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カテゴリー「001 用語解説」の1000件の記事

2019年10月 6日 (日)

ケアレスミス

受験の大敵。実直に注意力を高める訓練をするか撲滅は無理と諦めるかで、心構えも対処方法も違うだろう。

1881年61歳のクララ・シューマンは、夫ロベルトの作品全集の刊行にこぎつける。作品の普及はクララの念願だったから、この刊行は一つの区切りであった。ところがこの時、らしくないケアレスミスが発生した。漏れの無い全集のはずだったが、小品がいくつか収載から漏れたのだ。

その小品の中には、ヨハネス・ブラームスが校訂した作品が混じっていたことが、後になって誤解を生む元になった。刊行された全集を手に取ったブラームスは言葉を失う。自分が携わった作品が漏れていたからだ。おそらくその場でクララに問い合わせれば傷口は小さくてすんだ。しかしブラームスは「クララは夫ロベルトの作品全集にブラームスの名前が記されることを拒んだに違いない」と邪推し、この無念を呑み込んだ。

その10年後、シューマンの交響曲の出版に関して、クララとの間に決定的な誤解が起きた。二人は絶交状態になったのだ。1892年にop118を切り札として、仲直りしたのを機に、ブラームスは勇気を出して10年前の収載漏れについてクララに問いただした。

今度はクララが言葉を失う番だった。完全なケアレスミスだ。けれどもクララにも言い分はある。「私がそんなにみみっちい女だと思っていたの?40年もつきあってきて」ってなもンである。あるいは「全集への収載の可否は芸術的な価値の有無だけが判断基準に決まっているではないか」「何故もっと早く教えてくれない」「水くさい」というような思いもあっただろう。

クララは即座に全集からの遺漏を集めた補巻の刊行を決断する。この補巻について、編集はおろか序文の執筆までもブラームスに依頼するのだ。10年の誤解を解く切り札だ。ブラームスはもちろんこの付託に全身全霊をもって答え1893年には刊行にこぎつけた。この出来事以降、クララが没するまで、クララとブラームスの間に一切の誤解揉め事が起きなくなったという。

嬉しいのだが、とても切ない。

2019年9月20日 (金)

1%クラブ

完全に私の造語。ブログ運営上の目安。ブログ「ブラームスの辞書」は2033年5月7日までの毎日更新を目標としているので、全部で最低10252本の記事が必要だ。その1%となると103本ということになる。103本以上の記事が堆積したカテゴリーを「1%クラブ」と名づけている。本日の段階で103本以上の記事を持つ人物カテゴリーは以下の通り。

  1. バッハ
  2. ドヴォルザーク
  3. 次女
  4. ビスマルク
  5. 長女
  6. (セバスチャン)
  7. クララ ←NEW

昨日の記事をもって「351 クララ」が新たに入会したということだ。次の候補は意外と長男だったりする。

2019年9月11日 (水)

未聴CD

読んで字の如く「まだ聴いたことがないCD」という意味だろう。実際にはもう一つの意味で用いられてこその言葉だ。すなわち「入手済みのCDのうちまだ聴けていない」という意味だ。

世の中には膨大な数のCDが存在するから、どんなマニアでも聴いたことがないCDの方が多いに決まっている。入手不可能のCDは聴けなくて当たり前だ。むしろ入手していながら、時間の都合で聴けていないという状態こそが、議論に値すると感じる。

CDショップの店頭やオンラインショップの画面を眺めているうちに、購入を決断したCDのうち、聴いたことがないCDがバカになら枚数に達しているマニアは少なくないと聞く。未聴CDの演奏時間の合計と残りの人生の余暇時間を比較して絶望している層もいるらしい。ある種の病とも思われる。CDを所有することが目的になってしまい買ったCDを聴かないという症状だ。

私はブラームスに関しては未聴CDは無い。iPodのおかげで時間を効率よく使えるようになって尚更万全になった。買ったが最後ちゃんと聴いているということだ。むしろ対処に困っているのは、1度聴いただけで2度と聴いていないCDだ。

2019年7月 5日 (金)

横着

するべきことを怠けることくらいの定義で良いのだろうか。

左手のためのシャコンヌをブラダスに取り込んだ。リンフォルツァンドが用いられている。ブラームスのリンフォルツァンドの扱いについては既に何回か述べたが、この曲における使用実態を見てさらに確信が深まった。「瞬間型マルカート」という解釈あるいは、楽譜上へのマーカーペンの使用のイメージで違和感がない。

そこらじゅうの音楽用語事典がスフォルツァンドと同じという解釈を載せている。ブラームスに関しては「もってのほか」だと感じる。ブラームスがスフォルツァンドとリンフォルツァンドを明らかに使い分けていることが辞典の執筆者から不当に無視されていると思う。でなければ「横着」だ。

