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カテゴリー「001 用語解説」の994件の記事

2017年10月13日 (金)

テンポ芋

「Tempo Ⅰ」は「元のテンポで」と解されて何の疑問も無い。読むときには注意が要る。「テンポイチ」ではなく「テンポプリモ」と読まねばならない。ところが私には恥ずかしい思い出がある。

元々これをどう読むかを知らずに過ごしていたことが原因だ。大学2年の冬にブルックナーの交響曲第4番「ロマンティック」に挑んだ。その楽譜の中に「Tempo Imo」がたくさん出て来るのだ。実はこれこそが「Tempo I」を「テンポプリモ」と読むことの証拠なのだが、私は「テンポ芋」と読んでみんなに笑われた。

2017年10月12日 (木)

ノーサイド

試合終了のことだ。ラグビー特有の言い方である。試合中にはいろいろあったけれども、試合が終わってしまえば敵も味方もないという精神を一言で言い表している。試合の終了を表す言葉は「ゲームセット」「タイムアップ」というスポーツが多い中ラグビーの言い回しはひときわ目立つ。

ラグビーは、球技の中では際だって身体の接触が多い。ルール通りに振る舞っていても、相手選手との身体のぶつかり合いは必須である。ラグビーにおけるディフェンスとはすなわち攻撃側のボールキャリアへのタックルが主体となる。ルール通りとは言いながらタックルされれば「痛い」のだ。その「痛い」が相手への遺恨となっては困る。次回の対戦が遺恨試合になるのは好ましくないのだ。

だからこそ試合終了の度に「ノーサイド」を確認するのだ。戦いが終われば敵も味方もないと。

古来、ライバルの死を悼む話は美談として多く伝えられる。三国志の英雄・曹操は、戦死した敵将・関羽の遺体を諸侯に準ずる儀礼を持って葬った。上杉謙信は、武田信玄の訃報に接して、箸を捨てて落涙したという。いわばノーサイドだ。

ブラームスは、ブルックナーやワーグナーの訃報に接し、哀悼の意を表したことが伝えられている。欧州の楽壇を2分した論争相手だ。論争を煽ったのは周囲の取り巻きで、本人たちの反目はそれほどでもなかったというが、最年少のブラームスが2人を送る立場になったのは幸いだ。逆だったら怪しいと思う。

2017年10月 6日 (金)

念のため

世の中リスク管理全盛だ。みんなで知恵を出し合ってどんなリスクがあり得るか列挙する。起こりやすい順、起きたらやばい順に並べて対策を講じるのが一般的だ。

「念のため」はこうした策を講じる際に、枕言葉のように用いられる。多くは空振りに終わるのだ。それを怠って大トラブルに発展した記憶が人々を「念のため」に走らせる。人や企業が「念のため」に費やすお金はどれほどになるのだろう。「念のため」の市場規模はどれほどあるのだろう。生命保険、損害保険がその代表だ。

「ブラームスの辞書」にもおバカな「念のため」がある。

あとがきの末尾に記された文だ。

「既にお気づきのことと思うが私はブラームスが大好きである」と書いてある。ブログも書籍も、私がどれほどブラームスが好きかを伝えるためにあるので、万が一伝わっていないと困るのだ。だから「念のため」に書いた。

幸いあまりお金はかからなかった。

2017年10月 4日 (水)

選書会議

「ブラームスの辞書」の天敵。

一部の図書館に設置されているらしい。個々の書物が蔵書とするにふさわしい内容かを判定する会議のことだ。「選定会議」あるいは「選書委員会」「選定委員会」と称されることもある。

蔵書水準の維持向上のためのものなのだろう。ホームページ上でその存在を明記している図書館もあるがメンバーや開催頻度、判断基準は公開されていない。もちろん議事録も公開されていない。

我が子同然の「ブラームスの辞書」もいくつかの図書館に献本したが、そのうちの一部で「一旦本をお預かりします」と言われて後日返事が来たことがあった。思えばこの選書会議に諮られていたのだと思う。

必要とされるところに置いて貰うという観点からは歓迎すべきことだが、「ただでも要らん」と判定されることのダメージは重くて大きくて深い。

そして素朴な疑問。選書会議で蔵書化を否決されてしまった本は、どうなるのだろう。私は回収に出向いたことが一度だけあった。蔵書には出来ないのだから、著者に返すか職員のみなさんで持ち帰るのか、廃棄するのかどちらかだろう。書店を通じて購入した本ならば返品かもしれない。いくつかの図書館が献本よりも購入にこだわるのは、選書会議で蔵書化が否決された場合に返品が利くからかもしれないなどと卑屈に勘ぐってみたくなる。

