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カテゴリー「351 クララ」の164件の記事

2022年6月20日 (月)

アルマンドはどうした

記事「組曲イ短調」で、1855年9月12日にブラームスがクララに舞曲集をプレゼントしたと書いた。クララが「完全な組曲」と表現している。だからマッコークルのブラームス作品目録は、現存しない「プレリュード」「エア」を「失われた作品」扱いしている。クララの証言を真に受けているということだ。

しかしフローベルガーの定義は「アルマンド」「サラバンド」「ガヴォット」「ジーク」で一そろいだ。この時点で「プレリュード」「エア」は必須アイテムではない。「完全な組曲」と現存する3曲の差異は「アルマンド」なのに、「プレリュード」「エア」を存在確実扱いしているということになる。

ブラームスの生きただ時代までにフローベルガーの定義が変化したのだろうか。もう一つや二つ目から鱗の事情が隠れていそうである。

2022年6月19日 (日)

時代錯誤か

1855年と言えば、世はまさにロマン派まっただなかだ。シューマン、ショパン、リストなどが働き盛り。メンデルスゾーンの記憶さえ新しいころだ。ショパンに限らず、みなピアノのキャラクターピースを主戦場と定めて個性を競っていた。ベートーヴェンの時代にはフェアウェイの中央だったソナタはむしろ異端でさえあったくいらいだ。

その年のクララの誕生日にブラームスは小品をプレゼントする。恩師シューマンの妻にして当代最高のピアニスト・クララに、無名のブラームスが自作を奉ったのだ。そのためにブラームスが選んだのは、ロマン派お得意のキャラクターピースではなかった。古典舞曲の集合体としての組曲を贈ったのだ。すべて同じイ短調が貫かれるという構成、舞曲の選択に至るまで等身大のバロック舞曲集だ。

受けたクララは、これを「完全な組曲」と認識する知見の持ち主だった。シューマン、ベートーヴェンと並んでバッハ解釈でも当代一の泰斗だったクララのお眼鏡にかなう作品を贈ったブラームスは、このとき弱冠22歳だ。この若さで、大切な人へのプレゼントに古典舞曲の集合体たる「組曲」を選ぶセンスは、天性かはたまた教育のたまものが、にわかには判じ難いが、なんだかとてもうれしい。

これだけでブログ「ブラームスの辞書」がバロック特集を展開する価値がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

2022年6月18日 (土)

組曲イ短調

1855年9月12日だから、クララの誕生日の一日前だ。この日のクララの日記に「ブラームスがイ短調の完全な組曲を突然見せてくれた」という記述がある。その断片は下記の通り今に伝えられている。

  • WoO3 イ短調ガヴォット
  • WoO4 イ短調ジーク
  • WoO5 イ短調サラバンド

マッコークルの「ブラームス作品目録」には「イ短調アリア」「イ短調プレリュード」が失われた作品扱いになっている。この5曲で構成された組曲イ短調をクララは誕プレとして受け取ったことは確実だ。

「完全な組曲」とクララが証言しているのは、組曲が古典舞曲の集合体であることを踏まえていると思われる。舞曲配置の順番を以下の通りと推測する。

  1. プレリュード
  2. サラバンド
  3. ガヴォット
  4. アリア
  5. ジーク

プレリュード先頭は疑問の余地はない。同様にジークが結尾に据えられたのも確実だ。ガヴォットは挿入舞曲だとするならサラバンドとジークの間がふさわしい。エアの位置は悩ましい。先頭と末尾以外どこでもあり得る。語感に照らしてエアのテンポが急速でないとすると、同じ緩めのテンポであるサラバンドの前後には据えにくいかと考えてひとまず4番目とした。

大事なことは音楽の素養が豊かなクララがこの顔ぶれで「完全な舞曲」と表現したことだ。フローベルガーの定義から「アルマンド」が脱落しているにもかかわらずだ。同定義を満たさぬ組曲がバッハでさえ全体の3分の1存在することを考えれば、フローベルガーの定義を満たさぬことをもって「不完全」とはみなさないということだろう。

 

 

 

 

2022年2月23日 (水)

リヒテンタール違い

シューベルトさんはウィーン生まれ。少し詳しい伝記ならリヒテンタールだと書いてある。現在では市内だが、当時は近郊であった。

ところが、ブラームスの伝記にもリヒテンタールが出てくる。こちらはドイツ南西部。保養地で名高いバーデンバーデン近郊だ。クララ・シューマンの避暑地で、ブラームスがしばしば訪れたとされている。

慣れるまでは注意が要る。

2021年3月17日 (水)

