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カテゴリー「101 編曲」の65件の記事

2022年8月 9日 (火)

レストロアルモニコ

「L'estro armonico」とつづられるイタリア語で、しばしば「調和の霊感」と訳される。「op3」を背負うヴィヴァルディの出世作。1711年アムステルダムのロジェ社からの出版で様々な独奏楽器による12の協奏曲だ。バッハはこのうちの下記を編曲している。

  • 3番ト長調→チェンバロ独奏BWV978
  • 8番イ短調→オルガン独奏BWV593
  • 9番ニ長調→チェンバロ独奏BWV972
  • 10番ロ短調→4台のチェンバロのための協奏曲BWV1065
  • 11番ニ短調→オルガン独奏BWV596
  • 12番ホ長調→チェンバロ独奏BWV976

かなりな入れ込みようだ。それもそのはずで、この曲集でヴィヴァディの名声は欧州中に広まっていた。当時最先端のイタリア音楽のそのまた最高峰という位置づけは大げさではなかった。現代日本における「四季」の人気もかすむというものだ。

CDで比較するにも楽譜があると便利なのでひとまず入手した。毎度毎度のドーヴァーで4020円はまずます。楽譜を見ながら聴くと、プレイヤーごとのアドリブもわかって参考になる。

2022年7月24日 (日)

移調の理由

バッハは、自作であれ他の作曲家の作品であれ、編曲に際してオリジナルではない調に移調することがある。基準は不明だ。チェンバロ奏法に精通したバッハが演奏上の配慮をしたものと受け止められている。

ヴィヴァルディの「調和の霊感」の中、ホ長調協奏曲op3-12を無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲する際にも移調を試みている。オリジナルのホ長調がハ長調に移されてBWV976となった。私のようなヘボな弦楽器奏者にとってはありがたい移調だ。ホ長調と言えばシャープ4個が奉られた長調であるのに対し、移調先のハ長調は調号なしだから、演奏が容易になる。

編曲の依頼主であるワイマール公の腕前に配慮した可能性はあるのだろう。高度な芸術的判断とも思えない。

まさかと思うことがある。

同コンチェルトBWV976の次、BWV977ハ長調は原曲不明の作品だが以下のように立ち上がる。

 

20170413_084951
レ抜き音階がひとつ前のBWV976と共通する。

 

20170413_130503
どちらもハ長調だから「ドミファソ」という「レ抜き」っぷりが鮮明に浮き上がる。「移動ド」などという操作をしなくてもいいからだ。

この両作品に共通する「レ抜き」の配置をより鮮明にするためにオリジナルのホ長調をハ長調にしたなどということはあるまいな。

 

 

2022年7月23日 (土)

レ抜きの連鎖

ヴィヴァルディ作曲「調和の霊感」の中12番ホ長調の第1楽章と第2楽章冒頭で「レ抜き」音階が現れると指摘した。とりわけ第2楽章7小節目「cantabile」にもまた「レ抜き音階」が現れると結んだ。

バッハはこれを無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲した。BWV976があてがわれている。ワイマールの雇い主の求めに応じて編曲した15曲の一角を構成する。

BWV番号でいうその次BWV977もまたバッハによる編曲なのだが、オリジナルはヴィヴァルディではなく今では知られていない誰かのヴァイオリン協奏曲だ。第一楽章冒頭部分を以下に示す。

 

20170413_084958
赤枠で囲んだ部分を見てほしい。ここにも「ドミファソ」つまり「レ抜き音階」がある。BWV番号は後世の研究者によって付与されたものだが、この並びそのものはバッハのオリジナルだ。「レ抜き音階」をもった作品が連続させたのはバッハの判断だと思われる。

この手のネタを偶然として放置しないのがブログ「ブラームスの辞書」のお約束である。

 

 

2022年7月22日 (金)

カンタービレ削除

ヴィヴァルディのコンチェルトホ長調op3-12の第二楽章。トゥッティがソロに転じる7小節目に「cantabile」と書かれている。ここで鳴る音楽の素晴らしさと合わせて深々と言及しておいた。

さて、同コンチェルトはバッハによって無伴奏チェンバロ協奏曲に編曲さている。その編曲にあたってバッハは、7小節目の「cantabile」をどう取り扱ったのかというのが本日の話題。

 

