またまた話をハイドンの交響曲104曲、弦楽四重奏曲83曲、ピアノ三重奏曲41曲、ピアノソナタ52曲に限定する。つまり器楽用多楽章ソナタということだ。全部で280曲になる。
このうち短調作品がいくつあるかという話だ。ここでいう短調作品の定義は第一楽章冒頭の調性とする。記譜と実際に鳴る冒頭和音のずれは無視する。交響曲は11曲。弦楽四重奏曲は12曲、ピアノ三重奏曲は7曲、ピアノソナタは5曲。全部で35曲だ。率にして12.5%。
感覚として少ないのだが、モーツアルトやバッハでも短調は少ないのでその範囲内。おおむね調号3個以内。フラット4個のヘ短調と、シャープ4個の嬰ハ短調が各1曲ずつだ。
その短調にお気に入りが多い。
交響曲第44番ホ短調「告別」、同45番「悲しみ」
弦楽四重奏曲第74番「騎士」、同76番「五度」
ピアノソナタ第34番、36番。
ピアノ三重奏曲第26番、31番。
たまにあるから印象に残るだけかもしれないが記憶しておきたい。
記事「パズルセイバー」で、調性取り揃え系のパズルにおける鬼門の調を3つ挙げた。空白になってパズルが破綻するリスクだ。一方、特定の調に著名な曲が集中する傾向もある。1つに絞る苦しみを味わることになる。以下その一例だ。
バッハがインヴェンションで採用した調とほぼ一致。つまり調の常用域。
昨日の記事「平均律交響曲集」の余韻。この手の「調性取り揃え系パズル」において鬼門なのが以下の3種の音。
これらを主音にすると長調でも短調でも作品数が少ない。今回マーラーの5番で嬰ハ、ハイドンの45番で嬰へ、エルガーの1番で変イがそれぞれ存在したおかげで、パズルが完成した。これらはパズルセイバーというわけだ。これらの調は難易度が高いということだ。調号としてのシャープやフラットがてんこ盛りされる。長調を前提にすると嬰ハはシャープ7個、嬰へだって6個必要だが、短調に挿げ替えるとそれぞれ4個と3個で済む。
一方嬰トは長調だとシャープ8個だ。6個と1個のダブルシャープにでもするんかいな。これは異名同音で変イとすることでフラット4個で収まる。
ピアノソナタや弦楽四重奏でやるにしても相当むずかしい。ヴァイオリン協奏曲だと絶望だ。
「パズル交響曲の13人 」が意外と楽しめたので、またパズル系のノリで。
本日はオクターブを構成する12の音全ての音について、それを主音にする交響曲を1つずつ選ぶことにする。第一楽章の調性をキーにすることに他ならない。ただし同じ作曲家を複数回採用しない。長調と短調を6種ずつ揃える。説明するより結果を見ていただく方が速かろうということで選定の結果を以下に列挙する。
以上。
長短どちらも6種。作曲家に重複がない。バッハさんは平均律クラヴィーア曲集で12音全てで長短取り揃えたけれど、交響曲では難易度が半端なく高いので断念。最年長はハイドン先生。最年少はショスタコーヴィッチ。結果として交響曲の歴史をトレースしているような錯覚に陥った。サンサーンス、ベルリオーズ、ボロディン、シベリウス、プロコフィエフ、リヒャルト・シュトラウスなどの名前は見えぬものの無難な着地だ。
そうそう、ブラームスがいない。この12名にブラームスを足して13に仕立てようという巧妙な意図である。
現在ベートーヴェンの弦楽四重奏のベスト3を選ぶとなると絶対に落とせないのが4番ハ短調だ。ベートーヴェン唯一のハ短調の弦楽四重奏でもある。学生時代にヴィオラで弾いたことがあるけれど、あの頃から大好きだった。第一楽章の出だしからしびれる。緩徐楽章を欠く。第二楽章に置かれる遅めのメヌエットで緩徐楽章テイストを仄めかすことで補っているかもしれない。これぞベートーヴェンのハ短調という風情。運命交響曲、悲愴ソナタとともに「脳内三大ハ短調」を形成する。何か標題がついていたらもっと知名度が上がっているに違いない。