一方でドイツ国立図書館からの献本要請は、蔵書化決定後の要請だったことは、結果から見て確実だ。つまり同じ献本要請でも選定会議前と後のケースがあるのかもしれない。

図書館に置かせてもらえるのは光栄だなどと言ってホクホク献本するのは、もしかすると無邪気が過ぎるのかもしれない。

2017年10月 2日 (月)

会社用語

業界独特の言い回しというのがどんな世界にも存在する。「前向きに検討する」「善処する」など有名である。穏便婉曲を尊ぶ日本ならではの習慣かもしれない。

会社の中を見回しても2つ3つは簡単に目に止まる。たとえば「○○マター」だ。「○○」には組織名が入る。単なる組織名ではない。発言者が所属する組織名でないことが特徴だ。「オレの知ったことか」ないしは「そっちの仕事だろ」というニュアンスを濃厚に含む。

「基本的には」も目立つ。この言葉が発せられたら試しに発言者に「どんなことを例外として想定していますか」と問いかけるといい。答えられないことが多い。思いがけないつっこみに遭遇することに備えた事前のバリアなのだ。「ですから基本的にはと申し上げたはずです」と対応可能だ。事前の想定不足や準備不足の裏返しであることも多い。特に「基本的には賛成です」は使用頻度が高く重宝していると見受けられるが「総論賛成各論反対」の意味であるケースが混入していることもあるので注意が必要だ。

「ブラームスの辞書」ではブログでも著書でもこれらの会社用語の使用を禁忌している。趣味で出す本やブログに会社用語は似合うまい。

2017年9月28日 (木)

自転車操業

借金返済のための借り入れが次から次への起きること。借り入れの停滞は倒産を意味する。こぐのを止めると転倒してしまう自転車の特性から転じて派生した言い回しだ。企業経営にとってはもちろん良いことではない。雪だるま式に借金が膨らむと考えねばならない。家計の場合にはあまり自転車操業とは言わない気がする。火の車と呼ばれることが多い。

ブログ「ブラームスの辞書」の記事備蓄もこれに似ている。ネタのひねり出しがとまると立ちどころに備蓄の切り崩しが始まる。毎日ネタを思いつかないとやがて更新が途絶える。その恐怖に対処するために記事の備蓄をしている。あるいは自分の健康を信じていないとも言える。2033年5月7日までの継続のために必要な記事を備蓄し終えるまで、自転車操業が続く。

会社の経営に比べれば気楽なモンだが、ドキドキ感は相当なものだ。

2017年9月17日 (日)

見せ場

「ブラームスの辞書」の中でしばしば用いられている。「弾き手あるいは歌い手にとっての見せ場」を意味する。同時に聴き手にとっての「楽しみな場所」までも含む。

究極的にはそれらが作り手であるブラームスの意図と一致して来ることを前提に「ブラームスの辞書」は執筆されている。ブラームスは楽譜を見ればそれと判るように音符を並べたはずだ。音符だけでは判らぬところにダイナミクスを筆頭とする音楽用語をちりばめたに決まっている。さらにはアーティキュレーションや奏法を示す記号までもが、自らの音楽的意図を伝達するためのツールとして添付されているに違いないのだ。

旋律の連なり、和声の妙、リズムの仕掛け、楽器使用法の工夫、掛け合いなどなど、曲を演奏する上で絶対にはずして欲しくない場所を「見せ場」と表現している。作品の演奏や鑑賞は、楽譜というガイドラインに沿って曲の見せ場を順に巡ることに似ている。人によって「見せ場」だと感じる場所や数は千差万別だし、同じ人でも年齢や心境により違って来ると思われる。音楽用語のように1個2個と数えることは出来ないし、明確に定義することも難しいが、こうした見せ場をより具体的に意識することは、演奏においては深みを、鑑賞においては楽しみを増すと確信している。「絶対にはずせない」と思って演奏する場所が多ければ多いほど良い演奏になると感じている。聴き手として「ここは来て欲しい」と思っていた場所で核心を突く演奏をされると気分がいい。

何を隠そうブラームスの作品にはこうした見せ場の数が多い。単位小節あたりの「見せ場」の数は多い部類の作曲家だと思う。私がブラームスを深く愛する大きな理由の一つがこのあたりにあると言っていい。

2017年9月13日 (水)