20170413_110733

譜例は、バッハによって編曲された同楽章の7小節目。つまり「cantabile」はあえなくカットされている。「調和の霊感」全12曲に現れる「cantabile」は6箇所だが、バッハの編曲の対象になったのはこの12番ホ長調だけだから、類例を確認できないのが残念だ。「Largo」などの発想記号や「f」「p」に代表されるダイナミクス用語、あるいは、「Tutti」「solo」などはオリジナルの通り保存されているから「cantabile」の脱落には何らかの意味があると思われる。

「cantabile」があえなくカットになった理由は不明だ。バッハが参照していた楽譜に元々なかった可能性もある。一方で上記譜例の赤矢印をつけておいた「プラルトリラー」はヴィヴァルディのオリジナルには存在しない。バッハが編曲にあたって付加したものと推定できるが、これとてバッハが参照した楽譜には記載されていた可能性も否定できまい。いろいろと悩ましい。

 

 

2021年10月20日 (水)

レーガーさまさま

「タルタルスの群れ」D583のブラームスによる管弦楽版のCDに出会えないと書いた。CDショップを物色中に貴重な代替品を発見した。

20211017_083319

レーガー編曲のシューベルト歌曲集だ。収載は下記。

  1. 魔王 D328
  2. メムノン D541
  3. 楽に寄す D547
  4. 月に寄す D296
  5. 君は我がやすらぎ D776
  6. 竪琴弾きの歌1 D478
  7. 夕映えの中で D799
  8. 連祷 D343
  9. 糸を紡ぐグレートヒェン D118
  10. 夜と夢 D827
  11. 老人の歌 D778
  12. タルタルスの群れ D583
  13. プロメテウス D674

レーガーさまさまだ。上記のうち「メムノン」「夕映えの中で」「老人の歌」「タルタルスの群れ」の4曲はブラームスも編曲している。「メムノン」以外はCDが無いのでとても貴重だ。

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この二人似てはいまいか。

2021年10月19日 (火)

タルタルスの群れ

「タルタルスの群れ」D583のテキストはシラーだ。ギリシャ主義の反映と言われている。「冥府における人間の苦悩」がテーマ。つまり重苦しい。予備知識のない日本人には敷居が高いと諦めてもいた。劇的な流れに忠実なピアノ伴奏で、オーケストラで演奏したくなるのも理解できる。ブラームスはこれを管弦楽伴奏に編曲した際、以下の通りの編成を採用した。

  • フルート2
  • オーボエ2
  • クラリネット2
  • ファゴット2
  • コントラファゴット1
  • ホルン2
  • トランペット2
  • トロンボーン3
  • ティンパニ
  • 弦楽5部

これは第一交響曲の編成とそっくりだ。第一交響曲ではホルンが4になるだけの違いである。コントラファゴットは第一交響曲にしか現れない。

同編曲は1871年のこと。これは長い長い第一交響曲の作曲期間に含まれる。影響の有無は安易に論じることはできないがタイミングの辻褄だけはあっている。

なかなかCDに巡り会えない。

 

 

 

2021年10月18日 (月)

管弦楽伴奏付与

シューベルト大好きのブラームスは歌曲の管弦楽伴奏付与にいそしんだ。断りなく「管弦楽伴奏」と言うと華麗なオーケストレーションを施したかと誤解されかねない。ブラームスの手による管弦楽伴奏についてその編成を整理しておく。

  1. 馭者クロノスD369 2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,2Hr,2Tp.Tim,弦楽5部
  2. メムノンD541 2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,4Hr,弦楽5部
  3. タルタルスの群れD583 2Fl,2Ob,2Cl,2Fg,Kfg,2Hr,2Tp,3Tb,Tim,弦楽5部
  4. 秘め事D719 Hr,2Vn,Va,Vc
  5. 老人の歌D778 2Fl,2Cl,2Fg,3Tb,2Va,2Vc,Kb
  6. エレンの歌2D838 4Hr,3Fg
  7. 夜の曲D672 Fl,Ob,Cl,Fg,Kfg,Harp,弦楽5部

