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カテゴリー「301 バッハ」の131件の記事

2017年6月19日 (月)

地名語尾bachの分布

惚れ惚れとはこのことだ。ドイツFALK社製20万分の1ドイツ道路地図の索引中にある地名語尾「bach」の所在を調べた。684箇所5,53%が地名語尾「bach」を伴っている。この数と比率は「dorf」に次ぐ二番手である。そして驚くべきはその分布だ。地名語尾「bach」は先に紹介した「ベンラート線」以南に集中する。例外は無い。ベンラート線以北では地名語尾「beck」に取って代わる。さらにシュレスヴィヒホルシュタイン州に限っては「bek」に差し代えられる。鮮やかなものだ。

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一人称主格を「ich」という地区と「ik」という地区の境界がベンラート線だったことと鮮やかに呼応する。同時に「bach」の「b」を他の子音に差し替えてもベンラート線以北には出現しない。

バッハの故郷Eisenachはベンラート線の南である。

2017年2月16日 (木)

プラハでバッハ

城壁沿いにカレル橋に向かって舞い降りる坂の途中だった。大みそかだというのに結構な人出。大統領府へのセキュリティーチェックのせいもあり、かなりな人ごみの中、不意に覚えのあるメロディーが流れてきた。「G線上のアリア」だ。

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12月28日に出発して以来、3日ぶりとなったバッハ。「G線上のアリア」は、伴奏のないアカペラなのだが、骨太で清らかなバッハだった。

2016年10月31日 (月)

怖い物を見たい

人間の嗜好とはとかく不可解な事が多い。寒い中わざわざスキーに出かけるし、危険を顧みずに冬山にも登る。「わかっちゃいるけどやめられない」人は多い。

そのうちの一つに「怖い目に遭いたい」がある。お化け屋敷に入ったり、ホラー映画をみたり、ジェットコースターに乗ったりする。「怖い物見たさ」という言い回しがキチンと定着していることからもそれが伺える。

本日の話はその最たる物。

バッハの無伴奏ヴァイオリンのためのシャコンヌニ短調は古来名曲として君臨してきた。その一方でたった一挺のヴァイオリンによって演奏されることを、放置しておけない人が幾多の編曲を試みてきた。

メンデルスゾーンについて調べていて、息を呑んだ。どうやらメンデルスゾーンは話題のシャコンヌを編曲している。というよりヴァイオリンソロのパートをそのまま保存し、ピアノ伴奏を追加したというのだ。これが本当なら聴きたい。

20歳で「マタイ受難曲」を蘇演し、バッハ復活に先鞭をつけたメンデルスゾーンのバッハへの見識は論を待たない。それをきっかけに始まったバッハルネサンスの中で様々な演奏が模索され、現在の目から見ると奇異なトライもあったというが、メンデルスゾーンによるシャコンヌのピアノ補強もインパクトは相当大きい。

ということで、今ではその貴重な録音のCDがある。ブラームスのヴァイオリンソナタの売り場を探していて偶然ゲット。ヴァイオリンソナタ第一番の余白に、シャコンヌのメンデルスゾーン編曲がおさめられている。何かの縁だ。

2016年10月29日 (土)

マタイを贈られる

1823年のクリスマスのことだ。14歳のフェリックス・メンデルスゾーンは、祖母からバッハの「マタイ受難曲」の筆写スコアを贈られた。何たるプレゼントだ。羨ましさで言えばバッハ全集第一巻をクララから贈られたブラームスに匹敵すると感じる。バッハは何かとクリスマスがお似合いだ。

メンデルスゾーンはこの6年後に、贈られた作品「マタイ受難曲」の演奏にこぎつける。世に名高い「マタイ受難曲の蘇演」だ。贈った方も贈った方なら、贈られた方もただ者ではない。

ブラームスが友人ホイベルガーと指揮者の暗譜について語っている。暗譜の風潮に批判的なコメントを発した後、メンデルスゾーンに言及している。それによればメンデルスゾーンは「マタイ受難曲」を暗譜で指揮したばかりか、楽団員にも暗譜を求めそれを実現したらしい。ブラームスはそのことを絶賛することで、昨今の暗譜の流れなどまだまだ序の口扱いしている。ブラームス自身は楽友協会の芸術監督時代に「マタイ受難曲」を取り上げた経験があるからメンデルスゾーンの凄さが身にしみているのだ。

