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カテゴリー「301 バッハ」の371件の記事

2019年12月22日 (日)

旧バッハ全集

1850年、バッハ没後100年を機に開設されたバッハ協会の目的は、バッハ全集の刊行にあった。ドイツ中の英知を結集しての大作業だった。全46巻が、ほぼ年に1冊のペースで刊行されていった。1926年に新バッハ協会が設立され、また全集の刊行が始まった。こちらとの区別のために「旧」の文字が奉られた。以下に旧バッハ全集46巻の刊行を年次を追って羅列する。

  • 1851年 1巻 教会カンタータ①
  • 1852年 2巻 教会カンタータ②
  • 1853年 3巻 クラヴィーア作品(インヴェンション、シンフォニアetc)
  • 1854年 4巻 マタイ受難曲
  • 1855年 5巻① 教会カンタータ③
  • 1856年 5巻② クリスマスオラトリオ
  • 1856年 6巻 ロ短調ミサ
  • 1857年 7巻 教会カンタータ④
  • 1858年 8巻 ミサ曲
  • 1860年 9巻 室内楽①
  • 1860年 10巻 教会カンタータ⑤
  • 1862年 11巻① マニフィカトとサンクトゥス
  • 1862年 11巻② 世俗カンタータ①
  • 1863年 12巻① ヨハネ受難曲
  • 1863年 12巻② 教会カンタータ⑥
  • 1864年 13巻① 結婚式用カンタータ
  • 1865年 13巻② クラヴィーア作品②(英仏組曲)
  • 1865年 13巻③ 哀悼頌歌
  • 1866年 14巻 クラヴィーア作品(平均律クラヴィーア曲集)
  • 1867年 15巻 オルガン作品①
  • 1868年 16巻 教会カンタータ⑦
  • 1869年 17巻 室内楽②
  • 1870年 18巻 教会カンタータ⑧
  • 1871年 19巻 室内楽③
  • 1872年 20巻① 教会カンタータ⑨
  • 1873年 20巻② 世俗カンタータ②
  • 1874年 21巻① 室内楽④
  • 1874年 21巻② 室内楽⑤
  • 1874年 21巻③ 復活祭オラトリオ
  • 1875年 22巻 教会カンタータ⑩
  • 1876年 23巻 教会カンタータ⑪
  • 1876年 24巻 教会カンタータ⑫
  • 1878年 25巻① フーガの技法
  • 1878年 25巻② オルガン作品②
  • 1878年 26巻 教会カンタータ⑬
  • 1879年 27巻① 室内楽⑥
  • 1879年 27巻② 教会カンタータ主題目録
  • 1881年 28巻 教会カンタータ⑭
  • 1881年 29巻 世俗カンタータ③
  • 1884年 30巻 教会カンタータ⑮
  • 1885年 31巻① 管弦楽作品
  • 1885年 31巻② 音楽の捧げもの
  • 1885年 31巻③ 室内楽⑦
  • 1886年 32巻 教会カンタータ⑯
  • 1887年 33巻 教会カンタータ⑰
  • 1887年 34巻 世俗カンタータ④
  • 1888年 35巻 教会カンタータ⑱
  • 1890年 36巻 クラヴィーア作品④
  • 1891年 37巻 教会カンタータ⑲
  • 1891年 38巻 オルガン作品③
  • 1892年 39巻 モテット・コラール
  • 1893年 40巻 オルガン作品④
  • 1894年 41巻 教会作品(補巻)
  • 1894年 42巻 クラヴィーア作品⑤
  • 1894年 43巻① 室内楽⑧
  • 1894年 43巻② アンナマグダレーナの音楽帖
  • 1895年 44巻 手稿譜ファクシミリ
  • 1897年 45巻① 器楽作品(補巻)
  • 1898年 45巻② ルカ受難曲
  • 1899年 46巻 報告と目録

以上だ。

めまいがする。1866年の普墺戦争、1871年の普仏戦争の間も途切れていない。民族の執念さえ感じさせる。校訂者には当時の錚々たる研究家の名前が連なる。

第1巻刊行時、ブラームスは18歳。1897年刊行の45巻①が、ブラームスの生前だったのかどうかでブレも生じるが、全46巻の刊行のうち没後の刊行はわずか2巻。うち1巻は目録と報告で、もう1巻は「ルカ受難曲」だ。ブラームス自身は「ルカ受難曲」を偽作だと喝破していたことを考えると、生前にコンプリートしたと考えていい。ブラームスの後半生は、旧バッハ全集の刊行ともろに重なっている。

