f non troppo
「程ほどに強く」とでも訳すのだろうか。ブラームスの楽譜上に用例はない。私自身が「pocof」のニュアンスの理解を深めるために使用しているに過ぎない。
「non troppo」をブラームスが多用していることは周知の通りだが、その用例はトップ系に限られている。つまり「f」のようなパート系専用の用語との共存はあり得ないのだ。そのようなことは百も承知でなお用いている。
「non troppo」は何かが過剰になることを戒める意味で用いられ、とりわけテンポの速過ぎに目を光らせていた。その感覚は独特なものだ。「allegro」または「presto」を抑制するために使われている。「presto」は単独で用いられるより「non troppo」を伴うことのほうが多くなっているほどだ。
「poco f」もまた「f」が過剰にならぬような自制を演奏者に求める性格がある。片やテンポの自制、片やダイナミクスの自制ではあるが、「過剰を恐れる」という一点においてニュアンスを共有していると直感している。
「poco f」のニュアンスを一言で表す場合、「f non troppo」という表現を「ブラームスの辞書」の293ページで推奨している。このことは「poco」や「non troppo」というブラームス独特な微調整語の理解を深めるのに役立つと思われる。







最近のコメント