「左手のためのシャコンヌ」での用法はフレーズの頭をそっと指し示す機能だと思う。バッハのオリジナルは音楽記号が完全に落ちているが、ブラームスは編曲にあたりフレージングを指示したのだと思う。このリンフォルツァンドには「音を強くせよ」という意図は爪の先ほども無いと思う。スフォルツァンドなんぞを配しては音楽ががさつになり過ぎると考えたに違いない。

2019年3月 6日 (水)

井戸振り見えろ

おバカなタイトルだが、少々のご辛抱を。

ブラームスに限らず作品の解説書を読んでいると、しばしば教会旋法が引用される。何やらわかりにくいと腰が引けているが、面倒臭がってもいられないので本日はそれらを整理する。まずはピアノの鍵盤を思い浮かべて頂く。本日に限っては黒鍵に用はない。話は白鍵で完結する。

  • CからCまで オニア調 教会旋法としての名前があるにはあるが、これは普通のハ長調だから、いちいち「教会旋法のイオニア調です」などと解説されたりはしない。
  • DからDまで リア調 バッハのBWV538「ドリアントッカータ」で名高い。ブラームスにもドリアンリートがある。ニ短調の和声的短音階の中の「B」にナチュラルを与えればいい。
  • EからEまで フリギア調 ホ短調の和声的短音階の中の「Fis」にナチュラルを与えればいい。第4交響曲の第2楽章冒頭のホルン。シャープ4個を付与された「ホ長調」だというのに、冒頭いきなり「Fis」にナチュラルが投じられる。いやはやな展開。ここに限らず短調音階の第2音が半音下がると「フリギア2度」と呼ばれる。
  • FからFまで リディア調 ヘ長調音階の中の「B」にナチュラルを与えればいい。ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第15番の第3楽章が名高い。ブラームスではロマンツェop118-5の24小節目の嬰ト音のトリルが怪しいと古来指摘されている。
  • GからGまで ミクソリディア調 ト長調音階の中の「Fis」にナチュラルを与えればいい。てゆーか単なる「G7」。
  • AからAまで エオリア調 これも単なるイ短調なので解説書で言及されることはない。
  • HからHまで ロクリア調ギリシア旋法としては存在したが教会旋法としては捨てられた。主音の5度上の音・嬰ヘが黒鍵なるからかもしれない。

上記と同じ音程間隔を持つ音階は、理論的にはどの音を起点にしても想定出来るが、教会旋法は白鍵に限られている。ドリア調はD起点に限ると言うことだ。だからD起点以外の場合、「ドリア風」としか呼べないらしい。

「井戸振り見えろ」は、これらを順に覚える呪文だ。「イオニア」の「い」、「ドリア」の「ど」、「フリギア」の「ふ」、「リディア」の「り」、「ミクソリディア」の「み」、「エオリア」の「え」という具合にきて「HからHまで」は「ロクリア」の「ロ」にする。これで「いどふりみえろ」となる。

2018年6月29日 (金)

バッハシュタディオン

「ネーミングライツ」強いて訳せば「命名権」だと思うが、もはやこのままカタカナでよいハズだ。1990年代米国でスポーツ施設や文化施設に、企業や商品の名前をつけることがビジネスとして成立した。もちろん日本でも今や珍しくない。億単位のお金が動くことさえあるという。

しょうもないことを考えている。

一般にネーミングライツは企業が自社の宣伝のために行うものだが、これを個人の大金持ちが趣味でやれないものだろうか。たとえば長者番付上位常連のお金持ちが、バッハ好きだったとする。どこかのスタジアムのネーミングライツを購入出来る程の大金持ちだ。

ドイツサッカー一部リーグブンデスリーガのRBライプチヒの本拠地をゼバスチャンバッハシュタディオンにしてしまうという訳だ。現在このチームの本拠地はれっきとしたネーミングライツらしい。それをゼバスチャンバッハシュタディオンにしてしまおうという魂胆だ。何としてもドイツかオーストリアでなくてはならない。野球のワールドシリーズや、フットボールのスーパーボウルがゼバスチャンバッハスタジアムで行われる違和感は尋常ではないからだ。

ワールドカップやオリンピックではネーミングライツが行使できないのがマーケティング上の難点らしい。命名権はあくまでも愛称に過ぎず、正式名称とまではならないとのこと。その正式名称が作曲家の名前だったら楽しい。街の通りに作曲家の名前になっていることは珍しくないからそのノリで以下の通り考えてみた。

  1. ライプチヒ ゼバスチャンバッハシュタディオン
  2. リューベック ブクステフーデアレナ
  3. ハンブルク ヨハネスブラームスシュタディオン
  4. ニュルンベルク パッヘルベルシュタディオン
  5. ボン ベートーヴェンフィールド
  6. ワイマール フランツリストパーク
  7. バイロイト リヒャルトワグナーシュタディオン
  8. ハレ ヘンデルアレナ
  9. デュッセルドルフ ロベルトシューマンパルク