ブラームスはもちろん全巻所有していたが、記念すべき第1巻は1855年12月25日にクララから贈られたものだ。「愛する友、ヨハネス・ブラームスへ、始まりとして」という言葉が添えられていた。

1855年のクリスマス時には1巻から5巻までが刊行を終えていたはずだが、「そのうち1巻を贈りますね」という意味が「始まりとして」というメッセージに込められていたと見たい。つまりブラームスが刊行済の諸巻を未所有だったことを知ってのプレゼントだ。「続きは自分で集めてね」という意味だと解したい。この記事がクララネタであることを心の底から喜びたい。

2019年12月21日 (土)

危険な贈り物

ロベルト・シューマンが没した翌年のことだから1857年である。5月末に一週間デトモルトに滞在し何回か宮廷元帥邸でピアノ演奏を披露した。つまり就職試験である。結果は上々で、英国に演奏旅行することになったクララの代役として、ブラームスがデトモルト宮廷の女性2人にピアノを教授することになった。ブラームス生まれて初めての就職であった。年間に3ヶ月という宮廷勤務が1859年まで続くことになる。

ブラームスがピアノを教えた2人のうちの1人がデトモルト宮廷公女のフリーデリケだった。彼女は就職試験演奏でブラームスがバッハを弾いたことを覚えていたのだろう。翌1858年のクリスマスプレゼントとしてバッハ全集6巻をブラームスに贈った。1855年のクリスマスには、クララから第一巻を贈られている。ブラームスの日ごろの言動に「バッハ好き」がにじみ出ていたのだろう。でなければ親しい女性2人が相次いでブラームスへの贈り物としてバッハ全集を選ぶはずが無い。

ブラームスはその年の暮、クララに宛てた手紙の中で、バッハ全集6巻をもらったが、既に持っている分との重複が起きたと伝えている。

カルベックたち後世のブラームスの研究家によってこの6巻の贈り物が「Danaer Geschenke」と呼ばれているのだ。その「ダナエア ゲシェンケ」の訳語こそが本日のお題「危険な贈り物」なのである。手元の辞書では、「危険な贈り物」の代表例ととして「トロイの木馬」を挙げている。あれこれと書物を調べたが、フリーデリケから贈られた6巻が何故「危険な贈り物」と呼ばれているのか明確な記述にはたどり着けなかった。

想像で補うことにする。

この贈り物がブラームスの内なる「バッハラブ」に火をつけたということではあるまいか。この贈り物をキッカケに生涯にわたって続くブラームスのバッハ研究が緒に着いたということだろう。その逆説的な表現が「危険な贈り物」なのだと思う。単にクリスマスプレゼントの異名だったら少しがっかりである。

実を言うと「ブラームスの辞書」は、本もブログも誰かの「ブラームスラブ」に火を点けたいと願うものである。どこかの誰かにとっての「危険な贈り物」になることを密かに期待している。

2019年12月20日 (金)

パストラーレ

「牧歌的な」「田園風の」という程の意味。ベートーヴェンの第6交響曲が有名だ。ところが、バッハの時代はこういう意味ではなかった。「パストラーレ」とはキリストの生誕を祝うという意味合いが強まる。

BWV590「オルガンのためのパストラーレ」へ長調がその代表だ。田園交響曲と調が一致してしまうのが微笑ましい。フィナーレの第4曲を聴くとおやっと思う。ブランデンブルグ協奏曲第3番の終曲と似ている。バッハお得意のパロディである。

何よりも大切なことがある。クララ・シューマンの4女オイゲニーによれば、1895年10月のブラームスとクララの最後の対面の時、クララがこのパストラーレヘ長調を弾いたという。

何という選曲だ。聴いてみたかった。

2019年11月29日 (金)