一連の後期作品を抑えて第一位かもしれぬ。
ベートーヴェンのヴァイオリンソナタ第5番は「春」という題名がついていることもあってか、割と早い段階で聴いていた。最初はミュージックエコーの付録だったかもしれない。第一楽章冒頭の旋律を聞いて驚いた。「運命」を書いた同じ人の作品かという驚きだ。出だしの旋律が「春」そのものだと感じたものだ。旋律がピアノに弾きつがれた後、ヴァイオリンに現れるアルペジオを聴いてなんとも幸せな気持ちになった。ベートーヴェンってなんでもすごいんだなと。
鑑賞経験が浅く、ソナタ形式もへったくれもなかった時代ではあったが、主旋律が戻るところが聴きどころだと感じてもいた。冒頭旋律がピアノに回帰してルンルンしていたら、ヴァイオリンに引き継がれて2小節目の途中から短調にすり替わった。
いやもう衝撃でしたわ。もっと心地よい旋律を聴いていたいのに、キュンとなった。人生で初めて転調に感動した瞬間だ。
ツボをおさえまくった転調はブラームスのお家芸でもあるけれど、最初はこの「春の転調」で始まった。
調号としてフラット3個を仰ぐのは「変ホ長調」と「ハ短調」だ。平行調という。ベートーヴェンはどうもこの2つが好きだ。
<ピアノソナタ>
合計32曲のうち7曲がフラット3個を冠する。勢いで他のジャンルを調べる。
<交響曲>
<ピアノ協奏曲>
<八重奏曲>
<七重奏曲>
<弦楽四重奏>
<ピアノ三重奏>
<弦楽三重奏>
<ヴァイオリンソナタ>
以上。合計すると変ホ長調が12曲、ハ短調が10曲となる。多楽章ソナタ形式の第一楽章に変ホ長調やハ短調を採用しやすいキャラだとわかる。空白はヴァイオリン協奏曲とチェロソナタくらい。特にピアノソナタやピアノ三重奏曲、ヴァイオリンソナタにおいては同一ジャンル内に複数の曲が同じ調を共有する例が認められる。ブラームスにはありえない現象。バロック時代には珍しくもなかったのだが、あの時代の多作ぶりとは違うはずだ。こうしてみるとピアノソナタというジャンルの異質ぶりが際立つ。
ベートーヴェンのピアノソナタの最初の3曲は以下の通りだ。
出版社に3つまとめて渡して、この順序を本人が指定したのだろうと思う。
ブラームスのピアノソナタは以下の通りだ。
ベートーヴェンと比べると1番と3番がヘ短調とハ長調で逆になっている。中央の2番はベートーヴェンのイ長調に対してブラームスは嬰ヘ短調。この両者は楽譜上の調号では「シャープ3個」つまり平行調の関係にある。先行するベートーヴェンは預かり知らぬ話だが、追随したブラームスには何らかの意図がなかったか疑っている。
クララシューマンに浅からぬ関係のある作品には嬰へ調が頻発する現象を思うに。イ長調を平行調に変えて作品2に据えてみせるのは必然という気もする。
この先の作品について調べられればいいのだが、ブラームスは最初の3曲を最後にピアノソナタに着手しなかった。おかげでおバカな妄想で1本記事が書けた。
出版可能なピアノソナタが3つあった。
である。ベートーヴェンはハイドンにこれらを捧げつつ、どれを1番に据えるか考えた。結果として1番に選ばれたのがヘ短調だ「ピアノソナタ第1番ヘ短調op2-1」として現代に伝わる。
ヘ短調ソナタは「23番熱情」がとても有名だが、ここにもあった。のちにベートーヴェンの創作の柱となるピアノソナタの先頭がへ短調というのは意外な気もする。バッハのインヴェンションには採用されていないことからもわかる通り、調の常用域からは少し外れているからだ。「フラット好き」というベートーヴェンの傾向が早くも表れているようで興味深い。
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