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カテゴリー「102 楽譜」の43件の記事

2017年5月 5日 (金)

読める

思うに難解。

  1. 書いてある文字を声に変換出来る。
  2. 書いてある文書から筆者の意図を汲み取れる。

「読める」という言葉の用いられ方を観察していると上記2つの意味が混在していると思われる。

小学校1年生が国語の教科書を、間違えずに声を出して読めた場合には、ちゃんと誉められる。いわゆる音読でこれは上記1の典型的な例だ。私の英語は未だにこのレベルでもある。国語に限定して申せば大人になると上記1だけでは誉められない。中学以降上記2が強く求められる。長文読解問題ではまさにそこが試される。

さてさて本題。「楽譜が読める」と言い回された場合難解さに拍車がかかる。

楽譜の場合上記1に相当するのが、「演奏出来る」になるのか、書いてある音を言えるだけで足りるのかハッキリしない。単純に「譜読み」といった場合上記2のニュアンスであることが多い。「書いてある楽譜から作曲者の意図を汲み取る」と解して違和感が無い。まさに「ブラームスの辞書」が目指す領域だ。しかし、この「譜読み」の上達が必ずしも優れた演奏に繋がる訳でもないところが悩ましい。

音楽を頻繁に聴く人の中にも「私は楽譜が読めない」と自称する人は少なくない。義務教育9年間、音楽の授業を重ねながら「楽譜を読めない」と感じている人が少なくないというのは、あんまりな気がする。国語だったら大問題になっているハズだ。

2016年8月30日 (火)

読者依存シンドローム

ブログも本も「ブラームスの辞書」は譜例が乏しい。ブログでは少ないどころか譜例が無い。これは半ば私のテクニックのせいだ。本においては400ページで173箇所だ。2ページに1箇所にも満たない。こちらはテクならぬ予算のせいだ。

音楽解説関係の書物には不可欠の譜例が無いまま、ディープなブラームスネタを展開しているということになる。無念の措置であることは既に何度か述べてきたが、私の中では既に腹がくくれている。理由はシンプルだ。読者が既に楽譜を持っていることをアテにしているというわけだ。入門書ならば失格だ。少なくとも望ましくはない。

今は後悔していない。ブラームスの入門書であることは諦めている。日ごろから楽譜に接し、楽器に接しブラームスの作品に楽譜からアプローチをしようとする人々のための本であり、またブログであるのだ。炎上覚悟で申せば、ネット検索一発で、差し迫った宿題をクリアしようというニーズには答えぬのが愛情というものだ。

もちろん、先に「ブラームスの辞書」に刺激された読者が、後から楽譜を買いに行くというのも、著者冥利ではあるのだが、それとて読者の持つ楽譜をアテにしている点は同じである。さらに言うなら「どこそこの曲の、第~小節目の、かくかくしかじかの旋律」と記述しただけで、頭の中で「ハハーン」と旋律が思い浮かんでいる人と一献酌み交わしてみたいのだ。

「曲も聴かせず、譜例も見せず」は既にトレードマークと化している。いわゆる「開き直り」である。

2016年3月17日 (木)

読書のためのスコア

iPodにブラームス作品を全部取り込んでいつも持ち歩いている一方で、作品の楽譜も持ち歩きの対象になっている。大判の楽譜ではなくてポケットスコアであることが多い。通勤電車の中など音楽を聴かずにただ、楽譜を眺めていることも多い。お気に入りの文庫本と同じ位置付けだ。文字通り「スコアを読む」のだ。

ソナタ作品であれば第一楽章から通して眺めてみる。提示部、展開部、再現部の順に頭の中で音を鳴らす。大規模な管弦楽曲はもちろんだが、二重奏程度の室内楽でも、かなり頻繁に新しい発見がある。同一の旋律が楽器の組み合わせを変えて提示されたり、音高さやアーティキュレーションに微妙な変化がつけてあったりと退屈しない。頻繁に隠蔽される再現部の冒頭付近は、とりわけ興味深い。

聴き込んだ作品の楽譜が意外にうろ覚えだったりということは珍しくない。ブラームスにおいては、音楽の聞こえと譜面の落差に意外性が宿っていることが多いから、楽譜を読むだけで楽しいのだ。

そしてそれらが全てブログ「ブラームスの辞書」の記事のネタ探しにもなっている。音を出さずに読めるから、周囲に迷惑もかからない。

2012年3月14日 (水)

美しい整合性

昨年9月16日の記事「未刊の民謡たち」を思い出して欲しい。マッコークルに記載された民謡の手書き譜は、ほとんどが刊行されていない作品のものだった。それでも何とか手掛かりがないかと考え我が家所有の民謡のCDの中に収録されてはいないかマッチングしてみると4曲がヒットした。あの日はそれをじっと喜ぶだけで終わっていた。列挙した4曲の中の1番目に「Alles schweige! Jeder neige」があった。

