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カテゴリー「117 編成」の21件の記事

2019年6月28日 (金)

Gera di due violini in uno

イタリア語だ。「1台のヴァイオリンによる2台のヴァイオリンの競争」とでも解しておけばいい。

エアフルト生まれで主にマインツで活躍した作曲家ヨハン・ヤコプ・ワルター(1650-1715)のソナタ集「ホルトゥス・ケリクス」の第17番のタイトルだ。

興味深いのはその内容。記譜はト音2段とヘ音1段の計3段だが、2段に分かれたト音記号部分はヴァイオリン1本で演奏することになっている。一台のヴァイオリンによる、2役だ。独奏ヴァイオリンによる複数声部作品の先駆けと考えられる。楽譜が2段になっていることで、声部の進行は明瞭な一方で、記譜から重音奏法とは察知しにくい。

このソナタ集の出版は1688年バッハ3歳のころだ。当時からヴァイオリン学習の基礎教材として使用されていたから、バッハ自身が使用していた可能性も排除されていないという

バッハが一連の無伴奏作品で指し示したもの、単一弦楽器による複数声部の扱いが到達点とするなら、ワルターのこの作品は、発想として源流を形成していると思われる。

2019年6月27日 (木)

始祖としてのジョゼッペ・コロンビ

イタリア・モデナのヴァイオリニスト・作曲家。1634年生まれで1694年に没した。17世紀イタリアにおいて無伴奏ヴァイオリン作品作り手としては、ほぼ唯一の存在と目される。

バッハのシャコンヌに象徴される「無伴奏ヴァイオリン作品」は、ヴァイオリンの故郷イタリアではむしろ異端であり、通奏低音を伴うのが普通だった。

「無伴奏ヴァイオリン作品」は、残された作品群から見て、ほぼドイツにおいて考案発展されたと考えられる。ドイツ特産品と考えていい。しかし、またその一方でバッハだけの功績と思い込んではいけない。バッハは明らかにその到達点、頂点を形成していいることと合わせて肝に銘じておきたい。

 

 

2019年2月13日 (水)

レアな編成

パッヘルベルのカノンと言えば、相当な知名度。ヴィヴァルディの「四季」と何ら遜色はない。卒業式で流れたりもするのでかなりなものだ。

現代風にいろいろアレンジされているのだが、オリジナルは「3本のヴァイオリンと通奏低音」という編成になる。なんでもありのバロック時代でもなかなか珍しい。品揃え豊富なテレマンに1曲あるらしい。(TWV43:BA1)

バッハにもヴィヴァルディにも見当たらない。そもそも「カノンとジーク」という組み合わせもパッヘルベルでは唯一のものだ。

あまりに有名なのにさまざまな点で例外だらけな作品だ。

オーケストラからメンバーを探すとなるとヴィオラは退屈だ。オリジナルになかったパートを弾かされることになる。通奏低音のチェンバロ奏者が数字譜を見て即興で付ける音をピチカートでやらされたりという理不尽も付きまとう。かといって3つめのヴァイオリンのパートをヴィオラで弾くとなるとこれが割と厄介だったりもする。見せ場で第4ポジションになるのが厳しいところだ。思い切ってヴァイオリンへの持ち替えのほうがましだ。

「3本のヴァイオリンと通奏低音」のレア度ありがたみを味わうには有名になりすぎた。

2017年11月 6日 (月)