BWV540

1862年11月29日ウィーン。ブラームスが本格的にウィーンに進出して最初のリサイタルのあった日。初めてウィーンの聴衆に聴かせるためにブラームスはバッハを選択する。それがオルガンのためのトッカータとフーガヘ長調BWV540より前奏曲だ。もちろんブラームスはピアノを弾いた。自らがピアノ独奏用に編曲した。楽譜をお持ちの人は是ご覧いただきたい。この作品冒頭から55小節間、主音「F」が低いところで鳴り続ける。オルガンで言うところの「ペダル音」だ。その上に右手を左手が2小節遅れて追いかけるカノンになっている。オルガンならばペダル踏みっぱしで済むのだが、それをピアノに編曲するとどうなるのだろうと、大きなお世話をしたくなる。

困ったことに、この編曲、現存していない。

2019年11月21日 (木)

ラストステージ

1891年3月21日クララ・シューマンの最後のコンサートがあった。これ以降人前で弾いていないということだ。クララはこのとき71歳である。

演奏された曲の中に、ブラームスがあった。「ハイドンの主題による変奏曲」op56bだ。2台のピアノ用なのだから、誰か相棒がいたはずだ。フランクフルト音楽院におけるクララの同僚が弾いたらしいが、名前は突き止めきれていない。

バッハの誕生日に合わせたなどとということは妄想だろうか。

2019年10月23日 (水)

シューマン家の音楽会

ご機嫌なCD。シューマンの声楽アンサンブルのCDを探査していて発見。原題は「Hausmusik zu Gast bei Clara und Robert Schumann」という。シューマン家の音楽会程度の意味。ツヴィッカウのシューマンコンクールをキッカケに頭角を現した彼らにピッタリの意図。以前にも言及したCalmus ensembleのアルバム。思うだに意欲的。ドイツ伝統のホームコンサートの再現を意図したことは明らかで、さらにその舞台をシューマン家に設定している。シューマン夫妻の作品が主体なのだが、それ以外に2人の作曲家の作品が加えられている。一人はバッハ。「アンナマグダレーナの音楽帳」からクラヴィーア伴奏付きのコラールやアリアが6曲。この作品自体妻アンナを含めた家族での演奏を意図したものだから、アルバムの主旨にピタリと収まる。

5番目に収められた「野ばら」は特筆ものだ。今のところ最高の演奏だ。それからラストに定番の「流浪の民」。声楽アンサンブル版で、輪郭くっきり。「魔王」が聞きたくなる。

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そしてそしてもう一人がブラームスだ。ブラームスは1853年デュッセルドルフでの初訪問以降、夫妻はもとより子供たちからも暖かく受け入れられてきた。シューマン家でのコンサートでブラームス作品が演奏されたとしてなんら違和感はない。収録作品は以下の通り。

  1. O susser Mai op93
  2. Fahr wohl op93
  3. Waldesnacht op62

見ての通り全てロベルト没後の作品。つまりこのホームコンサートにはロベルト本人は立ち会えないなどという屁理屈は邪魔なだけだ。何より上記2の「Fahrwohl」は、1897年4月6日ブラームス本人の葬儀の際に楽友協会で演奏されたいわくつきの作品。本CDのプロデューサーがどこまで知っているのか不明ながら看過できない。

シューマン本人の作品は合唱または重唱の作品ばかり。「流浪の民」や「野ばら」などを中心に、品のいい作品が手際よくまとめられている。クララの作品はアルバム中唯一のピアノ独奏作品だが、収録に用いられたピアノが1848年プレイエル社製造の貴重品。鳴り方が現代のコンサートピアノとは明らかに違う。カドの取れた響き。考えたら当たり前でホームコンサートなのだから、シューマン家といえどもスタインウェイのグランドピアノでは具合が悪かろう。

そしてもちろんクララの作品もある。「3つのロマンス」op21から1番イ短調だ。

2019年9月21日 (土)

橋渡し役

バッハ特集の結尾は、一連の「シャコンヌ話」だった。ブラームスがバッハのシャコンヌをピアノ左手用に編曲したことがキーになっている。これがクララ・シューマンへの贈り物だったことを深く掘り下げることもってエンディングとした。バロック特集の「コーダ」である。

 

バロック特集の次に開始する企画「クララ特集」との間を取り持つピポットフットにもなっている。直前の特集におけるコーダが、直後の特集に深い関係がある状態を意図的に作り出した。

 

バロック特集を終えたリバウンド対策でもある。

 

 

2019年9月 7日 (土)