調和の霊感

ヴィヴァルディの合奏協奏曲集op3の通称だ。独奏楽器を異にする様々なコンチェルトの集合体である。このうちの11番、「2つのヴァイオリンとチェロのための協奏曲」ニ短調を学生時代に弾いた。ヴィオラで演奏に加わったことがある。

そしてバッハはまさにその作品3-11をオルガン協奏曲に編曲している。BWV596という番号まで与えられているのだ。20世紀に入ってからの研究の結果、バッハ本人の編曲であることが突き止められているが、19世紀には論争もあったようだ。ブラームスはこれを、長男のウイルヘルム・フリーデマン・バッハの手による物と考えていた節がある。

BWV596のブラームスによる筆写譜が現在に伝えられており、おそらく1854年かその翌年にブラームスからクララに贈られたものだ。「愛するクララへ、デュッセルドルフにてヨハネスより」と書かれた表紙には「フリーデマン・バッハ」と添えられているという。

ブラームスは1867年3月17日、ウィーンの楽友協会ホールでの彼自身のリサイタルで、この作品を弾いている。154年前の今日だ。

そしてこの貴重なブラームスの筆写譜は、現在ツヴィッカウにある。ロベルト・シューマンハウスの所蔵だという。1896年5月に逝去したクララの遺品に含まれていたということだ。クララはこの楽譜を40年以上大切に保管していたのだろう。そしてあくまでもあくまでもクララはロベルトの妻だから、ロベルト・シューマンハウスの所蔵になっているのだ。そこにブラームスの思いがどれほど込められていたとしても、シューマン夫妻の結婚生活14年の長さを遙かに超えて保管されていたとしても、クララはロベルトの妻だ。

ヴィヴァルディとブラームスの数少ない接点だが、ヴィヴァルディ、バッハ親子、シューマン夫妻そしてブラームス。この筆写譜には音楽史に名を残す巨星たち6名が関わっている。

 

2020年1月 3日 (金)

クララ特集総集編

クララ・シューマン生誕200年記念「クララ特集」の総集編をお送りする。

  1. 2019年09月13日 特集クララ
  2. 2019年09月14日 クララ記事100本
  3. 2019年09月15日 クララの力を借りて
  4. 2019年09月17日 没後840年
  5. 2019年09月18日 とんとご無沙汰
  6. 2019年09月19日 壮行会
  7. 2019年09月20日 1%クラブ
  8. 2019年09月21日 橋渡し役
  9. 2019年09月22日 組織委員会
  10. 2019年09月23日 ピアノ協奏曲ヘ短調
  11. 2019年09月24日 凄い本
  12. 2019年09月25日 クララの評判
  13. 2019年10月04日 シューマン全集  
  14. 2019年10月06日 ケアレスミス
  15. 2019年10月08日 友情の書簡
  16. 2019年10月09日 クララの嘆き
  17. 2019年10月10日 コンサートツアー
  18. 2019年10月11日 クララの耳
  19. 2019年10月12日 シューマンの野ばら
  20. 2019年10月13日 クララの物言い
  21. 2019年10月15日 メトロノーム値をめぐって
  22. 2019年10月16日 タイムトライアル
  23. 2019年10月17日 クララの基盤
  24. 2019年10月18日 カルメンを贈る
  25. 2019年10月19日 嫁と舅
  26. 2019年10月20日 クララのチェック
  27. 2019年10月21日 低地ライン音楽祭
  28. 2019年10月22日 蔵書整理
  29. 2019年10月23日 シューマン家の音楽会
  30. 2019年10月24日 バーター取引
  31. 2019年10月25日 文末決定性
  32. 2019年10月26日 エンデニヒの見舞客
  33. 2019年10月28日 159番
  34. 2019年10月29日 入院費
  35. 2019年10月30日 エンデニヒの患者
  36. 2019年10月31日 10月という区切り
  37. 2019年11月01日 地図ウォッチャー
  38. 2019年11月02日 せめてもの思いやり
  39. 2019年11月03日 それぞれの後始末
  40. 2019年11月04日 もう一人のユーリエ
  41. 2019年11月05日 2つのピアノ協奏曲
  42. 2019年11月06日 クララの洞察
  43. 2019年11月07日 10000マルクの寄付
  44. 2019年11月08日 魔女の変奏曲異聞
  45. 2019年11月09日 伴奏者クララ
  46. 2019年11月10日 英語の立場
  47. 2019年11月11日 墓碑の完成披露
  48. 2019年11月12日 墓碑を贈る
  49. 2019年11月13日 墓碑の絵
  50. 2019年11月14日 クララの動員力
  51. 2019年11月15日 奇妙な告知記事
  52. 2019年11月16日 スエズ運河150年
  53. 2019年11月20日 ショパン風
  54. 2019年11月21日 ラストステージ
  55. 2019年11月22日 若気の至り
  56. 2019年11月23日 シューマンとの距離感
  57. 2019年11月25日 クララを信じる
  58. 2019年11月26日 リーターのお嬢さん
  59. 2019年11月27日 名誉会員
  60. 2019年11月28日 宮廷演奏家
  61. 2019年12月01日 どんぶり勘定
  62. 2019年12月02日 徒歩旅行
  63. 2019年12月04日 お下がりのピアノ
  64. 2019年12月05日 ブラームスの悪評
  65. 2019年12月06日 もう一人のフェリクス
  66. 2019年12月07日 弾き分ける決意
  67. 2019年12月08日 MoltPassionatoの続き
  68. 2019年12月09日 スクエアピアノ
  69. 2019年12月10日 未亡人
  70. 2019年12月11日 ハンブルクのシューマン夫妻
  71. 2019年12月12日 水泳療法
  72. 2019年12月13日 署名漏れ
  73. 2019年12月14日 リヒテンタール
  74. 2019年12月15日 立て続け
  75. 2019年12月16日 賛辞
  76. 2019年12月17日 財産管理の前任者
  77. 2019年12月18日 課外授業
  78. 2019年12月19日 影武者
  79. 2019年12月20日 パストラーレ
  80. 2019年12月21日 危険な贈り物
  81. 2019年12月22日 旧バッハ全集
  82. 2019年12月23日 シューマンのクリスマス
  83. 2019年12月24日 ジャンパウル
  84. 2019年12月26日 クララのオルガン作品
  85. 2019年12月29日 クララのアヴェマリア
  86. 2019年12月30日 君たちのお母さん
  87. 2019年12月31日 作曲家大河ドラマ
  88. 2020年01月01日 クララいろはがるた
  89. 2020年01月02日 カルタ算用
  90. 2020年01月03日 本日のこの記事