メンデルスゾーンは祖母から贈られたスコアを6年かけて勉強したことは間違いない。暗譜はその副産物だろう。

2016年7月22日 (金)

ヨハネスコッホ

大学に入ってからヴィオラを習ううちに、ブランデンブルク協奏曲第6番に取り憑かれた。よくあるパターン。このときヴィオラとともに合奏に参加するヴィオラ・ダ・ガンバにも興味が湧いた。仲間との演奏の際には仕方なくヴィオラで代奏したものだが、それだとヴィオラばかり4名を集めねばならず難儀した記憶がある。

やがてそのガンバにチェンバロとの二重奏があるとわかって、ヴィオラでトライを始めた。当時ヴィオラで演奏したLPが見つからず、仕方なく買い求めたのがヨハネス・コッホ版だった。なぜ選んだかはシンプル。ヨハネスという名前に惹かれてのことだった。

チェンバロを担当したのがグスタフ・レオンハルトだった。2012年に亡くなったとはいえ、古楽器演奏の泰斗だ。1961年の録音だから巨匠33歳である。

長くこの演奏が脳内スタンダードだった。ヨハネスのお導きに違いない。

2016年7月19日 (火)

ヨハンだらけ

記事「バッハ事典」で紹介した「バッハ事典」の見開きにバッハ一族の系図が掲載されている。バッハ自身が一族の音楽家50人の経歴を通し番号とともに紹介している話はよく知られていて、自身には24番をあてがっている。

同書見開きの系図はさらに多く101人が記載されていてるのだが、通し番号が付与されていない者も混在している。基本男子だけが収載の対象だったと思われるが、名前から見て女子と思われている人物が2人いる。通し番号は付されていない。男子でも通し番号のない人もいて、何らかの事情を想像させる。

問題はこの101名、女子を除けば99名のうち、「ヨハン」(Johan)のつく人物が65名に及ぶことだ。大バッハ自身が「ヨハン・セバスチャン」だし、その父は「ヨハン・アンブロジウス」だ。6人の息子のうち2名がヨハンを含む名乗りになっている。

バッハの「祖父の祖父」を始祖とするこの系図は「ヨハンだらけ」だということだ。2人に一人以上の頻度でヨハンが出現する。

65名のヨハンのうち3名が、ヨハンの後にカッコ書きで「ヨハネス」と書かれている。ヨハンとヨハネスは、命名起源的にはとても近い関係にあるとわかる。

また「ハンス」と注記されてい者も2名見える。ドイツ語「ハンス」(Hans)はヨハンの愛称から派生したとされる通説通りだ。この65名全員が「ハンス」と通称されていた可能性もある。

ヨハンは共通なので、ミドルネームで区別している感じもする。歌舞伎役者の襲名に似た事情さえ想像する。日本史でいうなら徳川将軍家の「家」、足利将軍家の「義」、あるいは鎌倉執権北条家の「時」のような「通字」に近いかもしれない。将軍家の場合嫡男にしか付与されないなどの事情もあるようだが、バッハ家ではわりと気前よくばらまかれている。

2016年7月18日 (月)

ある見識

楽しくて仕方がない「バッハ事典」だ。バッハに関係が深い音楽家や研究家が収載されているのだが、不思議なことに、演奏家は対象になっていない。

だから、どんなに高名な演奏家でも、載っていない。レオンハルトもリヒターもヴィンシャーマンも載っていない。

19世紀後半のバッハルネサンスにあって復興に貢献した演奏家もあっけなく脱落している。シャコンヌの演奏を得意としたヨアヒムも例外ではない。クララも載っていない。ブラームスが載っているのは作曲家だからだ。

演奏家を載せない理由はわかる気がする。古くなるからだ。刊行以前の演奏家にしか言及できない。刊行後に登場した演奏家については漏れる。

わが「ブラームスの辞書」が演奏家論に立ち入らないのも同じ理由である。

2016年7月16日 (土)