下方修正

バッハ生誕333年をお祝いして、バロック特集の会期末までに、333本のバッハ関連記事を公開すると宣言したが、このほどこれを下方修正する。この数値に届いていない。バロック特集を始めるとき、カテゴリー「バッハ」に属する記事は131本あったから、会期内にこれを464本にするはずだったが、今まだ362本にとどまっている。100本のショートだ。備蓄記事まで入れれば足りているという言い訳も空しい。

原因ははっきりしている。

昨年夏のドイツ旅行報告記事を大量発信したため、バッハ関連記事の濃度が下がった。記事の備蓄は十分にあるのだが、公開のための日数が足りなくなったということ。

2019年8月31日 (土)

バロック特集総集編⑩

バロック特集最後の総集編となる。

  1. 07月01日 BuxWV175
  2. 07月02日 テレマンにもある
  3. 07月03日 シャコンヌをブラダスへ  
  4. 07月04日 さっそく発見
  5. 07月05日 横着
  6. 07月06日 アンドレアス・シュタイヤー
  7. 07月07日 ブラームスバロック
  8. 07月08日 左手のためのセレナーデ
  9. 07月09日 シャコンヌの前
  10. 07月10日 シャコンヌの尻尾
  11. 07月11日 シャコンヌのオルガン編曲
  12. 07月12日 シャコンヌの花束
  13. 07月13日 どうした風の吹き回し
  14. 07月14日 お盆のファンタジー35
  15. 07月15日 お盆のファンタジー36
  16. 07月16日 お盆のファンタジー37
  17. 07月19日 シャコンヌの花束2
  18. 07月20日 BB Mus.ms.Bach P967
  19. 07月21日 妻の筆跡
  20. 07月22日 何たる情報網
  21. 07月23日 即興伴奏
  22. 07月24日 シャコンヌとヨアヒム
  23. 07月25日 立場の違い
  24. 07月26日 ある日の残高
  25. 07月28日 アルプ・シュニットガー
  26. 07月29日 思った通り
  27. 07月30日 もう一人の候補者
  28. 07月31日 編曲の範囲
  29. 08月01日 編曲物ランキング
  30. 08月02日 オノフリ
  31. 08月03日 フルッチョ・ブゾーニ
  32. 08月04日 ほとんどトロンボーン
  33. 08月05日 出来る限りのクレッシェンド
  34. 08月06日 驚きのコンサート
  35. 08月07日 ブゾーニの辞書
  36. 08月08日 大きなお世話
  37. 08月10日 5つの練習曲
  38. 08月11日 アルヴァニス
  39. 08月12日 ニ短調ソナタBWV964
  40. 08月13日 いやはや貴重
  41. 08月14日 チェンバロでシャコンヌ
  42. 08月15日 当然の疑問
  43. 08月16日 ヤープ・シュレーダー
  44. 08月17日 読み手側の知識
  45. 08月18日 クララへの献辞
  46. 08月19日 クララへの献辞2
  47. 08月21日 キールより愛をこめて
  48. 08月22日 通説を疑う
  49. 08月23日 祖父ニコラウス
  50. 08月24日 脱臼の痕跡
  51. 08月25日 ブラームスのシャコンヌ観
  52. 08月26日 シャコンヌ情報の集積
  53. 08月27日 バロック特集の手応え
  54. 08月28日 ゲーテ生誕270周年
  55. 08月30日 風の変わり目
  56. 08月31日 本日のこの記事。

2019年8月28日 (水)

ゲーテ生誕270周年

8月28日はゲーテの誕生日だ。1749年のお生まれだから今年は生誕270年のメモリアルイヤーとなる。ブログ「ブラームスの辞書」の準主役バッハが亡くなる1年前の生まれということだ。

一方没年は1832年。本ブログの主役ブラームスの生まれる1年前である。83歳という長生きで、その長い生涯は音楽史で申すところの古典派の時代を飲み込んでいる。

  1. モーツアルト 1756-1791
  2. ベートーヴェン 1770-1827
  3. シューベルト 1797-1828

まばゆいばかりの光を放つこの3名より、先の生まれながら、彼らを見送ったということだ。

バッハとブラームスの間を、きっちりゲーテが埋めている。

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フォト

ブラームスの辞書写真集

  • Img_0012
    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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