これは歌い出しの部分だ。この作品のタイトルを見て驚いた。最近滅多に驚かない癖がついているのだが、これには参った。

「Der Landesvater」だった。「国の親」と訳される学生歌だ。大学祝典序曲に引用されている学生歌の一つだ。手書きされた時期は1870年代の終わり頃らしい。大学祝典序曲の作曲時期と近い。民謡としては、未刊行なのも道理である。大学祝典序曲のための準備の一環だったと考えたい。

ブラームスにまつわる調べ物をしていて、この種の思いがけない整合性に出会うのは快感だ。

2011年10月22日 (土)

WoO38出版の経緯

昨日の記事「えらいこっちゃ」でブラームスの「20の民謡集」WoO38の20曲を含む27曲の民謡集の楽譜を入手したとはしゃいだ。

このほどその周辺の経緯が判明した。何のことは無い。マッコークルにちゃんと書いてあった。1968年米国で27曲の民謡集が刊行された。もちろんブラームス作編曲とされていた。その時点で未出版の作品を含む話題の楽譜だった。未出版作品がブラームスの真作と認められて新たにWoO38という作品番号が与えられたということだった。昨日の記事で「WoO38の20曲と完全に一致する」と書いたが、当たり前である。

ブラームスの作品番号にWoO38を付け加えさせることになった衝撃の発見だったのだ。当時8歳だった私は何も知らなかった。無理も無い。

ハンブルク女声合唱団のメンバーが持ち帰っていた楽譜に由来する正真正銘の真作だ。曲集のうちの既に知られていた作品には、作品番号が付与されて既に流布されている独唱歌曲の女声合唱版を3曲も含むお宝だ。作品成立の過程を知るための貴重な異版である。

そして全体の27番目に、お茶目なサプライズが用意されていた。「Wenn ich ein Voglein war」は、マッコークルに記載が無いと昨日書いた。いくら索引を探しても発見できなかった。それもそのはずこの作品はロベルト・シューマンの「3つの2声部の歌」の1曲目をブラームスが編曲したものだった。

2011年6月30日 (木)

海賊版

正規の版権に準拠しない出版物のことだ。楽譜やCDが含まれることも多い。ドイツ語で海賊は「Seerauber」(uはウムラウト)あるいは「Pirat」という。「海賊版」は「Raubausgabe」となる。

ウィーンの有力な出版社にハスリンガー社がある。「Haslinger」と綴る。ブラームス作品こそ手がけていないが、ベートーヴェンやシューベルト、ショパンなどの作品を刊行している。そこそこの有名どころだ。ブラームスは作品の刊行を任せていないとはいえ、日ごろコミュニケーションをとっていたようだ。

音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第2巻93ページに痛快なエピソードがある。同社のマネージャーとブラームスのやりとりがホイベルガーによって証言されている。リーナウというマネジャー氏が、同社の社長がエルベの海賊の末裔だとブラームスに話したのだ。処刑寸前で恩赦になった云々。ブラームスはすかさず「だからおまえの会社は海賊版ばかり手がけているのだな」と応酬したという。リーナウはブラームスと親しくしていてたようだ。ホイベルガーの証言によれば、ウィーン近郊へのハイキングではしばしばブラームスと行動をともにしている。

それにしても何たる機転。ここでいう「海賊」は「Pirat」ではなく「Seerauber」だったと推定できる。「Seerauber」から「Raubausgaube」を即座に連想する機転がジョークの肝になっているからだ。

不思議な点がもう一つ。リーナウが「エルベの海賊」と言っていることだ。いうまでも無くエルベは川の名前だから少し変だ。

このジョークはもしかするとシュテルテベッカーの話が下敷きになっていたかもしれない。

2011年3月20日 (日)

公の場

「こうのば」または「おおやけのば」と読む。難解だ。「離婚後公の場に初めて姿を見せた」芸能人のコメントなど週刊誌でよく見かける。何か揉め事があると「出るとこに出る」などといわれることがあるが、「公の場」へ出ることだろうか。世の中社会の仕組みが複雑になって行くと、「公の場」での出来事を基本に物事が進められて行く。

大臣のオフレコ発言は、「公の場」ではない代表例だ。極端な話「公の場」でない発言は、言わば無かったも同然なのだ。

ブラームスの「公の場」は、演奏会の会場。自分が指揮または演奏をする演奏会は、逃げ切れぬ「公の場」だ。しかし作曲家ブラームスを考えると演奏会場よりももっと重要な「公の場」が楽譜だ。楽譜に盛り込まれたことこそが全てだと、おそらくブラームスは考えていた。その先演奏家がそれをどのような音にするかについては関与しない立場だ。関与しなくて済むように、周到に音符を並べた。誤解の起きそうな部分には音楽用語や音楽記号も添えた。

そこにこそ「ブラームスの辞書」の狙いがある。

自らの生存中はもちろん、没後も作品が誤解無く解釈されるように気を配ったことは確実だ。先輩作曲家研究の泰斗でもあったブラームスには、過去の作曲家の作品がその没後にどういう扱い方をされるかについては、人一倍知識があった。どういう残し方をすべきかについて確固たる信念があったに決まっている。