第2ヴァイオリンの出番

ブラームスの作品の中で第2ヴァイオリンが登場する作品を列挙する。

  1. 管弦楽のためのセレナーデ第1番op11
  2. ピアノ協奏曲第1番op15
  3. 弦楽六重奏曲第1番op18
  4. ピアノ五重奏曲op34
  5. 弦楽六重奏曲第2番op36
  6. ドイツレクイエムop45
  7. カンタータ「リナルド」op50
  8. 弦楽四重奏曲第1番op51-1
  9. 弦楽四重奏曲第2番op51-2
  10. アルトラプソディop53
  11. 運命の歌op54
  12. 勝利の歌op55
  13. ハイドンの主題による変奏曲op56a
  14. 弦楽四重奏曲第3番op67
  15. 交響曲第1番op68
  16. 交響曲第2番op73
  17. ヴァイオリン協奏曲op77
  18. 大学祝典序曲op80
  19. 悲劇的序曲op81
  20. ネーニエop82
  21. ピアノ協奏曲第2番op83
  22. 弦楽五重奏曲第1番op88
  23. 運命の女神の歌op89
  24. 交響曲第3番op90
  25. 交響曲第4番op98
  26. ヴァイオリンとチェロのための協奏曲op102
  27. 弦楽五重奏曲第2番op111
  28. クラリネット五重奏曲op115

いやはや、セカンドヴァイオリンの出番は多いのだ。

ヴィオラのおいしい出番はいくらでも思い付くのに、第2ヴァイオリンのおいしい出番はなかなか思いつかない。この点を克服すると記事がもう少し書けると思う。

2015年6月 9日 (火)

連弾ピアノトリオ

ピアノ三重奏の変形。ピアノ、ヴァイオリン、チェロを用いるのだが、このうちピアノが連弾になっている。ブラームス自身はこの編成で曲を書いていないが、以下の作品がこの編成用に編曲されている。

  1. .弦楽六重奏曲第1番
  2. ピアノ四重奏曲第1番
  3. ピアノ四重奏曲第2番
  4. ピアノ五重奏曲
  5. 弦楽六重奏曲第2番
  6. 弦楽四重奏曲第1番
  7. 弦楽四重奏曲第2番
  8. ピアノ四重奏曲第3番
  9. 弦楽四重奏曲第3番

以上だ。弦楽五重奏2曲とクラリネット五重奏は存在しない。ピアノ四重奏曲をやるつもりで、メンバーを集めたら、ヴィオラ弾きが急遽来れなくて、たまたま居合わせたピアニストに連弾の片割れをお願いするケースだ。ヴィオラ弾きの私としては、「何の嫌がらせだよ」という感じがする編成なのだが、キッチリ出版されていたところを見ると、需要があったのだと解さざるを得ない。

2012年8月22日 (水)

師団長のための独和辞典

ビスマルクを中心に据えてドイツ史の周辺を徘徊していると、戦争の話題が何かと多くなる。師団、軍団、旅団、連隊の意味について触れておく。時代により国により差があるのでプロイセン陸軍の歩兵についての意味合いを述べる。

<部隊>

  1. 軍 数個軍団の集合
  2. 軍団 Armeekorps 2個師団。これに砲兵、騎兵、通信兵、予備兵なども加える。
  3. 師団 Division。2個旅団。ここに工兵、衛生兵、主計も加わりおよそ12000名。Divisionは音楽用語にもなっている。おおむね中将以上が指揮する。
  4. 旅団 Brigade 2個連隊。少将以上が率いる。
  5. 連隊 Regiment 4個大隊。少佐以上が率いる。
  6. 大隊 Batallion 4個中隊。大尉が率いる。
  7. 中隊 Kompanie 4個小隊。中尉が率いる。コンパと語源は同じか。
  8. 小隊 Zug 少尉に率いられるおよそ40名の兵士。

<階級>

  1. 元帥 Feldmarschall
  2. 上級大将 Erzgeneral
  3. 大将 General
  4. 中将 Generalleutnant
  5. 少将 Generalmajor
  6. 大佐 Oberst
  7. 中佐 Oberstleutnant
  8. 少佐 Major
  9. 大尉 Hauptmann
  10. 中尉 Oberleutnant
  11. 少尉 Leutnant

  • 日本語の大中小に相当する語が含まれているわけではない。日本語はシンプルだが、ドイツにもそれ相応の理由があるのだと思う。
  • 2010年6月23日 (水)

    営業サイド

    会社がある程度大きくなると、部署間で意見が食い違うということも起きてくる。たとえば「本社」「工場」「営業」「経理」で見解が異なることも少なくない。昨今の顧客至上主義の中、日ごろ顧客に接している営業部門の発言が大きな影響力を持っていることが多い。