 

 

2020年1月 1日 (水)

クララいろはガルタ

ある意味見え見えの展開。クララ・シューマンネタのカルタを作成した。濁点、半濁点含む68句を一挙に公開する。今回は以下の通りの禁句を設定した。

  • 「クララ」
  • 「シューマン」
  • 「ヨハネス」
  • 「ブラームス」

これらの単語を一切用いずに五七五で作った。

  1. い 犬小屋と呼ばれた家は光る谷
  2. ろ ロマン派の落とし処を見届ける
  3. は 灰色の真珠がぽろりロ短調
  4. ば バースデーカードを書かぬ年は無い
  5. ぱ パガニーニ魔女でなければ弾けません
  6. に ニ短調変奏曲のピアノ版
  7. ほ 施しはお気持ちだけを受けておく
  8. ぼ 僕も逝く一年経たず後を追う
  9. ぽ ポコフォルテ届かぬことが美しい
  10. へ 兵隊のおもちゃを家で見せられた
  11. ベ ベートーヴェン後期のソナタ弾きまくり
  12. ペ ペン震え最後の誕生祝い書く
  13. と とっておき誕生祝うこのホルン
  14. ど ドレスデン悔しい記憶敵討ち
  15. ち 地図買ってエンデニヒまで届けさせ
  16. り リウマチの痛みをそっと思い遣る
  17. ぬ 抜き差しのならぬ恋かと世間云う
  18. る 留守宅はいつもマリーが取り仕切る
  19. わ ワーグナーあれを音楽とは言わぬ
  20. か 家計簿を代わりに僕がつけている
  21. が 我慢させ咥えタバコで低音部
  22. よ 呼び出され聴いたソナタはハ長調
  23. た 頼りすぎアンタの息子金が無い
  24. だ 脱臼が左だったらどうしてた
  25. れ 連弾にピッタリハンガリア舞曲
  26. そ それなりの理由探して入り浸り
  27. ぞ ぞっとするリストにお礼書くなんて
  28. つ Cmoll実はイニシャル隠れてる
  29. ね 念のため作品の2を献呈す
  30. な 何じゃこりゃバッハが受けぬ街ばかり
  31. ら ライプチヒノイマルクトに生家あり
  32. む 無理をして一つ選べばヘ長調
  33. う ウィーンへ皇帝讃歌手土産に
  34. ヴ ヴィークにも反対をする理由あり
  35. の 乗換えをしくじりついに間に合わず
  36. お 欧州を一跨ぎするコンサート
  37. く 空気読め嫁をもらえとすすめるな
  38. ぐ 愚の骨頂テンポの数値決めるのは
  39. や 山よりも高く谷より深くから
  40. ま マリーには苦労させたと振り返り
  41. け 喧嘩して起死回生のイ長調
  42. げ ゲンなおしライン地方を旅行する
  43. ふ 夫婦よりつきあい長し40年
  44. ぶ ブラ1に見え隠れする濃い事情
  45. ぷ プールにも医者の見立てでいれさせる
  46. こ 細か過ぎ伝わりにくいこのカルタ
  47. ご 轟々の批判を軽く受け流す
  48. え 嬰へ調Fisはほんのりフェリックス
  49. て 天国に持って行きたい雨の歌
  50. で 弟子あまたフランクフルト音楽院
  51. あ 雨の歌原稿料を送金す
  52. さ 最後の日しっかり別れ際のハグ
  53. ざ 懺悔です暗譜したのはこの私
  54. き 聴きたいな黄金ペアのコンチェルト
  55. ぎ 逆縁の子供を4人見送った
  56. ゆ ユーリエを嫁がせた後気がついた
  57. め 目で合図アインザッツも要らぬほど
  58. み 認めないドヴォルザークの価値なんて
  59. し 出版をしてもよいかといつも訊く
  60. じ 10月の朔日だった出会いの日
  61. ひ 一工夫同じ曲から変奏曲
  62. び ビシビシといらん曲にはダメを出し
  63. ぴ ピッタリと誤植を先に直してた
  64. も 物心つかぬうちからピアニスト
  65. せ 詮索は野暮なばかりの阿吽かな
  66. ぜ 全集に名前を漏らす大チョンボ
  67. す 既にもう聞こえぬ耳にクラソナタ
  68. ず ずっと前聴いた時には序奏なし