音楽用語や音楽記号の配置が、でたらめであるはずがない。

2011年2月21日 (月)

標準小売価格

今や死語か。メーカーが末端小売価格の形成に関与していた時代の遺物。代金を支払って所有権が移ってしまったら、所有者がいくらで売ろうと自由という論理に取って代わられた結果、「メーカー希望小売価格」という表現に差し替えられた模様。商品の外装にもこれが記載されるようになって久しい。

楽譜はどうだろう。スコアの一番最後には書かれている。奥書があればそこにも書かれているが、室内楽や管弦楽曲のパート譜には書かれていなかったような気がする。ましてやなんであれ、表紙には書かれていないのが普通だ。

マッコークルの作品目録はやはり芸が細かくて、ブラームス作品の初版印刷譜面の表紙に何が書かれていたか、細かく記載されている。

何と一部の楽譜を除き、販売価格が記載されている。時代により出版社により記載の無い楽譜もあるが、これがなかなかお宝な情報だ。今まではブラームスやドヴォルザークにジムロックが払った原稿料の話を繰り返してきたが、こちらは、その支払いをカバーすべく出版社が付与した「標準小売価格」に相当するからだ。

出来上がり10ページ程度の小品だと2マルク程度。大管弦楽のスコアになると20マルクを超えることもある。つまり1000円から1万円少々ということだ。なんだか現代の感覚に近い。ネットでダウンロードという手がない分出版社有利かもしれない。

印刷部数が判れば、利益率までも推定出来そうだが、重版が起きると計算は難しくなる。

2011年2月18日 (金)

筋を通す

物事の辻褄や理屈に合う行動を貫くこととでも申し上げておく。やり抜くことが出来れば、カッコいいことこの上無いが、そうも行かないのが世の中だ。

2月16日の記事「もう一つの別れ」で、ブラームスが弦楽六重奏曲第2番op36の出版にあたり、ブライトコップフと揉めたと書いた。これ以降生涯ブライトコップフから作品を刊行していないと断言した。ところが2009年10月20日の記事「作品の価格表」を注意深く読むと、疑問も湧く。

1890年に改訂されたピアノ三重奏曲第1番の出版がジムロックになっている。1854年に初版がブライトコップフ社から刊行されているから版権の問題が生じかねないと思っていた。ところが2月14日の記事「版権」でも述べた通り、既に1888年にはジムロック社が、ブラームス初期作品の版権を、ブライトコップフ社から買い取っている。ブライトコップフ社に気兼ねせずにジムロック社から刊行することが出来たということだ。妙に筋が通っている。

もしかすると話は逆で、ジムロックの版権買い取りを待って改訂に踏み切ったなどということを想像してしまう。

2011年2月16日 (水)

もう一つの別れ

弦楽六重奏曲第2番op36は、ブラームスの婚約者アガーテのエピソードとともに語られる事が多い。第1楽章にアガーテを音名化したモチーフが現れるからだ。アガーテとの別れの記憶が込められているようだ。

ところがこの弦楽六重奏曲にはもう一つの別れが色濃く刻印されている。

この作品は毎度毎度のジムロック社から出版されているが、そのように決定するまでには下記の通り紆余曲折があった。

  1. リーダー・ヴィーダーマン社
  2. ジムロック社
  3. ブライトコップフ社
  4. ジムロック社

当初考えられていたのは1番のリーター・ヴィーダーマン社だった。条件面で折り合いがつかずにジムロック社に持ち込まれたが、ここでも合意に至ることはなかった。次のブライトコップフ社でようやく出版のはこびとなったが、土壇場でキャンセルとなる。どうもブライトコップフ社の都合に振り回されたようだ。仕方なくもう一度ジムロック社に持ち込まれて1863年に出版にこぎつけた。

上記で言う1番と2番は条件面の折り合いが付かなかったというケースだ。これは商売にはよくあることで、ケンカではない。その証拠にジムロック社やリーダー・ヴィーダーマン社からはその後も作品が出版されている。

ところが3番のブライトコップフ社は、事情が違うようだ。土壇場で方針変更を打ち出したブライトコップフ社への不信感は拭い難いものだったと見える。その証拠にこの後、ブライトコップフ社はブラームス存命中作品の出版をすることがなくなる。つまりケンカだ。ジムロック社絶対優位の伏線となる出来事だった。

ブライトコップフ社とのケンカ別れがこめられた弦楽六重奏曲だ。アガーテのエピソードに言及しない説明書はほぼ無いが、こちらのケンカの話は何故か見逃されていることが多い。

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ブラームスの辞書写真集

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    はじめての自費出版作品「ブラームスの辞書」の姿を公開します。 カバーも表紙もブラウン基調にしました。 A5判、上製本、400ページの厚みをご覧ください。
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