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カテゴリー「001 用語解説」の970件の記事

2017年6月16日 (金)

ライン扇状地

単に扇状地と言えば中学校の地理の時間に習う。河川が山地から平地に出る場所に現れる地形のことだ。山地から平地への出口を要にした扇状になることからその名がある。

だから「ライン扇状地」などと申せばライン川が作りだす扇状地だと思われかねないが、これが大間違いで、れっきとした方言用語だ。ライン川周辺の方言の分布図が扇形に似ていることから来るネーミングだ。ドイツ語で「Rheinischer Facher」(aはウムラウト)という。ドイツ中部の中のライン沿岸は北に行くほど低地ドイツ語の影響を受けている。ライン川により交易が古来盛んだった名残りと受け止められている。その結果東西に広がる方言域をライン川が貫通しているという様相を呈している。

  1. リプリアリ語 フランク族の支族リプリアリ族にちなむ。ケルン、アーヘン、デュッセルドルフ周辺の言葉。
  2. 中部フランケン語 ボン周辺の言葉。
  3. モーゼル・フランケン語 ルクセンブルクからトーリア、コブレンツあたりのモーゼル川流域の言葉。
  4. ラインフランケン語 ザールラントからプファルツ、マインツあたりの言葉。
  5. ヘッセン語 ウィースバーデン、ダルムシュタットあたり。

2017年6月 9日 (金)

早生まれ

1月から3月までに生まれた子供は、前年に生まれた子供たちと一緒に、一足早く小学校に入る。その子供たちのことを「早生まれ」と呼んでいる。私も早生まれだ。

ハンブルクの北北西約20kmの位置に「Quickborn」という地名がある。英語に慣れきった脳味噌には「早生まれ」あるいは「速生まれ」に読める。ハンブルクのような北ドイツには、英語からの影響も少なくないから余計怪しい。

案の定とんだ早合点で、ドイツ語で「こんこんと湧く泉」の意味だ。「born」は泉なのだ。「quick」は豊かな水量の暗示である。

先日から方言詩人クラウス・グロートについて調べていたら思わぬお宝情報にめぐり合った。グロートは多数の著作を遺した。語学文学関係だが、得意は方言だった。低地ドイツの抒情詩の研究書がその代表作なのだが、そのタイトルを見て驚いた。何と「Quickborn」だった。先の地名の所在地は低地ドイツの真っ只中な上に、彼の故郷にも近い。私がまだ知らない必然がもう1つや2つ横たわっていそうである。

2017年6月 3日 (土)

ストラスブールの盟約

均分相続を遺言したカール大帝だが、崩御まで生き残った王子はルートヴィヒ敬虔王だけだった。だから問題は起きなかった。そのルートヴィヒ敬虔王が亡くなったときは王子が3人いた。フランク人の伝統とやらで均分相続が約束されたが、いざという時になって長男ロータルがこれを反古にしそうになった。次男シャルルと三男ルートヴィヒが長男に対抗して手を組んだというのが、本日のお題「ストラスブールの盟約」だ。現在はフランス領ストラスブールで取り交わされたからこの名前がある。

この時の宣誓方法が変わっている。次男シャルルと三男ルートヴィッヒが互いに相手の国の言葉で誓約したというのだ。う~んと簡単に申せば、フランス王シャルルがドイツ語で、ドイツ王ルートヴィヒがフランス語で誓約したということだ。相手の国の兵士たちにわからせるためとも言われているが、それはさておき西暦842年のその段階で、すでにフランスとドイツが別言語になっていたということが重要だ。

2017年5月26日 (金)

Dutch

「Dutch」の意味はと問われたら「オランダの」と答えておけばいい。中学生にとってさえ難問とは呼べまい。ところがその語源を調べていて驚いた。古英語で「Dutch」は、「ドイツの」という意味だった。中世のブリテン島から見てドイツとオランダを区別するニーズ自体が存在しなかった。オランダ語とドイツ語は非常に近い関係にあり、そららを操る人々もひとくくりされていたようだ。