    最終的に営業部門の意見が結論として採用された場合、営業以外の部門からは「営業サイドの意向に従った」とか「営業サイドに押し切られた」などというコメントを発することになる。

    記事「さすがチェコ」でドヴォルザークの「2つのヴァイオリンとチェロ、ハルモニウムのためのマリチコスチ」を収録したCDの話をした。ご機嫌な出来映えで満足している。ハルモニウム独特の音色が弦楽器によくなじむ。改めてドヴォルザークの作品表を見て驚いた。ハルモニウムの代わりにピアノでも良いということになっている。

    作品を聴いた限りでは、絶対にピアノでは味わいが落ちる。ドヴォルザークはハルモニウムを所有する知人の家で、ハルモニウム現物に触れて作曲している。楽器の特性を生かした曲になっているのだ。アタックと減衰が伴いがちなピアノでは、ニュアンスが変わってしまう。

    白黒の鍵盤を指で押すという演奏方法が共通するから、ピアノ演奏の素養があればハルモニウムも弾けてしまうとは思うが、感心しない。ピアノ五重奏からヴィオラを抜いた編成になってしまう。

    おそらくこれは営業サイドの判断だろう。当時の欧州でハルモニウムがそこそこ普及していたことは確からしいが、楽譜の売上ということを考えると、「ピアノ代用で可能」と公式に謳っておいたほうが市場が広がるということだ。

    ここで言う営業サイドとはつまりジムロックである。

    2009年3月15日 (日)

    アルトの出番

    3月13日の記事「混声合唱と弦楽四重奏」でアルトとヴィオラが対応しているという趣旨から話を展開させた。

    室内楽や管弦楽曲におけるヴィオラの愛情溢れる取り扱いは、声楽作品においては当然アルトにも反映していると見なければならない。

    この文脈で真っ先に思い出すのがアルト独唱と男声合唱のためのラプソディーop53だ。もっぱら「アルトラプソディー」と通称されている。ブラームスの伝記の中でも言及されることが多い。作品91のアルトとヴィオラとピアノのための歌曲も捨てがたい。どちらもソリスティックな位置づけが与えられていてアルトが目立つように工夫されている。

    さて、ヴィオラ弾きの喜びは、独奏扱いされることにあるのではない。他のパートに主役を譲りながら、無視し得ぬ位置づけを主張する出番にある。オリジナルのコンチェルトやソナタがなくてもかまわないのだ。アンサンブルの中で存在を主張することこそが喜びの核心になっている。

    これと同様にアルトがアンサンブルの中で底光りする曲がある。作品28を背負った「アルトとバリトンのための4つの二重唱曲」だ。目立たぬと言えば目立たぬが、バリトンの相棒にソプラノを持ってこない感覚までもが鑑賞の対象である。

    アルトのパパとしては当然の話題だ。

    2009年3月13日 (金)

    混声合唱と弦楽四重奏

    混声合唱の代表的な形態と言えば「混声四部合唱」だ。ソプラノ、アルト、テノール、バスである。男の子の声変わりを待たねばならないので中学校から始めるのが一番早いかもしれない。それでも大抵男の子のメンバーが集まらない。私も中学3年の時バスケットボール部なのにかり出された経験がある。今カラオケをすればハイノート得意のテノールなのだが、当時は有無を言わせずバスになった。多分声変わりが終わっていたせいだ。

    さて一方室内楽の代表的なジャンルに弦楽四重奏がある。2本のヴァイオリン、ヴィオラ、チェロという編成だ。古来名だたる作曲家たちを魅了してきた水も漏らさぬ布陣である。パートが4つという、シンプルな共通点から混声四部合唱と比較してみる。

