発展と退化
昨日、ブラームスの顔を憂鬱顔化した。特に晩年の顔だ。
何故だろう。
ここに一つの仮説がある。
バッハだ。
バッハはそう音楽の最高峰だ。バッハは普通の顔をしているが、実はそれが絶対だ。
絶対の絶対。
ブラームスの顔が憂鬱なのは、その絶対の顔が絶対だから。
……。
昨日、ブラームスの顔を憂鬱顔化した。特に晩年の顔だ。
何故だろう。
ここに一つの仮説がある。
バッハだ。
バッハはそう音楽の最高峰だ。バッハは普通の顔をしているが、実はそれが絶対だ。
絶対の絶対。
ブラームスの顔が憂鬱なのは、その絶対の顔が絶対だから。
……。
作曲の過程を想像して欲しい。
まず作曲家の頭の中に音楽が鳴る。作品全部かもしれないし主題の断片かもしれない。いずれにしろそれは「楽想が浮かんだ」と表現される。世間様にそれを知らしめるためにはまだ不十分だ。楽譜という形にダウンロードする工程が残っている。その間に作曲家の頭の中である判断がなされる。「浮かんだ楽想を、最も効率的に表現出来る編成は何か」である。あるいは、まず編成ありきで、楽想がそれに遅れて思う浮かぶこともあるだろう。浮かんだ楽想と編成は最適の組み合わせでないと、期待通りの効果は得られないと考えるべきだ。
上に列挙した4曲は、現在残された形態とは、別の形態を経由して完成に至っている。当初選定した編成がベストではなかったとブラームスが認めた可能性がある。これをもって「創作初期の迷い」「若書きの痕跡」と断ずるのは早計だ。作品番号を見る限り初期の作品ばかりにその証拠が残っていることは事実だけれど、それは証拠隠滅のスキルが未熟だっただけかもしれないからだ。あるいはその点が甘かった作品は全部破棄に回った可能性もある。
ワーグナーはしばしば「楽想と編成がマッチしていない」とブラームスを批判した。曰く「室内楽の楽想でしかないものが交響曲として提供されている」という論旨だ。
大きなお世話だと思う。ワーグナーとワグネリアンには悪いが、ブラームスはそうしたアンマッチには厳正に対処していたと思う。むしろそうした点のバランス感覚においては比類のない存在だったと確信している次第である。
「程ほどに強く」とでも訳すのだろうか。ブラームスの楽譜上に用例はない。私自身が「pocof」のニュアンスの理解を深めるために使用しているに過ぎない。
「non troppo」をブラームスが多用していることは周知の通りだが、その用例はトップ系に限られている。つまり「f」のようなパート系専用の用語との共存はあり得ないのだ。そのようなことは百も承知でなお用いている。
「non troppo」は何かが過剰になることを戒める意味で用いられ、とりわけテンポの速過ぎに目を光らせていた。その感覚は独特なものだ。「allegro」または「presto」を抑制するために使われている。「presto」は単独で用いられるより「non troppo」を伴うことのほうが多くなっているほどだ。
「poco f」もまた「f」が過剰にならぬような自制を演奏者に求める性格がある。片やテンポの自制、片やダイナミクスの自制ではあるが、「過剰を恐れる」という一点においてニュアンスを共有していると直感している。
「poco f」のニュアンスを一言で表す場合、「f non troppo」という表現を「ブラームスの辞書」の293ページで推奨している。このことは「poco」や「non troppo」というブラームス独特な微調整語の理解を深めるのに役立つと思われる。
花まつりはお釈迦様の誕生日。4月8日とされている。
素朴な疑問。キリスト教のイースターに近いのは偶然なのだろうか?イースターはクリスマスと並ぶ、キリスト教の大切な日。固定ではないとはいえ、お釈迦様の誕生日に近いというのは、偶然と考えていいのか。
聖徳太子もイエスキリストも馬小屋の生まれという伝承がある。そのたぐいの偶然と考えていいのか。私の知らぬ必然が一つ二つありはしないかと疑っている。
20世紀以降で以下の通り、イースターと花まつりが一致する。
この次は2091年だという。
ブラームスの交響曲の調性を1番から順に並べると「CDFE」になる。これはモーツアルトのジュピター交響曲の終楽章のテーマに一致する話は割と知られている。シューマンで同じことをやると変ロ音起点のジュピター音階になることも合わせて既に言及しておいた。
チャイコフスキーの交響曲の調性を何気なく眺めていて気づいた。
両端の2曲を除く4曲つまり2番から5番までの調性に注目して欲しい。キッチリ「CDFE」になっている。4番がヘ長調だったらブラームスと一致してしまうところだった。これらの4つの交響曲のうち最初の3つまでは、その成立時期が、ブラームスの同調性の交響曲より先行している。5番だけがブラームスの4番に遅れて完成した。「ドレファ」まではブラームスより先に完成し、最後の仕上げの「ミ」でブラームスに出し抜かれた形である。
ブラームス作品にあってはメジャーな用語「leggiero」のお話だ。一般に「軽く」と解されて疑われることのない言葉でブラームスには300箇所を超える用例がある。本日はブラームスの「leggiero」について考察する。まず「leggiero」の使用上の特色は下記の通りだ。
ブラームスの複数の知人が、ブラームスのピアノ演奏について語ったところによると、ブラームスはベースラインと旋律以外の声部について輪郭をなぞる程度にサラリと弾いたとある。こうしたニュアンスが楽譜上に投影される時しばしば「leggiero」が書かれたと考える。この証言は上記3つの特色と矛盾しない。