あけましておめでとうございます。

2019年12月30日 (月)

君たちのお母さん

ブラームスとクララ・シューマンの娘たちとの会話の中で、ブラームスがクララを指して用いた言い回しだ。どんなドイツ語がこう訳されたのか確認していないが、クララの娘の一人4女オイゲーニエは、この言い方が好きだったと証言している。あるいはこの言い方をするブラームスがクララの娘たちから愛されていたと解したい。クララとの距離感を反映したブラームス独特の言葉だと感じる。あくまでもシューマン一家の外に身を置きながら、精一杯の親近感を表現している。私にはとても切なく映る。

今やクララとブラームスについてはあまりに多くの言葉が費やされている。ロマンだ悲恋だと文字数だけは、やけに費やされているが、最近その手には心が動きにくくなった。一方でこのように無骨で不器用なエピソードにからきし弱い。

私ごときの筆力では、正確に言い表せない微妙なニュアンスがこもっている。けれども心配はいらない。ブラームスの作品に充満するニュアンスと矛盾していない。

2019年12月29日 (日)

クララのアヴェマリア

以前に買い求めた「シューマン合唱曲全集」を聴いている。全4枚組の2枚目の冒頭に「Abendfeier in Venedig」(ベネチアの夜の祝祭)というタイトルの作品が収められている。実際に聴いてみると歌い出しは「Ave Maria」になっている。

これだけなら「ほほう、シューマンのアヴェマリアか」くらいなモンである。ドイツ語とはいえ解説書はじっくり読んでみるものだ。この作品の作曲者はクララ・シューマンだったのだ。全4枚組の2枚目の冒頭3曲だけがクララ作曲になっていた。「エマニュエル・ガイベルの詩による3つの混声合唱曲」の中の1番だ。素晴らしい。私のクララ作品へのイメージを一変させる出来映えだ。

クララはピアニストとして有名だ。作曲家ロベルト・シューマンの妻としての知名度もこれに劣っていないが、実は作曲もした。無視し得ぬ質量の作品が残されている。ピアノ作品や歌曲を聴いたことがあった。しかしこの「アヴェマリア」はその中でも出色だ。本当に可憐で上品、さらに小粋でさえある。

毎度毎度ブリリアント社には脱帽だ。

2019年12月26日 (木)

クララのオルガン作品

ブラームスのオルガン作品を収めたCDだと思って手に取った。

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op122「オルガンのための11のコラール前奏曲」の前には、作品番号のない一連オルガン自由曲も収録されている。それらに挟まれる形で、クララ・シューマンの「前奏曲とフーガニ短調op16-3」が収められていた。

オルガンによるモノローグ。端正で厳粛なフーガで引き締まるけれど、ピカルディ終止でほっこり温まる。

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ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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