    • ソプラノ→第1ヴァイオリン
    • アルト→第2ヴァイオリン
    • テノール→ヴィオラ
    • バス→チェロ

    中学生の答ならこれで上出来だろう。しかし音域は別として、音質声質のイメージあるいはブラームス作品での位置付けから考えると大いに違和感がある。違和感の大きさとして真っ先に目に付くのが「テノール→ヴィオラ」の組み合わせだ。テノールが持つイメージを総合すると私の中では「チェロの高音域」が最も近い。次の違和感は「アルト→第2ヴァイオリン」だ。ブラームス好きたるもの、ここは断固「アルト→ヴィオラ」を主張せねばなるまい。違和感第3位は「バス→チェロ」だ。これは多分に言葉尻だけかもしれないが、是非とも「バリトン→チェロ」にして欲しいものだ。以上をまとめると下記のようになる。

    • ソプラノ→ヴァイオリン
    • アルト→ヴィオラ
    • テノール→チェロ
    • バリトン→チェロ

    見ての通りチェロが重なっている。創作の初期においてブラームスが室内楽に手を染める際、チェロを増強する傾向を隠していないことと符合するような気がする。弦楽六重奏が2本のチェロを要求している他、作34を背負うヘ短調のピアノ五重奏は、弦楽四重奏にチェロを加えた五重奏として構想されていた。女声合唱中心とはいえ合唱指導の経験豊かなブラームスの経歴を考えるとなかなか面白い。

    2009年2月15日 (日)

    鋭い質問

    受け手の側からの切れ味のいい質問によって、授業や講義の内容がレベルアップすることがある。教師によっては「良い質問だ」と前置きしてから答え始める人も多い。話の核心を深々と貫く質問は、しばしば教師を能弁にさせる。

    1859年2月15日付けだから150年前の今日の手紙で、ブラームスは当時のバッハ研究の大家モーリッツ・ハウプトマン(1792~1868)に質問を試みた。ハウプトマンはのちにトマス教会のカントルをつとめる程の大物だ。シュピッタより少し前の世代の重鎮である。

    バッハの受難曲またはカンタータの演奏上、通奏低音にオルガンとチェンバロのどちらを採用すべきかについての見解を求めたのだ。実はこの問題、現在もなお議論が続き、決定的な結論に到達していない難問なのだ。鋭い質問である。シュピッタやハウプトマン等、当時の指導的な学者たちは、「教会=オルガン」という刷り込みがよほど強烈だったと見えてチェンバロの参加には否定的だったという。最新のバッハ研究によれば、受難曲やカンタータの演奏にチェンバロが参加していた可能性を示唆する証拠が少なからず指摘されている。まだ判らぬ事も多いがチェンバロの参加を、無下には否定できないというのが最近の見解だそうだ。

    こういう質問をした事自体ブラームスがカンタータや受難曲演奏でのチェンバロの参加の可能性を感じていた証拠だと思われる。いわゆるバッハルネサンス真っ只中とはいえ、通奏低音をピアノが受け持つ演奏も頻発していた時代背景を考えると、弱冠26歳のブラームスから発せられたこの質問の意味は重い。ブラームスはピアノによる通奏低音なんぞハナっから想定していなかった可能性もある。

    一方この質問自体の鋭さもさることながら、そのタイミングもなかなかシャープである。毎年9月から12月までの3ヶ月限定のデトモルト宮廷勤務の最後の年だ。つまり前年の12月まで勤め、秋までブランクという時期なのだ。1859年9月からの勤務に備えた情報収集と見てよさそうだ。デトモルト在勤中にカンタータ4番を取り上げたことは有名だ。

    この質問のわずか3週間前、1859年1月22日はピアノ協奏曲第1番の初演だ。その5日後のライプチヒでは辛酸を舐めた。クララは気丈だったが、ブラームスには落胆があったハズだ。そうした余韻さめやらぬ中、バッハ演奏についての実演に即した質問を発するとは驚きだ。ただちに「ピアノ協奏曲に対する逆風にも負けずに」という美談に仕立て上げるのには抵抗も感じるが、気には留めておきたい。

    「鋭い記事だ」と言ってブラームスに誉められたい。

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