「引きずって」と解される「pesante」の反対概念という可能性もあるが、出現頻度がバランスを欠いていて受け入れがたい。「marcato」の反対概念と解する方が収まりが良い。「marcato」を「ベースラインマーカー」あるいは「f側主旋律マーカー」と位置づけることともよくマッチする。
それからもう一つ大事なこと。
白玉の音符、つまり2分音符以上の音符とは共存しない一方で16分音符が一定量連続する場合に現れやすい。音符がこみいった声部が、他の声部を邪魔しないようにというお守りの側面も無視できない。
「leggiero」を軽く考えてはいけない。
ジムロックに加えもう一人、フェリンガーがブラームスの預金口座を管理していたと推定した。しからばそのブラームスの口座はどのような銀行だったのだろう。
なかなか資料が発見できないが、思わぬ所に手がかりを見つけた。音楽之友社刊行、日本ブラームス協会編「ブラームスの実像」という本の最終章に、盛大な葬儀の様子が書かれている。会葬者の名前が列挙される中に以下のような件を見つけた。
銀行家リッター・フォン・ドゥチュカ
会葬者および花輪の送り主は本当に多岐にわたっており個人団体合計でざっと100もの名前が記されているが、銀行家と明言されているのは、この人だけだ。さすがに音楽関係の名前が多いから、銀行家という肩書きは異彩を放っている。
銀行家が自らの肩書きを隠さずに葬儀に参列するというのはどういう状況が考えられるだろう。ブラームスが本人名義の口座を開設している銀行の首脳部と考えては行き過ぎだろうか。ましてブラームスは個人の顧客とはいえ相当な預金額だったに決まっている。世間での知名度を考えれば、銀行の頭取が葬儀に出席しても不思議はない。
それがジムロック社あるいはジーメンス社の取引銀行である可能性さえ想像してしまう。
ヘルムート・ドイチュ先生は著書「伴奏の芸術」の中で、歌手の声の都合からリサイタルで取り上げる作品を移調して演奏することがあると証言しておられる。これがけして少なくないというニュアンスで描写されている。ブラームスの友人で歌手で指揮者のジョージ・ヘンシェルの証言によれば、声の都合で作品の最高音を和音の範囲内の別の低い音に差し替える申し出をブラームスが許可したという。
これは声楽作品に特有の現象だろう。声楽でも合唱となると考えにくい。器楽ではもちろんご法度だ。ハイポイションで弾けないから勝手にオクターブ下げて弾いてしまうことなど言語道断だ。どうやら移調には暗黙を含めてある種のルールがあったらしい。
4番、そしてもしかすると5番もブラームス本人の関知しないところかもしれない。「独唱者の声の都合による場合だけ移調で逃げてもいい」というような掟を想定したい。いかがなものだろうか。
我が家所有の歌曲のCDにこの移調がまぎれこんでいると、聴いてわからぬ耳の持ち主としては、平均律歌曲集 にとって課題となる。
「ロミオとジュリエット」は、イタリアヴェローナの貴族社会が舞台だった。これを20世紀ニューヨークに転写したのが「ウエストサイドストーリー」だということはよく知られている。これにより生じる受け手側のイメージが、物語の進行を円滑にする。全体がフィクションであるからこそ、こうしたディテイルのリアリティが説得力を生む。物語に幅と奥行きが出る。受け手に「ありがち」と思わせる舞台設定はとても大切だ。受け手がそこそこ舞台を知っているということだ。
オルガンコラールは、受け手側に賛美歌の知識が存在する。「みなさんよくご存じのあの賛美歌」を、「私が料理しました」ということだ。「オルガン自由曲」は、何が自由かというと基礎としての賛美歌がありませんがという意味だ。「賛美歌フリー」である。
元々生活の中にキリスト教の信仰が根付いていない私が、オルガン作品に親しもうと思ったら、まずはオルガン自由曲から入る方が垣根が低いと思った。
一連のオルガン頭出しCDはそのキッカケだ。
ヨハン・セバスチャン・バッハは音楽史に名を残す息子4人に恵まれた。
彼等の最初の教師は父である。周知の通りバッハのクラヴィーア作品の中でいわゆる教育的作品は大きな柱の一つとなっている。
上記がその代表だ。このほかに当時9歳になった長男ウイルヘルム・フリーデマンのための教材として使われた作品が「ウイルヘルム・フリーデマンのための音楽帳」として伝えられている。この音楽帳には、上記2つの曲集に含まれる作品がよりオリジナルな形で記載されている。
インヴェンションの15番ロ短調は、学問的には「インヴェンション・フーガ」と分類されている。オリジナルは「ウイルヘルム・フリーデマンのための音楽帳」に載っている。この曲は「ほとんどフーガのような作品」なのだ。「ほとんど」というのには訳があって、厳密なフーガの定義からははずれているという。フーガには「冒頭で主題が提示される時には、ベースラインを伴ってはならない」という決まりがある。先のインヴェンション15番は、冒頭の主題提示がベースラインを率いているのだ。だからフーガとは言えないが、内容は厳格なフーガだ。初心者の息子たちにフーガの主題のベースラインをさりげなく明示するバッハの暖かな視線を感じる。フーガの禁則と承知の上での話である。実は「インヴェンション・フーガ」というジャンルは、一部禁則違反を含むフーガたちなのだ。父親たるバッハの心遣いと感じる。
ブラームスは、生涯独身を貫いた。もし良き伴侶に巡り会って子供をもうけていたら、きっと音楽を教えたと思う。
これらが私がそう考える根拠だ。そして子供が女の子であってもキチンと教えたと思う。
そして何より知人の出産を祝った子守歌op49-4があんなに素晴らしいのだ。自分の子供への子守歌だったら、さぞやと想像するばかりである。
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