好きの分類

長くブラームス愛好家を続けていると「ブラームスが好き」という言葉が人の口から発せられるのを耳にする機会が多い。もちろん自分も使う。定義が甘いことにかけては筆頭格の言葉だ。突き詰めるのは野暮でもある。

世の中の作曲家の中で1番好き。全ての作品を聴いた訳でもないし、聴いた作品全てで感動する訳でもないけれども、単に好きだ。私の定義はこんなものだ。好きなことに加えて暇もあるので本を書いたりブログを運営したりもしている。

「ブラームスが好き」と口にした人に「どんな作品が好きですか」と尋ねる。「ハンガリア舞曲」と「子守歌」ですという答えがあると難しい。これは「ブラームス作品全てを聴いたが、やっぱりこの2曲は最高だ」の意味であることは希である。

ある特定の演奏家の大ファンがいたとする。その演奏家の得意なレパートリーがブラームスだった場合、その大ファンは「ブラームスが好き」としばしば口にする。

上記2つは極端な例である。けれども大抵はそれぞれの基準に従ってご本人が「ブラームスが好き」と自称することになる。

この多様性こそ尊重されるべきだ。突き詰めるのは野暮と申したのはそのせいだ。愛好家同士の飲み会では、目の前のブラームス愛好家がどのパターンなのか、早い内に見抜けないと話がすれ違うことも少なくない。そうしたスリルが一つの醍醐味になっている。

2017年8月31日 (木)

閉店セール

長く愛されていた老舗が、諸事情により店じまいをする際、「売りつくし」と称してバーゲンセールを実施することがある。いわゆる「閉店セール」だ。客の側には、残念な気持ち少々と「きっと安いに違いない」という期待があって期間中にぎわうことも多い。平常閑古鳥だったために閉店に追い込まれるような店でも、このときばかりは別になる。

地方ローカル鉄道の廃止が決まるとマニアが殺到するのにも似ている。

一部の巧妙なマーケッターはこれを逆手に取ることもある。年がら年中「売り尽くし」「本日限り」のセールストークを掲げている店を見かけることは少なくない。

本が売れたり、ブログが見られたりするのは嬉しいとはいえ、私のブログ「ブラームスの辞書」でこの手法は使えない。著書「ブラームスの辞書」の現物が全部売れて品切れになってもブログ「ブラームスの辞書」を閉鎖することはない。ブログが終わるのは、管理人の私の身によっぽどのことが起きるということなのだ。それでも潤沢な備蓄記事があるから、ただちにブログ記事のアップが途絶えることはない。管理人の私自身はブログの最終回をアレンジ出来ないのだ。

ということはつまり「閉店セール」を打てないということである。

「閉店セール打てない」とエエカッコをしているが、実は怖くて打てないともいえる。もし「閉店セール」に打って出て、ブログのアクセスや本の売上が全く変わらなかったら、相当恥ずかしいからだ。

2017年8月28日 (月)

文法と楽典

知っているに越したことはない。越したことはないが知らなくてもしゃべれるし歌えるという意味では「文法」と「楽典」は共通性がある。正式に習おうと思うと厄介で、古今の学生を悩ませるということにおいても双璧である。

先に文法が出来上がって後から言葉が生まれた訳ではない。「先に言葉ありき」で言葉の使い方使われ方を詳密に分析して体系付けられたのが文法である。現に文法などさっぱり知らぬ子供でも言葉を使っている。文法とは「後から付けた理屈」である。だからと申し上げて良いのかわからぬが文法には例外が多い。よく使う動詞ほど不規則変化するし、格助詞の使い分けには定説がない。けれどもおよそ日本人ならば使い間違えたりすることはない。

言葉と文法の関係は音楽と楽典の関係に似ている。歌ったり演奏したりアンサンブルしたり、あるいは作曲したりした経験の膨大な積み重ねから導き出された体系なのだ。いわば「こうしたらうまくいった」の集大成である。次もうまくやりたいと願う者によって次々と模倣拡充されてきた。人によっては「あれはいかんこれもいかん」という制約に映ってしまうが根本のところは「どうしたら耳に心地よいか」を求めて「後から付けた理屈」のなのだ。

無くても歌は歌えると開き直るのは、斜めに構え過ぎていると思う。一方で楽典の決まりを完璧に守ったつまらぬ作品が存在する可能性も無視できないと思う。古典的と称されることの多いブラームスの作品がただ楽典を守っただけの作品でないことは歴史が証明していることに加えて、私の耳もそれを支持している。

楽典という決まりも結構だが、理屈では説明のつかない塗り残しの領域が多いほど魅力を増すと思う。

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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