バッハ事典

某古書店にて発見した。音楽の友社が1993年に刊行した「バッハ事典」だ。1985年バッハの生誕300年を機会に企画されたが刊行までに9年かかったということだ。

注意しておきたいのは「作品事典」ではないということだ。たとえば「ブランデンブルク協奏曲」という語は収載されているが、切り口が作品解説になっていない。

早い話が読んでいて楽しい。必要な言葉を引くのではなく最初から丸ごと読んでいる。収録の内容は「人名」「地名」「音楽用語」「研究用語」など多岐にわたる。「ブラームス」も載っている。ブラームスとバッハの関係が記述される。

定価6500円のところ3700円とはお買い得だ。

さて楽しいことは楽しいのだが、読んでいるうちに悲しくなってきた。このノリで「ブラームス事典」はないものか。マッコークルは「作品事典」だからノリが少し違う。

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2016年3月21日 (月)

カントルの職務

1879年ライプチヒ・トマス教会は、ヨハネス・ブラームスに対しカントルへの就任を打診する。「トマスカントル」と通称されるこの職務は、誤解を恐れずにう~んと易しく申せば教会付属音楽学校の校長でもあり、ライプチヒの教会音楽の総責任者という側面もある。

トマスカントルと言えばバッハがその後半生を捧げたことで名高い由緒ある地位だが熟考の末ブラームスはこれを辞退した。

トマスカントルの職務をもっと詳しく調べる。バッハの伝記には詳しく書かれていることが多い。1723年に就任したバッハからざっと150年経過していることに目を瞑ればおおよその目安にはなると思われる。

  1. 年間59日ある祝日に市内の主要4教会に対して、教会音楽を供給すること。
  2. トマス学校の寄宿生の監督教育。
  3. 葬儀、婚姻等に関わるミサへの出演。

気にかかるのは上記1番だ。バッハは就任から最初の2年間、全ての祝日用に自作のカンタータを用意した。まさにその研究が、バッハのカンタータ研究の礎になっている。何故ならカンタータの初演日は当時の教会暦上の祝日と完全に一致するからだ。その祝日の分布は1年の間に満遍なく分布している。大雑把に申して毎週だ。春夏秋冬ほぼ一定のペースで教会の祝日がやってくる。

もしブラームスがトマスカントルを引き受けたら、夏に避暑地へ赴くことは出来なくなる。壮年期以降ほぼ5月から9月までに及ぶ避暑地での滞在が、多くの傑作を生んだこと周知の事実だ。そうして生み出された作品が秋から始まる演奏会シーズンで次々にと演奏されるというルーチンが出来上がっていた。トマスカントルの職務と壮年期以降のブラームスの生活パターンは真っ向から対立すると考えてよい。

辞退の理由をこのあたりに求めてみたい。

本日はバッハのお誕生日だ。

2016年1月14日 (木)

24という数

バッハの金字塔「平均律クラヴィーア曲集」は、オクターブに含まれる12の音全てについて、これを主音として前奏曲とフーガを連ねた代物だ。長短あるから2倍の24曲になる。

バッハ以降の作曲家たちに影響を与えたと思われる。コンセプトはさておき、「24」という数にこだわった人も多い。ショパンの前奏曲は特に名高い。パガニーニの無伴奏ヴァイオリンのためのカプリースも怪しい。

バッハラブのブラームスにも「24」にこだわった作品がありはせぬかと捜したが、見当たらない。「24の~」という作品は存在しない。後期のピアノ小品は20曲にしかならず、それではとばかりに中期のop76を加えると28曲になってしまう。存在しないからこそ「平均律ブラヴィーア」曲集を作ってみたという訳だ。

ところが、相変わらずのお叱り覚悟ネタがある。

ブラームスの室内楽を考える。二重奏から六重奏までだ。これを数えると全部で24曲になる。1890年弦楽五重奏曲第2番の作曲を終えたブラームスは創作力の枯渇を自覚し、作曲から手を引く決意をする。このときまでに残した室内楽は20曲だ。

クラリネットの名手ミュールフェルトの出会いによって一連のクラリネット入り室内楽が生まれることになる。

  1. クラリネット三重奏曲イ短調
  2. クラリネット五重奏曲ロ短調
  3. クラリネットソナタ第1番ヘ短調
  4. クラリネットソナタ第2番変ホ長調

ご覧の通りの4曲が、既存の室内楽に加わることにより合計24曲になった。ミュールフェルトが創作欲を刺激したことは間違い無いのだとは思うが、その結果生み出された作品が4曲だというのは、ミュールフェルトではなくバッハの影響かもしれない。

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