ボン、ワイマール、バイロイト、ハレあたりはクラブが強豪でないのが難点か。ヨハネスブラームスシュタディオンはウィーンに譲って、ハンブルクはテレマンシュタディンでもいい。

日本代表のグループリーグ突破を祝うおバカネタ。

2018年4月14日 (土)

冠詞

ヨーロッパ系言語特有の品詞。英語で申せば「a」「an」「the」だ。これが不定冠詞と定冠詞に分かれることも周知の通りである。英語はシンプルだと気づくのはドイツ語の学習が始まって間もなくだ。名詞の性や格によって変化する上に、形容詞の格変化にも影響する。幸い英語同様に複数形には用いられないが、中には複数形にも付着してしまう言語もあるらしい。

冠詞が無い日本人には厄介な概念だ。「a bed」「the bed」あるは冠詞無しの「bed」では、意味が変わってしまうことも少なくない。

黙って以下の3つを眺めて欲しい。

  1. ドイツ語 Ein Deutsches Requiem
  2. 英語 A German requiem
  3. 日本語 ドイツレクイエム

どれもブラームスの作品番号45を指している。そもそもどうして不定冠詞「Ein」「A」が用いられるのかが実感として理解出来ない。「Das Deutsche Requiem」ではいけない理由がイメージ出来ない。見ての通り日本語ではその手の論点は発生しない。けれども原文が「Ein Deutsche Requiem」だろうと「Das Deutsche Requiem」だろうと、その違いを日本語へ反映させようと思うと大変なことになるので結局は「ドイツレクイエム」落ち着かざるを得まい。

2018年4月 6日 (金)

モテット

ミサ曲以外の宗教的声楽曲の総称。起源はルネサンス期に遡るという。バッハも数多くのモテットを書いたし、モーツアルトには名高い「アヴェ・ヴェヌム・コルプス」がある。

バロック時代には欧州各地で地域ごとに独自の発展を遂げる。ロマン派の興隆により、宗教曲の相対的な地位が下がるともに下火に転じたとされている。

ロマン派も土壇場に近いブラームスも合計7曲のモテットを書いている。

  1. 2つのモテットop29
  2. 2つのモテットop74
  3. 3つのモテットop110

律儀なことに初期中期後期に一度ずつ置かれている。宗教曲らしく全てが無伴奏つまりアカペラと明示されている。バッハやシュッツのようなドイツの大先輩たちの向こうを張った作風だ。このうちのop74は、当代最高のバッハ研究家、フィリップ・シュピッタに献呈されている。

こういう曲を書くから保守的だのなんなのと外野席から野次が飛ぶのだと思う。

2018年3月23日 (金)

バロックの紀元前

世界史を学ぶ学生にとって「B.C.」と言えば基本中の基本だ。「紀元前」の略号だ。キリスト生誕以前の年代表記の際に用いられる。キリスト生誕後を示す「A.D.」と違って省略はされない。

バロック音楽作品を収録したCDのブックレットの中にも割と頻繁に「b.c.」が出現する。大抵は小文字だ。まさか「紀元前」の意味と誤解する人はおるまい。

「basso continuo」の略。「basso」は低音。「continuo」は英語「コンティニュー」と語源が同じで、合わせて「通奏低音」と和訳される。チェンバロやオルガンあるいはヴァイオリンなどの独奏曲を除いて頻繁にあらわれる。

バロック時代のことを「通奏低音の時代」と呼ぶ学者さえいるくらいだ。バスのパートには単音と数字が記されいて、演奏者の即興でどうぞというあれである。

通奏低音はパート名ではないので必ずしも単一の楽器ということもなく、楽器の種類や数もまた演奏者の判断に任せられる。長い経験に照らして選ばれるだけあって大体固定されているようだ。

2018年2月23日 (金)

音楽の母

日本の初等教育においてヘンデルを指す通り名だ。

小学校の音楽室に飾ってある肖像や年表のもっとも端にいるのが、バッハとヘンデルだ。片方のバッハには「音楽の父」という称号が奉られてるいる。同い年でドイツ生まれのヘンデルは、男であるにもかかわらず「音楽の母」と呼ばれている。当時の音楽家はカツラをつけていて長髪に見えるから、同級生の間では「ヘンデルは女だ」と信じている奴もいた。

この言い回しの根拠はどこにあるのだろう。当時は純心だったが今となっては、眉に唾の一滴も塗りたくなる。ドイツ音楽偏重の音楽史観だと思う。後期バロックの2人が始原と位置づけられているだけで相当な怪しさだ。

まあよい。

ヘンデルのオルガン作品はオルガン協奏曲に偏っている。いわゆるオルガンコラールは見かけない。独奏曲はフーガが少々あるだけだ。

本日2月23日はヘンデル生誕333年のメモリアルデーだ。

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