時代が下ってオランダとドイツを区別する必要にかられて「Dutch」がいわゆる「オランダ」を指すようになった。

そういわれてみれば「Dutch」と「Deutsch」は似ている。

2017年5月24日 (水)

線マニア

ドイツ方言を調べていると、膨大な数の分布図に遭遇する。そこには方言の境界線がさまざまな線によって表現されている。ベースにあるのはドイツ語圏の地図で、そこにさまざまな線が引かれている。国境線や州境線がまずもって目に付く。ライン川エルベ川などの河川なども目立つ。国境や州境と重なっていることも少なくない。たとえばオーデル・ナイセ線という言葉さえある。ドイツとポーランドの国境をオーデル川とその支流のナイセ川と定めたという話だ。道路や鉄道まで含めた目に見える線が、方言分布の境界線になっているだけならよいが、話はそう単純ではない。

先頃紹介した「ベンラート線」が良い例だ。州境はもちろん河川や山地とも一致しない。昔の国々の勢力範囲や、河川の流路変更など今は見えなくなった線を探さねばならない。様々な資料中のドイツ地図に示された線が、方言の境界線と一致していやせんかと目を皿のようにしている。

つまり「線マニア」とは私のことだ。

2017年5月20日 (土)

ベンラート線

ドイツ語で「Benrather -Linie」と綴る。

ベルギー国境の街、カール大帝の都アーヘンと、ポーランド国境フランクフルト・アム・オーデルを結ぶ線。アーヘンから北東に進んでデュッセルドルフ南郊でライン川を渡るとほぼ真東に伸びる。カッセルの南を過ぎたあたりで北東に向きを変え、マグデブルク南郊からまた真東に進む。ベルリンの南端をかすめつつそのままフランクフルト・アム・オーデルに至る。

ドイツ方言学上もっとも重要かつ有名な線だ。ドイツ語の歴史にとってはずせない線だ。印欧祖語から第1次子音推移によって、他の言語と一線を画したドイツ語だが、その後中世になって第2次子音推移が起きた。この変化が起きたか起きなかったかの境界がこのベンラート線だ。第2次子音推移が起きなかったのがこの線より北側で低地ドイツ語と呼び、南側を上部ドイツ語と呼ぶ。南部は広いのでさらに南北に二分されるが、方言間の差異はこのベンラート線ほどは劇的でない。

低地ドイツ語は、第2次子音推移を被っていないため、オランダ語や英語に近い。第2次子音推移はドイツ語の音声的な特徴から設定された線だが、語彙、構文などの諸現象の分布もこの線が境界になっているケースが見られる。

現在のドイツ標準語がこの線の南に属するザクセン語が母体になっていることから、ベンラート線は現在も北上中というのが定説である。

さてベンラート(Benrath)は人名かと思ったらそうではなかった。地名である。デュッセルドルフ南郊ライン川に面したところにベンラート(Benrath)という街があった。この街が線の名前の由来だ。方言学上大切な線が、これまた大切な父なるラインを横切る街の名を取ったと思われる。

2017年5月17日 (水)

ドイツの方言

ドイツの言語学者ソヴィンスキーは方言を以下のように規定する。

  1. 書き言葉に先行する口語による言語形式。
  2. 地域に根ざし自然な日常生活に取り込まれた話し方。
  3. 時間の経過に従って標準語や周辺語の影響を受ける。
  4. 地方ごとの特定の状況で多くの人々に用いられる言葉。

ドイツは長く小領邦に分裂していたというその成り立ちからして、他の欧州諸言語に比べて方言の多様性が色濃く保存されてきた。一口にドイツ語と言っても、我々外国人が教育の一環として習得するドイツ語、ドイツの放送局や出版界で用いられるドイツ語から言語孤島でひっそりと用いられるドイツ語まで実に幅広いと心得なければならない。

