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カテゴリー「301 バッハ」の302件の記事

2019年5月21日 (火)

頭出しCD集

実を申せば先に紹介した「オルガンインデックス」作成の目的は、こちらだった。バッハのオルガン作品はコラールに起因する作品とそうでない作品に大きく分けられる。後者は「オルガン自由曲」と言われているが、慣れるまでは厄介だ。

コラール起因であれば、歌いだしの一行目がタイトル扱いされる。ドイツ語に慣れてくれば脳内頭出しは容易である。ブラームスの器楽作品であれば作品番号を言われれば冒頭旋律をすぐに脳内呼び出し出来る。全楽章で可能だ。あるいは逆、任意の旋律を聞かされれば作品名と楽章を即答できる。メジャーな声楽作品でも事情は同じであるのに対し、バッハのオルガン自由曲は難解だ。「前奏曲とフーガ」やら「トッカータとフーガ」など似たようなタイトルに調性とBWV番号の羅列となる。脳味噌の反応がブラームスに比べて数段鈍い。

対象はオルガン自由曲だ。BWVで申せば525番から598番まで74曲。525番から530番のトリオ6曲と592番から596番までのコンチェルト5曲は、もう脳内インプットが出来ているから除外する。561、567、571、576、580、581、597の7曲はバッハ本人作でないとか、断片とかでCD収録がないから省くとして総計56曲となる。

これら56曲を一つずつBWV番号順にUSBに取り込む。CDだと1枚に収まらないから媒体だとUSBがいい。自宅でもマイカー内でも簡単に目的の曲にたどり着ける。

2019年5月19日 (日)

オルガンインデックス

先のドイツ旅行やこの度のバロック特集の影響かオルガン作品への傾倒が止まらない。CDもダラダラと増え続けていて、お気に入りの曲の演奏がどのCDだったか簡単にたどり着けないという現象も起きてきた。そこで一計を案じた。バッハ作品が収められたCDを今一度吟味して「どのCDにどの曲」という情報を管理することとした。名付けて「オルガンインデックス」だ。

ご退位とご即位を心から祝いつつ10連休を有意義に過ごした。

やっていて楽しかったことが第一の収穫。効果のほどは劇的だったがそれらはおいおい紹介する。今後バッハのオルガン作品のCDが増えるたびに更新していく。

 

 

2019年5月18日 (土)

三面鏡

よいたとえを思いついた。テレマン、ブクステフーデ、パッヘルベルはバッハを映し出す三面鏡だ。ただただバッハが好きで、彼のことを知りたい一心で、バッハだけを見つめていると、かえって本質を見落とすと気づきかけている。一歩下がってドイツバロックの一角にバッハを置いてみる。あるいは恐れ多くもバッハをワンオブゼムであると考える。

昨年夏の旅行が契機になった。バッハの他に、テレマン、パッヘルベル、ブクステフーデの墓参を敢行したのはその狙いからだ。彼ら3人を通してバッハを見つめる。

そしてそして必然のオチがある。

三面鏡によって理解が深められるバッハ自身が、ブラームスを映す優秀な鏡だということだ。

 

 

 

 

2019年5月17日 (金)

エキストライニング

お気づきの人がいるかどうか。昨年8月のドイツ旅行の報告記事が今年1月末で終わった後、すぐにパッヘルベル関連記事を連ねた。その後すぐテレマンにまとまった言及をしたと思ったら、矢継ぎ早にブクステフーデを取り上げた。

先の旅行はこの3人にバッハを加えた4名の墓参がテーマだったことを考え合わせると、実は2月以降も事実上の旅行レポートだった。少なくとも心理的にはつながっている。脳みそが熱いうちにとばかりに、バッハ関連記事の濃度が下がるのもいとわなかった。バッハをドイツバロックの大きな背景の中でとらえたいからだ。

パッヘルベルはアイゼナハ在勤中にバッハ家と交わり、バッハの長兄ヨハン・クリストフにオルガンを教えたという。両親なきあとバッハを教えた兄だから、バッハはパッヘルベルの孫弟子だ。テレマンは、バッハから次男のためにミドルネームをと所望された。ブクステフーデを聴きに遥か440kmの道を徒歩で駆け付けたことも知られている。

2019年5月15日 (水)

アーベントムジーク

1678年リューベックのオルガニスト在任中のブクステフーデは、前任者のトゥンダーが創始したアーベントシュピールを発展させる形でアーベントムジークを始めた。日曜日の夕方のお祈りから、市場が開店するまでの間、会衆の退屈を埋める手立てとも見える。

開会は年五回、三位一体節の次とその次の日曜日。待降節の次の日曜日から3回連続の日曜日だ。バッハがはるばる訪れた1705年は12月8日、15日、23日であった。この年は神聖ローマ帝国皇帝の交代の儀式が12月1日と2日に開催され、ここでもブクステフーデが演奏会を仕切ったはずだ。これも聴いたと考えられている。8日にアーベントムジークを聴いたバッハが、翌週とよく翌週も聴きたいと願うのはむしろ自然だ。さらに3度目のアーベントムジークが終われば、翌日はすぐクリスマスイヴとあって、1月6日の顕現祭まで滞在したいに決まっている。アルンシュタットへは2月21日には戻っていた記録があるから、帰国の途についたのは2月に入ってからという可能性さえある。

現地リューベックを訪れた経験から申して、無理もないと思う。

 