以上だ。これらを「管弦楽伴奏」というタグで一くくりにするのは心許ない気がしている。

最大の編成は上記3の「タルタルスの群れ」だ。シューベルトのオリジナルのピアノ伴奏も色とりどりだから、管弦楽への転写で華麗になるのは理解出来る。けれどもそれでもベルリオーズあたりと比べるとおとなしい印象だ。ほぼ第一交響曲と同じ編成である。これを標準としておさえておく。

上記1「馭者クロノス」と上記3「メムノン」および上記7「夜の曲」は標準の編成から少々の控除がある程度。金管楽器と打楽器が抜ける感じ。「夜の曲」のハープは珍しい。

しかし上記4~6はかなり個性的。

ホルン1とコントラバスを除く弦楽器の「秘め事」、「老人の歌」では打楽器に加えオーボエ、ホルン、トランペットが脱落している他、ヴァイオリンもいない。ドイツレクイエムの第一曲で起きている編成に近い。

「エレンの歌2」はホルン4にファゴット3だけ。管弦楽版と呼ぶのもはばかられる。

 

 

 

2021年10月17日 (日)

シュトックハウゼンのやらかし

オットーエーリヒドイチュ先生の功績はもはや語り尽くされている。ブラームスとの関係で言えば、とても大切なことがある。ブラームスは友人で大歌手のユリウス・シュトックハウゼンのために、シューベルト歌曲を管弦楽に編曲している。下記の通りだ。

  1. 馭者クロノス D369
  2. メムノン D541
  3. タルタルスの群れ D583
  4. 秘め事 D719
  5. 老人の歌 D778
  6. 夕映えの中で D799
  7. 孤独な男 D800
  8. エレンの歌2 D838

上記の内6番と7番はマッコークルの「ブラームス作品目録」に記載がないけれど、フィッシャーデュースカウ先生の「シューベルトの歌曲をたどって」の458ページに書いてある。

さて問題は、シュトックハウゼンはこれらの未出版の楽譜を携えて英国に渡り、そこで紛失(はあっ!!!)したとされている。3番「タルタルスの群れ」だけはシュトックハウゼンがレパートリーにしていなかったため携帯されずに難を逃れたという。ドイチュ先生は1936年英国ウインザー宮の図書館でこれらのうち、「馭者クロノス」「「秘め事」「メムノン」を発見して難を逃れていた「タルタルスの群れ」と合わせて出版した。フィッシャーデュースカウ先生の著書では「メムノン」のところが「ミニヨン」と記載されているがこれでは辻褄が合わない。おそらくは「メムノン」の誤記。

5番の「老人の歌」はマッコークルに載っているのでドイチュ先生ではないルートで再発見されている模様。6番「夕映えの中で」7番「孤独な男」はまだ発見されていないということだ。

紛失とは人騒がせなシュトックハウゼン先生とそれをまんまと発見するドイチュ先生。

 

2021年9月 4日 (土)

20のレントラー

マッコークル「ブラームス作品目録」にはちゃんと載っている。「20のレントラー」のことだ。作品番号はなし。作曲ではなく編曲なのでWoO番号もない。シューベルトの「17のレントラー」D366から第17番を除いた16曲と「4つのレントラー」D814の合わせて20曲である。大変興味深いことに、オリジナルでは独奏用のD366を連弾用に直し、オリジナルで連弾用のD814を独奏用に変えたようだ。ほぼ16小節の小品ばかり。ときどき20、24、32小節のものが混じる。詳しくはこちら

シューベルトラヴの結晶に見えて仕方がない。歌曲は王子と認定している。「裏ワルツ王」「連弾王」でも王子認定がしたくなる。

2021年4月 5日 (月)

BWV1057

「2本のリコーダーとチェンバロのための協奏曲ト長調」だ。1052番以降、チェンバロ協奏曲が続く一角を構成する。バッハが自作をチェンバロ独奏とする協奏曲に編曲している。原曲の独奏楽器が何だったのかわからなくなっている作品も多い中、このBWV1057は原曲が明らかだ。

ブランデンブルク協奏曲第4番BWV1049が原曲だ。オリジナルの独奏楽器は「2本のリコーダーとヴァイオリン」である。う~んと平たく申せばヴァイオリンをチェンバロに差し替えたということになる。

ブランデンブルク協奏曲の4番を収録したCDは綺羅星のごとく存在するがこちらBWV1057は希少価値がある。ヴァイオリンのパッセージをチェンバロ独奏に転写した様子がよくわかる。

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