我が愛するブラームスがドイツ語のネイティブスピーカーだったことは確実だが、本来はそこに安住してはいけないのだ。ブラームスは生涯の行動範囲をドイツ語の通用するエリアに限っていたことは割と知られている。もちろん巨大な例外イタリアを別とする必要があるが、スイス、オーストリア、オランダにとどまっている。オランダ語はブラームスの故郷ハンブルクで話されている低地ドイツ語と共通する要素が大きく、英語とドイツ語の中間の性格を持つ。ブラームスにとってはバイエルン語よりもずっと耳になじんだとも考えられる。

2017年5月11日 (木)

一発屋

クリエイティブな業界にあって、たった一つの作品によって永く人々に記憶される仕事をした人をこう呼ぶ場合がある。あられもない表現だ。クラシック音楽の作曲家を称する際にもたまに用いられている。

おそらくブラームスは該当しないと断言してもブログ炎上の引き金になることはあるまい。

たとえたった1曲であっても永く人々に記憶されるというのは凄いことだ。この言い回しをする際、1曲も記憶されない人が圧倒的に多いということをしばしば忘れがちである。

私もそうだ。

ブログ「ブラームスの辞書」の記事どれでもいい。どれか1本でもそういう記事があったかと問われれば答えに窮する。たった1本の内容で永く人々に記憶してもらえるような記事は、今まで書けなかったし、きっとこれからも書けない。

それでも人々から永く記憶されたいと欲する場合、わずかな可能性がただ一つ。記事の堆積の厚みによって記憶されることを目指すしかない。

ブラームス生誕200年まで10205本の記事が、一日の空白もなく堆積したら、もしかすると人々の記憶に残るかもしれない。

スペシャルコンサートまであと3日。

2017年5月 6日 (土)

釣り

2チャンネル用語らしい。もちろんお魚とのバトルの事ではない。2チャンネル上のやりとりを爆発させる目的で、真偽の不明の情報を流したりすることだという。そういうことをする人を「釣り人」といい、その情報を「釣り糸」といい、その情報にコメントを付ける人を「魚」と称することがある。

転じてネット上でも用いられているようだ。刺激的な情報を発したり、過激なコメントを付けたりというアクションを称して「それは釣りですか」などと突っ込んでいる人もいる。

私もブログが読まれれば嬉しいし、コメントが付けば簡単に舞い上がりもするのだが、釣りをしているという自覚は薄い。読者にすれば眉唾記事も多いに違いないから、私の自覚はどうあれ、ひと様は「釣り」だと感じている人もいるかもしれない。どうせなら釣りなどとケチなことは止めて、網でゴッソリと読者を獲得したいものだ。

スペシャルコンサートまであと8日。

2017年5月 5日 (金)

読める

思うに難解。

  1. 書いてある文字を声に変換出来る。
  2. 書いてある文書から筆者の意図を汲み取れる。

「読める」という言葉の用いられ方を観察していると上記2つの意味が混在していると思われる。

小学校1年生が国語の教科書を、間違えずに声を出して読めた場合には、ちゃんと誉められる。いわゆる音読でこれは上記1の典型的な例だ。私の英語は未だにこのレベルでもある。国語に限定して申せば大人になると上記1だけでは誉められない。中学以降上記2が強く求められる。長文読解問題ではまさにそこが試される。

さてさて本題。「楽譜が読める」と言い回された場合難解さに拍車がかかる。

楽譜の場合上記1に相当するのが、「演奏出来る」になるのか、書いてある音を言えるだけで足りるのかハッキリしない。単純に「譜読み」といった場合上記2のニュアンスであることが多い。「書いてある楽譜から作曲者の意図を汲み取る」と解して違和感が無い。まさに「ブラームスの辞書」が目指す領域だ。しかし、この「譜読み」の上達が必ずしも優れた演奏に繋がる訳でもないところが悩ましい。

音楽を頻繁に聴く人の中にも「私は楽譜が読めない」と自称する人は少なくない。義務教育9年間、音楽の授業を重ねながら「楽譜を読めない」と感じている人が少なくないというのは、あんまりな気がする。国語だったら大問題になっているハズだ。

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