 

2019年5月13日 (月)

パッサカリア瓜二つ

昨日話題にしたブクステフーデのパッサカリアニ短調BuxWV161の冒頭部分は以下の通りだ。

20190330_162354

一方、バッハにも名高いパッサカリアがある。ハ短調BWV582である。

20190330_162100

ブクステフーデは4小節単位、バッハは8小節単位。調も違えば拍子も違い、共通するのはアウフタウト5跳躍くらいなのに、瓜二つと感じる脳内ブクステフーデ補正が重症だ。

2019年5月11日 (土)

パッサカリアニ短調BuxWV161

ブラームスとブクステフーデの関係を語る上で避けて通れないブクステフーデのオルガン作品。1875年に最初に出版された時の校訂者が、ブラームスの親友で、当代最高のバッハ研究家のシュピッタだった。この時期ブラームスの「ハイドンの主題による変奏曲」の作曲とタイミングがあっている。フィナーレにパッサカリアが来ることは周知のとおりだ。

ブクステフーデのパッサカリアニ短調は、自筆譜が失われている。毎度のことだ。バッハの長兄ヨハン・クリストフによる写本によって現代に伝えられている。

作品冒頭低音主題が28回繰り返される。7回ずつ一組の4部構成という端正な設計である。おそらくブクステフーデのオルガン作品としては最も有名な部類に属する。

ああ。何を隠そう、本作の出版をシュピッタに勧めたのはブラームスだった。

 

 

 

 

2019年5月 8日 (水)

往復書簡の証言

ブラームスとブクステフーデの関係を探していた。このほど意外な情報にありついた。

「バッハ伝」の著者フィリップ・シュピッタとは1868年以降1894年まで往復書簡が残っている。その数およそ50通だ。話題はバッハにとどまらず、ほぼ音楽全般におよぶ。この中1873年8月1日のシュピッタ差出しの書簡に、「ブクステフーデ等の楽譜を貸してもいい」という趣旨が書かれている。その三年後1876年10月2日にブクステフーデ第一巻が送られ、同年12月22日には第二巻も続く。ブクステフーデの楽譜をブラームス側が所望し。これにシュピッタが答えたことがうかがえる。貸してもよいいという意思表示から、実際に贈られるまでの書簡が4往復しているが、その間には言及がない。空白の3年を経て現物が贈られた。

想像をたくましくするなら、これは写譜だ。「貸す」ことを承諾したが、ブラームスは「くれ」と応じたのではあるまいか。空白の三年はブラームスに手渡すために新たに写しを作ったと考える。

やっとブラームスとブクステフーデがつながった。

2019年4月24日 (水)

ヨハン・クリストフ

ブクステフーデの作品が、現代まで伝えられていることは奇跡的である。本人の自筆譜は残っておらず、他者による筆写譜が頼りである。当代随一の巨匠と目されていただけのことはある。

その筆写者の一人にヨハン・クリストフ・バッハがいる。BuxWV137やBuxWV163など、現代ブクステフーデの傑作と評価されている2作品は、唯一ヨハン・クリストフの筆者譜がよりどころとなっている。ヨハンクリストフの筆写譜がなかったら埋もれていたということだ。ヨハン・クリストフは、両親の没後、幼い末弟ヨハン・ゼバスチャンを引き取って養育した。そこでバッハは兄の蔵書になっている楽譜を参照したり、隠れて写譜したとされている。

一族には同姓同名もいるので、用心も必要だがバッハ最初のブクステフーデ体験になっていたかもしれない。

 

 

 

 

2019年4月21日 (日)

誉め方の作法

使っている側に悪気が無いだけに厄介だ。作曲家Aを論ずる中に現れる「AはB以前で最も重要な作曲家である」という表現だ。Aは作曲家の名前が入るが、Bは作曲家だったり時代名だったりするのだが、とりわけ作曲家名だった場合、注意が要る。

大抵はAさんをプラスに評価する文脈の中に現れる。個人のブログの感想ではなく、きちんとした解説書の中にだって現れる。Aにブクステフーデ、Bにバッハを代入してみよう。「ブクステフーデはバッハ以前で最も重要な作曲家である」というよく見る文章になる。ここでブクステフーデはバッハに先行するオルガンの大家として演奏と作曲の両面で高い評価を与えられていると見ていい。ところがだ。

ところが、「これはバッハよりは劣るけれど」というニュアンスを濃厚に含む。Aにパッヘルベルを代入しても同じことだ。

信じ込んでいた。最近ブクステフーデやパッヘルベルのオルガン作品に親しんでみると、違和感を感じる。「高い高いバッハの評価ありき」の言い回しではないのかと痛感する。それが学会の通説だと言われれば仕方ないが、普通に「パッヘルベルやブクステフーデはバッハの一世代前の素晴らしい作曲家だ」あるいは「バッハと遜色がない」と言えばいい。使う側は無意識かもしれぬが、ブクステフーデやパッヘルベルへの上から目線さえ感じる。そうまでして持ち上げなくてもバッハは十分素晴らしい。

テレマンの評論に現れる「当時はバッハより有名だった」や、CPEバッハについて言われる「当時はバッハと言えばカールフィリップエマニュエルだった」も同じ香りがする。

ぜーんぶ誉め言葉のつもりだけに厄介だ。最近なんだか違う気がしてきた。ブラームスに訊いてみたい。

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