既存の曲から急きょ選ばれたとされている。

だからかもしれないが、上記の中では例外的なことが多い。ブランデンブルク協奏曲以外の曲集は6曲の中に同じ調が現れない。これに対してブランデンブルク協奏曲は1,2番がともにヘ長調、3.4番がともにト長調になっている。

6曲の中の長調の短調の構成は「3:3」「2:4」「4:2」のいずれかであるのに対し、ブランデンブルク協奏曲は全部長調という極端な構成になっている。

ブランデンブルク辺境伯への献呈を思いついたときに、手持ちの作品を急ぎ選んで6曲取りまとめたことの証拠になるのかもしれない。

 

 

 

 

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